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VRChat 2023.05.24

クラスメイトと踏み出す大きな一歩。初心者オススメVRChatイベント「私立VRC学園」の魅力に迫る

ソーシャルVR「VRChat」には、2020年から続くとある「学園」があります。その名は私立VRC学園。現実の学校のようにクラスに分かれて、講師による授業やクラスメイトとの交流を通して、VRChatへ最初の一歩を踏み出すきっかけを与える人気イベントのひとつです。

5月8日に第11期の開校が宣言され、まもなく生徒向けの説明会が開催されます。しかし、伝え聞く情報だけでは「どんなイベントなの?」と尻込みする方もいるかもしれませんし、VRChat始めたての人や知らない人には「みんなが通う学校があるの?」と素朴な疑問を抱く人もいるかもしれません。

そこで今回MoguLive編集部は、新たな生徒を迎え入れようとする「私立VRC学園」へ取材を実施しました。本記事では、「私立VRC学園」の学園長・ebigunsoさんと、卒業生へのインタビューを通して、長く続く人気イベントの全貌と、その人気の秘密に迫ります。

VRChatを知り、新たな交友関係を作るイベント


(「私立VRC学園」学園長・ebigunsoさん)

――「私立VRC学園」とはどのようなイベントなのでしょうか?

ebigunso:
「私立VRC学園」は、VRChatを始めたばかりの人や、始めたもののまだよくわかっていないという人をターゲットにしたイベントです。VRChatの文化や、VRChatでできること知ってもらいながら、いっしょに遊ぶ友達を増やし、普段会わない人とも知り合えるような場所を提供するイベントとなっています。

――より具体的なイベントの内容や魅力について教えてください。

ebigunso:
参加者のみなさんには、応募いただいた後に「クラス」に分かれていただきます。1クラスはだいたい15〜16人くらいです。この1クラスごとに、毎日平日22時、1コマ45分、計10回の授業を受けていただきます。

授業を通して、普段自分が出会う機会のない人と知り合うきっかけを得たり、自分の新たな可能性に気づき、他の人とともに新たな活動を始めていく機会になるというのが、大きな魅力です。

――出席はどの程度必要なのでしょう?

ebigunso:
2週間の開校期間に、できるだけ多くの日数で参加していただきたいです。どうしてもお仕事などの都合で参加できない日がある場合でも、事前に連絡をいただければ大丈夫です。出席できる日が限られる方は生徒説明会などで気軽にご相談ください。

――どうすれば「私立VRC学園」へ入学できるのでしょうか?

ebigunso:
毎期開校のタイミングで、Twitter公式Webサイトにて「生徒向け説明会」のご案内を告知しております。入学を希望される場合、開校の少し前に開催している説明会に、いずれか一日だけご参加いただく必要があります。

この説明会の中で応募フォームのご案内をしておりますので、そこから応募いただくことで参加申し込みとなります。参加人数が定員を超えた場合は抽選となります。

――毎回どのくらいの方が参加されるのでしょうか?

ebigunso:
期ごとに増減はありますが、ここしばらくは生徒がだいたい100人ほど、担任や講師といったサポートメンバーが各20〜30人ほど、運営メンバーが10人ほどですね。

――参加条件などはあるのでしょうか?

ebigunso:
最初にお伝えした通り、VRChatを始めたばかりの方を主なターゲットとしています。一方で、しばらくVRChatから離れていた人や、一つのグループに長くいた人、一人で遊んでいてまだ知らないことが多い人など、ある程度VRChatで遊んだことがある方も、トラストランク(※)に関係なく応募していただけます。

※トラストランク:VRChatのユーザー情報のひとつ。5段階存在し、プレイ時間やフレンド人数の増加により昇格するとされている(詳細な昇格条件は非公開)。

――例えばですが、「ある程度プレイしたけど、ずっと一人で遊んでいたのでまだわからないことも多い」という人でも参加できるのですね。

ebigunso:
そうですね。そういった方も応募できますので、まずは気軽に説明会にご参加頂き、お話だけでも聞いてもらえればと思います。

――Questユーザーも参加できるのでしょうか?

ebigunso:
基本的にはQuest対応(※)のため参加可能です。一部授業だけQuest非対応になることがあります。

※Quest対応:「Meta Quest 2」単独でVRChatを遊ぶ場合、本体スペックの兼ね合いから、訪れることができるワールドや、表示可能なアバターに制限がかかる。「Quest対応済みイベント」ということは、「Meta Quest 2」単独でも参加ができるということ。

――ちなみに、VRChatを始めて間もないVisitorランク(※)でも参加できるのでしょうか?

※Visitorランク:VRChatのユーザー情報「トラストランク」の最初のステータス。アカウントを開設するとまずこのランクからスタートする。

ebigunso:
大丈夫です。過去には「学園に入るためにVRChatを始めました!」という方が1〜2名いらっしゃいました。

――そうした方だと、操作方法もおぼつかないかもしれないのですが、開校期間中にマスターされていったのでしょうか?

ebigunso:
その場合は、開校前に「初心者説明会」というのを開催して、基本的な操作方法はあらかじめ教えるという体制をとっています。もちろん、クラスメイトからもいろいろと教わっていくことも多いですね。

――本当の初心者に対してもサポート体制が整っているのは心強いですね!

「学園」であって「教育機関」にあらず

――「私立VRC学園」ではどのようなことが学べるのでしょうか?

ebigunso:
実は、決まったカリキュラムは存在しません。なぜかというと、「私立VRC学園」では、各期ごとに講師も公募で集めているからです。VRChatで活動されている方や、「こんなことを教えたい!」という方に応募いただき、講師として参加いただいています。

なので、どんな方がどんな授業をするのかは、開校宣言をしてから講師募集をかけるまで、我々運営メンバーもわかりません。一応、生徒向け説明会の時点では講師は確定しているため、説明会に参加された方には一部どんな授業があるかはお伝えできます。

――どのような方が講師として応募し、どんな授業をされるのでしょうか?

ebigunso:
「VRChat」で団体運営をされている方が、自身の団体やコミュニティを紹介してくれることもありますし、個人クリエイターの方が技術解説をしてくれることもあります。大きく名前が対外的に出ていない方でも、コミュニケーションについてお話をしてくださったりと、多種多様な方が、いろいろな授業を実施してくれます。

――幅広い内容ですね。一方で、毎期ごとにカリキュラム内容が異なるというのは、学校としてはなかなかに特殊ですね。

ebigunso:
というのも、「私立VRC学園」はいわゆる”教育機関”ではないんです。よく間違われるのですが、「なにかを教える場所」とは少し異なります。

――すると、「私立VRC学園」における「学園」とは、どのような意味合いがあるのでしょう?

ebigunso:
初代学園長のタロタナカさんの発案だったと聞いております。

タロタナカさんは、VRChatで生活してきた中で、「プラットフォーム内の固有の文化などを受動的に知ることができる場所」がなく、自分から情報を取りに行かなければならないという環境を、大きなハードルと捉えていたそうです。そして、一度誰かとフレンドになっても、その後もう一度会える保証はないため、継続的な人間関係が作りにくいという点も問題視されていました。

そこで、現実世界で誰もが経験した「学園」という枠組みの中で、「クラス」という単位で集まることができれば、これからVRChatをより楽しもうとしているみんなが同じスタートラインに立つことができ、お互いに友人となれるのでは、と考えたそうです。

――日本人であれば多くの人がイメージできる”共同体”としての「学校・学園」ですね。

ebigunso:
はい。そしてそこに、様々なユーザーを講師として招き、授業を行ってもらうという案も合流しました。始めたばかりの初心者でも入りやすい「学園」で、VRChatの様々な文化を学びながら友人もつくり、初心者が自らの可能性の幅を広げるきっかけを得る。そんなイベントとして、2020年5月に第0期が開校したのが、「私立VRC学園」の始まりです。

――第0期の開校から現在にいたるまで、イベントはどのように変遷・発展を遂げたのでしょうか?

ebigunso:
細かなところを少しずつ改善しています。クラス数の追加はもちろん、担任制度の導入や、「選択授業」制度が追加されていきました。現在は、必修授業と選択授業の2つの枠が設けられています。

――運営メンバーはどのように変遷していったのでしょう?

ebigunso:
第0期の立ち上げ時は、タロタナカさんと大将さんのおふたりだけで運営されていたと聞いています。その後、少しずつメンバーが増えていき、現在は10名を超える規模となりました。第5期には運営の引継ぎを開始して、第6期より新体制で再スタートしております。

――運営メンバーはどのように「私立VRC学園」の運営に参画されたのでしょう?

ebigunso:
いろいろなケースがあります。運営への改善提案をきっかけに自分から参加した人もいれば、運営メンバーから直接勧誘を受けたという人もいます。

――ちなみに、ebigunsoさんご自身はどのような経緯で運営メンバー、ひいては学園長となったのでしょうか?

ebigunso:
もともと自分は、2020年11月の第3期の生徒でした。その次の第4期に講師として参加したあと、運営へいくつか改善案を提案したところ、運営メンバーとして勧誘を受けた……というパターンです。

――参加者は学園生活を通してどのように変化していくのでしょう?

ebigunso:
千差万別としか言いようがないですが、スタート時点では誰とも面識がなかった人が、2週間後にはすっかり仲良くなり、卒業後も交流を続けている方は多くいらっしゃいますね。

また、クラスメイトなどと話す中で、なにかやりたいことを新しく見つけて、卒業した後に活動を開始する方もいらっしゃいます。2週間の学園生活を通して培った絆が、新しい活動へと派生しているのを見ていると、運営としてとてもうれしく感じます。

――卒業後の生徒のみなさんに求めたい姿、というのはありますか?

ebigunso:
強く求めるものではないのですが、できれば学園生活で得たものを生かして、VRChatのより広い世界に羽ばたいてほしいという思いがありますね。

――居心地の良かった学園や、あるいは「同期」という枠に閉じず、より広い場所へ一歩を踏み出してほしいと。

ebigunso:
そうですね……ぜひ、色々な人と関わって、自分の可能性をさらに広げてほしいなと願っています。

第3期卒業生に聞く! 学園生活であなたのVRChatはどう変わった?

ここから、「私立VRC学園」の第3期(2020年11月13日〜11月26日)卒業生の方へインタビューをスイッチ。実際に生徒として参加された身から、どのように入学し、どんなことを得て、いまどのように活かされているか、お話をうかがいました。

卒業生インタビュー①:かにぱんさん


(第3期卒業生・かにぱんさん)

――どのような経緯や理由で「私立VRC学園」に参加されましたか?

かにぱん:
友人が学園の卒業生でした。その人から体験談を聞いたことで「入りたい!」と思い、入学を決意しました。

――参加してみて印象的なエピソードがあれば教えてください。

かにぱん:
私は現在は音声読み上げソフトを使ってコミュニケーションをしているのですが、当時は「無言勢(※)」でした。そんな自分でもクラスメイトがサポートしてくれたのが印象的です。声を発して話す必要がある場面では、誰かが代わりにやってくれたりして、とても楽しく過ごせた思い出があります。

※無言勢:VRChatにて、なんらかの理由で声を発さずにプレイする人。

――学園生活を通してどのようなものを得られましたか?

かにぱん:
当時はゲーム仲間と旅行気分でワールドめぐりをするくらいしかVRChatで遊んでいませんでした。けれども卒業後はその枠を超えて、いろいろな人と遊びに行くきっかけが生まれ、結果より多くの人と友達になれたと思います!

――現在はどのようなVRChat生活を送っていますか?

かにぱん:
「ふぉと△らぼ」というコミュニティで写真撮影活動をしていて、学園のアルバム作りのお手伝いもしています。簡単ではありますが、ワールド制作も始めています。VRChatを始めた当初では考えられなかったことができていると思います!

卒業生インタビュー②:むぎたろさん


(第3期卒業生・むぎたろさん)

――どのような経緯や理由で「私立VRC学園」に参加されましたか?

むぎたろ:
自分はVRChatを「Meta Quest 2」が発売された時にプレイし始めました。ただ、最初はフレンドが全然できなかったんです。はじめましての方がたくさんいる中で、どうやってコミュニケーションを取るべきかわからなくて。

「VRChatって100%おもしろいはずなのに、楽しめていない気がするぞ」と感じて、VRChatをより理解するきっかけがほしいと思い、Twitterでたまたま見つけた「私立VRC学園」に応募しました。

――参加してみて印象的なエピソードがあれば教えてください。

むぎたろ:
入学式の日が印象的ですね。入学式の会場に行ったら、すでに自分の知らない人が輪になって喋っていました。当時、「人の輪に入る」ことがすごく苦手だったので困っちゃったんですよね。

そうしていたら、話していたみなさんが僕に気づいてくれて、「こんばんは!」と僕に話しかけてくれたことで、一気に輪の中に入れたんです。あんなに苦手意識があったのに、「クラスメイトというだけでこんなに簡単に輪の中に入れるんだ!」ということにめちゃくちゃ感動したんです。

さらに、その後にもやってきたクラスメイトに対して、僕も同じように声をかけて迎え入れようと、協力しようという姿勢になれていたんです。無言勢の人にペンを持ってきてあげたり、耳があまりよくない方がいたので筆談をうながしてあげたりと、自然と動けるようになっていて。そして入学式が終わった後に、これはすごいことだ……! と気づいて、今でも強く印象に残っています。

――「私立VRC学園」を通してどのようなものを得られましたか?

むぎたろ:
「どうやってコミュニケーションを取っていくか」ということを教えてもらったと思います。

VRChatの世界って、善意で循環しているんですよね。誰かが優しくしてくれたら、その優しさを次の人にバトンを渡す。自分も善意をもって、誠実さを捨てずに人と接し、なにか楽しませたりして、がんばって自分からなにかを与えようとするコミュニケーションを取れば、みんな受け入れてくれるし、友達になってくれるんです。

「自分から善意とともに一歩踏み出せば応えてくれる」ということを教えてくれたのが、自分にとっての学園の二週間でした。

――現在はどのようなVRChat生活を送っていますか?

むぎたろ:
イベントをたくさん開催するようになりました! いまは「PNGミュージアム」という、VRChatにまつわる画像やイラスト、漫画などを展示するイベントを2年近く主催しています。

これは、学園の友人たちが手助けしてくれることも大きいんです。学園の友人がなにかやろうとしていたら、自然と応援したくなって、「手伝おうか?」って名乗り出たくなるんですよね。たった二週間で、善意から生まれたつながりを前向きに活かせるように感じるのは、学園に入って得られた大きな財産ですね!

第11期説明会はまもなく開催!

――来たる第11期はどのような期になる想定でしょうか?

ebigunso:
いまのところ第11期に関しては、今までとあまり大きく形を変えないつもりです。これまでやってきた良いところを継承できる期になればよいなと思います。

――もう少し先の話になりますが、「私立VRC学園」を今後どのように発展させていきたいですか?

ebigunso:
運営メンバーともいろいろ相談している最中ではありますが、まずは少しずつ受入人数を増やしていければなと思います。

生徒数は毎回100名ほどですが、現在応募倍率は3倍近くになっています。この倍率の高さは、応募される方に申し訳なく思いますし、倍率の高さがネガティブな影響を生んでしまっているところもありますので、解消していきたいところです。

――現実の学校で言えばいわゆる「名門学校」というものもありますが、「私立VRC学園」はいろいろな方に来てほしいと。

ebigunso:
そうですね。より多くの人に「私立VRC学園」でVRChatの楽しさを体験していただき、VRChatを始める、また継続していくにあたって背中を押していけるような存在になっていければと思います。

――最後に、第11期の入学のご案内をお願いします!

ebigunso:
5月29日(月)に、第11期入学希望者向けの生徒説明会を、VRChatにて開催予定です。詳細な日程などは今後公式Twitterでも発信していきます。入学に際しては抽選が挟まってしまいますが、説明会は希望者全員が参加できるように準備をしております。「私立VRC学園」にご興味をお持ちの方は、ぜひお越しください!

――すばらしい期になることを願っています。本日はありがとうございました!

「私立VRC学園」公式サイトはこちら。
https://sites.google.com/view/vrchighschool/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0


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