MRヘッドセット「Magic Leap One」のMagic Leap(マジックリープ)社は、ヘルスケア分野への注力を強めます。インテルのヘルスケア・ライフサイエンス部門ゼネラルマネージャーを務めていたJennifer Esposito氏を迎え、「健康と技術との橋渡しを新たにする」とのこと。
さらにMagic Leapのヘルス部門は、AT&Tのような既存パートナーとも協力して業務を推進する旨を表明しています。AT&Tが進める5G通信を活用し、医療トレーニング、デジタル技術を用いた診療等に空間コンピューティング技術を導入します。
医療行為へのデータ活用へ
Magic Leapが目指すのは、空間コンピューティング技術により、対症療法から人生を通じての継続的な心身の健康維持システムへと変えていくことだといいます。具体的には、ヘルスケア関連アプリ開発用のツールやフレームワークをデベロッパーへ提供したり、バイオマーカーの有効性確認を行う方針です。
現在、都市の汚染度や存在するアレルゲンといったデータは入手できるようになっていますが、これを個々の患者と紐付け、診療に役立てる簡単な手法はまだありません。こうした“Data Rich, Insight Poor(情報は豊富、分析が疎か)” な状況を打開するものとして、空間コンピューティングの活用が期待されています。
手術向けの医療情報ビジュアル化
またドイツの医療系企業Brainlabと提携し、手術への空間コンピューティング導入も行います。具体的には手術の計画段階で、3D画像ビューワーを用い医療情報をビジュアル化。データを見やすくすることで、医療従事者をサポートします。
Magic Leapの空間コンピューティング技術とBrainlabのデータ管理技術を合わせ、ソフトウェア開発のフレームワーク構築も進めます。これにより、将来的にはデベロッパーが新たな医療向けソリューションを付加していくことが可能になります。
企業や財団との取組
他にもMagic Leap One向けには複数の企業や団体と開発を進めており、下記に概要を紹介します。2019年9月現在、一般向けのリリースはされていません。
XRHealth
XRHealth(旧名:VRHealth)は、空間コンピューティングのアプリケーションをリハビリ、脳力トレーニング、心理検査等に導入しようとしています。ツールの狙いは、患者にとっての治療体験の質を高めること。患者が自身の治療結果を分析し、継続的に追跡できることを目指しています。
SyncThink
アイトラッキング(視線追跡)技術に強みを持つSyncThinkは、医療従事者や患者に対して脳の健康に関するモバイルの医療情報を提供することを目指しています。世界中どこからでもアクセス可能な診断、プロのケアを通じて、脳震盪や平衡障害の患者への診断や治療方針決定をサポートします。
Dan Marino財団
Magic LeapとDan Marino財団は過去数年来の協力関係にあります。両者が南カリフォルニア大学と共に開発したのは、空間コンピューティング技術を用いて自閉症スペクトラム障害等の発達障害を持つ若者を手助けするツール。具体的には、就労する際の面接のトレーニングシステムです。
Virtual Interactive Training Agent(VITA)というこのツールは、バーチャルアバターを用いてトレーニングを行います。面接の完成度を高め、緊張感を緩和しようという狙いです。 将来的にはAI技術も活用し、より詳細な練習を可能にしたいということです。
Lucile Packard小児病院
Magic Leapは、Lucile Packard小児病院のスタンフォード・チャリオット・プログラムを支援しています。このプログラムでは、Magic Leap Oneを用いた新たな医療トレーニングアプリケーションCHARM(Chariot AR Medical)シミュレーターを開発。空間コンピューティング技術を用いた、バーチャルモデルによる複数人参加のトレーニングを実現します。
ユーザーは患者のプロフィールや症状等をカスタマイズでき、複雑な設定や専用の場所もなしに、リアルなトレーニングが可能だということです。また同病院は空間コンピューティングを活用し、小児の患者に対しての医療行為のストレスを緩和するソリューションも開発しています。
(参考)Magic Leap