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業界動向 2020.01.23

国内のARトレンド最前線、Docomo Open Houseが一大展示会になっていた

株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は2020年1月23、24日、東京・お台場にてDocomo Open House 2020を開催しています。

Docomo Open Houseは、ドコモとパートナー各社の取組を発表し展示するイベントです。
2020年は、実用化が始まる5Gがテーマとなっており、会場のサイズや展示の数は業界展示会レベルに拡大していました。

5Gとともにドコモが力を入れている領域の一つとして、VR/AR/MRがあります。ドコモは、2019年4月にMRデバイスを開発するMagic Leap(マジックリープ)社へ2.5億ドルの出資と提携を行いました。2019年秋からは開発者への提供を開始。その結果、今回のイベントでは、国内の開発企業が開発したMR関連の展示が目白押しとなりました。

これまで筆者は、国内外の様々な展示会を見てきましたが、Magic Leapのデバイスを使った展示がこれ程まで多く出展されている例は無く、2020年の時点でMRデバイスを使うと、どういったことができるのか分かるイベントになっていました。

全てのブースを回れたわけではありませんが、筆者が体験した中で目ぼしいデモを紹介していきます。

ARクラウドで実現する生活(ドコモ)

まずは複数台のVR/ARデバイスが同期した世界を体験できる、「ARクラウド」の実験的なコンテンツ。株式会社ホロラボ、および株式会社デザイニウムが技術支援を行っています。

体験ブースは、屋外と室内を模したデザイン。体験者はMagic Leap One、iPad、Mirage Solo(一体型VRヘッドセット)のどれかのデバイスを使って、この空間を歩き回れます。

お店の前に立つとクーポン券が発行されたり、商品の3Dモデルを使ったアニメーションが見られたり、部屋の空間に入ると壁に巨大なディスプレイが現れて動画を視聴できたり、部屋の雰囲気を南国風に変えられたりと、様々な体験ができました。

なお、この空間を同期する仕組みを構築するために、Magic Leapを使った空間の3Dスキャンを行い空間の3Dモデルを作成。さらに空間の自己位置を特定するための認識精度を上げるために特徴点マップも作成し、クラウドに3Dオブジェクト等を配置しています。

体験中、各デバイスはクラウドと自分の今いる位置を照らし合わせ、3Dオブジェクト等を表示させます。同じクラウド上のデータにアクセスしているため、位置を精度高く一致させられれば、複数人が同じオブジェクトをズレなく見られるのです。

なんといってもこのブースのウリは「ARクラウド」。同じデバイスを装着した複数人で体験できるだけでなく、VRとAR、ウェアラブルと非ウェアラブルの垣根を超えて複数のデバイスで同時に体験できることで、使い勝手は広がりそうです。

デモは最大6名で実施。サーバー次第でさらに多人数の同期も可能になるとのことです。ブースにいたドコモの担当者によると「今後どういう用途があるか検討していきたい」とのことでした。

スキャンしたばかりの自分の3Dモデルがダンス(VRC×1→10)

3Dスキャン技術を開発している株式会社VRCと制作会社である株式会社ワントゥーテン(1→10)が展示していたのは「ダンシング★アバター MR」。VRCが持っている超高速スキャンシステムが使用されており、ブース内の3Dスキャンシステムで撮影をしてから1分程度で3Dアバターが完成。そのアバターがステージ上でかっこいいダンスを踊る様をMagic Leap Oneで鑑賞するというもの。

3Dモデルの作成が超高速のため会場でも順番をほぼ待つことがない点や、自分とうりふたつの外見をしているアバターがキレキレのダンスを踊っている点などを見て、次世代のプリクラはこうなっていくのかもしれないと考えさせられました。

VRCとドコモは撮影した自分のアバターを保存する「ポケットアバター」をトライアルで提供しています。

MRデバイスד触覚服”(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科×帝人)

触覚研究で知られる慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科のEmbodied Mediaと帝人株式会社は、「Synesthesia Wear」を展示していました。

「Synesthesia Wear」は「空間コンピューティングを拡張する全身触覚ウェア」。Embodied Mediaとエンハンスが手掛けたシナスタジアスーツは、VRゲームを“感じる”受動的なデバイスでしたが、帝人と共同開発したこの「Synesthesia Wear」はより衣服に近い触覚デバイスです。

コートのように見える服には、フォスター電気が提供している振動子(触覚デバイス)が埋め込まれています。Magic Leap Oneを装着し、空間に見える幻想的なオブジェクトに触れるとその触感が伝わります。特に印象的だったのは、オブジェクトが体を通り抜けたとき。体の前から後ろに見えないものが抜けていく感覚はこれまで味わったことのないものでした。

VRでも、ヘッドセットを使った視聴覚のジャックに加えて、触覚等の感覚もジャックすることでさらに没入感を増す取り組みが盛んです。MRデバイス×触覚の分野も用途によっては今後より発展していくでしょう。

MRでストーリーテリングはどう変わるか(curiosity)

Magic Leap Oneは、国外ではゲームなどのエンターテイメントコンテンツが多く作られています。

国内では開発事例が少ないものの、curiosity株式会社が展示していたのはAR/MRゲーム「ロイと魔法の森」です。ガイド役のロイに導かれ、パズルや魔法バトルなどのミニゲームを体験していくというプレイ内容。2019年12月にスマートフォン向けに公開されたプロローグ編の内容をMagic Leap One向けに移植したものです。

10分程度の体験でしたが、現実空間を使ったMRのゲーム体験はVRゲームとは異なる面白さがあります。別世界の没入感は薄くなるものの、「いまいる現実で物語が展開する」感覚はAR/MRゲームならではのもの。別世界に行くことなく、物語の世界を現実側に引き寄せて体験するものという新しい物語体験が垣間見えます。

VRだけじゃない。施設でARゲームを体験できるように?(ENDROLL)

株式会社ENDROLLが展示していたのは、Magic Leap Oneを複数人で装着し、銃を打つシューティングゲームができるデモ。

隣のプレイヤーを見ると頭上にスコアが表示され、マルチプレイのARゲームを体験できるコンテンツでした。VRに関しては、すでに施設型VRというジャンルで導入が進んでいますが、そのAR版とも言えるコンテンツです。

ENDROLLによれば「VRに比べて(視界を覆わなくていいので)安全面の配慮がしやすく、人件費でメリットがある」(ENDROLL 取締役 大島佑斗氏)ため、アーケードなど施設からの引き合いがあるとのこと。

今回展示していたデモは比較的シンプルな的あてゲームでしたが、さらにインタラクションを増やしたARゲームのプロジェクトが動いているそうです。シューティングゲームのデモでは、遅延があったり物足りなさを感じられたりといった不満点がありましたが、技術的にも改善を重ね、激しく体を動かしながら、ワイワイと遊べるコンテンツになるようです。2020年夏の稼働開始に向けて進んでいるとのこと。

ARを使い、施設で体験できるコンテンツとしては株式会社meleapが展開するテクノスポーツ「HADO」が知られていますが、Magic Leap Oneなどのウェアラブルデバイスの登場により、アーケード、商業施設などでARデバイスを使った体験が広がりそうです。

今後の技術の加速に期待

会場には他にも、リアルタイムで3Dスキャンした人間を投影する技術を活かした「ウルトラマン MR SHOW」や、未来の街づくりを遊びながら体験できる「AR CITY」、VRを使い展示空間を展開する「ABAL:プレゼンテーションタワー」など多くのVR/AR/MRコンテンツ・ソリューションが展示されていました。

実験段階のものも多く、社会実装はこれからのものも多くありましたが、産業利用、エンターテイメント、生活など様々な切り口での用途が示されています。

Docomo Open House 2020は、2020年1月23、24日の2日間開催されています。

イベント概要

名称

「DOCOMO Open House 2020」

会期

2020年1月23日(木)~2020年1月24日(金)

開催時間

9:30~18:00

会場

東京都江東区青海1丁目2番33号
東京ビッグサイト 青海展示棟

展示

200件以上

入場料

無料(要事前登録)

イベントサイト

http://docomo-openhouse.jp/2020/


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