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VTuber 2023.02.14

ファンからの嫌がらせ行為が原因で個人VTuberの活動に支障 本人に詳しい経緯を聞いた

高クオリティの3D映像を数多く発表していた個人VTuberのキトネさん。日常を切り取った映像シリーズ 「キトネの日常」はファンからの人気が高く、TwitterなどのSNSでも話題となっていました。

ところが、2月より「キトネの日常」と「ショート動画」の活動終了が発表され、アーカイブが非公開に。その背景には、特定のユーザーからの長期にわたって度重なる嫌がらせ行為があったとのこと。その経緯について、キトネさんのコンテンツ制作グループに詳しい話をお聞きしました。

――今回の特定ユーザーからの嫌がらせ行為について、確証の持てる範囲で構いませんので、具体的にどのような被害があったのかをお聞かせください。

具体的には下記の迷惑行為が1年間断続的に続きました。

・「キトネ」のことを一方的に恋人として扱うメッセージが大量に届く。
・リスナーさんやVTuberさんとの会話に無関係な話題での割り込み。
・「キトネ」が投稿した画像やイラストレーターさん達が描いてくださった「キトネ」のファンアートの無断転載や無断改変。
・配信のコメント欄への誹謗中傷や過度な愛情表現。
・「キトネ」のなりすましアカウントを複数運営する。
・様々な場面で「キトネ」の名前を使ってイメージを貶めるような行動をする。
・広く公開された場で、「キトネ」の画像を改変したオリジナルのキャラクターのアカウントを作り一人二役で戯れあう。
・大量の誹謗中傷や一対一での会話を求めるメッセージが届く。
・善意のリスナーさんへの攻撃。

――今回の被害は、周囲の応援しているクリエイターの方にも及んだとお聞きしています。周囲への被害についても詳細をお聞かせください。

「キトネの設計図」というファンアートタグを使用させていただいていたのですが、そこに投稿していただいた画像を無断転載されてしまいました。

ファンアートイラストの上から色を塗った画像を自分のオリジナルキャラクターであるかのように発言したり、ファンアートに×マークを足して誹謗中傷に使われたりしてしまいました。

またコラボ相手様の配信のコメント欄に配信と関係のないコメントを投稿することもありました。

――これまでの嫌がらせに対して、どのようなアクションや対策を行っていましたか?

過剰な愛情表現や恋人扱い等が最初の被害だったのですが、周りへの被害はなかったので黙殺していました。

会話への割り込みやファンアートの無断使用等、周りの方にも影響が出てしまってからはアカウントのブロックを行いました。

「キトネ」のなりすましアカウントで品性に欠ける発言をする等の「キトネ」のイメージ等に悪影響が出る可能性のある行為に発展した際には周囲への注意喚起と通報のお願いを発信しました。

無断転載に対しては直接注意をしたこともありましたが、何を言っても該当人物にとって都合がよいように解釈されてしまっていたので、困っていることが伝わるように様々な方法を模索しました。

――被害を受けたことについて現在はどのように受け止められていますか? お話できる範囲で構いませんので、ご心境についてお聞かせいただけると幸いです。

確認できている範囲だけでも、多くのお世話になった方々に迷惑行為が波及してしまっており大変申し訳なく思っております。

また動画の更新を楽しみにしてくださっていた皆様にも深くお詫びしたい気持ちです。

――今回の件に関して、法的なものを含めて特定ユーザーへの対応をお考えですか? また今後考えている対策などもあれば、お聞かせください。

該当の人物から一方的に会話を求めてくる中でいくつかの情報の開示があったのですが、
その中で知りえた該当人物の所在や年齢等を考慮し法的な処置は考えておりません。

今後については、ブロックや報告、直接の注意等、様々な対策を試してみたのですが改善が見られなかったので、こちらが活動を停止する以外の方法が見つけられていないです。

また過去に投稿した画像や動画への対策として、それらが意図しない方向に利用されてしまう可能性があるので、説明責任を果たせるように削除せず非公開にしています。

――2月以降の活動は不明とのお話ですが、現時点で今後の活動についてお考えのことあれば、お聞かせください。

映像担当の店長の活動は終了、続けるのであればキトネ1人での活動になります。また、ネガティブなことで注目を集めてしまったので2月以降はしばらく活動を自粛するつもりです。

――ご回答いただき、ありがとうございました。

近年相次ぐVTuberを対象とした迷惑行為、どう対応すべき?

昨今では、キトネさんの今回の件だけでなく、特定のファンによる個人VTuberへの嫌がらせ行為がYouTubeやSNSで頻発しています。VRやVTuber関連の権利問題について詳しい関 真也弁護士は、過去MoguLiveに寄稿した記事の中で、VTuberモデルの外見に対して、何かしらの誹謗中傷が行われた場合について「そのモデルを作った著作者である絵師さんなどに対する権利侵害となる可能性があります」と述べています。

企業所属のVTuberの場合、特定のユーザーの迷惑行為に関して訴訟に動くといったケースも増えています。2022年12月、VTuberグループを運営するANYCOLOR株式会社とカバー株式会社は、所属タレントに対する誹謗中傷行為等の根絶に向けた連携体制の構築を発表。その後、所属タレントに対して迷惑行為を行っていたユーザーに対する情報開示請求が裁判所に認められるといった事例も起きています。

ただし、実際の訴訟は実施のハードルが高く、費用や時間といった面でもVTuber当人の負担が決して少なくないのが現状です。個人で可能な限りの自衛や対策を今後も練る必要がありそうです。場合によっては、日本司法支援センター「法テラス」や警察など、専門機関への相談も考慮すると良いでしょう。


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