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Meta Quest 2020.09.24

思わず絶賛 ユーザー視点から「Oculus Quest 2」をレビューしてみた

「Facebook Connect」にて満を持して発表された、Oculus Questの最新機種「Oculus Quest 2(オキュラス クエスト 2)」。そのカタログスペックだけで、VR業界やファンが大いに驚愕する事態になっています(筆者もその1人です)。

今回、MoguLive編集部にて先行体験しました。すでに非常に詳細なデバイスレビュー記事は公開されているため、“ひとりのVRユーザー”の視点から「Oculus Quest 2」の使い心地や見逃せないポイントを紹介します。

「簡略化」されたパーツとその影響

Oculus Quest 2は外観が大きく変わりました。とりわけゴム製のストラップからやわらかい布製のストラップへと変更されたのは大きな変更点です。

やわらかい素材へ変わったことで、頭部へ無理なく固定でき、装着時の負担も少なめになりました。しかしストラップを調整する際には、どのように締めてどのように緩めればいいのか、直感的にわかりにくいものになっています。そのため一番最初に装着する際に、手間取る可能性が高くなりそうです。装着中の微調整もやりにくいと感じました。

また、顔に触れる部分のパーツが、そこまで良質ではないスポンジ素材へと変わっており、装着感はともかく耐久性に不安が残ります。この点に限っては、初代Questに軍配が上がるところ。初代Questと同様に「鼻の隙間」の広さもどちらかといえば欧米人寄りで、顔の平たい日本人が装着すると少し外光が入ってきます。メガネをつけたままの装着も、デフォルトではスペース的に厳しい印象です。

さらに大きな変更点としてはIDP調節機能の簡略化が挙げられます。これまでは範囲内で自由に調節可能だったものが、Oculus Quest 2では調節範囲が3段階に制限されています。筆者は特に問題なかったのですが、細かい調整が行えないことで、視界に違和感をおぼえる方もいるかもしれません。

初代Questと比較すると、IPD調節機能の簡略化や、上記に挙げたような「素材の簡略化」といった点がいくつか見られ、33,800円(税抜)という破格の価格設定はこのような徹底した簡略化の賜物であると見てよいでしょう。

一応、IPD調節機能以外はパーツの換装で対応できそうなところなので、サードパーティー製のカスタムパーツの登場を待つのも一つの手です。メガネについてはスペーサーが付属するため、こちらを採用するのがよいでしょう。また公式アクセサリも豊富なため、こちらの購入を検討するのも一考でしょう(別項で解説します)。

ちなみに、Touchコントローラーは形状が変わり、初代Oculus Touchのような形状に近づきました。各ボタンとスティックが広くゆとりをもって配置されており、操作感は初代Questよりも良好になっていました。

性能に非の打ち所なし

さて肝心のVRヘッドセットとしての性能ですが、文句のつけようがないレベルです。

片眼あたり1832×1920という解像度は、初代Questはおろか、現行の主要なPC接続型VRヘッドセットを凌駕するスペックです。では実際の見え方はどうかといえば、そのスペックに違わず、恐ろしいほど精細な視界が広がります。

近距離、遠距離ともにスクリーンドア(※ディスプレイの網目模様。詳しくはこちら)はきわめて少なく、視界の奥までくっきりと映る非常になめらかな映像となっています。特に文字については、ほとんど肉眼に近しいレベルではっきりと視認可能です。

このため、本機はVRゲーム機のみならず、動画鑑賞ヘッドセットとしても活用できると見込まれます。その性能上、4Kといった高画質動画にも対応できるのは最大の強みです。

360°映像にも無論最適で、今回のレビュー時には、ココツキの「アンドロイドガール」8K 180°動画を鑑賞しましたが、「このMVを見るには最適の一台だ」と確信するほどキレイな映像が眼前に広がっていました。

筆者体感ですが、VIVE Proはおろか、VALVE INDEX以上にクリアな映像が見えました。あえて比較対象を挙げるならば、片目2160×2160を誇るHP Reverbぐらいでしょう。そのぐらいの高解像度を、スタンドアロンな一体型ヘッドセットで実現しているのは驚異的で、筆者はもちろん、MoguLive編集部スタッフも、ただただ笑うほかありませんでした。

解像度のみならず、プロセッサが強化されたことにより、純粋な処理性能も上がっているように感じました。「Beat Saber」もプレイしてみましたが、初代Questとは比べ物にならないほど快適にプレイできたことに驚きました。

アプリケーションの立ち上がりは早くなり、ロードも短めになり、なにより操作中(特にコントローラーや頭部を動かした時)に急に重くならなかったりと、プレイ中の快適度もPCVR並みに高まっていました。このため、初代Questで遊んだゲームでも、まったく異なるプレイ体験が得られるはずです。

ここまでのハイスペックぶりを一体型ヘッドセットで実現されてしまうと、上記のような細かなハード面の不満点もだいぶ吹き飛びます。これが33,800円(税抜)で手に入るのだから、すさまじいものがあります。

Oculus Linkを使えば、これ一台で十分

そして、Oculus Questの強みのひとつといえば、Oculus Link。USBケーブル一本で、QuestをPCVRヘッドセットに変貌させる、非常に便利な機能です。Oculus Quest 2もOculus Linkに対応しており、その性能を探るべく、今回のレビュー時に「Stormland」で検証しました。

結論から言うと、これはヘタすればPCVRヘッドセットが不要になるレベル。Oculus Quest 2の解像度そのままで、PCVRコンテンツを自由に遊べました。

VALVE INDEX以上の解像度で、豊富なPCVRコンテンツを自由に遊べるのは紛れもないセールスポイントです。Questの構造上、USBケーブルが左耳に引っ掛かりやすく、やや煩わしいという難点こそありますが、価格や性能を鑑みれば十分すぎるといってよいでしょう。

とりわけ嬉しいのは、これまでOculus Rift Sなどに限定されてきた、Oculusシリーズ限定のコンテンツを高解像度で遊ぶことができる点。これまでも非Oculus系ヘッドセットで遊べないことはなかったのですが、Oculus Quest 2はその道をオフィシャルに開いたことになります。Oculus限定コンテンツは良作が目白押し。ぜひOculus Quest 2の素晴らしい解像度で遊んでいただきたいものばかりです。

ここまで高解像度だと、むしろコンテンツの側が追いついていない、なんてこともあり得るかもしれません。とはいえ、そういったケースはそこまで多くはありません。数多く存在するPCVRコンテンツも、Oculus Quest 2ひとつで遊び倒すことができるでしょう。

今回は公式アクセサリも豊富

今回のOculus Quest 2は公式アクセサリのラインナップが豊富です。特に目を引くのは「Quest 2 Eliteストラップ」。デフォルトのやわらかいバンドから換装し、Oculus Rift Sのようなダイヤル固定型のしっかりとしたものに変えるアクセサリです。

より装着しやすく、かつしっかりと固定するのみならず、この「ゴツさ」は重心バランスを改善するカウンターウェイトとしての役割を果たすものと思われます。今回は試すことができなかったアクセサリですが、重心バランスが適切なVRヘッドセットは長時間の装着にも耐えうるため、しっかりとVRゲームを遊び倒したい場合は必携かもしれません。外部バッテリー付きのタイプも魅力的です。

また鼻の隙間が気になる人向けと思われるパーツとして「Quest 2フィットパック」もラインナップしています。メガネ派の人にはデフォルトで付属するスペーサーで補えそうですが、鼻の隙間についてはケアされていないため、VR体験の没入度をより高めたい場合は購入を検討するべきでしょう。特に映像鑑賞をメインの用途とする場合は必携です。

このほかには「Quest 2キャリングケース」と「Oculus Linkケーブル」が現在はラインナップしています。「Quest 2キャリングケース」はあれば便利なものなので、余裕があれば購入してもよいでしょう。「Oculus Linkケーブル」は、代用の効くUSBケーブルがより安価で手に入るため無理して買う必要はありませんが、L字コネクタのおかげで比較的外れにくいので、Oculus Linkの快適さを突き詰めたい場合は検討してもよいかもしれません。

ちなみに筆者はPCVRのヘビーユーザーのため装着感をRift Sへ近づける「Quest 2 Eliteストラップ」のみ本体と合わせて購入しています。カスタマイズの方向性は「自分はどのように使うか」によって大まかに決まるため、よい買い物をしたい場合は、まずはOculus Quest 2でなにがしたいか思いを馳せてからでも遅くはないはずです。

ハイブリッド路線の傑作となり得る一台

本機は初代Oculus Questの正統進化系に位置づけられますが、その性能面での進化の度合は「一世代飛躍した」と言っても過言ではありません。これほどの解像度と処理性能を持ちながら、3万円台という価格で入手できるのは、ただただ圧巻です。それと同時に、本機だけでPCVRの領域すら十分すぎるほど賄えてしまうことも、見逃せないポイントです。

一方で、デバイスそのものは外観を中心に簡略化された箇所が多く、一見するとチープに見えるかもしれません。ただ、このあたりは、公式のアクセサリを用いてカスタマイズが効きそうなところもあります。まずは安価なデバイス本体を試し、自分好みの姿へ拡張していくというコンセプトのように感じられました。

Oculus Quest 2の発表にともなって、Oculus Rift Sの終売も告知されました。これはOculusがPC接続型を捨てて一体型に舵を切ったのではなく、PCVRもスタンドアロンも兼ね備えたハイブリッド路線へと進んだ、と見るのが正しいでしょう。そう確信させるほど、Oculus Quest 2のスペックはすさまじいものであると、今回先行で体験した時点で伝わりました。

価格、性能、そして汎用性。すべてを兼ね備える最強のVRヘッドセットが、まもなく我々の前に現れようとしています。ハイブリッド路線の傑作機となり得る一台の上陸を、今から心待ちにしましょう。

執筆:浅田カズラ


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