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業界動向 2022.07.13

Mogura VR News特集企画「Robloxたちがやってくる」のお知らせ

Mogura VR Newsでは、7月中旬から特集企画「Robloxたちがやってくる」を実施します。期間中はMogura VR Newsにて、隔週で記事を掲載します。


(画像: Roblox公式Webサイトより引用)

海外を中心に膨大なユーザーやコンテンツを抱えるサービス「Roblox(ロブロックス)」。プレイヤー自ら作ったゲームを投稿し、複数人数でプレイしたり、評価やコメントをつけたりできることから「ゲーム版YouTube」等とも呼ばれています。直近では本格的な日本語対応も行われ、YouTubeでもRobloxのプレイ動画やハウツー動画が散見されるようになりました。日本におけるユーザー数も増加を続けているようです。

仮にRobloxが日本に本格上陸するのであれば、そのときやってくるのは「Robloxというプラットフォーム」だけではありません。Robloxを支え、そしてRobloxに支えられている、老若男女を問わない何百万という巨大なクリエイターコミュニティ、プレイヤーコミュニティがやってくる——そんなイメージこそ、現状にふさわしいでしょう。

今回の特集では、Robloxの概要、主役である子どもたち(とその親たち)から見たRoblox、プログラミング・ICT教育としての側面、そしてRobloxで生まれたクリエイター同士のコラボレーションなど、様々な角度から焦点を当てた記事を掲載予定です。

巻頭言にかえて: 蝶の羽ばたき

蝶には、数千キロもの距離を飛んで行くものもいる。オーシャン・ヴオンの小説『地上で僕らはつかの間きらめく』を読んで知った。この蝶ことオオカバマダラたちは、太陽の位置や磁気をコンパスにしてアメリカ北部から南部やメキシコへと渡り、数世代かけて再び北へと戻ってくるという。

彼らは日本で言えば北海道の稚内から沖縄の那覇まで、いやそれ以上に長い距離を数ヶ月もかけて移動する。それと比べれば、私たちが普段触れているデジタルコンテンツは圧倒的に速い。なんたって光の速さなのだから、それ以上に速い「渡り」の方法があるわけもない。大量のコンテンツを積載したコンテナ船が、インターネットやプラットフォームを通して光の速さでやってくる——なんていうイメージはもうとっくに時効で、絶え間なく小さな荷を積んだ小舟が高速で行き来しているような風景こそが日常だ。SpotifyやBandcampで、VRChatやFortniteで、YouTubeやTikTokで、毎日信じられないような量のコンテンツが供給され続けている。

今回の特集テーマである「Roblox」にしてもそうだ。プラットフォーム全体で4,000万以上のゲーム/体験(Experience)が存在し、2021年には2,500万点以上のバーチャルアイテムが制作され、ユーザーのアバター更新回数は年間累計で1,650億回にも及ぶ。派手な資金調達もしているし、株価はピークに達した2021年末、あの「メタバース」ブームの直後と比べて30%程度にまで落ち込んだが、それでもまだ約3兆円という桁外れな時価総額を保った。

けれど、どれだけ数字を並べたところで、Robloxで起きている“出来事”を知ったことにはならない(もちろん、数字については知っておいた方が全容が分かりやすくはなるし、説明もしやすいのだけれど)。派手な時価総額をはじめ、日本の総人口よりも多いMAUや手数料の問題が取り沙汰されることはあるものの、その場所で起きているクリエイション、様々なクリエイターによるコラボレーション、それから“主役”である子どもたちのことを捉えなければ、それは現場に行ったことがないのに動員数だけでフェスを語るようなものだ。じゃあまずは乗り込んでみようじゃないか、と観客席や舞台裏を行き来したのが今回のRoblox特集ということになる。

きっと子どもたちやクリエイターは、「なんだか面白い」「ワクワクする」としか言いようがないものを、あるいは誰かに自分のアイデアや作ったものを知ってもらうチャンスがあることを(それから、親が知ったら眉を顰めるようなミームを)、それこそ「メタバース」という言葉のブームよりずっと前から、敏感に察知しているのではないだろうか。すでに主役である彼ら——蝶たちの羽ばたきは大きな嵐を巻き起こしている。願わくばこの「渡り」も、さらなる嵐を起こすような、そんなものであってほしい。

(文: 水原由紀)


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