自分の周囲全ての景色を撮影できる「360度カメラ」。現在、Insta360シリーズやGear 360など、各社が様々なシリーズを展開しています。今回はそれら360度カメラの中から国内メーカー株式会社リコーの「THETA」シリーズを徹底紹介します。THETAシリーズは、2013年にワンショットで全天球撮影が可能なデジタルカメラとして登場した世界初の360度カメラです。発売以来様々な機種が展開していますが、今回は、現在販売されているRICOH THETA S以降の機種で比較を行いたいと思います。
目次
1.360度カメラRICOH THETA とは?
2.RICOH THETA S
3.静止画だけなら断然RICOH THETA SC
4.THETA S とTHETA SCの特徴比較
5.ミクさんを合成できるRICOH THETA SC Type HATSUNE MIKU
6.動画に特化したRICOH THETA V
7.THETA SCとTHETA Vを比較してみる
7-1.スティッチング性能
7-2.パープルフリンジ
8.アクセサリ紹介
360度カメラRICOH THETA とは?
360度カメラ「RICOH THETA」シリーズは、スティック型のボディに二つの屈曲光学レンズが搭載された独特な形が特徴です。ポケットに入れられるサイズで持ち運べるため、手軽に360度撮影できます。
撮影した画像を専用サイト「theta360」を経由することで、FacebookやTwitterなどのSNSやブログ等に簡単に投稿することができます。
RICOH THETA S
2015年10月発売。それまで発売されていたTHETAシリーズよりも画質がぐっと上がったモデル。マットで高級感のあるボディが特徴的です。エベレストなどの過酷な環境でも安定的な動作で結果を残してきた実績があります。Mogura VRでも雪山企画で使用しました。
Mogura VR雪山企画
@Adatara – Spherical Image – RICOH THETA
RICOH エベレスト
Post from RICOH THETA. #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
静止画だけなら断然RICOH THETA SC
2016年10月に発売。高性能で使いやすいスタンダードモデルで、価格も2万円です。ブルー、ベージュ、ピンク、ホワイトから好きな色を選択できます。実際に使用していますが、動画や静止画の画質はTHETA Sと全く同じです。
THETA S とTHETA SCの特徴比較
4万円代のTHETA Sと2万円代のTHETA SC。発売時期が異なり、高い方が良いという訳ではありません。最も大きく異なるのは、動画1回の記録時間です。THETA Sでは最大25分の記録が可能ですが、SCでは最大5分と縮小しました。そして、THETA Sではライブストリーミング用にHDMI Micro端子(Type-D)が搭載されていますが、SCには外部インターフェースにMicro USB端子(USB2.0)のみ。THETA SCはライブストリーミング機能が省略され、必要最低限の機能が凝縮された印象があります。さらに言うと、THETA SCのシャッタースピードはTHETA Sの1/6400~60秒から、1/8000~60秒に少々向上しています。どちらのTHETAも暗い所でも良く撮れ、持ち運びやすいため重宝しています。動画やライブストリーミング等の機能を使わず、静止画中心なのであればTHETA SCで十分だと感じます。
THETA SCで撮影。DMM VR THEATERにて。
1125_sora tob sakana _DMM #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
動画性能ではSもSCも最高画質で1920×1080/30fpsで、クオリティは全く変わりません。閲覧には問題無いレベルですが、双方とも少々荒い印象があります。
THETA S (360度カメラをロケットエンジンにつけて、燃焼実験を撮ってみた)
12877ver2_5mb – Spherical Image – RICOH THETA
THETA SC
10437_5mb – Spherical Image – RICOH THETA
動画をたくさん撮りたいという方には、後述する最新機種であるTHETA Vがおすすめです。4K(3840×1920/29.97fps)あるため、圧倒的に高画質な動画の撮影が可能です。THETA Sを購入するよりもコストパフォーマンスに優れています。
揺れを抑えるスタビライザーや4ch音声録音機能も搭載されており、動画を撮るなら断然THETA Vです。
ミクさんを合成できるRICOH THETA SC Type HATSUNE MIKU
「初音ミク」10周年を記念したコラボレーションモデルのRICOH THETA SCです。ただカメラの本体が異なるだけでなく、下の写真のように、専用アプリを使って初音ミクと一緒に写真に映ることができます。
#マジカルミライ2017 ミクシータブースから!ミクさん胴上げでおつかれさまでした! #miku360 – Spherical Image – RICOH THETA
エディット画面は以下の通り。
ポーズから表情、マスクまでかなり細かいところまで編集できるため、うまく編集できるとミクさんが活き活き見え、まるでその空間にミクさんもいたかのように見せることのできる楽しさがあります。
ASAKUSA KINGYO (Tokyo, Japan) #miku360 – Spherical Image – RICOH THETA
動画に特化したRICOH THETA V
THETAシリーズの最上位機種で、価格は約5万円。そして、シリーズの中で最も動画性能の高いカメラです。4K解像度での記録が可能で、4方向の音を独立して記録することを可能です。単純な画質以外にも、画像処理・無線転送の高速化、省電力化など、さまざまな性能が向上しています。
THETA SCとTHETA Vを比較してみる
360度カメラはスペックだけでは語り尽くせない醍醐味があります。資金に余裕がありスペック的にもTHETA Vを選択、購入したいという方もこちらの比較を見て検討していただきたいと思います。THETA Vは動画を撮らせれば一流のカメラ。しかし、意外なところに弱点もあります。静止画像をスティッチングやフリンジという観点からTHETA SCと比較してみましょう。比較には以下の360度画像を使用します。
THETA V
171226_THETA比較_THETA V #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
THETA SC
171226_THETA比較_THETA SC – Spherical Image – RICOH THETA
スティッチング性能
THETA V
THETA Vでは、空にうっすらとスティッチングラインが浮かび上がります。
THETA SC
空だけ見ると、どこでスティッチをしているのか分かりません。
次は、下を見ていきます。
THETA SC
柵に目を向けてみると、一目瞭然です。THETA Vでは発売当時スティッチングラインが2本見えてしまうという不具合がありましたが、アップデートによって改善されました。しかし、THETA SCと比較してみると、スティッチング性能に関してまだ改善の余地がありそうです。
パープルフリンジ
パープルフリンジとは、明るい部分と暗い部分の間に紫色の偽色が発生してしまう現象のこと。本来見えてはいけない紫色が勝手に画像に写り込んでしまいます。パープルフリンジのせいで写真の印象が大きく損なわれてしまいますが、どのように映るのか比べてみます。
先ほどの柵をさらに拡大してみます。
THETA V
THETA SC
次はビル群の方に目を向けて見ましょう。
THETA V
THETA SC
パープルフリンジもTHETA Vの方が大きく出てしまっている印象があります。画像素子やレンズなど、パープルフリンジが出てしまう要因は様々ありますが、むしろこの逆光の状況でここまでパープルフリンジが出ないSCの完成度が高いと感じました。いくらTHETA Vが新モデルだからと言って、静止画のクオリティが他のモデルよりも高い訳ではありませんでした。発売当初、THETA Vは多くの不安要素を抱えていましたが、ファームウェアのアップデートも実施し、拡張ロードマップを公開し改善へと努めています。筆者のオススメとしては、2018年1月時点では静止画ならTHETA SC。動画ならTHETA Vです。
全てのTHETAシリーズで言えますが、スマホアプリとの無線連携がうまくいかない事があり、混雑した場所等でストレスになることがあります。そういった場合は、こちらの使用方法がオススメです。
アクセサリ紹介
THETA シリーズには、撮影を便利にするための様々な純正アクセサリが発売されています。今回、その一部を紹介します。
「RICOH THETA V」専用の3DマイクロフォンTA-1。中低域に厚みのある音の収音が可能で、音楽演奏の撮影に適しています。付属のウインドスクリーンを装着すると、屋外での風切り音を軽減した撮影が可能です。
水中ハウジングケース TW-1
TW-1は、水中での360°撮影を実現する水深30mまでの防水性能(JIS保護等級8級相当)を備えた水中ハウジングケースです。
TM-1は、RICOH THETAシリーズ専用のモノポッドスタンドです。撮影画像への映り込みが少なくなるよう考慮した小型・スリムタイプの脚部・雲台を採用しています。
TE-1は、底面に外部インターフェースが搭載されているTHETA用のエクステンションアダプターです。
使用例
【スペック表】
RICOH THETA SC Type HATSUNE MIKUはTHETA SCと同スペックです。
THETA S | THETA SC | THETA V | |
価格 | 39,100円(税込)※1 |
21,781 円(税込) ※1 |
46,355円(税込) ※1 |
撮影距離 | 約10cm~∞(レンズ先端より) | 約10cm~∞(レンズ先端より) | 約10cm~∞(レンズ先端より) |
撮影モード |
静止画:オート(ノイズ低減/DR補正/HDR)、シャッター優先、ISO優先、マニュアル 動画:オート ライブストリーミング:オート |
静止画:オート、シャッター優先、ISO優先、マニュアル 動画:オート |
静止画:オート、シャッター優先、ISO優先、マニュアル 動画:オート ライブストリーミング:オート |
露出制御モード | プログラムAE、シャッター速度優先AE、ISO感度優先AE、マニュアル露出 | プログラムAE、シャッター速度優先AE、ISO感度優先AE、マニュアル露出 | プログラムAE、シャッター優先AE、ISO優先AE、マニュアル露出 |
露出補正 | 静止画:マニュアル補正(-2.0~+2.0EV 1/3EVステップ) | 静止画:マニュアル補正(-2.0~+2.0EV 1/3EVステップ) | 静止画:マニュアル補正(-2.0~+2.0EV 1/3EVステップ)※1 |
ISO感度(標準出力感度) |
静止画:ISO100~1600 動画:ISO100~1600 ライブストリーミング:ISO100~1600 |
静止画:ISO100~1600 動画:ISO100~1600 |
静止画:(オート)ISO64~1600 (ISO優先モード)ISO64~3200 (マニュアルモード)ISO64~3200 動画:ISO64~6400 ライブストリーミング:ISO64~6400 |
ホワイトバランスモード |
静止画:オート、屋外、日陰、曇天、白熱灯1、白熱灯2、昼光色蛍光灯、昼白色蛍光灯、白色蛍光灯、電球色蛍光灯、色温度指定 動画:オート ライブストリーミング:オート |
静止画:オート、屋外、日陰、曇天、白熱灯1、白熱灯2、昼光色蛍光灯、昼白色蛍光灯、白色蛍光灯、電球色蛍光灯、色温度(2500K – 10000K) 動画:オート |
静止画:オート、屋外、日陰、曇天、白熱灯1、白熱灯2、昼光色蛍光灯、昼白色蛍光灯、白色蛍光灯、電球色蛍光灯、色温度(2500K~10000K)、 動画:オート、 ライブストリーミング:オート |
シャッタースピード |
静止画: ・マニュアルモード以外1/6400秒~1/8秒 ・マニュアルモード1/6400秒~60秒 動画:(L)1/8000秒~1/30秒、(M)1/8000秒~1/15秒 ライブストリーミング:(USB)1/8000秒~1/15秒、(HDMI)1/8000~1/30秒 |
静止画: 動画:(L)1/8000秒~1/30秒、(M)1/8000秒~1/15秒 |
静止画: ・オート1/25000秒~1/8秒、 ・シャッター優先モード1/25000秒~1/8秒※1 ・マニュアルモード1/25000秒~60秒 動画:1/25000秒~1/30秒 ライブストリーミング:1/25000秒~1/30秒 |
記録媒体 | 内蔵メモリー:約8GB | 内蔵メモリー:約8GB | 内蔵メモリー:約19GB |
記録可能枚数、時間※1 |
静止画:(L)約1600枚、(M)9000枚 動画(1回の記録時間):最大25分もしくはファイルサイズの上限4GB 動画(合計記録時間):(L)約65分、(M)約175分 |
静止画:(L)約1600枚、(M)9000枚 動画(1回の記録時間):最大5分 動画(合計記録時間):(L)約63分、(M)約171分 |
静止画:約4800枚 動画(1回の記録時間):最大5分/25分 動画(合計の記録時間):(4K,H.264)約40分 (2K,H.264)約130分 |
電源 | リチウムイオンバッテリー(内蔵) | リチウムイオンバッテリー(内蔵) | リチウムイオンバッテリー(内蔵) |
電池寿命 | 約260枚 | 約260枚 |
静止画:約300枚 動画:約80分 |
圧縮方式 |
静止画:JPEG(Exif Ver2.3) DCF2.0準拠 動画:MP4(映像:MPEG-4 AVC/H.264、音声:AAC) ライブストリーミング:(USB)MotionJPEG、MPEG-4 AVC/H264 |
静止画:JPEG(Exif Ver2.3) DCF2.0準拠 動画:MP4(映像:MPEG-4 AVC/H.264、音声:AAC) |
静止画:JPEG(Exif Ver2.3) 動画:MP4(映像:MPEG4 AVC/H.264,H.265、 音声:AAC-LC(モノラル)+Linear PCM(4ch空間音声)) ライブストリーミング:(映像:H.264、音声:AAC-LC(モノラル)) |
外部インターフェース |
Micro USB端子:USB2.0 HDMI-Micro端子(Type-D): HDMI 1.4 |
Micro USB端子:USB2.0 | microUSB:USB2.0、MIC端子 |
外形寸法 | 44 mm(幅)× 130 mm(高さ)× 22.9 mm(17.9 mm)(奥行き) | 45.2 mm(幅)× 130.6 mm(高さ)× 22.9 mm(17.9 mm)(奥行き) | 45.2mm(幅)×130.6mm(高さ)×22.9mm(17.9mm)(奥行き) |
質量 | 約125g | 約102g | 約121g |
レンズ_F値 | F2.0 | F2.0 | F2.0 |
撮像素子サイズ | 1/2.3 CMOS(×2) | 1/2.3 CMOS(×2) | 1/2.3(×2) |
有効画素数 | 約1200万画素(×2) | 約1200万画素(×2) | 約1,200万画素(×2) |
静止画解像度 | L:5376×2688、M:2048×1024 | L:5376×2688、M:2048×1024 | 5376×2688 |
動画解像度/フレームレート/ビットレート |
L:1920×1080/30fps/16Mbps M:1280×720/15fps/6Mbps |
L:1920×1080/30fps/16Mbps M:1280×720/15fps/6Mbps |
4K,H264:3840×1920/29.97fps/56Mbps 4K,H265:3840×1920/29.97fps/32Mbps 2K,H264:1920×960/29.97fps/16Mbps 2K,H265:1920×960/29.97fps/8Mbps |
ライブストリーミング解像度/フレームレート(USB) |
L:1920×1080/30fps M:1280×720/15fps ※Windows 7での解像度/フレームレート は1280×720/15fps |
不可 |
4K,H264:3840×1920/29.97fps/120Mbps 2K,H264:1920×960/29.97fps/42Mbps |
ライブストリーミング解像度/フレームレート(HDMI) |
L:1920×1080/30fps M:1280×720/30fps S:720×480/30fps ※ディスプレイに合わせて自動切換え |
4K,H264:3840×1920/29.97fps/120Mbps 2K,H264:1920×960/29.97fps/42Mbps |
※1価格は記事執筆時(1月3日現在)のアマゾンのもの。