メタ(旧フェイスブック)は、日本時間2021年10月29日午前2時より、年次の開発者向けイベントConnect 2021の基調講演を行ないました。約1時間半の基調講演では、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が「メタバース」構想を語ることに多くの時間が割かれています。
本記事では、Connect 2021の基調講演を振り返りながら、公式ブログ等で明らかになっている点もまとめてお伝えします。
メタバース構想
基調講演の最後に、「One More Thing」(最後にもう一つ…)とフェイスブックから「メタ」への社名変更を公表したように、今回の基調講演のキーワードは「メタバース」であり、そのイメージを共有することに重きが置かれました。
メタバースがVRやARなど様々な形でアクセスするものになること。生活や娯楽、仕事などあらゆるコミュニケーションがメタバースで行われるようになること。そしてメタバースの実現にあたりプライバシーやセキュリテイなどに注意すべきこと。そういった様々な観点から多くのイメージを交えつつ、メタバースについて語られました。
メタバースが日常の様々なシーンで利用されるイメージを伝える動画(YouTube)。ザッカーバーグ氏はメタバース観を語りながら、順番に基調講演で披露しました。
・ソーシャル
・教育
・エンターテイメント
・ゲーム
・フィットネス
・仕事
・小売
Horizon Homeの発表
メタは、ソーシャルVRプラットフォーム「Horizon」に関するアップデートを発表しました。これまでワールドを作ることができる「Horizon Worlds」(米国でベータ版が展開中)、ミーティングツール「Horizon Workrooms」が展開されてきました。そして今回、新たにメタバースにおけるホーム画面に相当する「Horizon Home」が発表されました。Horizon Homeでは、ユーザーがお互いのHomeを訪問することができます。
また、Horizon Homeでは、SlackやDropbox、Instagramなどのツールを呼び出して使うことができます。
Horizon Workroomsのアップデート
VRミーティングツール「Horizon Workrooms」は、2021年8月にベータ版が配信されていました。今後、ミーティング空間のカスタマイズが可能になります。
Oculus for Businessの終了と「Work」アカウント
Oculus Quest 2を法人向けに使用できる「Quest for Business」が発表。消費者向けに販売されているOculus Quest 2にビジネス用の「Work」アカウントでログインすることで、ビジネス向けの機能を利用できるとのこと。
WorkアカウントはFacebookアカウントとは独立して運用が可能。アカウント管理やデバイス管理システムなどを使えるようになります。Quest for Businessは、2021年中にクローズドベータを展開。2022年中にベータ版参加者を増やし、2023年には完全なリリースを目指すとしています。
合わせて、これまで法人向けに提供していた「Oculus for Business」は2021年中に終了することを明らかにしています。
プレゼンスプラットフォーム
メタバースに関連するコンテンツの開発を促す目的で、開発者向けに「Presence Platform」(プレゼンス・プラットフォーム)が発表されました。これまでVRヘッドセット向けの機能に含まれていた開発用ツールと新規のものをパッケージしたものとなります。Presence Platformを活かすことで、物理空間とバーチャルをより密接に繋ぐMRコンテンツ開発が可能です。
Presence Platformに含まれるSDKは以下の通り。Passthrough APIはすでに2021年に提供開始されていますが、他の2つの開発ツールを含んだパッケージとして提供されます。
・Passthrough API(パススルーAPI)
VRヘッドセットの前面にあるカメラを使用し、物理世界にバーチャルコンテンツを組み合わせるためのコア技術。
・Interaction SDK(インタラクションSDK)
ハンドトラッキングやコントローラーなど操作やバーチャルな物体とのインタラクションに関する開発ツール。
・Voice SDK
音声入力を実現するための開発ツール。
VRコンテンツに関する発表
VRコンテンツについてはあまり多く発表されませんでしたが、大ヒットVRゲーム「Beat Saber」のQuestプラットフォーム単体での総売上が1億ドル(約100億円)を突破したことが明らかになっています。これはゲーム本体の売上にダウンロードコンテンツとして配信されている各種楽曲のパックを合わせた金額です。
新規コンテンツとしては、オープンワールドゲーム 「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス」のOculus Quest 2版が開発中であることなどが発表されました。
VRで「Messenger」の着信を受けられるように
2021年、メタは「Messenger」のメッセージをVRで見てチャットができる機能をリリースしました。今回の発表ではメッセンジャーの着信をVR内で受け、通話ができるように。よりメッセンジャーとの連携が深まります。
Project Cambria発表
事前に「Oculus Quest Pro」として発表されていた新型VRヘッドセットは開発コードネーム「Project Cambria」としてお披露目されました。記事執筆時点ではRGBのカラーパススルー機能、フェイストラッキング、および新しい光学系の搭載が発表されており、2022年に詳細な情報が公開される予定です。
Spark ARやARグラスの続報などAR関連の発表
毎年Connectでは、AR関連の発表も多くされますが、今年もいくつか発表がありました。
まずは、モバイルAR向けのプラットフォーム「Spark AR」について。Spark ARはInstagramやMessengerでARエフェクトを出せるようにするプラットフォームです。クリエイターの人数が60万人を突破、月間ユーザーは7億人を超えているとのこと。
メタは「Polar」という名前のスマホアプリを発表。クリエイターがSpark ARのARエフェクトをスマートフォンで作成できるようになります。
現実世界の場所に関連したARエフェクトを表示させる「Geo JS API」や全身・指のトラッキング機能の搭載、複数人でエフェクトを共有しながら楽しめる「multipeer API」などが発表。より多様なARエフェクトの制作が可能になります。
メタは、Spark ARのクリエイターを増やすために、オンライン学習できるカリキュラムを充実させるほか、認定プログラムを設置します。
ARグラスに関しては、現実の空間認識を行うグラスの研究開発についてアップデートを発表。基調講演では、2020年に発表された「Project Aria」の続報として、メガネ型のデバイスで空間認識をする様子が披露されました。
また、最終的に目指すべきARグラスを開発中であるとして、コードネーム「Project Nazare」という新たなデバイスを紹介。デバイスの外見は分かりませんでしたが、Hololens 2やMagic Leap 1のように、現実空間にバーチャルなアバターや物体を重畳させています。
Project Nazareは、まだ始まって2,3年のプロジェクトであり、今後状況をシェアしていくとのことです。
他にも新情報は続々
本記事ではConnect 2021にあった大きな発表を振り返りましたが、他にも没入型の教育コンテンツ開発への1.5億ドルの基金の創設やOculus Quest向けのアバターシステムのアップデートなど様々な発表が行われました。
Connect 2021のマーク・ザッカーバーグ氏による基調講演はこちら。
(参考)Tech@FACEBOOK、Spark AR公式ブログ、Oculus for Developersブログ、Oculusブログ、Road to VR