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イベント情報 2015.12.07

【体験レポ】錦織選手らの試合の360度VRスポーツ中継で感じられた「VRならでは」の難しさ

11月28日、今年で5回目を迎えるエキシビションマッチ「日清食品ドリームテニス ARIAKE」が行われました。錦織圭選手や松岡修造選手らが登場する豪華なエキシビション・マッチとなりました。 この試合では、テニスコートの中央にあるネット脇に360度カメラを設置し、試合の様子を360度映像としてライブストリーミングで中継されました。 image201511261124103 スマホではスマホアプリ「360°Movie」によって視聴できたほか、東京・六本木にあるニコファーレでは、抽選で選ばれた70人近くがVRヘッドマウントディスプレイGear VRを装着し、会場のVRライブストリーミングを同時に視聴する試みが行われました。 image201511281138211 日本では、ニコニコ生放送の仕組みを使ったライブ等のVRヘッドマウントディスプレイ向け360度ライブストリーミングは行われていますが、スポーツ中継は初めての試みでした。

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実際に筆者も体験しましたが、課題はまだまだ多いと感じたのが実際のところ。解像度が低くなっており、選手の顔はぼやけてしまっていました。通信の転送量にも課題がありますが、画質が落ちすぎてしまうと特に没入感が薄れてしまいます。

また、コートの真ん中にカメラが1つだけ固定されていたため、サーブやラリーで行き交うボールを左右に頭を動かして追うのも大変でした。VR内では、コートの上方にパネルがぶら下がっており、テレビ中継で映るのと同じ映像が表示されていたため選手のドアップは見ることができました。とはいえ、全体的にVRならではの要素が感じられませんでした。

360度VRライブストリーミングには技術的な工夫に加えて「VRならでは」をどこに求めるのかという課題があります。

この分野に積極的な海外のVRスタートアップにNEXT VRがあります。技術的な工夫として、NEXT VRは講演などの中継では、映像を360度ではなく前方180度で中継し、後方180度を撮影しないという大胆な方法を採用しています。

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元来、スポーツ中継は、選手を近く見ることができるよりは、「その会場にいるような感覚、雰囲気の共有」ができるというのが最も魅力です。パブリックビューイングが盛り上がるのもその雰囲気の共有があるからこそです。360度の中継は、コートのど真ん中でなくとも、観客席で会場にいる他の観客と一緒に応援しているような中継の方がいいのかもしれません。

決定的瞬間は一緒に息をのみ、一緒に歓声を上げる、そういった一体感が体験できるようになるとVRで観戦を”体験”するのは、より面白くなってきます。

Gear VRで実装されているOculus Social AlphaはまさにVR版パブリックビューイングのαテスト版です。ゲーム実況サービスTwitchや動画共有サービスVimeoの動画を同じ部屋で楽しみながらおしゃべりができます。

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また、今回のイベントでは試験的な取組として、ニコファーレの会場内をRIOCH THETA Sを使って、ニコファーレの映像をニコニコ生放送で360度中継し、その様子をGear VRを使って眺めることができました。Gear VR専用の「niconico VR」アプリ(未配信)では、ニコニコならではの”コメント”が視界全体に流れます。ニコニコの動画文化と360度中継が合わさった一つの形でした。

今後、VR空間内で遠くにいる誰かとVRの中で一緒に大画面でスポーツ中継を見る未来が、そして最終的にはまるで会場にいるような感覚で見ている全ての人がバーチャル、現実の垣根を超えて興奮をともにする、そんな体験が可能になるかもしれませんね。

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