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PR 2018.05.30

動ける一体型VRヘッドセットMirage Solo、開発のコツを一挙紹介

レノボ・ジャパン株式会社は、一体型VRヘッドセット「Mirage Solo(ミラージュ・ソロ)」と180度2眼カメラ「Mirage Camera(ミラージュ・カメラ)」の国内発売を発表しました。本記事では、これに伴い開催された開発者向けイベント「Mirage Solo Developer Meetup」の様子をレポートします。

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Lenevoとグーグルが登壇、Mirage SoloとDaydreamを語る


(写真左:グーグルのDaydream担当のJoe McGinn氏、右:Lenovo US 製品担当のRaymond Zhang氏)

まずLenovo US 製品担当のRaymond Zhang氏からMirage Soloについての説明が行われました。Mirage Soloは世界初となる6軸センサー搭載の一体型VRヘッドマウントディスプレイであり、グーグルのVRプラットフォームである「Daydream」に対応。今までにない特徴を持ったデバイスとなっています。


(一体型VRヘッドマウントディスプレイ、Mirage Solo。PCやスマホ不要、ケーブルレスでVRを体験できる)

本デバイスはDaydreamのすべての機能を網羅し、これまでのDaydream対応端末よりも優れた体験が提供できるとのこと。Mirage Soloに続く次世代機についてもすでに考えており、「GPUやトラッキング、ディスプレイを強化したものを企画している」と語りました。また「日本で(Mirage Soloを)継続的にサポートしていく準備は、すでにできている」とも話しました。

続けて登壇したのはグーグルのDaydream担当であるJoe氏。グーグルとしてはスマホ向けVRと一体型VRの開発を推し進めているとコメントし、「VRコンテンツを作る上で重要な要素として、高いフレームレートと3Dオーディオ、そして的確な触感のあるインターフェースの3つが重要だ」と語りました。

Daydreamはこれら3つを満たしており、60fps以上の高フレームレートでVRの実在感や没入感を維持。加えてDaydreamのSDK(ソフトウェア開発キット)には3Dオーディオ機能が組み込まれており、これを利用することで様々な材質や部屋の広さに対応したサウンドが設定可能になっています。そして数あるVRゲームの中でも非常に高く評価されている「Job Simulator」のスタッフがインターフェースの研究を進めているとのこと(現在はデモとして「Daydream Elements」が公開されています)。

VRでのグラフィックの描画に関しても、開発者向けカンファレンスであるGoogle I/Oで発表されたSeurat(スーラ)がMirage Soloにも対応しています。そのため、一体型でありながらもPC向けVRに引けを取らない映像表現を実現できるようになっています。

同氏はこれまでの研究・開発で培われた、グーグルの技術を存分に発揮できるデバイスがこのMirage Soloであると語り、Mirage SoloとDaydreamについての紹介を締めくくりました。

また、Q&A;のコーナーも設けられ、開発者たちから質問が寄せられました。

Q:QRコードをMirage Soloのフロントカメラで撮影できるか?
A:現状ではアルゴリズムで制約がかかりできない。そのため、Mirage Soloを複数台使用する際にQRコードで原点を決めたりするといった事もできない。

Q:次に開発者向け設定でセーフティ範囲(※)を解除してどこまでも歩けるようにできるが、その設定は使っていいのか?
A:安全上の理由から一般販売のMirage Soloでは解除できないようになっており、Google Playでは開発者向け設定に対応しているアプリは申請を通さないようにしている。また、前述のSeuratに対応させる場合は通常の広さが最適だ。安全が確保されたアーケード向けであれば大丈夫かもしれない。一般向け端末でも安全範囲の設定は段階的にできるようになる可能性もある。

※Mirage Soloでは、1m弱×1m弱のセーフティ範囲が設定されており、境界に近づくと青い柵が現れ、境界を越えると空間全体が暗くなる。

Q:Mirage Soloで無線ヘッドホンやカメラなどの外部デバイスが使えるか?
A:使わない方がいいだろう。コントローラーの無線と干渉してしまうためヘッドフォンは有線をオススメする。またカメラに関してはプロセッサー自体がカメラを2個しか認識できないため、追加ではつけれらない。
また、ヘッドマウントディスプレイのスクリーンショット撮影機能や、他のディスプレイにVR内で見ている映像を表示するインスタントプレビュー機能には対応していないものの、アップデートで実装される可能性があるとのこと。さらに今後、開発者向けにMirage Solo専用の情報共有スレッドが整備される予定です。

国内の開発者たちも知見を公開


(Psychic VR Labの藤井氏)

また、国内ですでに開発を進めている開発者たちによるLT大会も開催されました。「ついに夢のデバイスが来た」と語るのはPsychic VR Labの藤井氏。ブラウザでVRコンテンツが制作できる「STYLY」をMirage Soloに対応させた経緯や知見を語る講演では、「これまでのDaydreamで動作したアプリでも、様々な理由からでMirage Soloでは動作しないケースがある」といった事例や対処法などが語られました。Mirage Soloはリリース直後ゆえ、開発者フォーラムなどがまだ整備されていない点などもあります。今後の公式フォーラムの展開に期待したいところです。


(株式会社桜花一門の高橋氏。実際に体の動きを実演しつつ、“格闘技などの技は腕ではなく身体で繰り出す”ということを強調、コントローラーよりもHMDの動きが重要であるとした)

株式会社桜花一門の高橋氏が行ったのは「(回転と移動全てを検知できるような)6軸センサーはコントローラーには要らない」という発表。大切なのはコントローラーではなく、ヘッドマウントディスプレイの動きであると話しました。格闘技などの技は腕ではなく身体で繰り出すということを引き合いに出し、ハンドコントローラーの動きだけではゲームとして物足りなく感じると強調。こうした観点から、Mirage Soloに搭載されている6軸センサーに期待を寄せているとのことです。また今回展示していたVRアプリ「ModernArcheryVR」はMirage Soloに対応し、次回作には格闘技を取り入れたVR作品を製作する予定です。


(フォージビジョン・溝田氏。高解像度静止画に対応させるための知見を語った)

フォージビジョン株式会社の溝田氏は、同社のVRコンテンツである水族館VRをMirage Soloに対応させたことに関するLTを行いました。発表では8K静止画をMirage Soloに対応させる時の注意点をピックアップ。VR製作ツールとしてメジャーな「Unity」のデフォルトの設定では8K静止画は再生できず、OpenGL3.1以上を使う設定にする必要があるとのこと。さらに再生するまでの設定が少し煩雑で、「情報がまだ少ないため、難易度は高かった」とのこと。最終的にはUnity内で再生できなくとも、Mirage Soloでアプリをテストしたところ難なく動いてしまい課題解決、というオチで苦労話を締めていました。


(Mirage Cameraを片手に講演する染瀬直人氏)

フリーランスのカメラマンである染瀬直人氏の講演はMirage Cameraでサポートされている規格「VR180」についての内容でした。VR180とは、その名の通り前方180度を立体的に撮影・動画にするものです。同氏は「Googleが昨年提唱したVR180は、YouTubeでもすでにサポートされており、VR動画に初めて取り組まれる方や、360度の画角は必要ないが、立体感を活かしたコンテンツを作りたい場合は有用である。」という見解を示しました。360度動画の利点を述べつつも、やはり通常のカメラマンには360度撮影は敷居が高く参入しにくいとのこと。一方VR180は撮影者などの映り込みを気にしなくてよいというメリットや、スティッチ作業(※)が必要ない点を挙げていました。また360度動画とは違い、従来の映画の手法などが使える点も大きいメリットである、と語りました。

※スティッチ作業(スティッチング)……360度カメラでは、複数のレンズで撮影された動画を繋ぎ合わせて1つの360度動画にするため、それらの動画を違和感なく繋ぎ合わせる作業が必要となる。これをスティッチングと呼ぶ。

最後はフリーランスであるようてん氏の講演。最初に氏は「VR180の利点は通常の360度動画に比べて綺麗で、ソフトにした際に扱いやすい」と述べました。またMirage Soloの開発者モードについても言及。基本的にはAndroid開発と変わらないが、中身がMirage Solo向けにはまだ整理されておらずバグ等もあるとの見解を示しました。開発者モードのメニューにある項目でも動作しないものがあります。そのため早急に開発者コミュニティを整備し、バグ等を報告できる環境が欲しい、と技術者としての立場から語りました。

最後はLenovoの担当者らが登壇、今後様々な方法で日本の開発者たちを支援していく旨を語り、イベントは閉会となりました。

既に対応済みのソフトも

会場ではMirage Soloに対応したソフトウェアが展示されました。すでに開発者版デバイスは配布されており、多くの開発者がMirage Solo向けのソフトウェアを開発しています。ゲームや動画を楽しむ娯楽用途だけではなく、産業・企業向けのVRとして開発されているソフトウェアも展示されていました。

いずれも一体型なだけでなく、しゃがんだり動き回ることのできるMirage Soloの特長を活かしたコンテンツばかりでした。

STYLY

株式会社Psychic VR Labは、Webブラウザのみで稼働するVR空間制作・配信クラウドサービス「STYLY」を展示していました。「STYLY」は、MacやWindowsに対応しVR対応型PC以外の普及型パソコンでも稼働します。MIrage Solo対応によりVR空間の構築に加えて、STYLYのディストリビューション機能を活用してタイムラグなしにVR空間の「Mirage Solo」への配信・体験が可能になりました。会場では、アーティストが制作したVR空間を動き回ることができました。

Modern Archery VR

株式会社桜花一門は、VRでアーチェリーをするカジュアルゲームを展示。コントローラーを実際に弓矢をつがえるように構えて放つというもの。現実同じく最初は的に当てるのが難しいですが、徐々に集中して打っているとコツが分かるようになります。1セット1分で終わるので息抜きに最適なゲームです。

VR CRUISE

株式会社EJEは、国内外の魅力的なVR映像作品を紹介してきたプラットフォーム「VR CRUISE」のVR映像作品を展示。Mirage Solo購入キャンペーンとして、5月はVRCRUISE厳選コンテンツを360Channelで半額レンタル中。6月から8月はショートショートフィルムフェスティバルとコラボレーションした世界のVR映画作品をレンタルするとのこと。

防災訓練用VR 工場火災避難編(株式会社理経)

火災からの避難を疑似体験するVR体験です。火災が発生し黒煙が充満する建物内から、実際に歩いて、しゃがんで避難を行います。

BIM Importer for Mirage Solo

株式会社積木製作は、建築向けのVR体験を展示。「BIM Importer for Mirage Solo」では、Unity BIM Importer でコンバートされたBIM設計モデルを手軽にVR化し、Mirage Soloが対応するWorldSence で、どこまでも自由に歩き回ることができます。

これまではセットアップなどに手間がかかってしまったり、動作にハイエンドなPCが必要であったりとやや敷居が高く感じられたVRデバイスですが、一体型デバイスが発売されることで一気に手軽さが増し、価格もぐっと安くなりました。これにより、様々な形でVRの普及が加速することが期待されます。Mirage Soloは税別51,200円、Mirage Cameraは税別35,800円で家電量販店等で販売中です。

(更新履歴)2018/05/18/13:05……文中に誤りがあったため訂正