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VTuber 2018.11.16

魔王マグロナの「VT-4」徹底レビュー!本日解禁の新機能に見た“本領発揮”とは?

こんにちは、バーチャル美少女セルフ受肉ボイスチェンジ機材研究お絵かき魔王おじさんのマグロナです。余は日頃、イラストレーター業務の傍らVTuberをしています。おじさんなのに。

今回、株式会社Roland様より10月19日に発売された、「VT-4 VOICE TRANSFORMER」という製品について、この機材を「ボイスチェンジャーとして見た場合」の視点からレビューします。

なお、余は発売前に実機をRoland様より貸与して頂いたり、実際に会社に訪れてお話をさせて頂いたりしてはいますが、「好き勝手書いていいよ」とお墨付きを貰っているので好き勝手書きます。

ちなみに本日11月16日の16時、VT-4の本体アップデートとなる「VT-4 システム・プログラム(Ver1.02) 」が公開されました。このレビューはアップデート適用済みの状態のものになります。みんなもアップデートしような。

VT-4って何?


Roland公式ページより、VT-4画像)

ヴォコーダーと呼ばれる、ボイストランスフォーマーというクールな音響機材です。

しかし、余はこれを女の子の声をだすためのボイスチェンジャーとして運用してます。
多分、この記事を読む人もその目的で運用している人が殆どだと思うので、以降はそういう視点で見た上での解説や評価をしているものだと思ってください。

VT-4は何が出来るの?

主にピッチ(音程)・フォルマント(性別)をコントロールして声を変えることができます。また、リバーブをはじめ、様々なボイスエフェクトをかけたりもできます。

USBでPCに接続すると、オーディオインターフェースとしても利用できます。これがあれば他に機材を買わなくても、本格的なマイクをPCに接続する事ができます。

VT-4を使うには、本体の他に何が必要?

1.マイク
パソコンやスマホ等で使う3.5mmミニピンジャックのマイクから、キャノンケーブルで接続するダイナミックマイク、コンデンサーマイクといった本格的なマイクまでなんでも繋がります。前面パネルのミニジャックはプラグインパワーに、XLR端子はファンタム電源に対応しているので何でも繋がります。ただし、ミニジャックは1極のモノラルなので、バイノーラルマイクは繋がりません。

余が使っているマイクは「SHURE BETA58A」という超単一指向性のダイナミックマイクと、「ASTON MICROPHONE Sprit」というコンデンサマイクです。前者は後述するボイチェンカラオケにも適しているのでおすすめです。マイクにはケーブルがついていないので、買うなら「キャノンケーブル(XLRオス-メス)」も必要。

2.USBケーブル
PCに接続したり、モバイルバッテリーからの給電を受けるためには「USB2.0(A to B)」という形式のケーブルが必要です。プリンタと同じタイプのケーブルなので、家の中のどこかに転がってる事が多いです。安いので、なければ買い足せばいいです。

VT-4の強みは?

ボイスチェンジャーにはどうしても、遅延の問題がついて回ります。

自分の声と変換ボイスとの間にラグがあると、喋ってるだけで疲れてきたりします。状況によっては0.05秒~0.1秒くらいの遅延でも気になったりします(おうたを歌う時など)。
 
VT-4にはそれがありません。あまりにもタイムラグがなさすぎて、ヘッドホン越しや頭蓋骨に響いている自分の声が、変なハモりに聞こえてしまうくらいです。機材はたくさん試しましたが、ボイチェンおうたを一番気持ちよく歌えるのは間違いなくVT-4です。

さて、VT-4という存在自体の簡単な紹介はこれくらいでいいでしょ!

ここからは、みんなが気になっているであろう「VT-3との違いは?」という点についてピックアップしていきます!

VT-3との違いは?


Roland公式ページより、VT-3画像)

まずは外見がコンパクトになり、様々なスイッチ類の配置が変わって取り回しやすくなりました。PHANTOM電源のON/OFF切り替えが前面に来てくれたのも嬉しいところ。

そしてなんと! 単三電池による単独駆動が可能になりました! PCやコンセントに繋がなくても、マイクとヘッドホンを繋げばボイチェン音声が出せます。カラオケに持ち込んでボイチェンカラオケをする際にも、コンセントの有無を気にしなくてよくなりました(お店の人に繋いでいいか確認はしてね)

そして、各種エフェクト類のスイッチがツマミを回して選ぶ切り替え方式ではなく、個別にボタンを押してON/OFFする形になりました。

この点はVT-3からエフェクターとして超絶進化している点のひとつで、目的のエフェクトに即座にアクセスできるのと同時に、複数のエフェクトの掛け合わせができるようになり、真ん中のツマミはAUTO PITCH(ピッチ補正)の強度を段階的にチェンジできるものに変わりました。

ROBOT、MEGAPHONE、VOCODER、HARMONYの全部載せしながら、おうたを歌いながらのピッチ補正も可能! 更に、それぞれのエフェクトで4種類ずつのバリエーションが選択できるようになりました。スゴイ! そこまで全部載せすることはなかなかないと思いますが、普通にROBOT+MEGAPHONEとかは使えそう。

ただし、SCATTERとSYNTH、LEADの3つはなくなりました。でもノイズゲート、ローカットに加えてエンハンサーが追加されてます。つよい。

内部に関してもだいぶ変わりました。VT-3は、PCに接続した時の入力デバイスが「IN」一つしかなかったのですが、VT-4は「DRY」「WET」「MIX」の3つに分かれました。文字通りDRY(ボイスチェンジが一切かかっていない、マイクに入っている生音)、WET(ボイスチェンジ後の音声)、MIX(VT-4上で再生されている全てのサウンド)を、それぞれのデバイスから拾うことができます。

VT-3では電源を入れながらボタンを操作することで、MIXとWETを切り替えていました。ボイチェン勢的には「DRY」のデバイスはまず使うことがないとは思いますが、複雑な操作をせずとも、Discord等のボイスチャットアプリの入力デバイスに「WET」を設定するだけで済んだり、何かと扱いやすくなりました。

また、音量周りのバランスも良くなった気がします。VT-3は単体運用だと音量が小さかったり、かといってマイク感度を上げるとすぐに音が割れてしまったりとなかなか難しかったのですが、VT-4は単体運用していてもその辺りが気になりません。その辺りが安定したことによって、結果的にボイスチェンジの出力自体も安定しているのでは? という印象を受けます。

とまあ、ここまでの情報だと「確かに良くはなっているが、VT-3からVT-4に乗り換えるほどでもないかもしれないな」と思うかもしれません。

新規で購入するなら確かにVT-4一択なのですが、今現在VT-3を持っている人がVT-4に乗り換えるかというと、そこまでの性能ではないかな……と考えても別段おかしくはありません。

でもね。
11月16日の本体アップデートでね。

「常にピッチ・フォルマントを変換する」機能のON/OFFが選択できるようになったんです。

これはどういう機能なのか、なにがすごいのかを説明します。

最速レビュー!VT-4の「新機能」の実力はいかに?

これまでのVT-4やVT-3には「雑音を検出してピッチ・フォルマント変換をキャンセルする」という機能が搭載されていました。

これは、大きなノイズや雑音に対してピッチ・フォルマント変換をかけてしまうとヤバい音がしてしまう可能性があるし、本来の用途(わざと音をケロケロさせて遊ぶ)であれば多少のブレス(吐息)や雑音が変換されなくても違和感がないため、あえて処理をしないという高度な事が行われているからです。

しかし、ボイスチェンジで女の子声を出そうとしているおじさんには、これらは致命的です。喋りはじめ、おわりの息の抜けや小声、ちょっとした吐息がやたらと太いおじさんのものになってしまうからです。

これは、非常に悩ましい問題でした。

とはいえ、VT-3はかわいい女の子声を出すための専用ボイスチェンジャーではなく、そのようにも使える機材を無理やり運用しているだけ。本来の用途で考えたらノイズ抑制や処理の簡略化、そういうものの方が大事に決まってる。

他の機材を買い足して繋げば何とか回避できる程度の問題でもあるし、それを考慮しても完全なリアルタイムボイチェンというのは魅力的だったため、いろいろな機材を前後に挿しまくって魔改造しつつ、何とか運用していた訳で……。

そしたらなんと、今回のアップデートでRoland様が対応してくれました。

アップデート適用後は任意でこの機能を変換常時ONに設定できるようになったため、おじさんのささやき声が急に野太くなったり、ぼそっとつぶやいた声がやけに低くなったりする事が一切なくなりました。

またそのおかげで、低い音量の音声を変換させるためにマイク感度をある程度上げる必要があり、そうすると音が割れやすくなる……といった悩みからも開放され、ちょうどいい感じのマイク入力音量を設定することが出来るようになりました。

この一点だけを見たとしても、乗り換えるだけの理由になるのではないかと個人的には思います。

VT-4の評価

余は、以前VT-3を「リアルタイム性は他にはない素晴らしさがあるものの、ボイチェンとして見るとかなり厳しい問題を抱えているので単体運用はまず厳しく、その辺りを自己解決できないのであれば手を出すべきではない」と、少々厳し目に評価しました。

・以前に執筆したRoland VT-3 レビュー

しかし、VT-4の評価は、こんな感じになってしまいました。

「ネックだったノイズ処理に絡むボイチェンキャンセル機能周りの部分が選択制になり、致命的な弱点が消えた。取り回しが良くなり扱いやすくなった上、オモチャとしての機能(エフェクト周り)も大幅に充実している。ボイチェンカラオケを気持ちよく歌うだけだと考えたとしても、定価の値段分の価値はある。単体運用でも十分に実用レベルで、マイクとVT-4をPCに接続するだけで十分なパフォーマンスを発揮できる。ポン付けでここまで動くハードウェアボイスチェンジャーは他にないと思う。追加機材で化ける可能性もあり、研究が今後も捗りそう。もうなんというか、”とりあえず”で入手してもいいレベル

いやほんとに、こんな感じになっちゃうんです。別に先行で機材貸与されたり、色々絡んでるから下手な事言えないとか、そういうの一切ないです。余言ったもん。Rolandの中の人たちに。「これやばいですよ」って。会議室で。

もちろん、不満点というか「こうだったらいいなあ」と思う部分はまだまだあります。真空管をシミュレーションした感じのイコライザがピッチ・フォルマント変換の前後に挟まってて任意で調整できるといいなあ、とか、マイクの手前側にマルチバンドのコンプレッサーが入っててPCから細かく操作できるといいな、とか。

さすがにこれは欲しがりすぎな感がありますが、逆に言えば、こういった「あったらいいな」に目が行きはじめるくらい大きな不満点が無いのがVT-4なんですよ。

現状、女の子声ボイスチェンジ用のハードウェアというのは殆ど無くて、「ボイスチェンジャーとしても使える機材」を何とか運用しているのが当たり前だったりします。そもそも超入手困難だったり、運用に難があったり、致命的な欠点があったり、コスパ最悪な割に調整項目が少ないものだったり……。そんなのばかりです。

そんな中、「ボイスチェンジャーとして見るとかなり厳しい」という部分を改善するアップデートがなされ、現行販売がされており、値段もありえないほど高いわけではないVT-4。
その評価がこんな感じのべた褒めになってしまうのは、なんかもうしょうがない気がします。

そんな訳で、VT-4のレビューでした。なにかの参考になれば幸いです(何の?)。

VT-4公式

VT-4 システム・プログラム (Ver.1.02)


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