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AR/MR 2018.10.14

街にポケモンが潜む 六本木で開催中のAR展示に未来を観た【体験レポ】

何気なく普段暮らしている街中に、本来存在しないはずの存在が潜んでいる。まるで妖怪の世界の話をしているようですが、ARが実用的になるとそうした世界が可能になるかもしれません。

六本木ヒルズで10月12日から21日まで開催されている企画展「INNOVATION TOKYO 2018 – AR PLAY GROUND WITH NIANTIC」では、ARによって実現する未来の街のあり方を感じることができました。

本イベントを主催しているのは、「Ingress」、「ポケモンGO」など位置情報を使ったスマートフォンゲームで知られる米ナイアンティック社です。六本木ヒルズなどを運営する森ビルと協力し、AR/VR技術を用いて「ポケモンGO」や「Ingress」の世界を体感できる複数の展示を六本木ヒルズで行っています。

特に今回の展示では、今後の街がARでどのように変わっていくのかを体験できるものとなっています。

音をヒントに庭園に潜むポケモンを探す「AR庭園」

六本木ヒルズ脇のテレビ朝日本社社屋そばにある毛利庭園では、「ポケモンGO」の世界を広げる「ポケモンGO AR庭園」が開催されています。

この展示では、手にスマートフォンがついた探索用のデバイスを持ち、イヤホンをつけながら、毛利庭園を散策します。この庭園に潜んでいるポケモンは10体。庭園を散策しているとポケモンの鳴き声が聴こえてきます。鳴き声のする方向に近づいていくと、スマートフォンの画面が変化。ポケモンの鳴き声を録音することができるようになります。


(スマートフォンが装着された探索用デバイス。これを片手に散策)

3体のポケモンの鳴き声を集めたら体験は終了となります。耳を塞がずに現実の音も聴こえるAmbie社のイヤホンを使用。ポケモンの鳴き声に耳を澄ませていると庭園の水のせせらぎや風の音も聴こえてきます。


(イヤホンも従来の製品カラーではなくモンスターボール仕様)


近くにいるポケモンのシルエットが表示される


近づくと録音可能に


今回庭園に潜んでいるポケモンは10体。最もレアなポケモンはピカチュウということで、思わぬ場所に隠れていた。

3体のポケモンを捕まえた後は、そのうちの1体を選び芝生のエリアで遊べるご褒美タイムがあります。スマートフォンのAR機能を活かしたものになっていましたが、ポケモンGOには未実装の機能も使われているとのこと。ポケモンを現実に呼び出して、近づいたり色々なアングルから見てみたり、タップすることで複数のアクションを楽しむことができます。スマホ越しではありますが、実際に目の前にポケモンが存在しているような錯覚になる体験でした。

ジムを登り、ポケモンにVRで“会える”

庭園の脇で開催されていたVR体験コーナーでは、一体型のVRヘッドセットを使った展示「「Pokémon GO AR庭園」 毛利庭園ジムに登ってみよう 」も行われていました。「ポケモンGO」の世界では、毛利庭園にはポケモンジムがあります。そのジムをVRで出現させ、実際に階段を登ってみるというのが体験内容です。

プレイエリアは3箇所、伝説のポケモン・サンダー、ファイアー、フリーザーの3体をコンセプトにした黄・赤・青の円形の紋章の中央にポールが立っています。VRの中には10体ほどのポケモンたちが集合しており、ジムの階段を登って屋上を目指します。

登っていくと途中にはゼニガメ、ヒトカゲ、フシギダネの3匹がいたり、頂上には伝説のポケモンとピカチュウが待っています。

登っていくとはいっても、現実には階段が存在していません。東京大学大学院 情報理工学系研究科 廣瀬・谷川・鳴海研究室の研究である「無限階段」の技術を応用し、地面にある出っ張りを感じながら歩くことで「同じところをグルグル回りながら、VRの中では螺旋階段を上がっている感覚を再現」しています。

筆者は、ジムを登っていくという体験もさることながら、ポケモンを実際に間近で見ることに最も驚愕しました。よくよく考えるとポケモンのVRコンテンツはこれが初。ピカチュウの身長は40.6cm。足元に佇む姿は思った以上に小さく、近づくために思わずかがみ込んで覗き込んでしまいました。目の前にピカチュウがいる感覚はARで見たときと同じかそれ以上のもの。こちらも一見の価値のありのコンテンツです。

日時

10月12日(金)~10月21日(日)12:00~20:00(土日は10:00~)

場所

毛利庭園

都市を彩る緑と青の光「AR Roppongi x Ingress 」

毛利庭園周辺から離れ、六本木ヒルズ2Fにあるウェストウォーク2Fの南側吹抜けでは、同じくナイアンティックが提供する位置情報ゲーム「Ingress」とARを組み合わせた「AR Roppongi x Ingress 」が展示されていました。

現実世界を舞台にした陣取りゲームである「Ingress」の六本木周辺の状況をマッピングし、リアルタイムの様子を都市模型に投影して見るというもの。プロジェクターでの投影に加え、MRデバイス「HoloLens」をかけながら見ることで、ポータルに向かう緑と青の鮮やかな光が六本木エリア一帯に広がっている様子が分かりました。

「Ingress」は現実の世界を舞台にしつつも、その世界観が広がるのは参加しているエージェントの手元のスマートフォンだけです。しかし、実際にMRデバイスを装着して都市の模型を見下ろした瞬間に、これまで手元の小さいデバイスの中でしか起きていなかったことが、まるで本当に現実の世界で起きていることのように感じられました

HoloLensの視野角の狭さによって、全体を見ようとしても途中で切れてしまうこと。処理能力が低いため、鮮やかな色ではありますが抑えめの演出になっていました。Magic Leap Oneのように視野がさらに広く処理能力の高いAR(MR)デバイスを使うとおそらくより豊かな演出ができるのではないと思えました。つまり、今後ARデバイスが進化するにつれて、ARでの演出力はさらに上がっていくことは間違いないと考えられます。

日時

10月12日(金)~10月21日(日)12:00~20:00

場所

六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F 南側吹抜け

ARで世界には複数のレイヤーがかかる

現実に潜むポケモンを鳴き声を手がかりに探して捕まえる「AR庭園」、ポケモンジムをVRの中で再現し、上まで登っていくVR体験、リアルタイムに陣取り合戦をしている「Ingress」の世界を都市模型の上でまるで戦略ボードのように立体的に見る「AR Roppongi x Ingress 」。

17日(水)からは、ナイアンティックが技術開発中のARゲームプロトタイプ「NEON」も国内初展示されます。「NEON」は地面に落ちている光を集めて相手プレイヤーにぶつけ、もっとも得点の高いプレイヤーが勝利するARゲームです。2018年初夏にプロトタイプの開発が発表され、国内初展示となります。

日時

10月17日(水)~10月21日(日)12:00~20:00

場所

大屋根プラザ

いずれの展示も、ARやVRによって、これまで楽しんでいたゲームがどのように変わっていくのかを垣間見ることのできる展示でした。鳴き声しか聴こえずその場ではポケモンの姿は見えなかったり、戦略ボード全体をHoloLensで見ることはできなかったり、などまだ「もっとこうなったらいいのに」と感じる部分は多くありましたが、ハードウェアの性能が上がっていくこととの予想されるAR/VR分野においては、時間とともに解決されていくことも多いと考えられます。

今はスマートフォンを通して体験しているゲームの世界ですが、今後はゲームの世界と現実の街がより融合してまるでその世界が現実の世界を覆ってくるような世界がやってくると考えられます。

ナイアンティックの川島優志氏はプレス向けの説明の中で、「ARで街を複数のレイヤーで楽しむことができるようになると考えている。世界が不思議な場所になっていくという感覚を楽しんでいただきたい」と語りました。すでに、「Ingress」、「ポケモンGo」という2つの世界観を展開しているナイアンティック。次回作は、「ハリー・ポッター」とも告知されています。ゲームごとに現実空間を違う世界観のレイヤーでまるでその世界にいるかのように遊ぶようになる日はそう遠くはないでしょう。

「INNOVATION TOKYO 2018 – AR PLAY GROUND WITH NIANTIC」は10月12日から21日まで東京・六本木の六本木ヒルズにて展示されています。

イベント名

INNOVATION TOKYO 2018 – AR PLAY GROUND WITH NIANTIC

期間

2018年10月12日(金)~10月21日(日)

場所

六本木ヒルズ 各所(毛利庭園、大屋根プラザ、ウェストウォーク、ヒルズ カフェ/スペース)

料金

無料
※一部プログラムは有料

イベントページ

http://www.roppongihills.com/events/2018/10/004418.html


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