人気が続くVRChat内の遊園地「ぽこピーランド」。前回の座談会では、建設班with甲賀流忍者ぽんぽこさんに話をうかがい、制作の際の苦労や裏話、そして深いぽこピー愛を語ってもらった。
今回はもうひとつの立役者、音楽班の4人+ピーナッツくんの座談会を実施。空間づくりに欠かせない音楽をどのように組み上げていったか、なぜこの4人が集まったのか、実は隠されている音の秘密など、「ぽこピーランド」が更に楽しめる内容満載だ。
※今回のインタビューは「POKOPEA LAND ORIGINAL SOUND TRACK VOL.01」の配信楽曲を聴きながら読むことを推奨します。
前回の建築班の座談会はこちら。
音楽クリエイターwithピーナッツくんが集合
nerdwitchkomugichan(以下:nerd):ぽこピーランドの音楽班で音楽を作っている他に、ピーナッツくんと2人で曲を作ったりとかもしています。普段はAge Factoryってバンドをやっています。よろしくお願いします。
桶田知道(以下:桶田):今回 作曲と編曲で参加させていただきました桶田知道と申します。普段はちょこちょこソロで音楽を作ったりして おります。
コイデシュンペイ(以下:コイデ):コイデシュンペイと申します。今回は直接的に楽曲を制作しているわけではないんですけれども、やいのやいの言う係をしたり、ギターを弾いたりしてます。普段はVampilliaというバンドとVMOというバンドで ギターを弾いています。
玉田デニーロ(以下:玉田):今回「ぽこピーランド」の音楽の制作とディレクションみたいなところをさせていただいております。普段は エンジニアとして録音をしていたり、作品のディレクションとかバンドとかソロ活動をやっています。
ピーナッツくん:VTuberやってます。「ぽこピーランド」の主役と言っても過言ではないです。
一同:(笑)
メンバーは10年来のともだち
――音楽班の4人は以前からお知り合いだったのですか?
玉田:コイデは10年前からのバンド友達なんですよね。下北沢の「ERA」ってライブハウスで、対バンしたのが一番最初の出会いでした。その時は別に全然仲良くならんかったよね。で、その後京都の「GROWLY」でもう1回やった時にめちゃくちゃ急に仲良くなって。
コイデ:「ガンダム」の話でめちゃくちゃ盛り上がって今に至ります。ぼくはnerdwitchkomugichanと会ったのも結構前ですけど、最初に仲良くなったのはライブハウスの打ち上げです。
nerd:いや、僕がライブの日の昼間ぐらいに、ライブハウスの受付のとこで「Fate」と「デモンベイン」と「鬼哭街」の話をしたのが多分一番最初ですね(笑)。
玉田:俺は一応全員同じ時期に知り合っているのかな。十数年前の大学在籍中に。nerdwitchkomugichanも桶田くんも僕の大学の後輩でした。でも仲良くなったのは卒業してからだよね。
nerd:そうですね、大学でしゃべったことはほとんどなかったですね。
玉田:全員バンドをやっていて、コムギチャンとコイデはライブハウスで会って仲良くなりましたね。桶田くんは大学の別の友人と音楽をやっていて、そのつながりでずっと仲良くさせてもらっていました。
桶田:玉田さんは僕が当時所属していたバンドのレコーディングや、プレイヤーとしても参加してもらってました。その時は普通にひとつ上の先輩って感じだったんですけど、僕がソロで1枚目のアルバム出す時に、マスタリングなどを担当してもらったところから、普通に音楽以外でもよく遊んでもらうようになりました。一緒にブリを買いに行って捌いて食べたり(笑)。
玉田:一緒にマインクラフトで遊んだりしたもんなあ。このメンツはプライベートでも一緒に遊んだりしていますね。
――皆さんが「ぽこピーランド」の楽曲制作にどのように関わったのかを教えてください。
nerd:自分は「豆下通り」のBGMと、巨大ぽこピーの頭の中のBGMを制作しました。新しくオープンした「JOY豆下(※プリクラハウス)」のBGMも制作中です(※現在、ワールドに実装済み)。
桶田:巨大ぽこピー内の「ぽこピーパビリオン」のBGMと、「ピ虐街」のBGMを僕単体で、メインエントランスの「SANZAI STATION」の編曲と琵琶湖エリアの地下の湖の曲は玉田さんと共作でやりました。
コイデ:俺は「曲を作るぞ」ってタイミングで海外ツアーが入ってしまっていたので、みんなの曲を聞いてリファレンスをするといった役割でした。みんなが「これどうかな……?」って聞いてきたときに「いいじゃないですか!」って元気づける役割でしたね。
玉田:(コイデさんには)サントラのジャケットの画像編集や文字組みといった諸々のデザインをお願いした感じですね。それからギターの演奏にも協力してもらってます。自分は、「ぽこピーランド」に入場して一番最初のエリアにあたる 「WELCOME GATE」のBGMと、ワープの音、あとは「MUSIC AREA」の曲を作りました。それから、メインエントランスの曲の案出しとディレクションも担当しています。琵琶湖エリアの曲も、桶田くんと共同制作しました。
ことのきっかけは年末の「たこ焼きパーティ」
――今回の音楽制作の話は、どのように持ちかけられたのでしょうか?
コイデ:あれは年末に、nerdwitchkomugichan宅にみんなで集まって過ごした年末4日間の、1日目の出来事でしたね。
nerd:(甲賀流忍者)ぽんぽこさんが「たこ焼きをとにかく焼きたい」って言ってはって「じゃあ、(タコパ)やりましょう」って言って、みんなで食べた記憶がありますね。
玉田:そこでちょうど、たこ焼きを食べていた時に、ピーナッツくんが「ぽこピーランドっていうのを今作ってるんですけど」って言ったんですよ。
ピーナッツくん:「(ぽこピーランドの)音楽どうしようかなーって思ってるんですよ……(チラッチラッ)」みたいな。3月後半ぐらいにオープンさせたいから、あわよくば……みたいな感じで(笑)。そもそも「VRChatのワールドのBGMを作ってほしい」って、誰にどうお願いすればいいかも全然わからなかったですし、僕も制作状況をそんなにずっとウォッチしてたわけじゃないので、「(オリジナル楽曲が)あったらいいなぁ~」くらいでした。
――音楽班の皆さんはピーナッツくんの「チラッチラッ」を見て、どのような反応だったのでしょうか?
コイデ:チラッチラッとしてる顔をガッと掴んで、こっちに向けました(笑)。
玉田:2つ返事で「やりましょう!」つって。(期間的に)もっと早く言ってくれとは思いましたけど(笑)。
ピーナッツ:あの時、めちゃくちゃ頼もしかったですね…。
nerd:今あらためて、その時の会話ログを確認したんですが、1月26日に全部のワールドの「こういう雰囲気にしましょう」みたいな会議をしてるんで、制作し始めたのはこの日からですね。
玉田:だいたい2ヶ月ぐらいか。
――短すぎる!
nerd:もともとピーナッツくんたちは「フリー音源でいいじゃん」となっていたっぽくて。
コイデ:「それはあかん!」となってね。
――その場で「じゃあみんなやりましょう」と団結したのですか?
nerd:「やれることあればやるっす!」みたいな感じでした。
玉田:その段階では、「とりあえずワールド自体はだいたい完成している」っていう情報だけしか知らんくて。
nerd:そうですね。まだどんぐらいの量の音楽が必要なのかもわかってなかったんで、とりあえず玉田さんが(ランド建築班に)話を聞いてから作業を割り振ってもらいました。
玉田:年が明けて、ランド建築班のDiscordサーバーに僕がジョインさせてもらって、現状できてるところの動画を撮ってみんなで共有しました。
――割り振りもご自身たちでやったんですね。
玉田:建築班側で主なエリア分けはしていただいている状態だったので、「各エリアにBGMいるよね」みたいな感じで振り分けました。また、BGM以外の細かな仕様に関しても共有しました。例えば、ミュージックエリアの中にあるアルバムミュージアムとかは、中に入ったらミュートエリアが設定されていて、「BGMが下がってMVの音声が聞こえてくる」といった仕様になっていることなども確認しました。
あとは音楽の最大容量も……。
――音楽のファイルサイズの話ですか?
玉田:そうです。「データ1個の最大の容量が100MBまで」みたいな縛りがあったんです。100MBって言ったら、だいたいWAVで10分ぐらいの長さなので「その中で収めようね」と話していました。
実は来場者の方が実際に耳にしている楽曲は、元データではなく圧縮がかかり容量が軽くなったものとなっています。データ量も50分の1とか……もっと圧縮されているんだったかな。圧縮をかけても音質が落ちづらい変換をかけていると建築班のbironistさんがおっしゃってました。
前述の通り、僕らが関わるようになる以前のランドには、元々ぽこピーの動画にゆかりのあるフリーBGMが配置されていたんですよ。「これを超えるの、きっつ……!」と思ってたんですけど、せっかくやるならレディメイドじゃなくてオーダーメイドの方がいいと思って作りましたね。
――ピーナッツくんは、そんなチームの動きを見ていて、いかがでしたか?
ピーナッツ:やーもう、申し訳なかったです。でも想像以上にちゃんと建築班との連携とっていただいてたので、本当におまかせできるなっていう感じでした。
エントランス楽曲に秘められたこだわり
――一曲ずつ感想や裏話を聞かせてください。「WELCOME GATE」の「Portal」の制作は玉田さんですが、いかがでしたか?
玉田:オファーをもらって一番最初に思いついた曲がこれでした。中に入った時に流れる楽曲(ワープ後)が派手である必要があると考えていたので、相対的に入り口は静かな方がいいなと。ベータ版の時のWELCOME GATEは、もっともっと駅っぽかったので、架空の駅の雑踏みたいな感じがいいなと。
曲の中で聞こえる駅っぽい音は、現実にある駅の雑踏を混ぜ合わせていて、琵琶湖の湖西線の音も入ってたりします。駅特有の発着メロディみたいなのがあると思うんですけど、それをぽこピー由来の曲にしようと思って試してみたらグッときたので採用しました。この曲は現実世界とぽこピーランドをつなぐ駅みたいなイメージです。
――「SANZAI STATION」の「Welcome To The POKOPEA LAND!」は桶田さんと玉田さんが作られているんですね。
桶田:「遊園地のエントランスなら、やっぱり派手なオーケストラ」っていう共通認識があって、現場の空気感を知るために、2月入ってすぐ、玉田さんとUSJに行ったんです。その日は普通に遊んだだけだったんですけど(笑)。その後の会議で、ぽこピーのオリジナル楽曲や、ゆかりのある曲の中からメドレーに入れたい曲をセレクトし、その中から玉田さんにメロディーの流れを作っていただきました。それを基にアレンジを考え、進めていくうちに思いついたアイデアに応じて一部追加や変更をしたりしました。
玉田:(オーケストラの)参考として「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の鷺巣詩郎の楽曲を挙げたよね。
桶田:「エヴァのサントラの何秒から何秒までの、この感じのアタック欲しいよね」みたいな。メロディーの流れは決まっていたので、どこで盛り上げたり落としたりするかの緩急の付け方を意識しながら、ひたすら手を動かしていました。
玉田:この曲って、桶ちゃん的には多分マジで無限にこだわりがあるよね。オマージュとかモチーフがめちゃくちゃ入ってたりとか。
桶田:あーそうですね「グミ超うめぇ」の裏には「DAYZ(ダイズ)」が入ってますね。
ピーナッツくん:えー、そうなんですか!?
桶田:ジブリ曲で久石譲がよく使っているファゴットって楽器があるんですけど、それにハマっていたこともあり、どこかのパートの裏メロにしれっと忍び込ませたかったんです。「眠れないクリスマス」「DAYZ」の二択で迷っていました。
コイデ:その二択でそっち行くんだ(笑)。
――これは言われないと気づかないですね。
ピーナッツくん:そうですね、基本的に音で圧倒されますもんね。
玉田:この曲に関しては曲頭からの爆発力のことばっかり考えてたんで、そう思ってもらえたなら、完全にこの曲は成功です。
――「ぽんぽこの里」の「ぽんぽこのテーマ」はn-bunaさんですね。
玉田:里のBGMは自治会で流れてるやつをそのまま使わせてもらいました。
nerd:作っていただいたBGMっていうストーリーもあるし、ぽこピーの動画を見てる人が気づくところは残しときたい、ってなったんです。
ピーナッツくん:そうですね。ヨルシカですからね。(※強調するように)ヨルシカのn-bunaさんに作っていただいたのでね。
一同:(笑)
コイデ:ヨルシカですからねえ。
ピーナッツくん:ヨルシカですから。「作曲:n-buna」ってだけ書いてあるのもかっこいいですよね。「ヨルシカの」でもいいですけど!!
コイデ:(ヨルシカの部分の)文字を大きくしてもいいね。めちゃくちゃでかくして。
ピーナッツくん:怒られる……n-bunaさんの目が届かないと思って、ここに書いてるんです(笑)。
ピ虐街で怖い音だけを選んだ理由
――次は「ピ虐街」の「Toy Box of Terror」です。
桶田:はじめは玉田さんが動画とスクショを送ってきてくれて、そのビジュアルのイメージで最初の曲を作ったんですけれども、ホラーでありつつ結構コミカルな感じでした。その時、まだ玉田さんがピ虐研究所をVR体験する前だったんですが、実際体験した後に、これは「もうちょっと怖い方がいい」って言い出して。
玉田:普通にピ虐研究所がめちゃくちゃ怖すぎて……(笑)。
一同:(笑)
玉田:「コミカルなテンションでピ虐研究所に入ると油断しすぎてやばいから、覚悟がつくような曲にして」っていう話をした記憶があります。
nerd:コミカルな方もめっちゃよかったんですけどね。
桶田:もうそこからは全部まっさらにして、怖い音だけ選びました。
玉田:ぽこピーランドに遊びに来た人が雑談してる時に、ピ虐街で雑談しているとちょっと怖いから違うところに移動するって話を聞きました。
コイデ:いい話だなぁ。
桶田:怖くして、良かったですね。
nerd:嫌な音がめっちゃ入ってるんですよね。生理的に無理やーって音。
――「MUSIC AREA」の「Summer Charm」は玉田さん制作ですが、コイデさんもギターで参加されているところですね。
玉田:ドラムも打ち込みじゃなくて実際に叩いたり、生楽器のサウンドを活かしたいなと考えながら制作しました。せっかくの音楽エリアだから、音楽が元気だった80年代の楽曲に寄せようと思ったのですが、そのためには生音じゃないと出ない空気があったんです。ドラムは自分が叩いて、他は僕の知り合いに各楽器を頼みました。多分聞く人が聞けば、インスパイア元が全部わかると思います。
ピーナッツくん:玉田さんの作る曲だなーっていう感じがして、嬉しかったですね。
玉田:ありがとうございます。こんなやりたい放題やらせてもらって! 80年代音楽のジャンルは桶田くんがかなり精通していて、一緒に相談しましたね。
桶田:Bメロのスレイベル(※ベルを使った打楽器)が入ると「これこれ!」って。それだけで満足でした(笑)
玉田:ギターも元々はソフトシンセでメロを入れてたんですけど、なんだか味気ないな〜と考えていたときに、そういえばコイデがいるじゃんって。
コイデ:そうだね、この頃には帰って来ていたからね。あの頃はほぼヨーロッパにいたので……。
ピーナッツくん:そうだ。オランダからぽこピーランドの会議に参加してたりしてましたね。
コイデ:海外の電車の中で「お気楽KING」を初めて聞きました(笑)。
今の若者って何だろう?
――「豆下通り」の曲「Mameshita St.」について、nerdwitchkomugichanさんはいかがでしたか?
nerd:「原宿の竹下通り」的な、若者の集うkawaiiストリートみたいなイメージがあったんで、キラキラした音とかフューチャーベース的な音を使いたいという話を一番最初の会議の時にしていました。なので一番最初はかなりフューチャーベースな曲を作ったんですけど、なんだか落ち着かない感じになって1回作り直したんですよね。
玉田:「今の若者って何だろう」という話をみんなでした時、フューチャーベースと「ブルーアーカイブ」の話をしたよね。
nerd:想像上の「今の若者」ね(笑)。豆下通りを巡っている動画を最初に見た時、タピオカとかを未だに飲んでる感じがあったので……。
玉田:未だにって(笑)。
nerd:いやいや、好きな人は未だに飲んでると思うんですけど! 流行という意味で、少し前のイメージというか(笑)。僕らの想像する若者の街みたいなキラキラ感を出したかったんです。そこでコットンキャンディーちゃんとか、ダークモカチップフラペチ子ちゃんかとか、ピーナッツくんのアニメのキャラクターがいたので、それに合う感じにしたいなって考えました。あと、制作の最後の段階でゲームボーイの音を入れて、チップチューン感も混ぜたりもしました。
玉田:元のだとスネアとかキックの音があまりにもフューチャーベースすぎて、音が遊園地にしては耳に痛いというのがあって。
nerd:結局ベースとキックは、そのまま重いままにして、スネアだけ自分で持っているDMGから取り出しました。
玉田:DMGっていうのは、初代ゲームボーイを使ったシンセみたいなものです。
nerd:初代のゲームボーイに「LSDJ」っていうソフトがあるんですけど「ゲームボーイの音源で音楽が作れる」みたいなものです。それを自分のパソコンに繋いで音を拾ってきて、スネアとシンセだけ、その音にしました。なので、後ろで鳴っている音は、初代ゲームボーイの音をそのまま使ってたりします。
玉田:長時間ヘッドホンやイヤホンで聴くことになるから「あんまり音が痛すぎるのもどうだろう?」という話は一瞬出ました。でも結局「派手な方がいいんじゃないかな」って。若者って別にしんどい音もずっと聞けるでしょ(笑)みたいな。
nerd:あと、うるさかったら勝手に音下げるっしょって。
玉田:だからある程度派手なままに残しつつ質感のいい方を選んでもらいました。
――「巨大ぽこピー」の「Friends in My Head」も、nerdwitchkomugichanさんですね。
nerd:かなり後になって「やべぇ、これ作らなきゃ」みたいになった曲です。
玉田:この場所には元々BGMのエリア割り当てがなされていなくて、建築班のぬるもとさんに「すみません、ここやっぱりBGMつけていいですか?」って言って、エリア判定を作ってもらいました。
nerd:だから「急いで作らな!」みたいになって相談しました。建造物内部のBGMというより、巨大ぽんぽこさんがガッツリ見え始めた時に鳴るようになっています。ぽんぽこさんの口の中から出て橋を見下ろすときとか、ピーナッツくんの頭の上に出たときとかも。なので(BGMは)具体的じゃない方がいいなと考えていました。
玉田:「ICO」のロード画面とか「メイプルストーリー」の街のBGMの話をしていた気がする。
nerd:セーブポイント感みたいなのがすごい欲しかったんです。
桶田:「スターデューバレー」とか「ゼノサーガ」とか。
nerd:荘厳で神聖な感じもするけど安心感もある音が作りたくて。ピアノの音でタラララン、みたいな感じで始まるんですけど、それが巨大ぽんぽこさんが見える橋を渡る時とかに、「見えましたよ」っていう感じが入ってくるのが、安心できる場所に帰ってきたっていう合図っぽくていいなって思ったんですよね。
玉田:ある意味これが一番、BGMっぽさがあるような気がします。
約5時間で完成した「Mother Lake」
――「ぽこピーパビリオン」の「Musique de musée」はいかがですか?
桶田:ぽこピーの歴史がずらっと並んでる場所で、絶対長居する場所なので、とりあえず耳につかない、鳴ってるけどそっちに注意が向かないような音楽にしようと思っていました。最初は 「あつまれどうぶつの森」の博物館みたいな、音数が少ない感じで数パターンほど作ったら、あまりにも静かすぎちゃって。
玉田:「静かな曲を作って」って言われたのに、いざ作ってみたら「静かすぎる!」って言われるの理不尽すぎる(笑)。
桶田:内装が結構派手でパキパキした色が多くて、ちょっと曲が合わないという話になったので、メロディーはそのままちょっと解釈変えて、舞踏会とかお屋敷感があるものになりました。「スーパーマリオ64」でピーチ城に入った時の赤絨毯の感じがイメージであったので、その辺を想像しつつ「64」っぽい音色のストリングスを入れました。
――最後ですが「MOTHER LAKE」の曲「Mother Lake」。これは桶田さんと玉田さんですね 。
玉田:すごい勢いで作った気がする!
桶田:「マリオカート」みたいな雰囲気ですね。
玉田:湖っぽいエリアにBGMをつけるって話になって、ピーナッツくんがビワイチ(※琵琶湖一周サイクリング)をやっていたこともあり、田舎っぽさとスピード感と、あと広さを出したくて。そうなったときに「マリオカート」みたいな感じを意識して。そこからはアコギ録音したり、パンデイロ録音したりしていました。
桶田:イギリスのバグパイプの音に近いシンセの音を使ってみたり、アコギを入れたり。玉田さんはパーカッショニストでもあるので、パンデイロやタブラなど普段お目にかかれない楽器を所有されてるんですよ。それを入れてもらう手はないと。録音時は「ちょっと待ってなー」って言いつつ、叩いてくれた音源がすぐ送られてくるんです。それを僕がどんどん当てはめて、多分一晩ぐらい……いや一晩もかかってないかも?
玉田:作業内容的には5時間くらいで出来上がってるね。イケイケどんどんで作った感じがする。「マリオカート」の「モーモーファーム」とか、リファレンス元になった音楽が、牧歌的カントリー風に見せかけた謎の多国籍音楽になっていることが多いのに気づいて。それでいろんな楽器を混ぜこんで、ケルト音楽を基調にした多国籍な曲になりました。
桶田:そうですね、パンデイロはブラジル。タブラはインドですもんね。
玉田:ケルトっぽいメロディーのストックを僕も桶田くんも元々持っていて、それをすぐに組み合わせて、作業がどんどん進んだ気がする。
ピーナッツくん:ケルトっぽい曲を作るのが得意ってことですか?
玉田:ケルト風の曲はある程度のルールがあって そのルールを知ってただけっていうような感じかもしれないですね。
仲の良いチームだから成し遂げられたこと
――ピーナッツくんは仕上がった曲を聞いて、どういう風に感じられましたか?
ピーナッツくん:ぽこピーランドが追い込みでどんどん完成していく時に、BGMも組み込まれていって、実際に何度も行くようになると、完成していくのを聴覚で感じて、めちゃくちゃ感動してましたね。
特にエントランスに入って「Welcome To The POKOPEA LAND!」がかかったときは「これちょっと、やばいよなー……どうしよう……」と思っちゃいました。「すごすぎて手に負えねえ!」みたいな (笑)。VRChatに来てくれた人たちが、エントランス入って、これを浴びた瞬間に、遊園地のことや、ぽこピーのことを考えてもらえるなんて……本当に泣きそうになったんですよ。ただ次の瞬間には、もう「どうしよう!!」と思いました(笑)。ぽんぽこさんと話していました。「これは手腕が問われているぞ……!」と。
玉田:2人がそうなってくれたなら、もう完全に成功!
ピーナッツくん:くらっちゃいましたね。本当に良かったです。
コイデ:エントランスは本当によすぎたなー。
ピーナッツくん:あと例えば「ブルーアーカイブ」とか、ゲーム音楽に関する色んなリファレンスが出てくるのを横目で見ていて、マジですごいなと思いました。アーティストとして活動されてる方って、色んな曲を知ってるんだなって。「本当に何でもできる人たちじゃないですかー!」みたいに思って見てました。勉強になりましたね。
――完成してから改めて見て、玉田さんは良かったと感じられましたか?
玉田:ちょっともう各曲千回ずつぐらい聞いてるので、わかんないですね(笑)。まあでも 一番最初にランドに組み込まれた時に聴いた印象がすごく良かったので、きっと間違いないというか、良かったんだろうなとは思ってます。「なんとかなって良かった」って気持ちも強いです。
――結局これらの楽曲を2ヶ月弱くらいで作ってるわけですよね。
玉田:短期決戦ってのもあって、話が早い人たちを集めざるを得なかったというか、このメンツであれば、作業も早い人たちなので、まぁ大丈夫だろうって思っていました。
僕だけで確信が持てないところについては、コイデに「どう、これ?」みたいに毎回聞いてましたね。よいものが仕上がったら「いいじゃん!」って言ってくれるし、よくなかったら「これはちょっと……」みたいに、ちゃんと指摘してくれるんです。お互いに補い合っていて、チームとしてやりやすかったですね。
――コイデさんは各人の制作を見て、全体の手応えのようなものは感じましたか?
コイデ:自分が「一番最初に聞くリスナー」っていう自覚を持とうと思っていましたね。一歩引いたところで、最初に聞くリスナーとして、できる限り率直な感想を言えるようにしようと思ってましたが、すごくいいものをどんどん出してくれたので、「早く新しいの聞かせてくれ!」ってずっと 思ってました(笑)。「早く早く聞かせてくれ!」「いい作品ですね!」「ありがとうございます!」って。
――冒頭でも話されていましたが、音楽班が旧知の仲だからこそ、よいコンビネーションで作業を進められたのかもしれませんね。
コイデ:そうですね。そもそも普通にみんな友だちですからね。
玉田:もちろん、全然違う畑の人たちが入ってきて新しい形を作るのは魅力的だと思うんですけど、いかんせん時間がない中でクオリティを高くするために、今回はやりとりの早さで押し切ったみたいなところあります。
ピーナッツくん:ありがとうございます。
nerd:さっきピーナッツくんが言ってくれてたリファレンスとかの話もそうですけど、多分ぼくらは、好きな音楽の偏り方が似てるっすよね。
コイデ:そうだね、そうだね。
玉田:共通言語が近いというか。
nerd:「ポップな怖い感じの音」って言った時点で、みんなが「フンフンとフフーフ(※某有名ゲーム)」ってタイトルが頭に浮かんで(笑)
コイデ:なるほどね。だから、そのワードが出た瞬間にポリゴンの魔女が出てきたわけね(笑)。
玉田:リレーの速さみたいなのはあるね。それから「ぽこピーのことをよく知っている」という前提条件が、今回の場合は必要だったんだなと。作曲の能力はあるけど、ぽこピーのことを知らない人を呼んできたら、結構やばかった。
ピーナッツ:それは確かにでかいですねー。
玉田:みんな去年の夏ぐらいから、ライブやらアルバム制作やらで本格的にスクラム状態でやっていた人たちが集まっているので。あとは「納期やばい!」ってなった時に、その危機感をうまく受け取ってくれる人というか、ヤバさの共有をできる状態なのが良かったです。
――音楽班が元々仲良しだったことが、本当に良かったという印象です。
nerd:そうですね、初っ端がたこ焼き始まりですもんね。
コイデ:完全に プライベートすぎる。
ピーナッツくん:甘えた依頼をしてました(笑)。
nerd:この1年間ぐらいめちゃめちゃな頻度で遊んでますもんね。
玉田:割とみんな忙しいはずやのに、グランピング行ったり、サウナ行ったり、鍋つついたり、たこ焼きパーティしたり。
ピーナッツくん:仲良しになったからこそ。いやほんと、よくしてもらっています。
nerd:そのかわり僕の大好きなセイキンさんの動画を見てもらっています。
ピーナッツくん:セイキンさんはぼくも好きですけど、それだけはよくわかんないです(笑)。
音楽ライブでバーチャル空間をめちゃくちゃにしたい
――今後、ぽこピーランドでやってみたいことはありますか?
ピーナッツくん:「ゆくゆくは、ぽこピーランドでライブをしたい」と話してて、その時のために舞台装置もいっぱい用意して、全部の体験ができるようにしたいなと考えていますね。
玉田:もう絶対にむちゃくちゃにする!!
コイデ:みんなのVRを破壊していかないと!!
玉田:制作中にキクラゲさんや、ぬるもとさんに「パーティクルを使ったライブは結構みんながもうやっている。もっと別のやり方もあるんじゃないか?」って話をしていました。自分がVRChatあるあるみたいな知識を知らなすぎるんで、そのあたりを学んだ上で、初めて見る人からVRChatヘビーユーザーにまで驚いてもらえるようなものを考えないといけないな〜と思っていますね。
ピーナッツくん:なんか今パッと思いついたんですけど、コイデさんのやっているVMOっていうバンドでは、ライブ中にストロボをバンバン出すじゃないですか、あれって、すごくVRChatっぽいんですよね。バーチャル空間で急に差し込まれる視界ジャックみたいに、視覚を完全に掌握されてしまうみたいな。ぽこピーランドにも、そういうエリアがあってもいいかな。
(VMOのMV)
コイデ:最悪空間みたいな(笑)
ピーナッツくん:変な体験ができる場所。
コイデ:玉田くんがVRChat内でめっちゃなんかやられてたよね。
玉田:「YOU ARE F◯CKIN’ STREAMER!」って文字が目の前にめちゃくちゃ出てくるやつやろ。めちゃくちゃかっこよかった。
nerd: かっこいいもんなぁ確かに。VMOのライブもそうですけど、やっぱりクラブで一番気持ちよくなる瞬間って、クソ暗い中でミラーボールの流れる光を目で追って、床が動いてるのか、自分が動いているのか、わからなくなるあの感じ、あれが一番気持ちいいですもんね。
ピーナッツくん:そうですね。 VRでその疑似体験みたいなことができると思うんで、せっかくなんでね、あったらいいなと思います。
コイデ: その時は言ってください!
ぽこピーへの愛、来場者への愛
――最後に、これまでの制作作業全体を振り返った感想を、皆さんにお聞きしたいです。
nerd:ぽこピーのコンテンツ自体のレイヤーの重なりがすごいと思いました。ぽこピーランドってどこを見ても、ふたりのネタに繋がるような文脈が見えるんですよね。初期のアニメから今までの活動が全部つながっているんですよ。
だから、音楽を作っていても「引き出しが勝手にある」みたいな状態なんです。めっちゃ頑張って作ろうとしなくても、ピーナッツくんたちが作ってきた世界と繋がって、勝手に曲が良くなっていくような感覚だったので「ぽこピーすげー!」という気持ちが強かったです。
もちろん、みんなで作った音源というだけでも感動するんですけど、自分が今まで見てきたぽこピーの曲とかが引用されている時に、さらにすげえグッとくるんで。これって……愛じゃんね。
ピーナッツくん:最後キモ。
一同:(笑)
桶田:個人的には、チームで何かをやるって事があまりないので、玉田さん中心にみんなが曲に対して、意見を出しあったりするのが新鮮で、すごく楽しくて、全くしんどくなかったです。本当に作って良かったなっていうのがありますね。やっぱり……愛じゃんね(笑)。
ピーナッツくん:桶田さん全然寝てない時ありましたよね。
桶田:それが、なんか気持ち良かった(笑)。
玉田:ほんまに心配になる!
桶田:もうひとつ、他の人の曲は聞いていてすごくいいと感じるのに、自分が作ったものっていつまでたっても「本当にこれで良かったのか?」って結構思っちゃうタイプなんです。けれども、そういう時に、仲間がいるとすごく安心できるなっていう部分がありました。
コイデ:改めて、「みんな変な人達だなあ」って思いましたね。ぽこピーの2人も、ここにいるみんなも変だなって。でも変な人の方が一緒にやるときは、やっぱり面白いんですよね。「なんか面白いことやりましょうよ(笑)」が、ちゃんと実現するのは稀有なことで、その例がこれなんだろうなって思っています。「面白いことやりましょうよ」をちゃんと実現まで持っていける人たちが集まると、ちゃんと面白いものが完成する。本当にいい人たち!……愛じゃんね!(笑)
玉田:ぽこピーが今まで100%の力でやってきた活動があるからこそ、こっちも100%で打ち返すことで、120%のものが出来上がるんじゃないかと感じていて、120%が出て、はじめて想像を超えるものが出来上がると思っています。
今回は今までのぽこピーの活動があって、そこに建築班がもうすでに100%で答えていて、さらにそれに対して僕らがもう1回100%で頑張って答えようって考えていました。だからこそ、今の形になったんだなあ、と思っています。 これができることって、本当にレアだなと思ってるんです。
全員がフルパワーでないと、実現できなかったことなんでしょうね……愛じゃんね。
ピーナッツくん:そうですね。最初は「フリーBGMでいいや」みたいな舐めたことを言ってたんですけど、玉田さんが僕の「あわよくば精神」を汲み取ってくださって、本当に良かったって今になってはめっちゃ思ってます。
プレオープンでいろんなVTuberさんが配信をしてくれてる時に、その後ろでずっとBGMが流れるんですけど、すっごいオリジナリティもあるけど、配信の邪魔をしないし、ぽこピーランドにいるんだなっていうことを感じさせてくれるBGMで、本当に曲を頼んで良かったなって思いました。
ぽこピーランドに来る人たちの居心地の良さとかファンが喜ぶことまで考えてくれていて、愛してくれてるんだなって……愛じゃんね!(笑)
僕のことだけじゃなくてもう全部を愛してくれてる最高の人たちに囲まれて、本当にありがたいし、ラッキーだなって思います。