宇宙研究で、VR技術が有効活用されています。アメリカ航空宇宙局(NASA)は、火星探査から得た画像データを使ってバーチャル空間を構築し、まるで火星にいるかのような体験を実現。宇宙研究を発展させています。
火星の撮影画像をVR体験に
宇宙探査で得られるデータは、基本的にパノラマ写真などの平面画像です。NASAの研究者らは数十年にわたってこれらのデータ改善に取り組んできましたが、平面画像のみの観察調査には限界があります。
そこで米・南カリフォルニアにあるNASAの研究所(Jet Propulsion Laboratory。以下、JPL)では、火星で撮影されたパノラマ写真からバーチャル空間を構築し、VRヘッドセットで体験できるようにしました。地質学者はこの体験から「火星上の物体のサイズや位置関係を実感し、新たな研究アイデアを得た」とのことです。
バーチャル空間でデータ解析
JPLの人間中心設計グループ責任者を務めるScott Davidoff氏はこの取り組みを発展させ、カリフォルニア工科大学の研究者らと共同で新たなソフトウェアを開発しました。
このソフトウェアは、3DでのビジュアライゼーションとAI技術を組み合わせることにより、大量のデータからデータ間の関係を可視化できます。また、複数のVRヘッドセットとの互換性も有し、バーチャル空間とPC画面の双方でデータ解析が可能です。
Scott Davidoff氏は、「(峡谷の)写真を見るのと峡谷を歩くのとでは、大きな体験の差異があります。私たちは、研究者が平面データよりも明確にパターンと相関関係を確認し、科学や工学の問題を観察できるデータ空間を作りました」と語っています。
その後、同氏はこのソフトウェアを提供するVirtualitics Inc.を2016年に設立。主に銀行、小売、医療研究で使用されているとのことです。
これまでもNASAはEpic Gamesと協力し、火星での船外活動向けVRシミュレーションを開発しています。バーチャル空間を有効に使った宇宙研究は、これからさらに発展すると考えられます。