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活用事例 2017.04.25

【インタビュー】「マシュに会えたと感じていただきたい」『FGO VR』開発秘話、1日限りの『FGO GO』の挑戦をクリエイティブディレクター塩川氏に訊く

3月25日、26日に行われたAnimeJapan 2017の中で、一際大きなスペースを使って展示されたFate/Grand Order(以下FGO)ブースで、同作品のVRコンテンツ『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』(以下『FGO VR』)が初展示されました。

『Fate』シリーズは、TYPE-MOON開発のビジュアルノベル『Fate/stay night』から連なる作品群です。万能の願望機「聖杯」をかけて、歴史上の英雄や伝説上の存在を「サーヴァント」として現代に召喚して戦う「聖杯戦争」がテーマ。聖杯戦争に身を投じる「マスター」と呼ばれる魔術師たちを描く物語になっています。これまでPCゲーム、ライトノベル、アニメ、コンソールゲームなどでさまざまな形で作品が展開され、専門用語も多い独特な世界観とキャラクターなどが人気を集めています。

そのスマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』は、シリーズに登場するサーヴァントを始め、さまざまなサーヴァントが登場する完全オリジナルストーリーのRPGです。人類の絶滅が証明されてしまった世界で、「人理継続保障機関・カルデア」に残された最後のマスターである主人公と、デミ・サーヴァントのマシュ・キリエライトがサーヴァントたちとともに繰り広げる、人類史をかけた戦いを描くゲームです。2015年7月30日からサービスを開始し、現在800万ダウンロードを突破しています。

Fate/Grand Order公式サイト
http://www.fate-go.jp/

今回のAnimeJapan 2017で展示された『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』は、FGOのマスター(主人公)となってヒロインのマシュとの体験をVRで可能にしたPlayStation VR(PSVR)向けコンテンツです。

Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト公式サイト
http://vr.fate-go.jp/

今回は、FGO、『FGO VR』の開発元であるディライトワークス株式会社のFGO PROJECTクリエイティブディレクター塩川洋介氏に話を伺いました。


ディライトワークス株式会社
FGO PROJECTクリエイティブディレクター
塩川洋介氏
  2000年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社。2009年からSQUARE ENIX, INC.(北米)に出向。帰国後、スクウェア・エニックス・ホールディングス、Tokyo RPG Factoryを経て、現在に至る。過去に携わったタイトルに『KINGDOM HEARTS』『KINGDOM HEARTS II』『DISSIDIA FINAL FANTASY』『MURDERED 魂の呼ぶ声』『いけにえと雪のセツナ』『Fate/Grand Order Gutentag Omen』などがある。監訳書に『「レベルアップ」のゲームデザイン』『「タッチパネル」のゲームデザイン』『おもしろいゲームシナリオの作り方』がある。

「マシュに会うVR」

ーーまずは企画当初の話から聴いていきたいと思います。今回の『FGO VR』は「feat.マシュ・キリエライト」という副題がついており、マシュ推しでした。初めから「マシュ」に決まっていたのでしょうか。

塩川:
初期は、「ゲーム中のシーンを再現しよう」とか、移植的なものとか、色々なアイディアがありました。しかし、結構早い段階で「サーヴァントに会いに行く」というコンセプトは固まりました。

その中で、「会いに行く」としたら誰になるのだろうと考えたときに、やはり「FGO」のメインヒロインであるマシュ・キリエライトだな、と。「Fate」シリーズ全体で見ると、アルトリア・ペンドラゴン(※1)の方が知名度があるのですが、今回はFGOを遊んでくれる方に向けたコンテンツだと決めていたためマシュに決めました。

※1 アルトリア・ペンドラゴン:「Fate/stay night」に登場するヒロインの1人

ーー「マシュに会う」というコンセプトから、どのようにあのシーンとストーリーに繋がっていったのでしょうか。

塩川:
今回は、普段とは少し違ったマシュの衣装やシチュエーションが表現されている「パーソナル・トレーニング」という概念礼装(※2)から着想を得た内容になっています。「パーソナル・トレーニング」は、トレーニング中にマスターに向けて声をかけているシーンが表現されているんですが、「マスターに向けて声をかけている」って、まさに「サーヴァントに会いに行く」っていうコンセプトにぴったりなんです。そこから発想を広げていって、具体的にどのようにVR体験に落とし込んで行くかを考えました。

※2 概念礼装:ゲーム中に登場するアイテム。サーヴァントに装備することで、ステータスアップなどの効果が得られる。

ーーアイテムとはいえ、シリーズに縁のあるものだったりと設定がかなり細かい印象のある概念礼装ですが、この「パーソナル・トレーニング」は元々どういうコンセプトだったのでしょうか。

塩川:
「パーソナル・トレーニング」は「カルデアの中の日常」を切り取っています。きっとマスターとマシュがトレーニングをすることもあるんだろうな、という妄想から始まり、その休憩の一コマを描いた概念礼装になっていて、前後状況など色々と想像の余地のあるものを意図しました。

ーーまさに体験内容は、戦闘シーンではなく「日常」にフォーカスしたものになっていますね。塩川さんとして、ユーザーさんに一番楽しんでもらいたい点はどこになるでしょうか。

塩川:
マシュに会えた」と感じていただきたい、ということに尽きます。FGOを日常的に遊んでいる中で、マシュとはたくさん接することができるし、FGOの世界にマシュは居ます。ただし、そこでのマシュは物語の中には居ても、「マシュに会う」という体験まではできません。

そんな中で、VRを使うことによって「会うこと」を実現できていれば、作った甲斐があったな、と思います。

イメージ通りのマシュの姿を目指した試行錯誤

ーーそうなると、「キャラクター」が最も重要なコンテンツになってくるかと思うのですが、VRでのキャラクター作りには苦労したのではないでしょうか。

塩川:
どのマシュを見せれば「マシュに会えた」と思ってもらえるのかと。セイントグラフ(※3)なりイラストなり、2Dで描かれたマシュをそのまま3DにしてVRの中に置けばイメージ通りのマシュに見えるかと言われればそうではなくて、普段見ている2Dのマシュに会ったと思ってもらえる3Dのマシュ」を作ることを目標にしました。

※3 セイントグラフ:ゲーム中で、サーヴァントが宿っているカード。表面にはサーヴァントのイラストが描かれている。

ーーなかなか難しそうな目標ですね。

塩川:
シェーディングにこだわってみたり、顔にこだわってみたり。頭身も苦労しましたね。マシュの華奢な感じをどう表現するか。普通の人間と同じような頭身にしたら違うけれど、2Dのイラストのまま作ってもそれはそれで違うんです。

マシュは、割と身長が高い方なんですが、そのままの数値で作ってしまうと体験したときに高すぎます。そういった細かいところで、かなり苦労しました。

それから、(キャラクターの)エッジの表現には苦労しました。VRでの表現として、いわゆるトゥーンレンダリング(※4)を行いました。既存のVRタイトルでトゥーンシェーディングのタイトルは多くないと思いますが、やっぱり作るのが難しいんですね。実際に作ってみても本当に難しかったんですが、FGOが持っている2D感やアニメ感をある程度再現したかったので、かなりこだわりを持って制作しました。

特にPSVRでエッジをうまく表現するのがすごく大変でした。PC向けのハイエンドなVRHMDだとまた違ってくると思いますが、今回はあくまでPSVR向けのコンテンツだったので、そこでの見え方に合わせてかなり細かく作りこみました。

※4 トゥーンレンダリング:3DCGの一種で、2Dの手描きアニメーション、あるいは漫画やイラスト風の作画(いわゆるアニメ絵)でレンダリングさせる技術。平板で境界線のはっきりした陰影をつけるシェーディング(トゥーンシェーディング)を行う。

ーーそれで2Dとも3Dとも見分けがつかないグラフィックになっていたのですね。ちなみに、実際に出来上がったマシュの身長は、設定と比べてどうなっているのでしょうか。

塩川:
ちょっと大きくなっているはずです。

最初は、実寸のサイズで2Dのイラストに近いものを作ったんですが、やっぱりスケール感がかなり違いました。そこから、元の101%にするのか、99%にするのか、という形で、本当に細かい数値での調整を繰り返して……。制作チーム全員でPSVRを被って「何%だ!」と試行錯誤を繰り返しました

調整しているのは身長だけではなくて、肩幅など、本当に全身に微調整をかけて設定数値上のマシュではなく「体感としてのマシュ」が正しく表現されるように作りました。

それから、AnimeJapan 2017の反響にも繋がってくると思いますが、こう……マシュの身体を見る上で、強調されていて特徴的な部分がありますよね。
やっぱりそのまま物理法則通りに作ると不自然になるんです。パラメーターを上げていけばものすごく揺れるようにもなりますし。でも、そこは下品にならないというか、自然な感じを目指しました。AnimeJapan 2017での展示直前までみんなで微調整を繰り返しました。「これは揺れすぎだろ!」とか、逆に「これで揺れないのはおかしいだろ!」とか。

ーー確かにこだわりが感じられる揺れ方でした(笑)FGOのゲーム中では、アニメーション的な演出がほとんどないと思うのですが、「動き」は一から作ったのでしょうか。

塩川:
FGOの中でも、戦闘用のバトルキャラのアニメーションはあるのですが、今回はあまり参考になりませんでした。2016年の年末に放送されたTVアニメもありましたが、制作時期が被ってしまっていたので、参考にすることもできませんでした。

過去に作られた参考にできるものが一切ないので、そこは我々が作らなければいけないと。そうなったときに、トレーニング中の動きはもちろんのこと、感情の動きをとても繊細に作りこみました。3Dゲームを作る時の原則に従えば、モーションはわかりやすく大げさな方がいいのですが、大げさな動きはあまりマシュのイメージではありません(マシュは真面目で少し天然なキャラ)。そこで、体験者が飽きない程度に動かしながらも、マシュらしく動きを抑えていきました。この辺もかなり苦労しましたね。

ーー結構アクロバティックな動きが多かったですが、モーションキャプチャーでモーションを取るのも大変そうですね。

塩川:
体験内容のネタバレはなるべく避けたいので、あまり詳細な話はできないのですが、アクターさんには「あえて下手くそに」動いてもらいました。アクターさんは当然キレキレの動きができるのですが、あまりにもキレキレな動きっていうのは、マシュっぽくないんですよね。

今回、Quick、Arts、Busterのどれを選ぶかによってトレーニングの内容が変わりますが、どのトレーニングでも「頑張ってるマシュ」が表現したかったんですね。マシュは、運動神経はある方ですが、なんでもできるキャラではありません。だから、それなりに動けるけれど、上手ではなく、かつ一生懸命に頑張るマシュを表現するというのが課題でした。


ゲーム内でおなじみのコマンドカードを選択し、マシュとのトレーニングが選べる。


タイトル画面。召喚サークル風の背景で、手の甲を見るとマスターの証「令呪」が浮かんでいます。

塩川:
今回、メインはあくまでマシュで、体験する人には、極力マシュを見てもらえるように作りました。とはいえ、すでにFGOをプレイしてくれている人に遊んでいただくことが前提なのだから、そういう方々が見つけて喜んでくれるような要素も入れたいと思い、令呪を実装しました。令呪だけではなくて、マイルームを見渡すと聖晶石(※5)が山積みになっていたり、タイトル画面を召喚サークルっぽくしたり、レイシフト(※6)の演出を入れたり。そういう細かいところで、FGOをプレイしてくれている方に楽しんでもらえるような工夫をしています。ダ・ヴィンチ(※7)の通信なんかもそうですね。

※5 聖晶石:ゲーム内で召喚を行うためのアイテム。
※6 レイシフト:ゲーム中で行われる、人間を霊子化して過去へ送り込む時間旅行。特異点と呼ばれる異変の起こっている過去にレイシフトし、特異点を解消するのが主人公のミッション。
※7 レオナルド・ダ・ヴィンチ:サーヴァント。「ダ・ヴィンチちゃん」の愛称で親しまれ、ゲーム中では、カルデアからの通信で主人公たちをサポートしてくれる。

ーー今回のVR体験では、ダ・ヴィンチちゃんがマシュとプレイヤー以外に出てくる唯一の登場キャラですね。

塩川:
『FGO VR』の初出のタイミングとして、AnimeJapan 2017というのは初期から決めていました。そうなると、第一部(※8)が終わった後に出てくるという前提になってきて、FGOをプレイしている人の中での時系列と『FGO VR』の時系列とで齟齬が出ないようにしました。もし『FGO VR』を3年後に遊んだら全く意味を持たないこだわりですが、初出のタイミングでプレイした人に違和感なく楽しんでもらうことを大事にしています。


マシュと通信を行う「ダ・ヴィンチちゃん」。

※8 第一部:FGOのメインストーリー特異点Fから終局特異点のこと。完結後の2017年4月時点では、第2部へと繋がる物語として新章「Epic of Remnant」が配信されている。

ファンが待ち望んでいるVR、体験機会を設けながらいずれは配信へ

ーーAnimeJapan 2017で展示をしてみて、実際の応募数や体験人数とかはどれくらいだったのでしょうか。

塩川:
具体的な数は言えませんが、約30台用意したPSVRが2日間フル稼働していました。そんなフル稼働体制でも全く足りないほどの応募数をいただきました。また当日も多くの方に来ていただきました。

ーー当日のキャンセル待ちの列もすごかったですよね。実際に体験された方の反響はいかがだったでしょうか。

塩川:
実際にプレイした方の反響としては、「マシュに会えた!」とか、「マシュ可愛かった!」などといったところで、非常にいいリアクションを多数いただけました。
今回の『FGO VR』は、イベントに来ていただいて、FGOVRを体験していただいて、家に帰る、というところまで含めて設計していました。事前情報なしに体験してもらって、実際にプレイした人だけが実際に味わえる体験というところを重視しました。

ーー今回は、抽選倍率も高かったということで、体験できなかった方も多かったわけですが、今後また体験できる機会などはあるのでしょうか。

塩川:
どんどんやって行きたいと思っています。直近ですと、ゴールデンウィークの徳島でのマチ★アソビでまず何かできればと思っています。それから、AnimeJapan 2017でも発表した、夏に行うFGOの2周年記念イベントでも機会を設けたいと思っています。体験の機会はどんどん設けて行きたいと思っていますが、それにも限界があるので、いずれは配信という形で、より多くの方に届けられればと思います。

ーー配信は楽しみですね。2月に、FGO内でユーザーアンケートがあったとき、「今後期待しているコンテンツ」の中に「PSVR」が選択肢としてありました。これを選んだ方はどれくらいいたのでしょうか。

塩川:
すごく多かったですね。AnimeJapan 2017の体験会への応募よりもはるかに多かったです。FGOユーザーの皆さんもかなり期待してくれているのかな、と感じました。
「VRをやったことがない」という方がすごく多くて、「FGOがVRになるからやってみたい」と思っていただけたのでしょうかね。

キャラクターの魅力を引き出すVR

ーー今回の開発は、どれくらいの期間、人員で行われたのでしょうか。

塩川:
2017年1月にプロジェクトを発表させていただいたんですが、その少し前くらいからです。AnimeJapan 2017までは結構短い期間だった、と思います。人員に関しては、詳細は言えませんが、コンテンツの規模に見合った人数で取り組んでいます。私や監修していただいたTYPE-MOONさんなど、数名兼任の人はいますが、基本的にはFGO本編とは別チームで開発しています。

ーー体験させていただいたものは、完成度も高く、体験していて違和感のないものになっていました。今回は初めてのVR開発ですが、実際に開発してみて、「VRに向いている」、「VRに向かない」と思ったことなどはありますか?

塩川:
今回は、VRでの移動など「やらないこと」を決めて開発していたのですが、「向かないこと」と断言できる部分までは見えてきませんでした。実際に作ってみた中で、VRというのは、キャラクターの魅力を引き出すのには本当に優れている媒体だと感じました。冒頭でもお話ししたように、今回は「マシュに会う」というコンセプトにフォーカスして作りましたが、十分にマシュの魅力を引き出せたと思います。

ーーちなみに、塩川さんがFGOの中で今一番編成に入れているキャラクターは誰でしょうか。

塩川:
強いて上げるとしたら、最近だと織田信長(※9)でした。
復刻イベント(※10)や新しいイベントでたくさん活躍しているところを見て、改めて「いいキャラだな」と思いました。

※9 信長:サーヴァント「織田信長」。愛称「ノッブ」。
※10 復刻イベント:2015年に行われた、織田信長が登場するゲーム内イベント「ぐだぐだ本能寺」を復刻した「復刻:ぐだぐだ本能寺 ライト版」。

ーーじゃあ、『信長のVR』とか(笑)

塩川:
それはなかなか強烈そうですね。
「わしじゃ!」って言って出てきそうです。やっぱり、「会いたい」と思うキャラは人それぞれですよね。

原作陣の反応も良好 奈須きのこ氏の強いこだわりも

ーーFateシリーズと言えば、原作者の奈須きのこさんが『FGO VR』を体験された際の反応はどうだったのでしょうか。

塩川:
企画最初期の段階でお話ししたとき、すでに奈須さんはVRに興味があるとおっしゃっていて、「こんなのあったら絶対欲しくなるじゃん!」と言っていました。奈須さんがそう思っているということは、多くのTYPE-MOON、Fateファンの方々にも同じように思ってもらえるのかな、という自信に繋がりました。

作っていく中では、マシュの立ち振る舞いや感情表現に関しての細かい要望・指示をいただきました。『FGO VR』には、マシュが恥じらうシーンがありますが、そこでどれくらい感情を出して恥じらうのかとか。

一通り完成した後にも体験していただきましたし、奈須さんだけでなく、TYPE-MOONのみなさんに体験していただきました。みなさん、体験を終えてPSVRを脱いだ時に満足そうな顔をしつつ、ちょっと恥じらっていたので、「これは大丈夫だな!」と思いました(笑)

今後の展開

ーー今後、FGOを題材にVRを作っていく中で、塩川さんが実装してみたいと思う機能などはありますか?

塩川:
やりたいこと自体はいっぱいあります。今回、タイトル画面やマイルームなどでFGOの魅力を体験してもらったのですが、FGOの魅力にはさまざまな側面があると思っています。FGOの様々な魅力を体験できるようなものを作っていけたらいいな、とは思います。

ーー今回は対応デバイスがPSVRでしたが、今後別のデバイスやプラットフォームでの展開はあるのでしょうか。

塩川:
今回のコンテンツに関しては、イベント会場にわざわざ足を運んでいただいてマシュに会いにいく、という前後関係を含めて考えて設計していたので、そのまま別のプラットフォームに移植することはないと思います。

PC向けのVRにしてもスマホ向けのVRにしても、それぞれに合うコンテンツの形は違うと思います。もしも別プラットフォームで展開するとしたら、それはそれで別の形での展開になると思います。実際に展開されるかどうかはお楽しみに…といったところですね。

ーーそういえば、4月1日の……。

塩川:
ああ、あれですか。レオニダス(※ 11)の……。

※11 レオニダス:2017年のTYPE-MOON公式サイトでエイプリルフールネタのひとつとして発表された、『Fate/Grand Order VR feat.レオニダス一世』。マシュではなく、サーヴァント「レオニダス一世」をメインにしたVRコンテンツの偽予告でした。

ーーそちらではなく、別のプラットフォームということで『Fate/Grand Order Gutentag Omen』(以下FGO GO)(※12)でAR機能を取り入れたアプリをリリースされていましたよね。

塩川:
『FGO GO』ですね。1日でサービス終了してしまい、本当に申し訳ありません。

FGO本編でできることはたくさんあるんですが、そこでできることだけがFGOの魅力の全てではありません。だから、その都度別のコンテンツとして作っています。『FGO VR』もそうですし、『FGO GO』に関しても、ARだからこそできることをやるために作りました。「ARだからこそできること」に対して我々の導き出した答えが「外に出ないでサーヴァントGETだぜ」ということだったわけなんですけど……。これからも、可能性を広げられることには挑戦していきたいと思います。

※12 FGO GO:2017年4月1日(土)にリリースされたAR機能搭載のスマートフォン向けアプリ『Fate/Grand Order Gutentag Omen』。仮想世界を歩き回り、サーヴァントを捕獲することができた。現在はサービスを終了。

ーーそれは楽しみですね。今回は「FGO」のVRコンテンツでしたが、今後「Fate/stay night」など、別のFateシリーズのVRコンテンツの展開などはあるのでしょうか。最近の『Fate』の展開だと、映画「Fate/stay night[Heaven’s Feel]」(※13)などもありますよね。

塩川:
この『FGO VR feat.マシュ』が大成功を収めれば、可能性としてはあるかもしれませんね。なので、まずはこれを応援していただければと思います。

※13 「Fate/stay night[Heaven’s Feel] 」:『Fate/stay night』のシナリオにおいて、三つめのルートで、全3章構成の劇場アニメ化が決定している。第1章の「Fate/stay night[Heaven’s Feel] Ⅰ.presage flower」が2017年10月14日に公開予定。

ーー読者のみなさんに向けて、何か伝えたいことなどがあればお願いします。

塩川:
『feat.レオニダス』ご期待ください(笑)

ーーまさかの(笑)FGOは一騎一騎のサーヴァントが魅力的なので、キャラごとにVRで会ってみたいですよね。

塩川:
とはいえ、キャラの3Dモデルを作ってポンっとマイルームに置けばいいとかではなくて、サーヴァントごとにふさわしいシチュエーションというものがあります。今回、マイルームに「マシュが入ってくる」に合わせて作った展開を、レオニダスがマシュと同じ様子で入ってくるではまた違った意味合いになると思います。なので、レオニダスならレオニダスに合ったシチュエーションを作るのが大事になってくると思います。そういう意味で、レオニダスはだいぶハードルが高そうですね(笑)

ーー最後に思いっきりハードルを上げましたね(笑)FGO VR今後の展開に期待したいと思います。

 

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