Home » 「現実のアイドルに自由を感じさせたい」 韓国のバーチャルサバイバル番組「少女リバース」制作陣が語る企画の裏側


VTuber 2023.03.26

「現実のアイドルに自由を感じさせたい」 韓国のバーチャルサバイバル番組「少女リバース」制作陣が語る企画の裏側

韓国のカカオエンターテインメントが企画・制作する超大型バーチャルアイドルデビューサバイバル番組「少女リバース(RE:VERSE)」。日本でも、2023年よりABEMAにて配信され、話題となりました。


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

番組の何よりの特徴は、アイドルのサバイバルオーディション企画とVRChatを組み合わせた点です。出演者30名は全員、バーチャルのアバターの姿のまま番組の企画に登場。ときには競い合ったり、協力し合ったりしながら、さまざまなミッションを乗り越えていく内容となっています。


ⓒ Kakao Entertainment Corp.


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

さらに「脱落者はバーチャルではない現実世界の自分の姿を公開する」といったルールもあり、視聴者の中には「アバターの中の人が誰なのか?」を議論することも少なくありませんでした。

MoguLive編集部では今回、韓国の「少女リバース(RE:VERSE)」制作陣にメールインタビューを実施。この企画がなぜ発案されたのか、どういった狙いがあったのかについて詳しく話を聞きました。

メールインタビュー回答(※翻訳済み)

・チョ・ウクヒョンCP
・ソン・スジョンPD
・チョ・ジュヨンPD

――「少女リバース」という企画を立ち上げた経緯を教えてください。

チョ・ウクヒョンCP:
韓国ではサバイバルオーディションジャンルの人気が高いです。実際、バラエティを作ってみると「才能はあるけれど、韓国のK-POPガールズグループアイドル内では自身の魅力を十分に発揮できていない」という子がいます。アイドルたちが一人ひとりの魅力を思う存分に見せることができ、それぞれの真価を発揮できるような機会を提供したかったです。「少女リバース」を通じて、現実世界の正体を隠したまま、対等な立場で実際の自分の魅力と特技だけで競うことができる番組を作ってみようと思いました。


ⓒ Kakao Entertainment Corp.


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

ソン・スジョンPD:
最初はメタバースを使用して何かしようと構成を立てていた訳ではなく、企画当時はコロナ禍が長引いていた時期で、人とのコミュニケーションが直接とれていなかったこともあり、最近の若い子たちは何を使ってコミュニケーションをとっているのかと調査していたところ、メタバース空間で自分の好きなキャラクターを装備して遊んでいるのを見て、「これはいいツールになりそうだな」と思ったのが最初のきっかけでした。

元々制作陣は放送局出身者が多く、アイドルや芸能人との関わりを持つ人が多かったのですが、実力があるのにその魅力を披露することができる番組がだんだんと減ってきているのを近くで目にし、さらに今の時代視聴者はテレビ放送から配信やインターネット放送へと移っている背景を踏まえて、何かそういった魅力を見せることができる番組が作れないかと考えていたところでした。

そしてまずは応募をかけて、一人ずつと事前ミーティングを開始していた中で、どの子にも切実さや魅力を感じ、彼女たちを全員出演させてオーディション形式で各自の魅力を見せられるような番組にしたらいいのではないかと思い、今回の企画を進行することになりました。

――ユーザーには「少女リバース」のどのようなところに注目してほしいと考えていますか? VRファンとK-POPファン、それぞれの楽しみ方の違いについてもお聞かせください。

チョ・ウクヒョンCP:
少女リバースは現役アイドルたちに真の「自由」を感じさせた番組ではないかと思います。普段は周りの視線と反応一つひとつに敏感にならざるを得ないアイドルたちが「W」という仮想世界の中で新しいキャラクターとして登場し、思いっきり笑って騒いで本気で競争する姿を見ながら 「あぁ、この子たちは久しぶりにこういった自由を享受しながら楽しんでるんだな」と思いました。


ⓒ Kakao Entertainment Corp.


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

これまで見られなかった少女たちの自由な姿を見て、視聴者たちも一緒になって楽しんで下さっているようです。「あのようなコメントや行動をあんなに堂々としている人は、一体誰なんだろう?」という気持ちで、はっちゃけている少女たちの姿を見守ってくださってもいいのではないかなと思います。

VRファンとK-POPファンの方々が少女リバースを楽しむ方式もそれぞれ異なるかと思います。VRファンの方々は少女たちの正体である少女Xが誰なのかについて大きく関心を持つよりも、ただ異世界W内の少女V(バーチャル少女)に対して集中、没頭してくださるように思います。

その反面、K-POPアイドルファンの方々は、少女Vの正体が誰なのかを気にされて、ある特定のアイドルだと推定されている少女を応援される方もいらっしゃったようです。お互いの領域を尊重しながら、それぞれの方式で少女リバースを楽しんでいただければと思います。

――視聴者の中には今企画を熱心に応援する方も多いように思います。そうした熱心なファンの方々のために特別な取り組み(イベントや計画)を行う予定はありますか?

チョ・ウクヒョンCP:
番組にたくさんの関心を持ち、応援してくださる視聴者の皆さまに感謝申し上げます。「少女リバース」では、バーチャル観客の募集やリアルタイム投票、視聴者イベントなど、ファンの皆さまと一緒に楽しむことができる様々なイベントを進行しました。

――「少女リバース」にはVRChatでよく用いられているタイプの、いわゆるACG(二次元)風のアバターが採用されている印象です。これらを採用した理由はどういったものですか? なぜ「aespa」や「K/DA」、あるいは「APOKI」のようなモデルを採用しなかったのかも、もし良ければお聞かせください。


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

チョ・ウクヒョンCP:
お互いに追求する方向が異なると考えています。本物同然のキャラクター、実写との高いシンクロ率といった部分に熱狂される方々もいらっしゃいますが、一方では幼い頃に見てきた2Dアニメに対する懐かしさや恋しさもあるかと思います……。2Dベースなのでかえって技術的エラーさえも面白く生かすことができたりと、2Dキャラクターが与えてくれる気楽さや親しみやすさが土台となり、視聴者の方々もより楽しんでくださったように思います。

ソン・スジョンPD:
バーチャルキャラクターは見慣れないビジュアルなので、まだ馴染みのないものだと考えていました。初めは好意的な印象を持たない人も多くいるのではないか…とも考えていました。そのため私たちも初めての撮影に向けて作り出したときに重きを置いたのは、無条件に馴染みやすいキャラクターを作っていこうという点でした。初めて見る人たちはもちろんキャラクターに対する拒否感があるかもしれないので。実際、私たち制作陣の中にもこの2Dキャラクターに拒否感があった人たちもいたんです。

しかし、撮影を続けていくうちにそのスタッフがどのようにキャラクターを受け入れていくのかという過程を見れたので、それと同じように視聴者も受け入れてくれるかもしれないという可能性を見出しました。

そうは言っても、この世界に入り込むにあたって障壁がない訳がないと考えて、私たちは、少女たち30人全員に(生い立ちやバックグラウンドといった)ストーリーを作りました。一人ひとりにストーリーができて「私はこういう見た目でこういう人で1曲歌ってみます」といった自己紹介よりアイドル自身がキャラクターに没入してくれていれば、視聴者も違和感を感じずにこの世界観に入って来れるはずだ、これをキャラクターとして完全に受け入れてくれるときが来るはずだ、と思いました。そのため私たちが1番初めにした努力は、一人ひとりに世界観を与えることと、その子が完全に1人のキャラクターとして、「どこで生まれて、何歳で、趣味はこれで、好きな食べ物は何だ」といった設定を受け入れてもらうために、4~5月くらいから制作陣と出演者で一緒に作っていく過程を設けたことでした。

このような過程が結局は彼女たちがこの世界に没入できるようにさせてくれたし、視聴者の方も見ながら夢中になれるように、作れたのではないかと思います。

――今回の企画は韓国だけでなく日本でもPRされました。日本でPRをする狙いはどういったものでしょうか? また英語圏での展開はいかがでしょうか?

チョ・ウクヒョンCP:
日本はK-POPとバーチャルアイドル市場が活性化しており、大きなシナジー効果を出せると考えています。「少女リバース」は現在、日本のABEMA(アベマ)だけでなく、米州KOCOWA(ココワ)など海外プラットフォームを通じても公開されており、着実に良い反応を得ています。 最後までたくさんの関心と応援のほど、よろしくお願いします。

――メタバースや2Dキャラクターに馴染みがない海外(日本や欧米)ファンも視聴した理由はなぜだとお考えですか?

ソン・スジョンPD:
メタバースや2Dキャラクターなんかは韓国の方よりも海外の方々のほうが慣れ親しんでくださるとは思っていました。この番組を見つけてくれた方はK-POPアイドルも好きな方なのだろうと思いますし、アイドルも2Dキャラクターも同じオタク文化の一種ですから、むしろ海外の方のほうが壁は低いのではないかと。結局は私たちがメタバースという世界観を作る際にアイドルを対象にしたからこそ、より楽しんでいただけたのではないかと思いますね。

チョ・ジュヨンPD:
付け加えると一般的なサブカルチャー、バーチャル番組を見ると、バーチャルキャラクターだけが表に出て中の人の正体を隠すという場合が多いです。ですが、私たちの番組にはあまりにも魅力的な少女X(中のアイドル)がいるため、少女V(バーチャルキャラクター)と少女Xの境界を崩してお見せしようと力を入れました。K-POPファンが観た時に「私の推しが頑張っているなら…」という次元から、より好んでくれたのではないかと思います。少女Xが悲しんでいるときは少女Vも一緒に悲しんでいるというような部分が上手く構成されたことも一つの理由なのではないかと思います。

――VRChat側のクリエイターたちとも関わる企画になるため、さまざまな対応が必要になるかと思います。今後、クリエイター側とどのように関係性を深めていく予定でしょうか?

ソン・スジョンPD:
まず、「少女リバース」を楽しみに待っていてくださった視聴者の皆様に、著作権の問題で放送時期が遅れてしまったことをもう一度お詫び申し上げます。クリエイターの皆さんとは、誰一人かけることなく協議をし、制作上問題がないように後々のことまで議論を重ね、合意に至りました。今までは、協議段階だと思っていたもの以上に突き詰めようと、延期になってから以降は書面契約とクリエイターに対する補償まで全て協議してから安定的に開始する運びとなりました。私たちが考えていた著作権に関する認識より補償やケアができていなかった部分があったので、次の機会があるとすれば、より内容をつめて手続きを行う予定です。

チョ・ウクヒョンCP:
「少女リバース」という番組の企画制作過程において、本当にたくさん助けてくださった国内外のクリエイターの方々に心より感謝申し上げます…。これからも様々な分野のクリエイターの方々とコミュニケーションをとり、良い関係を築いていけるよう努力していこうと考えています。

――K-POPアイドルが「バーチャル」を活用するメリットはどのようなものだと考えていますか?


ⓒ Kakao Entertainment Corp.


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

チョ・ウクヒョンCP:
先ほど申し上げた「自由」です。 現実世界のアイドルたちはたくさんの人気を享受すればするほど、忙しないスケジュールを消化しながら、統制された生活を送ることになります。少女リバースではこのような部分から完全に脱皮しようとしましたし、各自のキャラクターコンセプトと世界観の構築にアイドルたちが直接参加して、意見を出したりもしました。

そうして少女たちが望むキャラクターが誕生したのです。だからこそ、最初からキャラクターに対する理解度と愛情度がかなり高く、そこがキャラクターたちの高い自由度と自信にもつながり、先輩後輩という立場も関係なく熾烈なサバイバル対決を繰り広げたり、率直で愉快な話術を披露するなど、自然な魅力を見せてくれたと思います。30人の少女たちが自由に遊んで競争し、自らをさらけ出すということが、この番組の最大のメリットではないかと思います。

――番組中に脱落者の名前を公開しましたが、その理由はどういったものでしたか? また最終的に残った5人の名前を公開する予定はありますか?

ソン・スジョンPD:
まず、残った5人の名前を公開するかどうかはまだ確定していません。少女たちがバーチャルの世界で、Wというメタバースの世界で、さらなる活躍をすることを期待していて…。ただ、実際に脱落者を公開した後も放送などを続けていますが、あらかじめ公開されてしまうと没入感や境界線が崩れてしまうと思います。なので最終的な5人には、メタバースの世界の中でのさらなる活躍を期待する気持ちがあるので、公開するかはまだ未定です。恐らく公開しないんじゃないかな……。

脱落者の名前を公開した理由ですが、番組が完全にバーチャルアバターとして進行する番組だったら、アイドルサバイバルではなかったと思います。ただ一般の方や、歌の上手い方たちをオーディションしたりしていたと思うのですが、この番組を通してしたかったことの一つは、世間にまだ知られていないアイドルたちを世間に知らせることでした。

なので、少女たちが脱落した時に、どんな子がこのキャラクターをやっていたんだろうと、その後のアイドルの子自身の活動に少しでも関心を持ってくれればいいなと思っていて。私たちがその子に魅力を感じたように、視聴者も正体が公開されたときに、脱落者のアイドルの子達に関心を持ってくれたらいいなと思って公開しました。

――韓国のエンターテインメントは、世界のなかでもバーチャル表現を積極的に取り入れている印象です。とりわけ「K-POP✕VR」という、身体とバーチャルをかけ合わせたコラボは興味深いと思っています。今後「少女リバース」をきっかけに、韓国の文化はどのように発展していく可能性があるとお考えですか?

チョ・ウクヒョンCP:
今後はアーティストたちが自分の持つ様々な長所をバーチャルと結合して見せていく試みが多くなると考えています。特に仮想世界では時空間の制約がないからこそ、コンサートやファンミーティング、ミュージックビデオの撮影など、様々な挑戦を通じてファンの方々に新たな経験を提供することができるのではないかと思います。

チョ・ジュヨンPD:
「少女リバース」を制作しながら感じたんですが、韓国はインターネット強国だということを再認識しました。初回の撮影時から「可能なんだな~実行できるんだな」と不思議だったし、やりがいのあることも多かったので、「少女リバース」を見て、バーチャルキャラクターを使ったバラエティに関心を持っていただいた方がいたとしたら、十分制作は可能だと思います。

それから、バラエティとして制作するなら今回、視聴者も私たちも残念だった部分として動作がたまにバグを起してしまう部分があったのですが、そのようなところはインターネットの問題ではなく、機器がどのくらい動作を認識してくれるかが問題なので、このような点がもう少し発展していけば、かなり良いコンテンツができるのではと思います。改善点というよりは機器の動作問題を改善していけば、構成的には十分に全てのものをバラエティにすることが可能かと思います。

――デビューグループの今後のコンテンツ企画をはじめ、「少女リバース」シーズン2や男性アイドル版など、今後どのような制作計画がありますか?

ソン・スジョンPD:
まず、デビューグループに関しては、何か準備をしているというのは知っているのですが、具体的な計画をお話するのは難しいです。ただ、デビューメンバー5人で必ずやりたいことは新曲発表です。集まるのでさえ難しい子たちなのに、5人でグループを作ったというのは信じられないことで、5月上旬を目標に新曲発表をできればと思っています。5月上旬というのも、最終話の放送後に発表をする予定なので、この時期にやるというよりも計画されているんだと考えていただけたら幸いです。

シーズン2や男性版の計画は今のところないのですが、愛してくださる方がたくさんいらっしゃるのであれば実現するのではないかと思います。まだ、スタッフたちは「少女リバース」本編でバタバタしているので、落ち着いてからそういう話し合いがでてくると思います。

――最後に日本の視聴者へ向けたメッセージをお願いします(※取材時点2月末)。

チョ・ウクヒョンCP:
「少女リバース」を視聴してくださっている日本の視聴者の皆さまに心より感謝申し上げます。「少女リバース」を通じて出会い別れた少女たちと、最終デビューメンバーたち、そして彼女たちが披露する音楽に対する応援を引き続きよろしくお願いいたします。私たちも、より良いコンテンツでもってお返しできるよう、努力してまいります! お体に気を付けて幸せな毎日をお過ごしください!

ソン・スジョンPD:
次回で最終メンバーが公開されますが「少女リバース」、そして消滅した少女たちをはじめとする参加者たちにスポットライトがあたるように、たくさんの関心とご声援をよろしくお願いいたします。最後まで上手く作り上げます!

チョ・ジュヨンPD:
次回で最終メンバーが公開ですが、たくさん期待していただきたいです。そしてこの番組を作りながら、国内外からのK-POPアイドルの人気ぶりと魅力を再認識できたということだけでも嬉しいです。デビューグループの今後の活動にもたくさん期待していただき、応援していただけたら嬉しいです!

先日11話の配信で、少女リバースからデビューするグループ「FE:VERSE(フィバース)」の最終メンバーはこの5人に確定!


ⓒ Kakao Entertainment Corp.

また、番組の再放送や番外編の公開、「FE:VERSE」の活動に関する最新情報は日本公式アカウントをご確認ください!

番組公式サイトはこちら。
https://girls-reverse.brokore.com/

「少女リバース」公式Twitter
https://twitter.com/girlsreverse_jp

「少女リバース」公式TikTok
https://www.tiktok.com/@girlsreverse_jp

日本公式YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZ2oXkfhe57eCisV27last3P7KTG6yJI_

(質問案協力: 松本友也)

【作品概要】

タイトル:「少女リバース(GIRL’S RE:VERSE)」
配信: ABEMAにて最新話まで独占配信中!
尺:1話 約60~150分
コピーライト:
ⓒ Kakao Entertainment Corp.
[Character License] http://bit.ly/3hKELEw
VRChat is being streamed and monetized after confirming with VRChat Inc.
Visit https://hello.vrchat.com/


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード