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メタバース 2023.08.11

徹底検証・HaritoraX ワイヤレス 組み立てからVRChatでの使用感までレビュー

株式会社Shiftallから発売された、新型フルトラッキングデバイスHaritoraX ワイヤレス。安価かつ外部センサー不要で動作する手軽さがウリの「HaritoraX」シリーズの最新機種であり、これまでと比較して軽量で、なにより各センサーが全て無線で動作する初のラインナップです。

とりわけ、ソーシャルVRユーザーに活用されてきたデバイスなだけに、「軽くて無線で動くフルトラ」に注目している人も多いはず。そこで今回、MoguLive編集部で「HaritoraX ワイヤレス」を一台お借りし、「VRChat」での実践も交えてその実力を検証してみました。

まずは開封してみよう

こちらが「HaritoraX ワイヤレス」のパッケージを開封した様子。本体がコンパクトなだけに梱包箱もコンパクトです。

内容物を取り出してみました。主な内容物は「HaritoraX ワイヤレス」本体と、充電用ケーブル、そして各センサーに取り付けるストラップです。

ストラップは伸縮性のある面ファスナー仕様です。全部で6つ。各部位ごとに対応する長さが決まっており、最も長いものが胸部と腰、最も短いものが両足首、中間の長さのものが両膝のセンサーに対応しています。

充電ケーブルは驚きの六又のType-C。Type-B端子から伸びています。なかなかユニークですが、一括で充電できるのは楽ですね。

こちらが「HaritoraX ワイヤレス」センサー本体。手のひらにぽつんと乗るサイズです。重さの実測値は1基17g。さすがに1基8gの「mocopi」よりは数値上重いのですが、正直誤差レベルです。

セットアップはちょっと大変?

それではセットアップに移りましょう。初めて使う際には、まずは「センサーリセット」という作業が必要です。センサーの小さい方のボタンを「10秒以内に10連続で押す」ことでリセット開始。LEDが緑色で素早く点滅し出すので、その間は平たい場所で手を触れずに置いときましょう。

その後、LEDが緑色の状態で点灯したら、センサーを手に持ち、空中で8の字を描くように動かします。25秒ほど動かすとLEDが点滅状態に戻り、「センサーリセット」が完了します。これを6センサー全部に対して行います。

「センサーリセット」が完了したら、各センサーにストラップを取り付けていきます。

基本的には、先端を上から面ファスナーに貼るように、センサーのベルト部分に通していきます。上下を間違えないようにしつつ取り付けていきましょう。とはいえ、外しやすい構造なので、間違えても装着し直しはかんたんです。

組み立てが終わったら、一度専用ソフトウェア「Haritora Configurator」を起動し、各センサーを起動しましょう。初回起動時には、センサー側のファームウェアアップデートが発生するため、画面の指示にしたがって1基ずつアップデートを実施していきましょう。ここまで完了したところで、各センサーを装着するのがオススメです。

装着した様子はこんな感じ。胸のベルトは脇の直下にくるくらいに上に、腰のベルトは骨盤を囲むくらいの位置に装着するのがポイントです。用途も鑑みるとベルトはキツめに締めるのがベターですが、胸のベルトは締めすぎると圧迫感を感じやすいので、いい具合の締め方を調整しましょう。

ここまで完了したところで、「Haritora Configurator」と接続し、トラッキングを開始しましょう。接続そのものは「Haritora Configurator」が自動的に行うため、Windows側での事前ペアリング作業は不要です。

「センサーリセット」や組み立て、ファームウェアアップデート、装着位置の調整など、セットアップに必要な作業はそこそこ多め。組み立て自体に時間のかかる「HaritoraX 1.1」よりも肉体的労力は控えめですが、全体を通して最低でも30分程度の作業時間は見込んでおきましょう。

なお、「HaritoraX ワイヤレス」はその性質上、6センサー分のBluetooth通信が必要です。PC側にBluetooth接続機能がない場合は、別途Bluetoothアダプターが必要となります。また、最大接続可能台数が6つ以上必要となり、5台までしか接続できないものは利用できないため、アダプターなどを導入する場合は事前に確認しておきましょう。公式ドキュメントの「動作確認済み製品」も確認しておくとベターです。

VRChatで10時間くらい検証してみた

ここからは検証に移ります。とはいえ、「HaritoraX ワイヤレス」を最も利用する層といえば、VRChatユーザーでしょう。今回、筆者は「自宅で遊ぶVRChat」での使い勝手を検証すべく、筆者の普段のVRChatで「HaritoraX ワイヤレス」を装着。合計10時間ほど利用し、その実力を検証してみました。

動いてみた様子

動作精度は十分。基本的な動きは問題なくトラッキングでき、座ってみた時の姿勢も崩れにくい方です。トラッキングが飛ぶこともあまりなく、比較的安定している印象です。

よかったところ

なにより軽くて小さい! これが最大のメリットです。ベルトの存在感こそありますが、センサーそのものは重量をほぼ感じません。かつ小型なので、身体の動きに干渉しにくいのもメリットです。外部センサーが不要な点も合わせて、座り・しゃがみなどのポーズがとりやすいため、アバターで自撮りをしたい人にはこの点は有利にはたらくでしょう。

稼働時間の長さも魅力です。公称の最大稼働時間は約20時間。実際に、今回の計10時間・3日ほどの検証では一度も充電せずに使えました。数日は充電せず使い倒せるため、充電を忘れてもある程度なんとかなるのは便利です。ただし、バッテリーが空になっても充電をうっかり忘れるかもしれないので、そこは要注意です。

各ベルトはフックをひっかけることで装着する形で、取り外しも容易です。離席時の脱着も(6センサーあるものの)比較的容易で、これは「HaritoraX 1.1」にはないメリットです。同居人の目が気にならない場合は、つけっぱなしのまま離席してもよいでしょう。

気になったところ

ドリフト(トラッキング位置のズレ)は気になるところです。地磁気センサーでトラッキングを行うため、時間が経つにつれて少しずつ各部位がズレていきます。外部センサーを用いないがゆえの宿命です。


(1時間程度の装着でドリフトが起きた一例。実際は直立しているが、体軸が少しだけズレ始めている)

いきなり変な位置に飛ぶことはないものの、短いと数十分、長いと1時間程度で少しずつズレていくため、再キャリブレーションが必要となります。キャリブレーション自体はかんたんなコントローラー操作ですぐにできるのは幸いです。

なお今回の検証では、デバイス機器の構成によって、ドリフトの発生頻度・大きさに変動が見られました。筆者環境では、SteamVRセンサーを使用するアウトサイドイン環境は、そこまで変動がありませんでしたが、「PICO 4」と「Virtual Desktop」を併用した上で完全無線環境で使用した際は、発生頻度が多かった印象です。

とはいえ、筆者がふだんVRChatを遊ぶ自室は、近くにPCなどの通信機器が大量にあり、金属製キャビネットも背後にある、「HaritoraX ワイヤレス」的には悪条件の重なった環境です。それでも実用圏内はあるため、通信機器、電化製品、金属製のものなどを遠ざけた環境であれば、動作精度やドリフト抑止はさらに良好になると思われます。

VRに長居するほど恩恵大。今後の拡張性にも期待できそう?

地磁気センサーゆえのトラッキングズレはあるものの、外部センサー不要で、軽くて小さく、着脱容易で、充電は長持ち。同系統の「mocopi」と比較すれば、「VRChat」での用途には安定感があり、日常的に使う上で十分な性能があると感じました。

Bluetooth接続が6つは必要となり、その分の通信も発生することや、性質上そのほかのBluetooth機器との組み合わせで相性が悪いことがある(Shiftallの防音マイク「mutalk」でも音質劣化が公式にアナウンスされています)など、運用上気をつけるポイントはいくつかあります。そこさえおさえておけば、軽くて普段使いしやすいフルトラデバイスとして、特に利用時間の長いユーザーには恩恵が大きいでしょう。

なお、将来的には専用のドングル発売も予告されています。独自通信で、かつ通信を一箇所に集約することで、より動作が安定するものと思われるため、動作精度が気になる人はこちらの登場を待つのも選択肢かもしれません。このほか、充電ドックなどの展開や、スマホアプリ経由での「Meta Quest 2」版「VRChat」「cluser」への直接接続なども予告されており、拡張性についても期待できるところです。

小さくて軽く、充電が長持ちする特徴は、特に「VRChat」などに長居する人ほど恩恵を受けやすいもの。日常的に「VRChat」などに入り浸りつつ、フルトラならではの表現力がほしい人には、「HaritoraX ワイヤレス」は良好な選択肢となりそうです。

「HaritoraX ワイヤレス」製品仕様

価格 39,999円(税込)
無線通信方式 Bluetooth
または専用ドングルによる独自通信(後日発売)
動作時間 約20時間(バッテリー内蔵)
充電方式 USB Type-C 充電 充電時間 約1時間40分 (電源OFF時)
トラッキングポイント 6点(胸 / 腰 / 両膝 / 両足首)
最大トラッキングポイント 8点以上
センサー 加速度・角速度・地磁気センサ(9軸IMU)
足首部のみ、上記センサー+ToFセンサー
対応VRヘッドセット SteamVR対応ヘッドセット各種
動作確認予定VRヘッドセット MeganeX / Oculus Quest / Meta Quest2 / RiftS / VIVE(初代) / VIVE Pro / VIVE Pro2 / VIVE Cosmos / Valveindex / HP ReverbG2 / PICO 4 / 富士通 FMVHDS1
動作確認予定VRアプリケーション VRChat, NeosVR, VirtualCast, Virtual Motion Capture, cluster, ChilloutVR
※上記以外の様々なアプリケーションでも動作します。
動作環境 Windows10 21H1以降 / SteamVR 1.17以降
※iOS/Androidを搭載したスマートフォンを経由し、OSC通信にてMeta Quest 2スタンドアロン版VRChat / clusterへの対応を近日予定。
付属品 センサー6個
身体取り付け用バンド 1式
充電用USBケーブル
安全上のご注意/保証書
動作確認済みUSB Bluetoothアダプター ASUS USB-BT400
TP-LINK UB500
Plugable USB-BT4LE
Buffalo BSBT5D205BK / BSBT5D200BK
その他Intel製内蔵Bluetoothアダプター
公式サイト https://ja.shiftall.net/products/haritorax-w

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