4月にVRChat上で公開されたワールド「NearSighted Classroom」。制作者であるVoxelKeiさんが「近視の人が見ている世界をVR空間で体験できるワールド」としてTwitter上で紹介したところ、拡散されて大きな話題になりました。
近視の人が見ている世界をVR空間で体験出来るワールド「NearSighted Classroom」をpublishしました。学校の教室にいるときド近眼にはこう見えているというのを近眼じゃない人にも伝えられるのではないかと思います。メガネがいかに大切かというのも体感出来るのではと。ワールドURLはリプ欄に #VRChat pic.twitter.com/YgIp9Hk9xa
— VoxelKei (@VoxelKei) April 11, 2021
その後、ワールドが更新され、現在は老眼乱視、色覚特性までバーチャルで確認できるようになっています。今回はVoxelKeiさん本人と一緒に、実際どんな感じなのかを体験してみました。
納得の近視体験と、新鮮な老眼体験
まず体験したのは、近視・乱視・老眼が体験できるシミュレーション。
実際にVRで体験してみると、「近視」の設定にすると「近くは見えるが、遠くはぼやける」ように、「老眼」の設定にすると「遠くは見えるが、近くはぼやける」ようになっていることがわかります。
筆者自身、かなりの近眼(視力0.1以下)なので近視体験はかなりリアルに感じつつ、逆に老眼体験は「こんな感じなのか!」という新鮮さがありました。
ワールド内に置いてあった辞書を手に取ってみたところ、表紙に書かれた文字が読み取れず、思わず少し遠ざける動作をしてしまったほど。そんな自分の動きを自覚して、「あっ……これ、うちの親父がいつもやってる動きじゃん……」なんて呟いてしまうくらいにはリアルでした。
VoxelKeiさんによると、ご自身も近眼であり「自分の見え方を再現した」そうです。「単にぼかすだけならフィルターなどを使えば可能ですが、距離による見え方の違いを再現するのは難しい。なので自前のシェーダーを作ってコントロールできるようにしました」と、話していました。
「色覚検査」で本当に別の数字が見えた!?
一方で新たに追加した「色覚特性」のシミュレーションは、いろいろと調べながら実装されたそうです。というのも、一口に「色覚異常」と言ってもいくつかの種類があるのだそう。
このワールドでは、以下の3パターンをシミュレートが可能です。
・1型2色覚/3色覚(P型:赤が認識できない/見えにくい)
・2型2色覚/3色覚(D型:緑が認識できない/見えにくい)
・3型2色覚/3色覚(T型:青が認識できない/見えにくい)
実際にスライダーを動かしてみると、右上に表示されているRGBのカラーバーの見え方が目に見えてはっきりと変わります。「1型2色覚/3色覚(P型)」のスライダーを右へ動かしていくとカラーバーの赤色がやがて認識できなくなり、緑色も黄色にしか見えなくなりました。
スライダーによって微調整できるようにしているのは、色覚異常にも人それぞれに程度の差があり、それを少しでも再現できるようにするためなのだとか。
スライダーを右端まで動かすと「1型(P型)」であれば赤がまったく認識できない「1型2色覚」の人の見え方に、途中まで動かすと赤が見えにくい「1型3色覚」の人の見え方になるそうです。
また、シミュレーションの中でも特に驚かされたのが「色覚検査」の映像。使ったのは、「円の中に描かれている数字がどのように見えるか」を判別する有名な画像です。
(https://www.youtube.com/watch?v=PCU1m4YOmQQより)
まずはこちらが、通常の状態。右下を除けばどの数字も問題なく読み取れますし、左下は「15」だとはっきりわかります。少なくともこの時、VR空間にいる自分にはそのように見えました。
ところが、VoxelKeiさんに促されるまま、先ほどの色覚シミュレーションで「P型」のスライダーを動かした状態の視界で見てみたところ、以下のようになりました。
どうでしょうか。
人によって若干の見え方の違いはあるでしょうし、画像だとちょっと伝わりにくいかもしれません。ですが、VR空間で間近で見た際には、先ほどは「15」にしか見えなかった左下の数字が、この時は「17」にしか見えませんでした(付け加えると、中央下も「29」ではなく「70」に見えます)。
このような色覚検査では、検査後に「多くの人は15に見えるが、色盲の人は17に見える場合もある」という解説があります。ただ、そう言われてもやはり「15」にしか見えないため、「そういう人もいるんだな」くらいに思っていました。
ですが、スライダーを動かしながらであればリアルタイムで変化がわかりますし、口で説明されるよりも「体験」として印象に残ります。ワールドを制作したVoxelKeiさん自身も「まったく違う数字に見えるのは衝撃でした」と仰っていました。
加えて「(近視にしても色覚にしても)これまでも静止画によって見え方の違いを伝えることはできましたが、同じ空間で、リアルタイムで共有できるのはVRならではだと思います」とも解説されていました。
たしかに、現実では当然ながら各々に視力が異なります。リアルタイムで他人と見え方を共有するなんて体験はそうそうできません。そういう意味でも刺激的な体験となりました。ぜひ多くの人に体感してほしいコンテンツです。
「NearSighted Classroom」で色覚テストの映像を見てみたのだけど衝撃的でした。数字が識別できないのだろうというのは予想はしていたけれど、「違う数字に見える」という感覚はちょっと驚きでした。これは全人類体験してみて欲しい・・・ https://t.co/i9z2oUSwqY pic.twitter.com/EbKRg6N3Je
— VoxelKei (@VoxelKei) May 21, 2021
ワールド「NearSighted Classroom」のリンクはこちら。
筆者:けいろー