アメリカ航空宇宙局(NASA)は、VR開発の技術やルームスケールでのトラッキングなど様々なテクノロジーを組み合わせ、「ハイブリッド・リアリティ・システム」(Hybrid Reality System)と呼ばれるシステムを開発しています。このシステムでは、従来の宇宙飛行士の訓練よりも低コストで、高い没入感を備えた訓練機能を提供することを目指しています。グラフィックボードメーカーのNVIDIAが開発には協力しています。
NASA・ジョンソン宇宙センターのマシュー・ノイエス氏によれば、ハイブリッド・リアリティ・システムによって、宇宙飛行士は宇宙船外の活動や、地球とは異なる不安定な起伏の地面を進む訓練、そして小惑星や他の惑星で鉱物試料を採取するため、ドリルで岩に穴をあける訓練などを行うことが出来るとのことです。
これまでNASAが行ってきたVR開発
1980年代半ば、NASAのエイムズ研究センターは、初期のVRシステムを開発しました。その後、民間産業によってVR開発が盛んに行われている今だからこそ、NASAは民間産業のテクノロジーをシステム開発に活用できているとノイエス氏は言います。
エイムズ研究センターで1980年代に開発されたヘッドセットとデータグローブ
初期のヘッドセットのデザイン。現在のコンシューマ向けVRHMDとよく似ている
ハイブリッド・リアリティの次のステップ
ハイブリッド・リアリティの次のステップは、「物理的感覚」を生み出すことだとノイエス氏は説明します。例えば、既にNASAが作成した、実際のデータで生成された月面の景色で月面車を走らせるシミュレーションでは、ジョイスティックを使用して運転することで、物理的な感覚を再現できると言います。
そして今後は、人の体重を減少させるロボットクレーンの活用により、火星や月、あるいは国際宇宙ステーションで感じられる低重力環境を体験するシミュレーションを開発できるかもしれないとのことです。
視覚的要素だけでなく、月面車を走らせる物理的な感覚を再現したシミュレーション
NASAによる宇宙開発にも活用されるVR技術。今後も様々な領域での活用が行われることが期待されます。
(参考)
For Astronauts, Next Steps on Journey to Space Will Be Virtual – NVIDIA
https://blogs.nvidia.com/blog/2016/08/01/astronauts-next-steps-journey-space-will-virtual/