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MoguraVR

2018.09.20

「VRはレジャーそのものを代替する」アトラクションに留まらないVRに踏み出すハシラス

前編の「オルタランド」体験レポートに続き、本記事ではオルタランド構想について、株式会社ハシラスのCEO・VRプロデューサー安藤晃弘氏のインタビューを中心にお送りします。

安藤氏によると、2016年にHTC VIVEが発売されたときから「オルタランド」の構想はあったとのこと。4m×3m(ルームスケール=部屋サイズ)を動き回ることのできるHTC VIVEが出てくる中で、「いずれは広大なエリアを動き回れるデバイスが登場すると思っていたら、VIVE Pro(最大10m×10mまでトラッキング可能)が登場し、開発をスタートさせた」とのこと。

“ハイエンド”なVR体験を提供し続ける

安藤氏と話をする中で「VRは別の自分になって、別の世界で仲間たちとわいわい遊ぶもの」という考えが言葉の端々から感じられました。Oculus Riftの開発者版を使った2014年の「Hashilus」を開発、それ以降体感型VRの重要性などを説きつつ、数々のVRコンテンツを作る中で至った「VRコンテンツ制作者としての矜持」とも言うべきもののように感じました。

安藤氏は大学を卒業後、和風古典奇術「手妻」を生業としてきました。VRとの出会いを経てVRプロデューサーとなった以降も、「どのようにお客さんを楽しませるか」ということに余念のないこだわりや姿勢を見せ続けた安藤氏ですが、オルタランドはひとつの集大成とでも呼ぶべきVRコンテンツとなりそうです。

「無理してゲームをやってもらわなくてもいい。ロビーにいるだけでも楽しめる」と語る通り、VRでは花火や爆竹を他のプレイヤーに向けて投げたり好き勝手に振り回すだけでも、ちょっとした「遊び」の体験が実現しています。

「VRは別の自分になって、別の世界で仲間たちとわいわい遊ぶもの」。自宅でもPC等からアクセスできるソーシャルVRアプリ(「VRChat」や「Rec Room」など)でも、アバターを選択して、VR内に構築された世界で仲間とわいわい遊んだり会話に興じたりできる、という点は同じです。しかしオルタランドは「自分でデバイスを買わなくていい」というアドバンテージに加えて、「広い空間を自分の足で歩き回る」「体感型の筐体に乗って体験する」といった点が決定的に異なります。

今後家庭用のVRヘッドセットが普及していくとしても、この2点はなかなか体験できない、つまりVR施設での体験がメインとなる「ハイエンド」なVR体験になるでしょう。「VRのすごい体験をみんなの手が届くところに出していきたい」と語る安藤氏。家庭用のVRヘッドセットの普及は以前よりも進んでいるものの、まだまだ様々な場所へ行き渡るには時間がかかると考えられています。そのため、ハシラスでは「施設で手軽に体験できる、ハイエンドなVR体験」に集中しているのです。

「まだ、足りない」。安藤氏の語るオルタランドのこれから

さて、「オルタランド」は今後どのように製品化を目指すのでしょうか。今回の体験会では準備中のコンテンツもありましたが、今後は拡充予定とのこと。最終的には、

・ロビーでの遊び
・マルチプレーゲーム
・長距離歩行コンテンツ
・ジェットコースターコンテンツ
・ライド探索コンテンツ

など、数種類のコンテンツをオルタランド内で遊ぶことができるようにする構想です。現在は「最初期のバージョン」と安藤氏が言うように、課題は山積。筆者が体験したときも遅延やカクつき、動作不良などは感じられました。「動作安定性を確保し、製品クオリティまでもっていかないといけない」。そのための課題は多い、と話していました。

また、VR体験の施設への導入にあたっては収益性が重要となります。これについて安藤氏は「まだ足りない」と断言しています。目標は、1日に2,000人〜3,000人が体験するような遊園地のアトラクション。一度に16名しか体験できない今のオルタランドでは、1日に160〜320名とのことで、わずかその1割程度。21m×12mとさらに広くすることで同時に48人が体験できるパターンも今後の構想には含まれていますが、それでもまだ足りないとのことで、今後も検討や改修が進みそうです。

VRがレジャーを代替する

安藤氏は「オルタランドの中ではアトラクションだけでなく、レジャーでやることそのものをできるようにする。レジャーを代替するものにしたい」と語ります。「レジャー、というものが何かを考えたら、ダイビングしてウミガメに会いに行ったり、山に登って朝日を見たり、花火をみんなで見たりすることだと。そういうことが全部できる場所をVRに作る」。翻ってみれば、レジャー施設としては国内随一のディズニーリゾート(ディズニーランドやディズニーシー)も、アトラクションに乗っている時間だけでなく、滞在中に過ごす体験そのものが「楽しく」なるように徹底的にデザインされています。安藤氏がアトラクションだけではなく、非日常的な体験全体をオルタランドで実現したいと考えるのにも納得です。

筆者からの「オルタランドのロビーで、他のプレイヤーと写真を撮って思い出を持ち帰れるようにしたい」要望にも「もちろん考えている」と即答。レジャーを代替するという目標のもと、今後の体験の充実にも余念がない印象でした。

安藤氏は「VRのアイデアはまだまだある。会社としてはその実装力を上げていきたい」と話し、そのアイデアを詰め込んだ分厚いメモ帳を見せてくれました。オルタランドの製品版の完成はもちろんのこと、安藤氏率いるハシラスが今後どのような“手品”を見せてくれるのか非常に楽しみです。

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この記事を書いた人

すんくぼ(久保田 瞬)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。VRジャーナリスト。
VRが人の知覚する現実を認識を進化させ、社会を変えていく無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。VR/AR業界の情報集約、コンサルティングが専門。また、国外の主要イベントには必ず足を運んで取材を行っているほか、国内外の業界の中心に身を置きネットワーク構築を行っている。Boothにて書籍「寝転んでNetflixを観ると、 VRの未来が見える」販売中

Twitter:@tyranusii

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