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VRChat 2024.03.14

【サンリオVfes】驚きと感動で圧倒される「パーティクルライブ」は必見のクオリティ、見逃すな!!

現在開催中の「SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland(サンリオVfes)」では、一通り有料パートの披露が終わりました。このあと3月16・17日と、3月23・24日に再演されるので、これからでもすべてのプログラムを見られます。

そこでぜひとも観てほしいのが、B4 FUSION STAGE。ここでは、パーティクルライブ(※VRChatでは、バーチャル空間上に仕掛けをして、光を飛ばしたり物体を見せたり、観客の視界をジャックして映像を見せることで演出をするライブを指す)が主に行われております。昨年もパーティクルライブはかなり話題になりましたが、今年は出演者も増え、VRでしか味わえない体験の博覧会といった様相です。

今回の記事では披露されていたパーティクルライブの一部を紹介します。いずれも観て損のない作品ばかりです。あと2回観るチャンスがあります、ぜひとも観に行ってください!

VRエンターテイメントの到達地点、ぽこピー×狸豆建設

今回大きな波紋を呼んだステージの一つが、ぽこピー×狸豆建設です。演者であるぽんぽこピーナッツくんと並んで、制作スタッフである狸豆建設が呼ばれていることは、大きなポイント。VRChat上の遊園地「ぽこピーランド」を作ったスタッフもあわせて、ひとつの演目です。「サンリオバーチャルフェスティバル」が舞台の上のアーティストだけでなく、クリエイターにも同じように光を当てようとしているのが伝わってきます。

序盤「ぽこピーランドVフェスだ!」とふたりが叫ぶと、UFOが登場。会場がぽこピーランドテイストに上書きされます。中でもユニークなのは、会場に置かれているサンリオキャラクターのハローキティやマイメロディなどのオブジェクトに、ぽこピーきぐるみを被せてジャックした演出。最初から本気でおふざけを見せてくれます。

ピーナッツくんの楽曲「グミ超うめぇ」では、UFOから観客にグミが注がれます。観客は液体グミに浸かりながらピーナッツくんの歌を聞くことになるのですが、途中からピーナッツくんも巨大化。音楽のかっこよさを視覚的に表現しつつ、液体に浸っているような感覚も得られる、他に類のない発想の体験を与えてくれました。グミの海を泳げるのは多分ここだけです。

またガチ恋ぽんぽこのソロ曲「DON PA PPO」では、キュートな文字がバンバン飛び出す派手な演出をはさみながら、MVを担当していた可哀想に!のイラストが会場中を埋め尽くすという、極彩色な世界観が観られました。ガチ恋ぽんぽこのかわいくシュールなキャラクターは今まで動画などで表現されてきましたが、今回はさらにディープに、ガチ恋ぽんぽこの脳内に飲み込まれたような迫力があります。

「Pettobotole Rocket」では会場全体が草原に塗り替えられます。もともと、エモーショナルな要素の強い作品なだけに、MV視聴済みであれば、より一層深く入り込めるものだったと思います。水の中、街の中、宇宙……。ぽこピーのふたりはあらゆるところに自由に飛び出し、観客を誘います。

「ぽこピーランド」という巨大遊園地をVRChatに開園させたスタッフたちが一丸となって、「バーチャルなピューロランドを乗っとる」意気でライブを手掛けたとことも、ひとつのユニークな物語のように読み取れて、重要な点と言えるでしょう。

また音響効果もかなり計算されたものになっていました。基本的には、ぽこピーふたりのステージが中心になるように各場面の配置を考えつつ、VR空間での音の響かせ方を工夫するというのは、現実のステージの音響と比較しても、非常に難しいものです。だからこそ、バーチャル空間上での音をどれほどリアルに、心地よくできるか、細かく調整されていたように感じました。

ダイナミックな演出の中でも、ぽんぽこのダンスを含めたパフォーマンスはいつもどおりのゆるさを感じさせるのも、ふたりの魅力をよくおさえています。普段の動画での、誰もが楽しめる美味しい部分が増幅されている公演でした。

丁寧さと大胆さが際立つキヌワールド

サンリオVfes第1回目から大きな話題を呼んだキヌ。サンリオピューロランドの「Nakayoku Connect」ではバーチャルショーの監督も務めています。

今回トップバッターとして登場し、その技術力と創作イメージを披露しました。アーティスト性が特濃なキヌのパフォーマンスが、今回のフェスのイメージキャラクター的なかたちでWeb広告にも使われているなど、今回のフェスの総合イメージを作る立ち位置になっているのは興味深いところです。

キヌ作品は少しずつ観客を侵食し、自分の音楽の世界にみんなを飲み込んでいくところに大きな魅力があります。オープニングでは会場の中央に巨大な植物が茂り、その中にキヌがいるところから始まります。いつもの会場がちょっと違うという違和感。さらに少しずつブレが入ってくる細かい視界ジャック。

ここまでのエフェクトを利用しながら、パーティクルライブを観る際の諸注意をきちんと伝える心配りがありました。しかしその諸注意の中にもまた少しずつ違和感が混じりはじめ、次のターンへと変化していくという見事な誘導演出。自分の世界に連れ込んでいくための力加減が絶妙です。

キヌは漢字の使い方に大きな特徴のあるアーティストです。漢字は一文字の中に多数の意味を持つため、観客側はどうしてもそのパーティクルに「意味」を感じさせられ、演出で振り回していく仕組みかもしれません。考察する余地があるのは、キヌ演出ならではの見せ方です。

今まで自己表現としてVRを駆使していたキヌ。今回もその演出技術をフルに活用し、見せるべき表現の軸をブレさせないままに、観客を楽しませるためのトリックがより洗練されていたように感じました。どうやったら記憶に残る視覚表現ができるか、観客が気持ちいいと思えるリズム感をパーティクルでどう表現するかが、高いレベルで調整されています。

上記のシーンでは、文字が迷路に沿って動く様子が観られました。他ではあまり使われないタイプの表現なこともあり、眼の前で一度体験すると忘れられないインパクトがあります。

会場がルービックキューブのようになって、キヌのポエトリーリーディングにあわせて回転する場面もありました。かなり平衡感覚が狂うパートなのですが、動くのは世界の一部で全部が動くわけではないので、意外と酔わないのが技術的にうまいところです。

サンリオのキャラクターたちと共に飛び立っていくキヌの姿は、3年間サンリオと共に続けてきた歩みを観ているような感覚があります。同時に今までどおり拡声器を持って言葉を語る様子は、あくまでも自身の思いをパーティクルライブを通じて語るという表現者の姿勢のゆらがなさも感じさせました。

パーティクルライブは想像次第でなんでもできる自由さがあるので、自己の内面をじっくり表現するのにも、エンターテイメントとしてユニークな発想を見せるのにも、どちらにも有用です。キヌはこのふたつのバランスの取り方がうまいです。自身の激しい思いを伝えつつ、観た人がしっかり「楽しい」と感じるように見せ方を工夫しています。

パーティクルライブで完成されたニューレトロ、CAPSULE

昨年8月行ったライブで、多くのファンの度肝を抜いたのがCAPSULE。ステージ表現に壁などないと言わんばかりに、空間をダイナミックに使ったパーティクルライブを披露し、自身たちのニューレトロアートを表現していました。そんなふたりが待望のサンリオバーチャルフェス参加。しっかり期待に応えてくれました。

サンリオのポップな会場を、レトロなローポリを使って一瞬で覆い尽くし、ふたりの世界観で上書きします。VRで世界を塗り替える演出は多くのパフォーマーが使用していますが、CAPSULEのそれは塗り替え方の順序やスピード感も含めて独特です。

音にあわせてワールド(背景)がグイグイ動き、下に降りたり、急浮上したり。観客側が動いている感覚に陥るのも、体験としてワクワクするものがあります。ステージを中心としたCAPSULEが、水先案内人を務める船に乗って出港したかのようでした。ステージ上で分裂して7人になって揃って踊ったり、巨大化したり、リズムにあわせた視覚効果が絶え間なく流れてきたりと、視覚で音を体感させる要素が高い完成度で、たっぷり混ぜ込まれていました。

とても派手で、こちらのテンションを掴んで離さないCAPSULEですが、使われているパーティクルは奇をてらいすぎないシンプルなものの組み合わせです。想像力を駆使することで、スタイリッシュさとレトロ感を最大限に見せることができる、というのを証明したライブでした。

モノトーンのクールさと音の気持ちよさ、memex

音楽と映像でクールな快感を提供し続けているmemex。一般的にパーティクルライブは作り込むと当然読み込みのサイズも大きくなるのですが、ふたりのライブは意外にも軽め。比較的軽量な空間を作りながら、ダイナミックすぎるライブを実現していました。Unityに触れたことがある人なら、パーティクルの容量を減らしつつ、かっこよく見せるのがいかに難しいか体験したことがあると思います。

今までも色の使い方がソリッドだったふたりですが、今回は完全モノトーンの世界を作り、幾何学的なパーツを立体的に見せることで、大迫力の空間を作りました。一旦ローポリで覆い尽くした後、元のワールドをバラバラに崩壊させてから城を作り上げる演出は、世界全体を塗り替えるというよりも、memexが世界を再構築したという様相です。

音にあわせて何かが動くこと自体の楽しさをVR上でたっぷり感じさせてくれるのが、今回のライブです。無機質なパーツが飛び交う際、低音によって城全体が光り、ギターの音色によって周囲の物体がキラキラと瞬きます。城自体が、会場自体が、memexの音を増幅させるオーケストラとして設計されています。

memexの楽曲はハイスピードでかっこいいものばかりです。その魅力はあくまでも2人の歌と演奏で、観客がいる空間はその視覚表現そのものであるため、音楽の中にいるかのような感覚に陥ります。

かなり後ろまで下がると、バスドラの音に合わせて伸びる立体オーディオビジュアライザーがあり、その上に乗っていると高くポイポイ飛ばされる、なんていう小ネタもあるので、「至近距離で」、「城が全部見える距離で」、「一番後ろで」、の3パターンで観ることを強くおすすめしたいです。

最高のファンサービス詰め合わせ! 戊屡神ゆゆ featuring シナモロール

戊屡神ゆゆ featuring シナモロールの舞台は、シナモンのファンサービスの連続でした。ライブ中ものすごく近くまで近寄ってくれる場面では、観客たちも大興奮で「シナモーン!!」と呼びかける声が飛び回っていました。リアルサンリオピューロランドと別の形での、VRならではの接触ができます。

街の上空、シナモンが観客を引き連れて飛び回る姿や、街の中に降りて歌うシナモンの様子などを観られます。まるでピーターパンのよう。これがMeta Quest シリーズ単体のみでも見られるほどの軽さなのも驚きです。

ステージパフォーマンスを飛び越えた、シナモンによるライド型アトラクションのような構成です。この体験型ステージのアイデアを広げ、他のキャラクターの登場するライブが次々と実施されていったら、VRテーマパークの次の可能性が見えてきそうです。

「かわいい」を極限まで表現するための見せ方、約束

「かわいい」を最大までフィーチャーするアーティスト約束のステージは、VRChat内で発展してきたパーティクルライブの面白さを知るのに最適だと思います。

連続出場の約束は、今回もMashumairesh!!のデルミンとの共演。ふたりでステージに登ります。約束もキヌ同様にオープニングで、パーティクルライブとはなにか、ライブを観るときの注意などをステージパフォーマンスの一環として披露しており、新規の来場者への気遣いを見せています。

パーティクルライブでは、出演者の発言は日本語ですが、吹き出しは英語のみなのも面白い点です。海外ファンも増えてきているサンリオVfesで、こういったスタイルに振り切ったのは注目したいところです。

ソロパートでは約束がひとりでステージに立ち、キュートなタイポグラフィを舞い上げるライブを行いました。

デルミンが登場してふたりになってからは見せ方がガラッと変わります。「惑星のダンスフロア」ではステージと観客の境界が消失する場面が増えます。観客は宇宙に放り出されたり、それどころか立ち位置がどこかわからなくなるような状況になったりします。あわてて周囲をキョロキョロ観ると、眼の前には巨大化した約束とデルミンが。ふたりの「かわいい」の迫力の渦の中に巻き込まれたかのような錯覚を受けます。

「MVの中に入ることができる」という表現が一番近いと思います。約束とデルミンはあくまでもステージ上で歌うアイドル的存在なのですが、その間に挟まれて両側にふたりが並ぶ瞬間すらあります。遊園地のヒーローショーで壇上にあげられたようなドキドキを体験できます。

キャラクターに対する「かわいい」の感覚を一番に考えて作られている約束のステージ。現実のライブで起きることの常識にとらわれず、ライブそのものの考え方すら飛び越える表現スタイルは、解き放たれた表現の面白さを知るのにもってこいです。

基本的にパーティクルライブ中、参加者は自由に歩き回って楽しめるのですが、約束のライブは真ん中固定で観てみるのをおすすめしたいです。そこに一番魅力的に見えるポイントが来るように映像が構成されているからです。

興味が湧いた人は、約束が作った他のパーティクルライブワールドも是非のぞいてみてください。

VRのエンターテイメントは転換期が来つつある

今回公開されたパーティクルライブは、見せ方の思想の基礎部分が大きくふたつに分けられるように感じました。

1・ステージに立つ演者をパーティクルで彩るスタイル
2・ファンをダイナミックなMVの中に飲み込むスタイル

1はCAPSULE、memex、ぽこピー×狸豆建設などが該当します。2は戊屡神ゆゆ featuring シナモロール、約束などです。

1のステージスタイルは、途中大きく世界が変化する部分があったとしても、基本的に演者はステージの真ん中です。そのためリアルのステージの構成と同じような、光源、音響、重量感、距離感、空間の幅や密度などをどう再現するかが課題になってきます。

特に音響面では、演者のいる真ん中やスピーカーがどこにあるかを意識して配置するのが重要になってきます。現実をそのままに再現するというよりも、音の方向と演者の立ち位置を調節したり、空間のサイズや響きを意識してエフェクトをかけることで、一気にリアルさ(理想の「リアル」な音)を感じられるようになります。

今回のステージ型パーティクルライブでは、表現におけるファンタジーとリアルのバランスをどのラインで取っているかを念頭において観ると、それぞれのクリエイターの繊細なこだわりに気づけるはずです。

2のMVスタイルは、観客にキャラクターの魅力をどこまで伝えることができるかが最大のキモになります。「キャラにやってもらえたらうれしいこと」「キャラがやってくれたらエモいこと」を眼の前で表現するために、音楽と映像と視覚効果が細かく調整されます。そうなると、演者の大きさはリアルサイズであることに意味がなくなりますし、立ち位置がステージでなくてもよくなります。

約束の演出は特にそれが顕著で、ワクワクする映像の中に入り込めるような空間構成に力が入っていました。そうなると観客の立っている位置は、クリエイター側がある程度操作したほうが楽しい体験に誘導できます。このあたりがライド型アトラクションの構造に似ています。

その一方で自由すぎるがゆえに、音響をどう設定するのかはかなり難しい部分です。ワールド全域のどこにいっても聞こえる方がMV的でいいのか、あるいは演者がいる位置から聞こえるようにして音響そのものはリアル寄せにするのか。ここは今後作者の思想が絡んでいく重要な部分になっていきそうです。

ちなみにVRChatのパーティクルライブクリエイターで2のスタイルを得意とする人は、一番よく見えるポイントを一点用意し、そこに参加者全員を透明アバターに設定してもらった上で立ってもらって、ベストな映像を見せることもあります。VRだと他の人と重なっても全く問題ないのを活かした見せ方です。

今回紹介できなかったステージも、キャラクターのショーなのか、アーティスト性の発表なのかで、はっきりとパーティクルライブの構成が異なっています。作者が何を狙って、どう見せたいのかをイメージしながら観ると、2回目・3回目はより発見が多くなると思います。

3回目にしてパーティクルライブアーティストの枠を大幅に拡大したサンリオVfes。今後もどんどん増えてほしいところですが、もしかしたらこれからは一般のアーティスト枠と切り分ける必要がなくなるかもしれません。というのも、一般アーティスト枠も演出の中に、すでに光の粒などパーティクルを用いるものがあるからです。

たとえば今回だとB4 FUSION STAGE(パーティクルライブ枠)の「カソウ舞踏団 with サンリオキャラクターズ」の演目では、ダンサーとサンリオキャラクターが歌って踊りながら、背景に歌詞が浮かび上がって演出されるという、ライブとダンスを引き立てるためのベストなさじ加減でパーティクル演出が使われていました。派手になりすぎないよう抑えつつ、ちょっと見せ方に手を加えるのも、パーティクルライブの味です。

歌詞のタイポグラフィやエフェクトを添えて演者を引き立たせるライブは昨年の「B2 LUNA STAGE(リアルアーティストのライブ)」ですでに実施されていました。今後も出てくる可能性は十分考えられます。

現在はワールドに仕込むパーティクルのボリュームもあって「B3 LUMINA STAGE(タレントライブ)」と「B4 FUSION STAGE(パーティクルライブ)」に分けられているのだろうと推測できますが、たとえばDJ会場の「B5 ALT3」では、somuniaがアバターにパーティクル技術を入れてネタを仕込むなど、想像力が表現の壁を突破しつつあります。パーティクルの使い方の自由度が上がっていけば、このイベント全体がアーティストのスタイルによって、より一層個性豊かに塗り替えられていくかもしれません。

また、会期中にクリエイターたちが集まって、非公式のパーティクルライブイベントも行っていたようです。出演者やクリエイターのライブのクオリティ高くなり、相互によいライバルとして高め合っているのも興味深い状況です。今回のパーティクルライブを見たことで、クリエイト魂に火がついたという人も多かったことでしょう。

ともかく、サンリオVfssは、今後のVRエンターテイメントの転換点的なイベントと言っても大げさではありません。是非あと2回のチャンスをお見逃し無く。

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