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VTuber 2020.05.03

舞元啓介と大空スバル 「舞スバ」コンビが乗り越えたVTuber界の壁とは?

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にじさんじ所属の舞元啓介、ホロライブ所属の大空スバル。2人は「舞スバ」というコンビとして知られ、これまで数多くの企画配信を実施しています。

コンビは数多くの視聴者を惹きつけ、遂には企業の垣根を超えて「舞スバ」グッズが登場。大空スバルのキャラクターデザインを担当したイラストレーターしぐれうい描きおろしで制作されました。(グッズは5月3日まで発売中)。これはVTuber業界でもかなり“レア”な出来事です。

にじさんじもホロライブも、所属ライバーの活動を積極的に支援する方針ですが「企業間を越えたコラボグッズ」となると、様々な課題が生まれるはず。それを乗り越えられたのは、2人が長期に渡って話し合いを続け、それぞれの企業に働きかけたからだと想像できます。

今回は「舞スバ」がどんな壁を飛び越え、結果としてVTuber業界全体にどのような影響をもたらしたのか紹介します。

企業、性別の壁を飛び越えた奇跡のコラボ配信

VTuber・バーチャルライバーが増え始めた2018年。男女の交流は非常に難しいものがありました。当時は界隈がまだ小さな芽のような状態。「ちょっとした炎上がきっかけで、VTuber全体が萎縮してしまうのではないか」という不安が漂っていました。そのため特に異性間のトラブルにはナイーブで「なるべく異性同士で絡んで問題が起きて欲しくない」という思いが一部ファンの間にありました。VTuberはTwitter上ですら、男女のやり取りが難しかった時期でした。

まして、ホロライブは最初から「アイドル」イメージを前面に出した女性オンリーのグループ。一方にじさんじは元一期生の段階から男性ライバーが参加。二期生、ゲーマーズ、SEEDsと比率こそ低いものの、必ず男性ライバーがデビューしていました。

そんな状況で、舞元啓介が元SEEDs二期生としてデビューします。当時美男美女が多かったにじさんじにおいて、彼の存在は異質でした。事務所には悪魔や犬が所属していたとはいえ、やはり「おじさん」なVTuberは今でも少数です。

https://www.youtube.com/watch?v=v06BUq24lLg

スポーツ実況をメインに配信しようとしていた舞元啓介。大人の渋みを活かしながら活動を開始した彼は、本人曰くどうエンタメに昇華するかに悩み続けていたようです。

活動1ヶ月、苦悩していた彼の元に唐突にコラボを申し込んできたのが、ホロライブ二期生としてデビューしたばかりの大空スバルでした。総合格闘部・e-sports部のマネージャーで元気いっぱいな女の子。そんな彼女からの突然の依頼に、舞元啓介は驚愕したそうです。

かくして、1回目のコラボが2018年9月22日に行われました。当時流行っていた激辛ペヤングの早食い対決。1週間後の29日には早速謝罪会見が行われ、ネットミーム「ルイズコピペ」を改変した「全力舞元コピペ朗読」を罰ゲームで行う(15:30くらいから)という暴走を見せ、視聴者を驚かせます。すでにこの時点で、今の舞スバの地獄に突き進むエンタメスタイルがすでに確立していました。

https://www.youtube.com/watch?v=S4TCDSaegUU

この時の感想を、舞元啓介は「【Ver2.0実装記念枠】俺って2.0だったんじゃなかったの!?【にじさんじ】」で語っています。

舞元啓介「俺の1周年は最初の1ヶ月が全てなんで。1ヶ月終わった時点では年明けくらいにはやめるかもしれないなと思っていました」
「デビューする時にはほぼこの企業さんとは関わることがないだろうなと思っていた企業さんの、変なやつからとんでもない変な話しかけられ方して。俺の1年はそこにつきます。俺がVTuberとして何をやっていきたいのかなっていうのを、考えさせてくれるタイミングをもらえたっていう感じです。感謝してもしきれないです、やつには」

現在と違ってにじさんじとホロライブの交流もさほど多くなかった状況です。しかも先述したように男女間コラボにはまだ距離がありました。デビューして間もない大空スバルとの初めてのコラボ。当時はにじさんじ運営も難色を示したそうです。(ちなみにホロライブ側はノリノリだったそうです。)

それでも彼は興味がわいて「面白そうだから」と受けました。ペヤング企画は大きな反響を呼び、企業の枠を超えてライバー同士がでコラボしやすい流れが作られました。さらに「性別」の壁を超えた男女コラボにも肯定的な雰囲気が生まれはじめました。

舞元啓介「楽しそうなことをやりにいこうっていう意識にいけたのがよかったです。そこからはコラボに出るときは(自分が)楽しめるようにしようとか、どうすれば視聴者さんが楽しんでくれるかを考えるようにしたので。そこが全てですね」

舞元啓介はその後、にじさんじ内外問わず、男女垣根なく、積極的にコラボを行う愛されおじさんになっていきます。周囲のVTuberからも多大な信頼を受けているようで、数多くの企画に誘われる存在になりました。

当時、大空スバルには舞元啓介(「おじおじ」と呼んでいます)に声をかけた理由があったそうです。「【19万人記念】ぶっちゃけマシュマロトーク!【ホロライブ/大空スバル】 」でこう語っています。

大空スバル「最初やろうとしていたことがメンバーとずれていたりして、誰かこの地獄に飛び込んでくれる人はいないかなあって探していた時に、たまたまTwitterを歩いていたから声をかけたら、いいおじさんでした」
「(スバルは)当時ホロライブとにじさんじで、男女コラボを(デビューして)二週間でぶちかますという、マジでやばいやつだったの。なんでかっていうと、スバル普通にクラスとかで男女を区別するという感覚がないまま飛び込んできてしまったから」

VTuber界隈での暗黙のルールだった男女・企業の距離感を、新人ゆえに意識せずにぶち抜くことに。奇しくもその行動が舞スバに反映され、後の男女のVTuberが交流しやすくなったきっかけのひとつになりました。

舞スバのコラボはその後も行われます。ノリの良いおじさんと元気で朗らかな少女、という関係性がコラボを重ねるごとに定着。「お父さんと娘」「おじさんと姪」よりはちょっと遠い、顔見知りの近所のおっちゃんと女の子が遊んでいるような、とても絵になる距離感が育まれていきます。

地獄の蓋を開けるもうひとりの存在・しぐれうい

舞スバは何かしらの企画ありきでコラボを行う傾向があります。大空スバルが一番最初に「地獄のような企画に飛び込んでくれる相手」を探して舞元啓介に行き着いたように、リアクション芸人的な挑戦をエンタメに昇華するのが2人の持ち味。「舞スバに逃げはない」を合言葉に、自分たちが苦しむような企画を作っては大やけどをして、視聴者を楽しませています。

https://www.youtube.com/watch?v=YyufGMIuv4A

舞スバの活動の火に油を注いだのが、イラストレーターのしぐれういでした。大空スバルは彼女を「かあちゃん」と呼んでおり、彼女たちを含んだコラボは「大空家」と呼称されることもあります。

物腰が柔らかく丁寧な喋り方が特徴の彼女ですが、舞元啓介・大空スバルよりも勢いよく「地獄のような企画」へアクセルを踏み込んでしまうところがあります。静かなる暴走女子しぐれうい。彼女が加わってからは、2人が無意識に避けていた地獄めいたネタから逃げられなくなりました。もちろん、しぐれうい本人も一緒に地獄に転げ落ちていきます。

https://www.youtube.com/watch?v=wgDylC7ZGkA

例えば、舞元啓介・大空スバル双方の「バレンタインボイス」をお互いに聞く、という共感性羞恥の強い企画。。案の定2人は悶絶することに。一方、しぐれういは超ウキウキ。「これはしぐれうい一人だけ勝ち逃げか?」と思いきや、即興台本でバレンタインボイスを読まねばいけなくなるという、地獄への道連れ状態になります。

なお1年後、ういママバレンタインボイス企画としてさらにグレードアップ。ここぞとばかりに、舞スバがウッキウキで、視聴者も盛り上がっていました。

https://www.youtube.com/watch?v=Muy7B9S4bDc

企画のアクセル踏み込み役、2人の会話の仲介役、いじられ役、ぶちキレ役、全体のまとめ役として、しぐれういは舞スバと一緒に大活躍するようになります。

舞元啓介としぐれういの距離感は視聴者目線だと「ほわほわお母さんと、よく笑う近所のおじさん」くらいのバランス。2人でトークプロレスしつつ、落ち着いた大人の会話もできる、いい塩梅のエンタメを見せてくれます。

https://www.youtube.com/watch?v=o9iVH59Se80
https://www.youtube.com/watch?v=eLJ4tSFYvYw

3人それぞれの個性が光ったのが、恋愛ゲーム「ドリームクラブ」のコラボ実況です。センシティブな部分が多かったためピュア女子高生の大空スバルには伏せていたゲームのひとつでした。特に舞元啓介がお熱だったナオというキャラクターは外見が大空スバルに似ていることもあり、話題にあがるのを避けていました。

ところが大空家でドリクラ配信が決まってしまったから大変。舞元啓介は大空スバルに、ちょっとセクシーな女の子たちとデレデレ話すおじさんな姿を見せなければいけなくなり、針のむしろ。舞元啓介いわく「配信に気を取られて寝れなかったよ」

ここでアクセルを踏み込んだのはしぐれうい。舞元啓介を地獄に突き落とそうと全力で楽しみ始めます。「何をひよってんだ舞元、いくぞぉ!」というしぐれういの発言は、この3人のバランスのノリの良さを表現した名言。変な空気感に疲労しはじめる大空スバルは、ノリノリなしぐれういを見て「スバル気づいたんスけど、この企画かあちゃんの一人勝ちッスね…」とぽつり。

様々な壁を乗り越えた相棒として

https://www.youtube.com/watch?v=8XNaetZpUtU

舞元啓介「めっちゃ動くやんお前!いやあ嬉しいわ」
大空スバル「おじおじも早く一緒に遊ぼうね!」
舞元啓介「お前答えづらい質問しやがって!…予定ねえけど、3Dになれるよう頑張るわ」

大空スバルが3D化した時、舞元啓介は大喜びしていました。大空スバルが登録者数10万人達成した時、「自分が達成するより嬉しい」と述べるほど。そして後日舞元啓介も、にじさんじの3D化ラインである10万人を突破しました。

常に一緒にいるわけではないけれども、切磋琢磨する関係として大事な時にはお互いが声をかけ、支えあっています。


性別の壁を感じていなかったかつての大空スバルの感覚は共有され、現在の2人の関係を構築しました。エンターテイナーとして、面白ければ2人でなんでもやる。そのスピリッツを表現したのが、舞スバTシャツのイラストです。大空スバルが突っ走り、それを追いかける舞元啓介の図は、2人の歩みそのもの。「Don’t ESCAPE MAISUBAAA!」舞スバに逃げはない!

執筆:たまごまご


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