Home » 【XR Kaigi 2022】デジタル革新を支援するマイクロソフトにとって「メタバースは新しいコンピューティングのパラダイム」


セミナー 2023.01.10

【XR Kaigi 2022】デジタル革新を支援するマイクロソフトにとって「メタバースは新しいコンピューティングのパラダイム」

国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi」が今年も開催されました。今年の「XR Kaigi 2022」はオンラインカンファレンス(12月14日~16日)と、東京都立産業貿易センター 浜松町館でのオフライン(12月22日・23日)のハイブリッドで実施。オンライン開催では、3日間の期間中に60のセッションが行われました。

今回はその中から、12月14日に行われたセッション「デジタル革新を支援するマイクロソフトのメタバース」をレポートします。登壇者は、日本マイクロソフト株式会社(以下「日本マイクロソフト」)シニアテクニカルアーキテクトの鈴木あつし氏です。

コロナ渦で大きく変化した職場環境でメタバースへの活用に期待が集まる

普段、様々な経営層や事業トップの人たちと話をする機会が多いという、鈴木氏。以前は、メタバースについてどんなものなのか知りたいという問い合わせが多かったのが、ここ半年ぐらいは新しい事業の取り組みや経営戦略のひとつとして考えていきたいという相談が増えたといいます。「つまり、メタバースが経営の柱として重要な位置を占めてきているのだと考えられます」(鈴木氏)

「今後は物理空間とリモートの両方を活用していく、ハイブリッドワークが企業の中で一般化していきます。このハイブリッド環境の中で、企業においてメタバースの価値はどのようなものになるのでしょうか? この3年間、様々な変革の中でビジネスが進んできました。多くの企業は、環境へ配慮した経営を進めています。なかでもリモート技術は効果的です。

多様性を尊重した職場環境も求められます。コロナ渦には物流や人の移動も止まりました。今後もこうしたパンデミックが発生しない保証はありません。同じ事態になっても現場の業務を止めない、レジリエントな業務環境の構築も重要です。

こうしたなかで、メタバースの活用に大きな期待が寄せられているのです。

空間の重要性を再認識した3年間

リモートの技術でも、こうした課題の多くは解決できました。リモートのコミュニケーションを3年間体験したことで、コミュニケーション自体は一定量できるとわかってきました。リモートにはメリットもあります。物理的な移動を伴いません。時間コストや環境への影響を減らせます。

また、短い時間でより多くの人と接点を持てるようになりました。移動時間がない分ミーティングが多く出来るだけではなく、物理的な移動をせずに会議に参加できます。今までよりも多くの人とやりとりできるようになりました。

その一方で、リモートは対面でのコミュニケーションとはまったく別物です。リモートでは音声主体のコミュニケーションになりがちです。リモートでカメラをオンにする人はそれほど多くありません。音声主体のやりとりでは、言葉になっていない非言語情報の伝達が難しいのです。

ディスコミュニケーションが発生しやすくなります。また、会話が被ることを避けるため一方通行になりがちです。物理的に直接会っていた空間の重要性を再認識した3年間だったともいえます。

物理空間とリモートの良さを活かして、ハイブリッド環境で多様性を尊重した新しいコミュニケーションの手法として、企業の中でのメタバース活用への期待がますます高まっています。

マイクロソフトは、メタバースを新しいコンピューティングのパラダイムだと考えています。紙で記録していた時代からPCが登場し、情報がデジタルで記録できるようになりました。それがオンラインに繋がることで、リアルタイム処理が可能になりました。モバイルやクラウドの登場で、いつでもどこでも膨大な量の情報が扱えるようになりました。

メタバースは、この次に来るコンピューティングのプラットフォームとして期待されています。素晴らしい技術だけでは、社会に定着していくことはなく、他の社会的、文化的トレンドも重要です。様々なリモートのコミュニケーションを経験したことで、メタバースを活用する社会的な背景も整ってきました。マイクロソフトは、メタバースをコンピューティングの次なる進化と捉えて、プラットフォームを提供していきます。

3つの柱でメタバースを支援するサービスを提供

マイクロソフトは、大きく分けて3つの柱でサービスを提供しています。ひとつ目は、一般消費者向けです。ふたつ目は、より企業の業務に特化した産業向けのメタバースです。3つ目は、仕事や学習のなかで活用する、コラボレーションのためのメタバースです。

マイクロソフトは、Microsoft Azureというクラウドサービスを使って、オンラインゲームの環境を構築できるプラットフォームを提供しています。マイクロソフトのデータセンターを活用することで、140以上の国・60以上のリージョンで展開するグローバル規模の環境を利用できます。

オンラインゲームの開発だけではなく、メタバースのプラットフォーム構築にもAzureを活用できます。そのひとつの例が、高精細な地形を再現した『Microsoft Flight Simulator 2020』です。200万以上の都市が再現され、15億の建物、2兆本の樹木、1億1700万の湖がリアルに再現されています。

デジタルツインはゲームの世界だけではなく、様々な産業でも活用が進んでいます。「HoloLens 2」はゴーグルのような形をしたデバイスです。デバイスの前面部分が透明なレンズになっており、現実空間に「ホログラム」と呼ばれる立体映像を映し出せます。表示した映像は、手を使って直接操作できます。

「HoloLens 2」は様々なアプリケーションを動せますが、そのひとつが『Dynamics 365 Guides』です。作業支援やセルフトレーニングに活用できるアプリケーションです。「HoloLens 2」の機能を使い、現実空間の中に作業指示やガイドを立体的に出すことが出来ます。

トレーニングコンテンツは、コンテンツ作りに時間やコストが掛かってしまうと変化への対応が難しくなります。『Dynamics 365 Guides』では、こうしたコンテンツをノーコードで作成できます。

また、作業データはテレメトリーデータとして自動的に保存されます。記録したデータは、テンプレートを使って参照可能です。作業の分析を行うことで、全体で見たときに非効率な箇所も見つけられます。各自のトレーニングデータを見ることで、苦手な作業やスキル全体の習得度合いも測れます。

『Dynamics 365 Guides』には、これまで『Remote Assist』で提供してきた機能の多くが搭載されました。グループ通話やTeamsで予定している会議にも参加できます。チャットやファイル共有も行えます。

『Microsfot Teams』にメタバースの機能を統合

続いて、社内外でのコラボレーションでの活用シーンの紹介が行われました。

「マイクロソフトは、メタバースを多くの企業で業務で活用できるように、『Microsfot Teams』にメタバースの機能を統合する計画を立てています。

『Mesh for Microsoft Teams』は、『Microsoft 365』とインテグレーションされているので、普段使っているPCやスマートデバイスと同じアカウントを使えます。VRヘッドマウントディスプレーやHoloLens 2だけではなく、PCやスマートデバイスにも対応しています。字幕と自動翻訳の機能で、言語の壁を越えたコミュニケーションも実現しています。

デジタルツインの空間を表示して共有する場としてもメタバースは有効です。今後はそうした使われ方も期待されます」

最後に鈴木氏は、「環境への影響に配慮したサスティナブルなビジネス環境の構築や、多様性を尊重したインクルーシブルな業務環境の構築であったり、現場の業務を止めないレジリエントな業務環境の構築にメタバースを活用してほしいです」と語り、セッションを締めくくりました。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード