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話題 2022.06.09

「VR酔い」を克服するために必要なことは? 押さえるべき4つのポイント

一度慣れてしまった人は「あまり気にならないよ」と言ってしまいがちで、しかし慣れていない人にとっては強烈な違和感が生まれてしまう「VR酔い」。VRヘッドセットがもたらす圧倒的な没入感は素晴らしいものですが、このVR酔いのせいで、万人に手放しでおすすめできるものではないのが現状です。

そもそも「VR酔い」と呼ばれているものは、車や電車に乗っているときに起こる「乗り物酔い」、普通のディスプレイで遊ぶ3D描写のゲームで起こる「ゲーム酔い」「3D酔い」に近いもの。医学的に解明されているわけではありませんが、おおむね原因は「景色が動いていることを目が捉え、脳が認識していながら、自分の体が静止していることから、体性感覚や平衡感覚などの知覚とのギャップが生まれ、自律神経が乱れること」だと言われています。このVR酔いを体験すると、VRに対してトラウマともいえる苦手意識が芽生えてしまいがちです。

それでも友達や同僚、パートナーにVRの素敵な世界を知ってほしいと願う方。またはVRヘッドセットを購入したけれど、VR酔いに悩まされて使うのがおっくうになっている方に向けて、VR酔いを克服するためのポイントをまとめてみました。

(※この記事に記した内容は、主に筆者の主観的な体験によるものです。あくまで「ひとつの事例」ということをご理解のうえでお読みください)

ステップ1: 自分のIPD(瞳孔間距離)を知る

VRヘッドセットを購入して最初にやることの1つがIPD(瞳孔間距離)の設定です。両目の「黒目」同士の距離、VRヘッドセットのレンズの距離をぴったりと合わせることで、シャープで鮮明な映像が見れるようになります(きちんと合わせないと、映像が2重に見えたりぼやけたりして、没入感が下がる原因になります)。

メガネを使っている人であれば体験したことがあるかもしれません。IPDが異なるメガネをつけると、レンズの度は合っているけれど、ふわふわ浮いているような感覚になってしまったり、疲れやすかったり、ピントが上手く合わないことがあります。これはVR酔いの症状と似た状態であり、自分の目とメガネのIPDがズレていることが原因だと思われます。

2~3mmくらいのズレであれば許容範囲だし問題がない、というメガネ屋さんも存在します。確かに、メガネであれば鼻にかける位置によってIPDを微調整できます。しかし、VRヘッドセットではそうもいきません。しかも、最も売れているであろうVRヘッドセット「Meta Quest 2」は58mm、63mm、68mmの3段階でしかIPDを選べないのです。細かくIPDが調整できる「VIVE Focus 3」などであればいいのですが、IPDのために10万円オーバーのVRヘッドセットを買いましょう、とは気軽には言えません。

そこで、まずは自分のIPDを測ってみましょう。眼科で視力検査をするのがベストですが、スマホアプリでお手軽に測ることもできます。今回はiPhone用アプリの「EyeMeasure」を使ってみます。起動すると「完全なアクセスを取得」という画面とともに450円/1カ月または2300円/1年のサブスク設定を求められますが、右上の「✕」をタップして広告を視聴すれば、無料でIPDを測れます。

自撮りをするときのように、フロントカメラを自分に向けると、アプリが黒目の位置を認識してIPDを計測してくれます。Meta Quest 2ユーザーであれば、この数値を元に58mm、63mm、68mmの3段階のなかから一番近いものに設定するのがよいでしょう。

なお60mm前後もしくは65mm前後と表示された場合は、Meta Quest 2のメガネ用スペーサーをつけた上で、63mmもしくは68mm側に合わせてチェックしてみるのがオススメです。メガネスペーサーなしの58mmまたは63mmよりも見えやすいと感じるケースもあります。

ステップ2: 慣れるまではトレーニングが必要

新しいメガネに変えたとき、「慣れるまでは、運動や自動車の運転などは控えるように」と言われます。その期間は数日から数週間。同じように、VRヘッドセットも慣れるまでにはある程度の時間が必要です。

VRヘッドセットを買ってからすぐの間は、VRで頭を勢いよく振ったり、高速で動かしたりすることを避けましょう。興味があっても、ハードなVRゲームで遊ぶのはやめておき、「Beat Saber(ビートセイバー)」や「SUPERHOT VR」など、あまり激しく頭を振らなくてもよいVRゲームで少しずつ慣らしていきましょう。ゲーミングPCをお持ちの方であれば、VR酔いを抑えるアプリ「OVR Locomotion Effect」もおすすめです。1日10分程度でいいので、無理のない範囲で毎日楽しみながらVRに慣れていけば、いずれ長時間のプレイや、多少ハードなVRゲームにも対応できるようになっているはずです。

「他のアバターと話すだけだから、視界を大きく動かさずにすむため酔いにくい」と言われる「VRChat」ですが、(個人的には)そんなことはありません。「入ったワールドの重さ」×「話している相手や同じワールドにいるアバターの数・重さ」によってフレームレートが変わりやすく、「低フレームレート」と「うなずく」動作のコンボでVR酔いが起きることがあります。軽いアバター姿の友達と、混んでいない、かつ軽量ワールドだけに行くというならまだしも、いろんなワールドを巡るには時期尚早です。また、使用するアバターも背が高い(=目線の位置が高い)ものにして、床面が目に入りづらいようにすると酔いづらくなります。

ステップ3: しっかり睡眠をとって体調を整える

体調が悪いときは自律神経もお疲れの状態です。普段は問題がなくとも、不調なときに乗り物酔いしやすい方は、同じ状況のときにVR酔いもしやすくなるでしょう。

自身が生きる上で大事なライブへの参加、または大事なパートナーとの旅行や友達とのテーマパークツアーがあるときは、前日は無理せずしっかりと休みたいですよね。VRでも同じです。しっかりと栄養をとって身体を休め、体調を整えておけば、1時間のVRライブに参加しても酔いにくくなります。

VRヘッドセットをつけているときに生あくびが出て、さらに目が回るような感じがした……なんてことがあれば、これは自分の身体からの「なんか変だぞ」というメッセージです。その場でバーチャル空間から抜け出して、視覚と脳を休ませてください。

オマケ: お金の力で状況を改善する

低フレームレートによるVR酔いを防ぐためには、低フレームレートにならない環境を作るという手段もあります。すなわち、ハイエンドなゲーミングPCと「VIVE Focus 3」や「VIVE Pro 2」などを組み合わせて、高フレームレートの状態を維持するわけです。当然ながら、「Meta Quest 2」単体に比べてぐっとお金がかかりますが、体験の品質もぐっと向上します。

(ひょっとしたら「Varjo Aero」を普段から使っている人もいたりして……。)

VR酔い対策のまとめ

最後に、ここまでの内容を軽くまとめておきましょう。

1. 自分のIPD(瞳孔間距離)を知り、自分に合ったレンズの距離を設定する
2. いきなり「VR上級者」向けのVRコンテンツをやるのではなく、まずはVRに慣れていく
3. しっかり睡眠や栄養をとって、体調は整えておく
(オマケ: お金をかけてハイスペックなハードウェアを揃え、良質なVR体験ができる環境を作る)

さしずめ「彼を知り、己を知れば、百戦殆からず」ならぬ「VRを知り、己を知れば、VR酔い殆うからず」といったところでしょうか。他にも「乗り物酔い用の薬が効く」「ガムを噛むとちょっと酔いにくくなる」という話もあったりしますが、まずは自分のIPD、そしてVRを知るところから始めるのがオススメです。


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