Googleは主催する開発者会議「Google I/O 2016」にて、高品質なスマホVRを提供するプラットフォーム『Daydream』を発表し、注目を集めています。DaydreamはGoogleが開発するモバイルOSであるAndroidの次世代バージョン『Android N』(※名称は仮。現在公募中)のフラグシップモデルに対応する予定で、2016年秋ごろに提供が開始される予定です。
Daydreamの特徴は、スマホVRに関連する3つの領域「OS/スマートフォン・VRデバイス・アプリケーション」の全てを最適化して、Google自らが主導してハイクオリティなVR体験を届けていくという点が挙げられます。
VRに最適化されたOS/スマートフォン
これまでのAndoroid OSとは違い、Android Nには「VRモード」が組み込まれています。OS自体がVRに最適化された「VRモード」により、Gear VRと同レベルの20ミリ秒というレイテンシー(遅延)が実現されると発表されました。レイテンシーは、頭を動かした際などに発生する描画の遅延のことで、人間が違和感なくVRを体験するには20ミリ秒以下が必要とされています。
また、Android NはグラフィックスAPI「Vulkan」対応となります。VRだけに限りませんが、「Vulkan」により今までよりも高いフレームレートでのパフォーマンスが可能になり、VRコンテンツへの影響も大きいものになると言えます。
さらに、3Dオーディオの機能やVR向けのUI設計などが追加されることも明らかにされています。
そして、Daydreamが要求するスペックを満たしたスマートフォンには『Daydream Ready』という認定を与えるとしています。ヘッドトラッキングのジャイロセンサー、VR向けの高解像度ディスプレイ、SoC(※)で一定の基準を満たしたものがDaydream Readyのスマートフォンとして認められます。
Daydreamスマート・フォンの特徴。低残像のディスプレイ、高パフォーマンスなSOC、低遅延のセンサー
※SOC: System on a chipの略。IT用語辞典によると「ある装置やシステムの動作に必要な機能のすべてを、一つの半導体チップに実装する方式」とあり、CPUを核にグラフィックスなどを統合したケースが多い。
Android NのVRモードが目指す内容。低遅延、安定したパフォーマンス、ヘッドトラッキング、システムUI
Google I/O 2016では、Daydream Readyに取り組んでいるスマートフォンメーカーを下記の通り発表しました。
- サムスン
- HTC
- LG
- シャオミ
- ファーウェイ
- ZTE
- ASUS
- ALCATEL
Daydream Readyのスマートフォンは2016年秋頃に発売予定です。
また、すでに開発者版向けにAndroid Nのプレビュー版が公開されています。Googleが発売する「Nexus 6P」などでAndroid Nのプレビュー版の更新ができます。Googleは、Daydreamの開発用として現在唯一対応している機種として「Nexus 6P」を挙げ、Daydream向けVRアプリを開発する際には「Nexus 6P」での動作を参考にすることを推奨しています。
DaydreamのVRデバイス(ヘッドセット+コントローラー)
Googleは、Daydream向けのヘッドセットと専用コントローラーを発売するとしています。
上の画像は、Daydream向けのヘッドセットとコントローラーのリファレンスデザイン。Googleはデバイスのリファレンスデザインをハードウェアメーカーに提供する予定とし、高品質なスマホVR体験のエコシステムを創るとしています。
スマートフォンのNexusシリーズのようにGoogle自身が開発に携わることを明らかにしてます。他にどのメーカーからDaydream向けのヘッドセットと専用コントローラーが発売されるかは不明ですが、色々なデザインのヘッドセット、コントローラーが出てくる可能性も予想されます。
ヘッドセットに関しては具体的な機能などは明らかにされていませんが、コントローラーは片手で持つタイプで、本体の向きをトラッキングすることにより直感的な操作が可能なものであることが判明しています。
上記のエミュレータ用Daydreamコントローラーの画像とその説明文を参照すると、一番上の大きなサークルのボタンはタッチパッド式となります。タッチパッドはクリックすることもできます。しかし、マルチタッチには対応していません。VRアプリでは主にこのタッチパッドとそのすぐ下にあるAppボタンを使用します。一番下のHomeボタンは、トラッキングを初期化する際などに使うボタンとなるようです。
You can do some pretty awesome things with the Daydream controller. #IO16https://t.co/GMKIrNbPYS
— Google (@Google) May 18, 2016
VRアプリケーションとプラットフォーム
Daydreamのホーム画面である「Daydream Home」が提供されることが説明されています。「Daydream Home」からVRアプリを選択し、起動します。
「Daydream Home」には、Androidスマートフォンのアプリ配信プラットフォームであるGoogle Playも用意されています。このdaydream版のGoogle Playから、VR空間上でVRアプリを検索しダウンロードができます。
そして、Daydream向けのVRアプリを提供するノンゲーム企業とゲーム企業がそれぞれ発表されました。
Google I/O 2016で発表された、ノンゲームのVRアプリを提供する企業は下記の通りです。
- ニューヨークタイムス
- ウォールストリートジャーナル
- USAトゥデイ
- CNN
- HBO NOW
- ネットフリックス
- NBA.com
- hulu
- ライオンズゲート
- IMAX
- MLB.com
Google I/O 2016で発表された、ゲームのVRアプリを提供する企業は下記の通りです。
- エレクトロニック・アーツ(EA)
- NetEase Games
- OtherSide Entertainment
- MinorityVR
- ユービーアイソフト(Ubisoft)
- Resolution Games
- CCP
- nDreams
- Turbo Button
- Climax Studios
また、主要なゲームエンジンである「Unreal Engine4(UE4)」と「Unity」が対応します。これにより、VRゲームの開発が進むことが予想され、VRコンテンツの充実が望まれます。
そして、Google純正のVRアプリの提供も発表されています。
- Google Play ムービー& TV
- Googleストリートビュー
- Googleフォト
- YouTube
Daydream版のYouTubeアプリでは、音声検索に対応。Google Play ムービー& TVは、Google Playで購入した映画やテレビ番組などをVR空間上の大きなスクリーンで視聴することができます。
Daydreamまとめ
Googleはこれまでに、ダンボール製の誰でも簡単に、かつ安価に入手できるVRヘッドセット「Google Cardboard」を展開してきました。Googleは、Cardboard向けのVRアプリは5,000万以上ダウンロードされたと発表するなど、CardboardでVRの普及を目指したプロジェクトには手応えを掴んでいるとしています。
しかし、Google CardboardでのVR体験には限界もあります。今回のDaydreamにより、高品質なスマホVR体験が提供されることになります。さらに複数のAndroidスマートフォンが対応すること、多くの企業がスマホのVRコンテンツを制作します。DaydreamによるVRの普及が期待されます。
https://www.youtube.com/watch?v=KNR4j1DJ4Cc
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(参考)
Google VR 公式サイト
https://vr.google.com/