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業界動向 2018.11.10

【インタビュー】好調続くDMM VR、2年目の売上は前年比2倍の40億円突破

国内最大手の有料動画プラットフォーム「DMM.com」の行う「DMM VR動画」が2018年11月にサービス開始2周年を迎えます。DMM VR動画では、お笑い、ミュージカル、アニメ作品、スポーツ、グラビア、そしてデジタルコマース社の提供するアダルトなどと幅広いVR動画を配信しています。

今回はDMMがVRに取り組んできた二年間の実績と今後のVR関連事業の展開について、「DMM VR動画」を担当するDMM.com 執行役員 EC&デジタルコンテンツ本部長 兼動画配信事業部長の山本弘毅氏にインタビューを行いました。

「VRのユーザーは着実に集まって、盛り上がっている」

――DMMさんがVR動画配信サービスを開始してから、およそ2年が経とうとしています。前回インタビューさせてから1年が経ち色々と変化があったかと思いますが、その後いかがでしょうか。

山本:
1年目の売上がおよそ20億円で、2年目はその倍の40億円を超えました。タイトル数も5,000タイトル以上です。

――売上2倍ですか。タイトル数も倍になりましたね。昨年は2年目は30億円以上を見込んでいるということでしたが。

山本:
タイトルごとで見ると、500万円以上売り上げている作品が250タイトル近くあります。また一番売れた作品ですと、単体で1億円売り上げたタイトルが存在します。

――単体で1億円ですか……

山本:
どのタイトルかは伏せますが、発売から10ヶ月ほどで1億円を突破しました。売上の幅もリクープできるゾーンも厚みができてきたので、全体的に売上が上がり、月商・年商ともに上がってきました。(VRではない通常の)映像作品の配信で過去最高の売上が2億数千万円なので、VR作品は1タイトル当たりの売上が高めなんです。VR市場に関してはネガティブに言われることも多いですが、我々は「VRのユーザーは着実に集まっていて、しかも盛り上がっている」と考えています。

1タイトルあたりの売上

タイトル数

1億円以上

1タイトル

5,000万円以上1億円未満

5タイトル以上

2,000万円以上5,000万円未満

25タイトル以上

1,000万円以上2,000万円未満

50タイトル以上

500万円以上1,000万未満

150タイトル以上

――気になる点として、ユーザーはVR動画を見る際、どのようなデバイスを利用しているのでしょうか。

山本:
やはりスマートフォン(iOS、Android)、それからPlayStation VR(PSVR)が多いです。PSVRはアクティブユーザーが毎月8万人ほど。少し離れてOculus Go、Oculus RiftやHTC VIVE、Gear VR、Windows MRの順になります。Oculus Goは予測していたよりもユーザー数が多く、Oculus Go単体で毎月1万5000人以上のユニークユーザーがいます。


(ハイエンドデバイスの中でも、PSVRはDMM VRの利用数が多い)

――アクティブなユーザーが万単位でいるというのは、非常に明るいことですね。アダルトジャンルでの話にはなってしまいますが、先日FANZAさんから発表されていた「FANZA REPORT 2018」では、ユーザーの年代が若ければ若いほど「VR」が人気の検索ワードになっているのは興味深かったです(18-24歳:9位、25-34歳:10位、35-44歳:13位、45-54歳:17位、55歳以上:20位以下)。

山本:
年配の方が視聴されるのはDVDですね。サイトでもお店とかでも年齢層が高い傾向にあります。配信の方が映像はきれいというのもあるし、2,30代の人はDVDを借りる方は少ないですよね(笑) 若い人のほうが新しいガジェットに飛びつきやすいんだと思います。VRは物理メディアがないので、年配の方にはハードルが高くなっているようです。

VRという新しい市場が拓け、競争を生む

――タイトルも倍増しているというお話でしたが、メーカー数も増えているのでしょうか。

山本:
増えています。前回より約50社ほど増えて、現在150社以上のメーカさんがいます。傾向としては、1作品を作るのに1,000万円以上かかるような新規タイトルは今年に入って減ってきています。

――長尺物が人気ですよね。

山本:
DMM VRのサービスを初めた頃は、20~30分くらいの長さの作品がほとんどでした。サービスを開始して半年の段階で、PSVR対応とストリーミング対応を行いました。そのタイミングでたまたまあるメーカーさんが出した長尺のタイトルが大ヒットしました。その結果、一気に長尺のタイトルが増えていくようになったのです。

――トレンドが生まれたのですね。

山本:
メーカーの力の入れ具合も変わってきています。DVDは上位メーカーが決まっていますが、それをひっくり返すことができるのがVRコンテンツです。DVDで上位のメーカーは最初VRに力を入れていなかったので、VRコンテンツ制作に力を入れているメーカーがマーケットを取りに来た印象があります。現在は「VRといえばここ」というメーカーが出始めています。

――VRという新しい分野が出てきたことで競争も活性化しているのですね。トレンドという意味では2年前から180度3Dのコンテンツが当たり前になっていますが、ようやく世界的にもGoogleからVR180などの規格が出てきて180度3Dの流れが生まれてきています。

山本:

制作者側に撮影のノウハウが溜まってきたので、参入がしやすくなってきましたね。
初期はどうやって撮ればいいかわからない制作会社も多く、紹介したこともありました。でも、自分たちでやったほうがお金かからないし制作費が下がります。

そもそも360度をユーザーは見ているのかという疑問もあります。YouTubeによると7割の人が正面しか見ていないことも明らかになってきています。360度かつインタラクティブでコンテンツ作るとお金がかかってしまいます。手軽に見れるスタンドアローン(一体型)になっても、Netflix VRのように2Dを寝ながら見ている人たちも多くいるわけですから。

――制作コストの問題は難しいですね。高コストな作品が減ってきているということですが、何か起きているのでしょうか。

山本:
ライト層がフラッとサイトに来ることが起きにくくなってきています。ライトな層には商材が広がらないと、ふらっと来てVRコンテンツを買おうとはなりません。アダルトやグラビア、2.5次元にはニッチなファンがいます。たまたまVR動画のサイトを見て買おうというより、ニッチなものにつくファンの人は公式HPからの動線に来る人たちです。

――3DCGのコンテンツもそうですが、制作費が上がるコンテンツでは、費用回収は難しそうですね。

山本:
我々はプラットフォーマーなので、コンテンツホルダーさんに作っていただかないと商材は増えていきません。海外だとゲームも盛り上がってきていますし、日本のメーカーにもぜひ追ってもらいたいところです。マーケットが広がってくれればメーカーさんにお返しできるお金が増えていき、次のコンテンツを作れるようになります。

アプリのUI/UX改善が課題

――サービスのアップデートなどもされていますが、昨年から今年にかけてどういった点が変わったのでしょう。

山本:
大きかったのは、Oculus Go対応サブスクリプションサービス(月額定額課金)の導入です。それと、Androidの対応端末を広げました。もともと弊社の格安スマホでは視聴できず、大手の通信キャリアさんが出しているスマホでも限られたモデルでしか視聴できませんでした。その理由は初めてのVR体験を高画質なもので体験してほしいという想いがあったからです。そのため、あえてスマホに要求するスペックを高めに設定していました。

――方針が変わったということでしょうか。

山本:
裾野を広げる意味でも、あらゆるスペックの低いスマホでも低画質で視聴できるようにしました。(以前はVR専用デバイスは高価で敷居も高かったが)現在はVRを体験するデバイスが増えてきたため、もっとリッチな体験がしたいとなれば追加課金をせずに他の端末でコンテンツが見れるようになりました。

――再生する画質は再生するスマートフォンに合わせてアプリの側で自動的に変更されるということでしょうか。

山本:
はい。機種ごとに一度動画を再生してみることで、アプリ側で最適な画質を探して自動的に設定されます。

――今後はどういったアップデートを進めていかれるのでしょうか。

山本:

11月に2周年のキャンペーンを予定しています(※1)。また、現在は動画再生のフレームレートを30fps(※2)に加えて60fpsに対応します。画質に関してはハードウェアに依存するので、ハードウェアごとに変えるようにします。画角が下がってもfpsを上げることで結果として、ハードに最適な動画視聴ができるようにします。日本で課金できる一番綺麗なVRコンテンツが集まるようにしたいですね。

(※1 2周年キャンペーンの期間は2018/11/8(木)~2018/11/22(木))

(※2 fps:frame per second。1秒あたりでディスプレイに映像が描画される回数のこと。fpsが高くなることで映像がより滑らかになり、品質の高いものとなる。)


(30fps)


(60fps)

加えて、現在はセル型(売り切り型)だけの販売モデルのところにレンタルを加えようと思います。2Dの映像配信ではレンタルユーザーの方が実は多いんです。高画質対応レンタルの導入で、今後はヘビーユーザー、ライトユーザーにも合わせて裾野を広げていきたいです。

――対応デバイスについて、これから増やす予定はありますか。

山本:
Daydream対応は進めていますが、対応時期は未定です。また来年発売予定のOculus Questに関しても対応について前向きに検討しています。

――Oculus Goのアプリの使い勝手など、いわゆる質の部分のさらなる改善はあるのでしょうか。

山本:
Oculus Goは人気が高いものの、UI/UXなどで不満の意見をいただくことが多いです。ユーザーさんにご迷惑をおかけして申し訳ないです。少しずつ改善してしていきます。ますは、“戻る”機能の実装と、寝ながら3D/2Dの作品を見られるようにする予定です。(※)

(※編集部注:11月10日現在、「戻る」、「寝ながら3D/2D作品を見れる」機能は実装済)


――使い勝手の改善には期待して良い、ということですね。

山本:
アプリ周りのUI/UXをより強化していくという大枠の方針は続いていきます。各デバイス向けのアプリをそろえること優先で取り組んできましたが、iPhoneのアプリも含めてユーザー数の多いところから改善していきたいと思っています。

――ありがとうございました。

Mogura VRでは過去に4度インタビューを行っています。過去のDMMインタビュー記事はこちら。


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