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VRChat 2023.09.01

海外VTuberやインフルエンサーに広がる「VRChat」 オリジナルワールドの作成やMV撮影に活用

VRChatを活用したクリエイティブな作品づくりは、日本国内だけではなく、世界各国で見られます。有名インフルエンサーのレポ動画や、韓国音楽グループのMV制作、海外VTuberグループ主導のワールド制作など、さまざま方向でコンテンツが生み出されています。今回は、その一部を紹介しましょう。

海外VTuberグループがファン向けのワールドを作成、生配信でも利用

海外VTuberシーンでは、ファン向けのワールドを設置したり、生放送での舞台として活用したりといった、VRChatを活用したコンテンツの展開が活発に行われています。

2021年:ホロライブENが公式ワールドを設置

特にVRChatを早くから活用していたグループのひとつが、英語圏向けVTuberグループ「ホロライブEN」です。同グループは2021年に公式ワールドをVRChat内に期間限定で設置。ワールドには、「ホロライブEN」所属VTuberの部屋やライブステージ、イベントホールが設置されており、コラボ配信などで使用されていました。

ワールドは、中央にあるロビーから各メンバーの部屋へと移動できる作り。一伊那尓栖ニノマエイナニス)さんの部屋には大量のイラストや本棚が設置されていたり、がうるぐらさんの部屋は海のデザインになっていたりと、それぞれの個性が現れた部屋を見られます。

また、2022年末にVRChatで行われた公式年越しイベントには、「ホロライブプロダクション」がスポンサーとして参加しました。

ライバー個人のVRChat活用が光る「にじさんじEN」

「にじさんじEN」も、VRChatを活用しています。同グループでは、所属ライバーのセレン・龍月さんが公式ワールド「NIJISANJI Express」を公開したことをきっかけに、VRChatを使ったコンテンツの本格的な展開が始まりました。

期間限定で公開された「NIJISANJI Express」は、星の降り注ぐ空間の中を走る電車のワールド。各車両ごとにさまざまな装飾が凝らされており、車両には「にじさんじEN」ライバーをイメージした部屋もあります。各部屋は、各ライバーの個性を反映した作りで、例えばPomu Rainpuffさんの部屋は、イメージカラーの緑を使った可愛らしい内装になっていました。

同ワールドは、1ヶ月間限定で公開され、2023年8月現在、アクセスすることはできません。公開最終日の2022年2月1日には、「にじさんじEN」のメンバーが、パブリック(一般ユーザー入場可能な部屋)に登場し、ファンミーティングを行うという企画が実施されました。

2022年8月には、セレン・龍月さん、ペトラ・グリンさん、ロゼミ・ラブロックさんが所属する「Obsydia」の1周年記念ワールド「Obsydia Crossing」が公開。渋谷駅周辺を“「Obsydia」風に“染め上げた”ようなデザインと構成は、当時大きな注目を集めました。

また、2022年末には「Luxiem」の1周年記念ワールド「Royal Flash Theme Park」が公開されました。ワールドは広大な「夜の遊園地」といった作りとなっており、マスコットキャラがあちこちにいるほか、各所に様々なアトラクションも設置されています。

同ワールドは、Luca Kaneshiro(ルカ・カネシロ)さんが個人プロジェクトとして制作。Lucaさんは企画を担当し、他にも様々なクリエイターが制作に協力して完成に至った経緯があります。

なお「にじさんじEN」の一部ライバーは、VRChatを使った企画配信も行っています。5月には、Enna AlouetteさんやAiaAmareさん、KotokaTorahimeさんなどが参加する、バチェロレッテ(バチェラーの女性版)企画が行われました。

韓国アーティストによるMV公開、オーディション番組の舞台にも活用

韓国では、VRChatを使ってアイドル活動を行うグループ「ISEGYE IDOLL」が注目を集めています。同グループは、メンバー全員が「VRChat」向けのアバターを使用して活動しているのが特長で、音楽活動や雑談配信のほか、「VRChat」内のホラーワールド探検といった企画も行っています。

「ISEGYE IDOLL」は、2021年に活動を開始し、同年12月にデビュー曲「RE:WIND」のMVを公開しました。公開直後から大きな注目を集め、12月25日の段階でMVの再生数は90万回を突破。2023年8月現在、再生数は約1,600万回を超えています。

各メンバーは主にTwitchで配信しており、2023年5月には、「VRChat」ボクシング大会「バーチャルファイター」に参加したことでも話題を呼びました。

また、8月19日(火)には最新曲「KIDDING Official」をリリース。YouTube上のMVは順調に再生数を伸ばしており、8月29日(火)現在、約330万再生を記録しています。

同MVの特長は、現実の風景とアバターを組み合わせているという点。現代的なK-POP楽曲を滑らかに踊る姿が印象的です。特に、キレのあるダンスは「ISEGYE IDOLL」の確かな実力を示しています。

バーチャルアイドルデビューを賭けて戦う「少女リバース」

韓国のアイドルサバイバル番組「少女リバース」も、VRChatを使っていることで有名です。同番組は、現役・元K-POPアイドル30人がバーチャルアイドルとしてのデビューを懸けて戦うという内容。日本では2023年1月よりABEMAで国内独占配信が行われています。

出演者30名は全員、アバター姿のまま番組に登場。競い合ったり、協力し合ったりしながら、さまざまなミッションを乗り越えます。「脱落者はバーチャルではない現実世界の自分の姿と名前を公開する」という攻めたルールが設定されており、“本気のサバイバル”が展開されるのが見所となっています。

番組では、”視聴者投票”などが審査の結果に反映され、最終的に5人の参加者の勝ち残りが確定しました。勝者となったメンバーはバーチャルアイドルグループ「Feverse(フィバース)」を結成し、9月26日(火)にデビューすることが決定しています。

「Feverse」は、日本限定で1stアルバム「CHO -Japanese ver.-」を先行展開します。同アルバムは、日本のファンへ向けたもので、1st Debut Albumのタイトル曲「CHO」を含め、「少女リバース」の番組内で公開されたオリジナル曲を、全編日本語で再レコーディングしています。

海外インフルエンサーのVRChat動画も人気に

海外では、有名コンテンツクリエイターがVRChatを活用する事例があります。YouTubeの登録者数が100万人を超える人気クリエイター、GreatMoonAromaさんはその1人です。

GreatMoonAromaさんは、2018年に活動を開始した個人VTuberで、Big EnoughGnomeなど様々なミームを生み出したことで知られています。別名韓国のロラトン(有名なVRChatクリエイター)とも呼ばれており、VRChatを使ったミーム紹介動画やゲームワールドのプレイ動画などを公開しています。

2018年時点での登録者数は100名程度でしたが、当時韓国でマイナーだったVTuberジャンルで地位を確立するという目標を掲げて活動を継続。今年2023年に登録者の数を100万人まで伸ばした経緯があります。

VRChat以外での活動も行っており、人気FPSゲーム「Apex Legends」で、ホロライブに所属する白上フブキさんや夏色まつりさん、にじさんじ所属の勇気ちひろさんとのコラボしています。

2021年8月にデビューし、現在も活動を続けているfilianさん(YouTube登録者が200万人以上)も、VRChatを使って活動する海外インフルエンサーです。主な活動場所はTwitchで、YouTubeには各配信のハイライト動画などを投稿しています。

filianさんは、VTuber Dating Showといった企画系や”笑ったら負け”配信のほか、雑談配信などを主なコンテンツとして展開。自身の“アバター”には、アバタークリエイターのジンゴさんや、こまどさんが作った3Dモデルを使っています。

2023年4月にはVTuber的な活動をするAI、Neuro-samaとのコラボを行い大きな注目を集めました。

filianさんは、配信(動画)の多くで、全身トラッキングデバイスを使用するのが特長です。トラッキングデバイスを活かして、身体全体を大きく動かして活動するfilianさんのキュートさは、多くのファンを生み出しています。

コンテンツは国境を超える

他にも、台湾フェスのような大規模イベントの会場になるといった事例も続々と登場している。なかには、ドキュメンタリー映画祭の舞台として活用するケースも。

VRChatでは、物理的な国境の垣根を越えて、クリエイターのコンテンツが共有されやすい空間となっており、今後もこうした創作の火は広がっていきそうです。

(執筆:井文)


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