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VR体験施設 2021.10.16

東京ジョイポリスで「FAR CRY」と「アサシンクリード」VRを体験、原作の面白さを再発見できる仕掛けに驚き!

東京ジョイポリスが、VRアトラクションZERO LATENCY VRで、シューティングゲーム「FAR CRY VR : Dive Into Insanity」と脱出ゲーム「Escape The Lost Pyramid」が期間限定で登場しました。人気タイトル「FAR CRY」と「アサシン クリード オリジンズ」の世界観をVRで再現しており、フィールドを歩き回りながらゲームをプレイできます。

今回、MoguLiveチームはアトラクションを先行体験し、これから足を運ぶ人々に見どころを紹介していきます。はたして、このビッグタイトル2作は、VRでどんな世界として描かれているのでしょうか?

原作の「極限事態の中で現実があいまいになる」感じが体験できる!

さて「FAR CRY VR」は原作を知っているとちょっと緊張するんですね。なぜかと言うと、ベースとなっている世界観がFar Cry 3だからです。

「Far Cry 3」は2012年にリリースされた、海賊に支配された島を舞台とするオープンワールドのFPSとして高く評価されたタイトルです。……これくらいなら「へえ、すごくメジャーなゲームジャンルを成功させたタイトルなんだね」と思われるでしょうが、本作の白眉は残虐なヴィランである、海賊のボス・バースを中心とした、プレイヤーを試すようなストーリーテリングにあります。


(海賊舞台のボス・バース)

プレイヤーは彼に導かれ、徐々に暴力の世界に拘泥してゆき、自分自身の倫理観が試される……こうしたアプローチから「Far Cry 3」の緊張感が生まれていました。

「敵集団の始末するという“暴力の楽しさ”を肯定できるのか?」それが「Far Cry 3」の裏のテーマでした。およそ10年前の原作で受けた衝撃を思い出し、今回のVR版でも「また銃撃戦を楽しむプレイヤーを問いただすようなアプローチがあったらどうしよう」なんて心配していました。

実際にジョイポリスのZERO LATENCY VRに足を踏み入れてみると、すでに会場内の時点で異質な雰囲気。壁にはVRゲーム用の重装備が掛けられ、会場の女性スタッフの方は「この銃火器で戦うんですね」と軽快にブリーフィングを進めます。

MoguLiveチームは、どことなく緊張した面持ちで、さながら映画「バトル・ロワイアル』」のようでした。ゲームルールを説明する女性スタッフの方も、映画に出てくる殺し合いのルール説明をする宮村優子さんに見えてきましたし。

いよいよMoguLiveチームもVRの装備を着用へ。リュック型の装備に加え、銃器のアタッチメントを持った状態になると正直なかなかの重さであり、「今日はこれからVRの世界で殺し合いをしてもらいます」という実感が湧いてきます。

VRヘッドセットをつけ、「FAR CRY VR」の世界へ入り込むと、作中の巨悪であるバースがいきなり登場。檻に閉じ込められたMoguLiveチームを、得体の知れない言葉で暴力の現場へと導いきてきます。

檻から出されると、本格的な銃撃戦へ突入。実際にやってみると、通常のVRとは違い、本当に自分の身体を動かしてゲームの世界で行動できる楽しさがあります。

実際の銃で撃ち合いをする面白さが追求されており、かなり現実に近いような銃の持ち方で撃たないと当てにくい印象があります。このあたりはリアルな動作が求められるVRならではの手応えだと言えるでしょう。

銃撃戦に集中できるようにしているのも、上手く作っていると感じました。自由移動が許されていると言っても、無闇に歩き回るわけではありません。先へ進めないと分かる壁があり、次にどこへ進めばいいかの道のりも見やすかったです。次に何をすべきか自然に分かるデザインは良いと思いました。

ステージが自動で進むレールシューター式となっており、敵を全滅させるたびに先へ進めます。銃撃戦の手触りはゲームセンターにあるガンシューティングアトラクションを超大型にしたような感覚に近いものがありました。

ただ「Far Cry 3」を原作をしているゆえに、単なる超大型ガンシューティングに終わりません。後半に差し掛かると、いよいよこの原作ならではの演出が姿を現してゆきます。

密林から先へ進むと、やがてキノコが生い茂る洞窟へ。キノコからは幻覚作用のある胞子が飛び出しており、だんだんと何が現実かそうでないかが、あいまいになっていきます。敵は実体のない影が大量に襲い掛かってくるようになり、さらに幻覚が進むと、天井に張り付いたまま、こちらを銃で撃ってくる敵まで登場します。

上を見上げながらの銃撃が楽しい……ということ以上に、原作が持つ極限状態で現実があいまいになる」というサイケデリックな部分までVRで再現するスタンスに驚きました。

今作はVR=幻覚であり、極限状態を体験させるという切り口を徹底しています。原作を知らないプレイヤーには“よくできたガンシューティングVR”にしか見えないかもしれませんが、原作を知っているほどその仕掛けに気づくようになっているのです。もし原作をプレイした上で、このVRを体験すれば、再びバースに「超現実的な世界」へ導かれることになるでしょう。

「アサシン クリード」のVR脱出ゲームは、原作のテーマがより浮き彫りに

次は「アサシン クリード オリジンズ」原作の「Escape The Lost Pyramid」を体験します。こちらの作品は、かなり安心してプレイできるんじゃないかと思っていました。

「アサシン クリード」シリーズは、ゲームファンには言わずと知れた暗殺者を描くゲームです。なので「安心してプレイ」というのは変な言い方かもしれませんが、最近のシリーズでは暗殺をゲームプレイとしないモードが追加されているんですね。

「アサシン クリード オリジンズ」(以下、オリジンズ)からはちょっと異なるモードとして、「ディスカバリーツアー」が追加されています。このモードでは一切の戦闘を無くし、オープンワールドで描かれたロケーションの歴史や文化などを学べるようになっています。

「アサシン クリード」シリーズは、開発会社UBIの徹底したリサーチによって、古代ギリシャやローマ帝国など古い時代の都市のリアルな描写にも定評があり、本モードを教育を目的とした使用も公式に認めているほどです。

ということで「Escape The Lost Pyramid」も、「オリジンズ」のディスカバリーモードみたいにほのぼのとしたVRツアーになるのだろうなと思っていました。ただ気がかりなのは、脱出ゲームという要素。2人で組んでパズルを解かないと脱出できないそうなのです。

ふたりのプレイヤーはエジプトの迷宮に入りこみ、仕掛けを解きながら最終的に秘宝を見つけ出すことが目的です。基本的にはお互いが違う場所で、情報を話し合いながら様々なパズルを解き、先へ進むかたちとなっています。

パズルは主に次のようなかたちになります。たとえば歯車を組み合わせるパズルでは、お互いが壁に阻まれた部屋で解いていきます。ここではパズルに挑むなかで、一部の歯車が噛み合わないことが分かると、もう一人のプレイヤーと相談して壁のすき間から歯車を交換しながら謎を解いていくかたちになるのです。


(パズルをどうすればいいかわからなくなり「お手上げ」するMoguLiveチーム)

パズルといえば、どうしてもわからなくなって詰まってしまうことも少なくありません。ですが本作ではヒント機能もありました。文字通り「パズルが分からなくてお手上げ」のポーズを取るとヒントが見えるのです。部屋の中のどのオブジェクトにも意味があり、どちらのプレイヤーが扱えばいいかを示してくれるので、スムーズに進められるでしょう。

先へ進むとより「アサシン クリード」らしいステージも。原作ではどんなに高い建物でも簡単に登ってしまうアクションが魅力のひとつです。それがVRの本作でも再現。パズルの中には壁に取っ手を掴んで登っていくものがありました。「実際にゲームの動きをやったらこんな感じ」という、VRらしい体験も協力型パズルに落とし込んでいます。

このように協力してパズルを解く難易度もそこまで難しすぎず、クリアまでの時間もおよそ40分ほど。原作を知らなくとも、アトラクションとして楽しむには十分すぎる出来と言えます。

ですが本作もまた、原作を知っているほど考え込ませる仕掛けがありました。それはゲームクリアにたどり着いたときに「ああ、これをVRでやるわけか」と感心させられました。アニムスが出てきたからです。

アニムスとは「アサシン クリード」で、現実世界から過去の歴史を巡るという機能を持つマシーンのことで、シリーズに一貫して登場しています。各シリーズの主人公はアニムスを使い、現代から数百年からあるいは数千年前の記憶に入りこむのです。

このアニムスも、単なる世界観の再現には収まらず、「現実世界からゲームの世界に入りこむ」というVR体験とリンクするような構図を暗に示していると言えるでしょう。先の「Far Cry 3」もそうでしたが「プレイヤーとゲームの関係を暗に示す」仕掛けになっているのです。

ただ「アサシン クリード」では、すでにシリーズを重ね、そうした「アニムスを媒介としたプレイヤーとゲームの関係」という構図もいささか形骸化したものでした。しかし今回の「Escape The Lost Pyramid」で「過去の歴史に入りこませる」アニムスの機能をVRの体験に落とし込むことで、原作の世界観を新鮮に感じさせます。原作ファンほど考えさせる内容になっていると言えるでしょう。

原作の良さをVRがより拡張する

今回「Far cry」シリーズと「アサシン クリード」シリーズがVRになるというのはどういう効果があるのかも考えながらプレイしたところ、どちらも原作が持つ仕掛けをVRによって拡張させているのが印象的でした。

いずれも原作はプレイヤーとゲームの関係を問いかけるようなアプローチが暗に隠されており、それがVRによってあらためて浮かび上がる構図となっています。両作ともに(UBIらしい)VRらしさを意識した表現があると感じました。

今回のようにUBIの代表タイトルがVRで、原作のメタフィクション的なアプローチを生かしていたことが興味深かったです。ゲームプレイそのものの完成度に加え、原作のコンセプトもVRに反映していたことは珍しいと言えるでしょう。

もちろん、どちらの作品も原作をまったく知らなくてもストレートに楽しめるゲームになっています。各作品ともにVRでほどほどに集中してクリアできる30分~40分の尺でまとまっておりますし、休みの日にジョイポリスへ事前予約し、家族や友達を誘って遊びに行ってもかなり満足できるアトラクションとなっています。

そして原作を知っている人ほど、ゲームが終わった後に、あらためて原作について考え込んでしまう……という稀有な体験となっているのです。

東京ジョイポリスのVRアトラクション「ZERO LATENCY VR」の詳細はこちらから。


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