1998年にリリースされ、その後のFPS(ファーストパーソンシューター)作品に大きな影響を与えたゲーム「Half-Life(ハーフライフ)」。現在、本作をVR化するプロジェクトが進められています。「Lambda1VR」と名付けられたこのプロジェクトは、ファンメイド(非公式)の取り組みです。
対応しているVRヘッドセットはOculus Quest(オキュラス クエスト)(以下Quest)です。サイドローディング形式(※)で同名のアプリをQuestにインストールし、PC版「Half-Life」のファイルを同VRヘッドセットに直接コピーすると、プレイできます。
(※サイドローディング:正規のアプリストア以外から、アプリを入手しインストールする行為。今回の場合はOculus Store以外からのインストールとなります)
「Half-Life」シリーズとは?
「Half-Life」は、ゲーム配信プラットフォーム「Steam」の運営で知られるValveが開発した作品です。プレイヤーは物理学者ゴードン・フリーマン博士になって、エイリアンが大量発生した研究施設「ブラックメサ」からの脱出を目指します。
発表当時は、非常に凝ったストーリーや洗練されたAIが評価され、ヒットを記録。「Half-Life:Opposing Force」や「Half-Life:Blue Shift」など、物語を別主人公の目線から描いた拡張パックもリリースされました。
2004年には、続編「Half-Life 2」が発売。その後もエピソード形式で「Half-Life 2: Episode One」「Half-Life 2: Episode Two」がリリースされています。また2007年には、物語の設定につながりのある「Portal」という3Dパズルゲームも発売されました。
懐かしの光景がVRで眼前に
筆者が初代「Half-Life」をプレイしたのは15年以上前ですが、「Lambda1VR」を起動しニューゲームを選択すると、当時CRTモニターでプレイしていた懐かしい光景が、VRで目の前に広がりました。
「Lambda1VR」はPC版「Half-Life」をそのままQuestに導入するアプリなので、独自のグラフィックアップデートは行われていないのですが、モニターではなくVRヘッドセットでプレイすることには、とても新鮮な感覚を覚えました。
(本作の導入部。ブラックメサ研究所内を走るトラムシステムで目的地付近まで向かいます)
操作方法はQuest(VR)用に一新されています。左手のハンドコントローラーのスティックを操作すると前後左右の移動ができ、ヘッドセットを動かすと周囲を見回せます(※)。
(※:右スティックを左右に動かせば、一定角度ごとに視点を変更できます)。
武器類の操作は、右手ハンドコントローラーで行います。コントローラーの動きはしっかりとトラッキングされ、ゲーム内で手(コントローラー)を動かすだけで自然に照準を定められます。
(実験中の事故で、研究所内は異世界「Xen」のエイリアンがあふれかえっています)
オリジナルの「Half-Life」では、通常のFPSと同様に画面中央に照準用のレティクル(指標)が表示されていましたが、「Lambda1VR」ではレティクルが削除されています(没入感の増加のためと思われます)。その代わり、銃本体からレーザーサイトが表示されるので、問題なく照準を対象に向けることができます。
(左手コントローラーのスティックを押し込むと、レーザーサイトのON/OFFができます)
ショットガンやマシンガンなど現実では両手で構える武器は、左手コントローラーのグリップボタンを押せば、両手持ちにできます(片手での使用も可能)。暗所をフラッシュライトで照らしたいときは、左手コントローラーのXボタンを押します。ライトの向きはコントローラーで自由に変更可能です。
名作「Half-Life」をVR化しつつも、可能な限り忠実に移植したゲームになっています。
(Half-Lifeを象徴する武器「バール」。コントローラーで振り回せます)
忠実な移植による弊害も
そんな「Lambda1VR」ですが、本作にもいくつか課題が存在しています。そのなかでも重大なのが「非常に酔いやすい」という問題です。
元の「Half-Life」は地面を滑るような高速の移動ができるゲームですが、そのシステムが「Lambda1VR」として移植されても変更されていませんでした。そのため、人間とは思えないスピードの移動になっており、普通に歩いているだけで三半規管にかなりの負荷がかかります。
筆者はFPS系のゲームを長年プレイしており、スポーツ系やそれに近い作品も遊んでいるのですが、「Lambda1VR」ではチュートリアルモードの「Hazard Course」をクリアしただけでも、かなりの3D酔いを感じました。
作中の各種ギミックも、VRを想定した仕組みにはなっていません。激しい頭部の動きや、複雑な動き(ジャンプしながら左右に移動など)が必要となる場面があるので、より酔いを深める結果となっています。
特に「ヘッドクラブ」という小型モンスターは3D酔いの大敵ともいえる存在。サイズが小さい上に飛び跳ねるため、相手の位置を探すのに頭部を激しく動かさなくてはいけません。ゲーム的にはほぼ最弱の敵ながら、「Lambda1VR」の戦闘では非常に苦労しました。
また、著者のプレイ中には、マップ移動のロードなどを挟むと手の表示がおかしくなる(トラッキングに異常が発生する)症状が発生しました。この症状は、異常の発生後、一度武器の変更を行うと解消されました。
今後のアップデートに期待
記事を執筆中の2019年8月現在、「Lambda1VR」は公開からまだ間もないプロジェクトのため、精力的なアップデートが重ねられていくと思われます。
改良していくにあたってなによりも重要なのは、先述した酔いの問題を改善することでしょう。ゲームシステムを根本的に変更するのは難しいため、移動速度を遅めに調整するのが現実的な解決策だと考えられます。
筆者はプレイ中、高速移動による3S酔い回避のため、可能な限りスティックを軽く倒し、ゆっくりと歩くような状態で遊んでいました。もしこういった動き方にシステムを導入できれば、プレイ感覚は大幅に改善されるでしょう。
ゲームプレイ自体は「Half-Life」の移植であり非常に楽しめるものなので、問題点を今後解決できるか否かが焦点になると思います。
Lambda1VRの導入法
Questに「Lambda1VR」を導入する方法は複数存在しますが、最も簡単なのがサイドローディング用アプリ「SideQuest」を使用するやり方です。「SideQuest」の導入法はコチラの記事を参照してください。
「SideQuest」をインストールした後は、「Games」欄に存在する「Lambda1VR」を選択し、apkファイルをQuest側に導入します。その後PC側でSteamを起動し、PC版「Half-Life」を購入(税込価格:1,010円)します(※)。
(※:Souceエンジンを使用した「Half-Life: Source」は、「Lambda1VR」に対応していないので注意)
「Half-Life」のダウンロード後、QuestのストレージをPC側から開き、「内部共有ストレージ」に「xash」という名称のフォルダを新規製作します。このフォルダー内に、ダウンロードした「Half-Life」のゲームファイル内に存在する「valve」というフォルダーをコピーします。
内部共有ストレージに「xash」フォルダーを作成。
Steamのライブラリに存在する「Half-Life」のプロパティからローカルファイル閲覧を選択。
表示されたフォルダに存在する「valve」フォルダーをコピーし、「xash」内にペーストします。
なおPC版「Half-Life」には、各種テクスチャーを精緻化するファイルが「valve_hd」というフォルダ名で同梱されています。
同フォルダ内に存在する「models」「sound」「sprites」の3つのファイルを、「xash」内の「valve」フォルダーにコピーすれば、グラフィックをアップグレードできます。
先ほどのゲームファイルフォルダーから「valve_hd」を選択。
表示されたフォルダー(「models」「sound」「sprites」)をコピー。
「xash」内の「valve」フォルダーを開き、この画面にペーストを行います。
すべての手順が完了した後Questを起動すると、ライブラリ欄の「提供元不明のアプリ」に「Lambda1VR」が表示されます。
これで「Lambda1VR」の導入が完了です。実際に遊んで「Lambda1VR」の魅力を体感してください。
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