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Vision Pro 2024.02.01

【発売直前】なぜ、Apple Vision Proをわざわざ米国まで受け取りに行くのか?

米国内のみの発売、しかも個人にかなり最適化したデバイスになる、金額は日本円で50万円強……。

鳴物入りで2023年6月にアナウンスされたAppleの空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」。最初に挙げたように、あまりにハードルが高く、当初購入しようとは思っていなかった。

筆者はこれまで様々な XRデバイスを即買いしてきた。たとえ日本で買えなくても、なんとかして現地で購入、体験してきた。HTC VIVE(2016)、Bigscreen Beyond(2023)などは予約開始してから日本で最初の購入者だったらしい。HoloLens(2016)、Magic Leap 1(2019)、Valve Index(2019)、Rayban Stories(2021)など日本で未発売の状況でも、デバイスをいち早く触りたくて、あの手この手で体験した。

それでも、Apple Vision Proの購入にはビビってしまった……。

Mogura VRでもおなじみの西田宗千佳氏など、すでに体験した国内外諸メディアのレビューを見れば、明らかにこれまでのXRデバイスとは一線を画す、ハイクオリティなデバイスであることが分かる。スペックも公開されているし、パーツもだいぶ分析が進んでいる。

これだけ事前情報が充実しているのなら、さすがに今回は買わなくていいか……。

そんな風に思っていた矢先、日本からの予約が警戒していたほど難しくなさそうなこと、Apple Storeでの現地受け取りを選んだとして、ロサンゼルスだけは他の主要都市に比べて航空券が比較的割安なことを知ってしまった。

Apple Vision Proの予約が始まったのは日本時間1月19日22時から。22時00分ちょうどからの予約合戦に参加し、2月3日にロサンゼルスの店舗で受け取ることとなった。ZEISS製の視力矯正レンズは米国内の医師の診断書が間に合わなかったので、専用レンズは遅れての手配となるが……現地では慣れないコンタクトレンズを使ってレビュー予定だ。

iPhoneも、15 Pro Maxに買い換えて、取材のときや家の中でもVision Pro用の空間ビデオを撮り貯めた。最後の最後まで迷ったが、ロスレスを体感したいのでAirPods Pro(第2世代)も買ってしまった。

あとは現地に向かって受け取るだけである。

XRやメタバースに巣食う“魔物”

さて、今回予約に踏み切ったのには、もうひとつ理由がある。

迷っていたときに脳裏から離れなかったのは、XRやメタバースなど、この領域に巣食う魔物のことだ。筆者も知らず知らずのうちにその魔物に喰われそうになっていた。

それは「やらずにやった気になる」という魔物だ。

ヘッドセットをつけたXRで体験できることは文字通り「体験」である。良い点だけではなく課題も含めて、その実際のところは「やらないと分からない」。

しかし、体験できるまでのハードルがとにかく高い。デバイスを体験できる機会はゴロゴロ転がっているわけではないし、スペックの近い似たようなデバイスを試したからと言って同じ体験とは限らない(異なることがほとんどだ)。


(CES2024に展示されていた、まるでVision Proのような見た目のヘッドセット)

だからこそ、SNSやメディアに溢れる情報をもとにやった気になってしまう。その方が低コストに評価が下せる。しかし、どれだけ素晴らしいように語られていても、「装着に時間がかかる」、「設定でつまずく」、「長時間使ってみて初めて気になる」など、体験の前後を含めたトータルの体験をやってみて分かることがある。そしてそれらが語られないことも多い。

結局「やらないと分からない」。

特に、ジャーナリストという立場では伝聞を語るなど魂を売るようなもの。Appleが満を持して発売するこのデバイスの最初の波に乗らないわけにはいかないのだ。

そして何にも増して厄介なのが、「体験価値の個人差」だ。例えば、ディズニーランドで一日を過ごすという体験を考えてみよう。その体験に価値を感じている人は多いと思うが、ディズニーが好きではない人にとっては、あまり価値を持たないかもしれない。体験が、伝聞を超えた究極のメディアであるからこそ、「価値を感じる」かどうかの個人差は大きい。ましてや、XRのような「没入する」、「現実の世界に呼び出す」ことで体験できるものこそ、個人によって刺さるコンテンツが異なるものになりやすい。

展示会などで数分のデモをやっただけでは、そのデモが関心のあるものでなければ、真価が分からない。そしてコンテンツの価値がわからないと、ハードウェアの評価もできなくなってくる。そのためにはちょっとしたデモでは足りない。

どんなことができるのか、くまなくVision Proを触り尽くしたいのだ。

だからこそ、実機を受け取りに行く。

Mogura VRでは、現地からレビュー等をお送りする予定だ。


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