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話題 2022.05.23

日産自動車がVRChatで新車をお披露目 メタバース領域でVRコミュニティと生み出す未来

5月20日(金)日産自動車より新型軽電気自動車「日産サクラ」が発表されました。これに合わせて、日産自動車は史上初となる「日産サクラ」のメタバース空間でのお披露目会を開催しました。

MoguLive編集部は今回、ソーシャルVR「VRChat」上で開催された、日産自動車の新車お披露目会へ参加。華やかなお披露目と、運転する楽しさを伝える試乗ワールドの二部構成で届けられた、最先端の自動車プロモーションの現場の様子をお届けします。

音×光×舞……圧巻のパーティクルライブで新車をお披露目!

お披露目イベントの出発地は、「VRChat」の「NISSAN CROSSING」。過去のイベントに引き続き、メディア関係者に加えて、VRChatで活躍する有識者が多く参加していました。


日産の広報渉外部の遠藤部長、および執行役副社長の星野朝子氏が登壇。これまでの「VRChat」上での取り組みに対し、コミュニティから多くの支持や応援を受けたことに触れ、「史上初となるメタバース上での新車発表会を開催できることを嬉しく思います」とコメントしました。

そして、お披露目会場へ移動しました。今回のお披露目イベントは単に新型自動車を発表するのではなく、VRChatのクリエイターたちが「日産サクラ」という車をイメージした音楽とダンスパフォーマンスで表現するとのこと。さらに、パフォーマンスに合わせてワールドそのものが華やかに変化するという「パーティクルライブ」が実施されました。

桜のように舞い散るパーティクルの中で舞い踊ったのは「カソウ舞踏団」団長のyoikamiさん。yoikamiさんの動きに合わせ、桜色の光が鮮やかに追尾し、弾けていきます。

採用された楽曲はVRChatをメインで活躍する音楽ユニット・YSSの「Beyond Our Dreams」。パーティクルライブ・パーティクル演出はじゃぱあさんが担当しています。「VRChat」の才能たちが結集して織りなされた演出は、まるで魔法のようでした。

クライマックスでは、yoikamiさんの手の一振りによって、4色の「日産サクラ」がまばゆい光とともに出現! 眼前で鮮やかなPVを見ているような感覚になります……。

さらにVRChat発アイドルグループ「Happy Palette」副リーダーの桜羽ことねさんが新車について説明。四季に由来したカラーバリエーションや、「日本の電気自動車の時代を彩り、代表するクルマとなって欲しい」という願いから、日本を象徴する花である桜にちなんで命名されたことなど、「日産サクラ」の魅力を伝えてくれました。

パーティクルライブとダンスへ昇華し、演出のひとつとして登場させるパフォーマンスに、終始息を呑みました。その様子は公式配信でも確認できますので、気になる方は映像の方もチェックしてみてください。

春夏秋冬をめぐる試乗ワールドを体験!

「日産サクラ」試乗用ワールド「NISSAN SAKURA Driving Island」へ案内されました。本記事執筆時点で「日産サクラ」を最速で体験できるのはこのワールドだそうです。

こちらが試乗できる「日産サクラ」。「VRChat」には、自分の手で車を運転できるギミックが搭載されたワールドがいくつか存在し、この試乗ワールドもその流れを汲むものとなっています。数多くのVRChatユーザーが遊んできたギミックが、日産自動車のバーチャル試乗という形で活かされているのは興味深いところ。


公式配信向けに運転を担当したのは桜羽ことねさん。非常に安定した運転を披露しました)

そしてここからは、各々で自由行動に。試乗車に乗ったり、ワールド内を散策したり、試乗ワールドを自由に散策しました。




このワールドの特徴は、エリアごとに春夏秋冬が分かれているところ。一息つけるカフェやフォトスポットなど、遊べる場所がたくさんあります。そして、そこに「車で行く」ことによってあたかも車で旅行をしているような気分に。ただ車を走らせるだけにとどまらず、四季折々の車を運転するシチュエーション自体もパッケージングして体験者に提供できているのがポイントです。


(VRChatの名ドライバー・もんちゃん。彼も運転が非常に巧みでした)

ワールド全体はもちろんですが、「日産サクラ」についても「内装が軽自動車と思えないほどキレイで広い」「足元もフラットで広い」「(VRだけど)視認性はよい」「ドリンクホルダーが各席についている!」といった感想が次々に聞こえました。内部まで細かく再現されているだけあり、VR試乗でも製品の感触がつかめそうです。

「日産サクラ」の良さにも触れながら、ついつい企業公式イベントであることを忘れてしまうほど楽しんでいました。まるでツアー旅行に来たときのようなワクワク感にあふれており、そんな「旅の思い出」の中に「日産サクラ」があると思えるような、体験に訴えるプロモーションでした。

企業とコミュニティが作り上げる、新しい自動車の未来

日産自動車による「VRChat」上での取り組みは、「NISSAN CROSSING」の設立、環境ツアーの実施、「ハンドルぐるぐる体操」キャンペーンの実施に続き、今回で4回目。そのいずれもたしかなクオリティと、「VRChat」の理解度の高さからとても評判がよく、「日産はちゃんとやってくれる」という熱意をコミュニティから感じ取っており、今回の大規模な取り組みはその集大成ともいえるものだったとのことです。

今回開催された「VRChat」上での「日産サクラ」お披露目会は、メイン会場のほか、パブリックビューイング会場が「VRChat」に設けられました。先着およそ20名がお披露目会を観覧し、その後試乗ワールドも体験。メディア関係者やインフルエンサーに限らず、より多くの人がイベントを体験できました。

また、お披露目会は日産自動車公式YouTubeチャンネルにて配信されたほか、おきゅたんbotさん猿頭トリートメントさん草生エルさん&VR記者カスマルさんガジェット通信のYouTubeチャンネルでも同時中継。インフルエンサーのYouTubeチャンネルでもイベントの様子が配信される、めずらしい取り組みが行われました。

パブリックビューイング会場と複数チャンネル配信は、これまでの日産の「VRChat」の取り組みと異なり、「誰でもイベントに参加できる」ことを意識して実施されています。VRChatコミュニティのユーザーに対してはもちろん、まだメタバースに対して興味を持っている段階の人へもアプローチを試みている、日産自動車のメタバースへの熱意が伝わります。


(日産自動車株式会社 広報渉外部 鵜飼春菜氏)

「VRChat」コミュニティとの連携も引き続き健在。おそらく過去最大規模でした。プレスリリースにて発表された今回の参加クリエイター・スタッフは、実に24組にも上ります。

メタバースのことを熟知していない企業とクリエイターが、事業やコンテンツありきでなにかを作ったとしても、ユーザーは関心を持ちにくいものです。一方で、企業がコミュニティを理解し、クリエイターを尊重すれば、コミュニティとクリエイターに企業を応援する気持ちが生まれます。

企業とコミュニティとの間に育まれた信頼は、今回のような取り組みに際して強い応援に変わり、結果的にクオリティの高いコンテンツへと昇華されます。

「NISSAN CROSSING」ワールド設立以来続く、日産自動車の「VRChat」の取り組みは、一貫してそれを証明しています。そして今回のイベントに対するコミュニティの熱量は、ハッシュタグ「#日産あんばさだー」を検索すれば、自ずと見えてくるはずです。

なお、今回の「日産サクラ」発表に合わせて、「VRChat」の「NISSAN CROSSING」の展示車も「日産アリア」から「日産サクラ」へアップデートされています。さらに、今後は不定期で、スタッフによる車両の案内、説明サービスを開始するとのことです。

自動車業界では、直近ではBMWがTOKYO FMと共同で、「Horizon Workrooms」を活用した「メタバースラジオ」を開催するなど、メタバースが徐々に注目され始めています。過去にはトヨタマリンも「VRChat」上に期間限定でショールームをオープンしたり、アウディが「バーチャルマーケット」へ出展したりと、乗車という体験を提供できる自動車業界は、メタバース(とりわけVRメタバース)とは相性が良いと思われます。

そうしたなかで、昨年の時点からVRChatコミュニティを味方につけている日産自動車は、メタバース活用の領域で大きくリードしているとも言えるでしょう。自動車のみならず、「ハンドルぐるぐる体操」のようなドライバー啓発や、日産自動車も推進するSDGsに絡めた取り組みなど、様々なプロモーションを今後もコミュニティと共同で行えるだけの土壌がすでに整っています。コロナ禍が収束してきた段階で、現実の銀座にある「NISSAN CROSSING」とのコラボなどもあり得るでしょう。

以上は筆者の想像になりますが、これまでの日産自動車の取り組みは、常にこちらの想像を大きく超えてきました。日産自動車がVRコミュニティの一員として、今後どのような未来をメタバースで示してくれるか注目です。

これまでの日産の「VRChat」での取り組みを取材した記事はこちら。

(参考)プレスリリース


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