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メタバース最新動向 2022.07.21

【特集】「Roblox」を見つけたのは4歳の息子だった。親子揃っていっしょに遊ぶ家族にインタビュー

グローバルで見ればDAU(日間ユーザー数)約5,000万人、MAU(月間ユーザー数)2億2,600万人という、超巨大なオンラインゲームプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」。日本語圏のYouTuberがRobloxをプレイしている姿を見かけることも増えてきました。1年ほど前からRoblox用のゲーム開発ツール「Roblox Studio」が日本語対応し、直近ではTikTokで日本向けの広告も出しています。まだまだ「みんな知ってる」という状態ではないものの、徐々に認知度が高まっていきそうな状況です。

今回はそんなRobloxについて、5歳になるお子さんと一緒に遊ぶワタナベさん一家(仮名)にインタビュー。Robloxは日本の親子の中でどのように溶け込み、どのように生活の一部となっているのか聞いてみました。

無料で始められるRobloxに家族でハマる。親世代には「どこか懐かしい」?

——ワタナベさんのお子さんと、Robloxのファーストコンタクトはどのようなものでしたか?

ワタナベ(仮名):
1年くらい前、なので子どもが4歳のころ、YouTubeでRobloxの解説動画を見て「これやりたい!」と言ってきたのが最初でしたね。もともとは「Minecraft(マインクラフト)」をやりたいって言っていたんですが、Minecraftは有料のゲームです。保育園に通わせている時期から有料のゲームで遊ばせるのはどうだろうな、とちょっとした抵抗があったのですが、「Robloxは基本無料だし、これならいいか」と思って子ども用のスマートフォンにインストールしました。

——そうしたら今や、家族揃って自分のスマートフォンにRobloxをインストールして、Roblox内のゲームでいっしょに遊ぶようになったと。

ワタナベ:
子どもが楽しそうに遊ぶのを見ていたら、自然と「面白そうだな」って感じたんです。

——Robloxでは大量に存在するゲーム・コンテンツで遊んだり、自分でゲームを作って公開したりできます。ワタナベさんのお子さんは、どのようにRobloxと触れ合っているのでしょう?

ワタナベ:
「自由気ままに」って感じですね。ゲーム内に隠されたアイテムを探し出して教えてくれたり、アイテムを集めて移動速度を速くしたりとか、レベルアップ要素を楽しんでいるところもあります。家や部屋を作ったり素材を集めたりというクラフト要素があるゲームも、ものすごく好きみたいです。

——PlayStation 5(PS5)やPC向けタイトルと比較すると、Robloxはシンプルなグラフィックやシステムのゲームが多い印象です。ゲーマー的な人からすると「物足りない」と言われることもあると思うのですが、ワタナベさんご夫妻はどのようなところを楽しんでいますか?

ワタナベ:
なんというか、自分が昔遊んだゲームっぽいものがいっぱいあるんですよ。Robloxは基本3Dなので、ニンテンドウ64のゲームみたいなちょっと大人の心をくすぐるコンテンツがあります。確かにRobloxってシンプルなゲームやコンテンツが多いと思うんですが、親にとってはその「懐かしさ」や「素朴さ」が刺さるところがあります。

言葉は通じなくても、絵文字とエモートは通じる

——さっき見せていただいたのですが、お子さんのRobloxアカウントには、すでに200人近くのフレンドがいらっしゃるんですね。

ワタナベ:
私たち夫婦は家族しかフレンド登録していないんですが、この子は気づいたらもう友達だらけでした。どんどんフレンド申請がきて、どんどんフレンド承認をしていて、どんどんコミュニケーションしているんですよ。うちの子は文字を打ち込むことはないんですけど、フレンドと絵文字やエモートを送り合ってます。友達とゲームボーイを通信ケーブルでつないでポケモンをやっていた世代からみると、ほんとうにすごいと思います。

ちなみにこの子のフレンドの中に保育園の友達はいなくて、家族とRobloxで出会ったフレンドだけなんです。パパ友ママ友と話しても、Robloxをやっているという話を聞かないんですよ。Minecraftのほうはちょこちょこ聞くんですけどね。まだRobloxは日本ではそこまで普及していないし、親の方にも情報が入ってきていないんじゃないかと思っています。ただ過去の「モバゲー」みたいな感じの広まり方はするんじゃないでしょうか。無料ではじめられるし、一度遊べばハマるし、大人も一緒に遊べますから。

——お子さんのフレンドはかなり国際色豊かですよね。文字だけだとコミュニケーションが難しいと思うので、絵文字やエモートを送り合っているという話も納得です。

ワタナベ:
ですね。この子のフレンドの国籍だと、韓国の方が特に多いです。いっしょに遊んでいるゲームの好みが近いのか、遊んでいる時間帯が同じなのかも、と考えています。アメリカだと時差とかもあるでしょうし。

保育園から帰ったら、もうずっとRobloxをやっているんですよ。最近ではスマートフォンの画面を見すぎていると目が悪くなるんじゃないかと心配で、ちょくちょく休憩を入れさせています。でも5分後ぐらいにはスマートフォンに手を伸ばしていて、「そろそろ控えさせなきゃな」と。

Robloxが学びとなる実感も。でも「お金」まわりはやっぱり難しい

——MinecraftはいわゆるSTEM教育の題材として取り上げられるほど、プログラミング的な思考を学ぶのに適したツールだと言われていますよね。Robloxも同じように、STEM教育や2Dや3Dのクリエイティビティを学ぶための方法として注目されています。「親目線」では、実際に子どもたちが新しい何かを学べるものになっていると思いますか?

ワタナベ:
僕は、もうめちゃめちゃ役立つんじゃないかなと思っています。四角いブロックを積んで何かの形を作る体験では空間認識力を高められるし、Robloxのアスレチック場を作るゲームは、アトラクションを配置する順番で体験する人の満足度が変わってきます。うちの子は、Robloxで普段の学校の勉強だと学べないことを学べていると思うんですよね。

——その一方で「Robux」、いわばRobloxのゲーム内通貨(※)の仕組みについてはいかがでしょう。お子さんがお金や電子マネーについて考える練習になるとも思いますが、悩ましいところもあると思います。

ワタナベ:
この仕組みについて、僕は素晴らしいと思いつつも、子どもたちがいきなりお金、あるいは「数字で価値を捉えること」を学びだすのは何歳くらいからがいいのかといった話は、夫婦間でも「もっと真剣に考えるべきだ」と話し合っているところです。

僕自身はクライアントから依頼されたものを作ることでもお金を稼いでいますし、父親からも「作品」と「商品」を区別することを小さいころから教わってきました。そういう基礎を早いうちに学べるのはいいことではないかなと。ただこちらからRobloxに課金することはまだ遠慮したいですね。この子が自分のお小遣いを貯められる年齢になってから、でいいのではないかと考えています。

(※Robloxでは、ファッションアイテム等を購入するためにゲーム内通貨「Robux」を使用する。また、ユーザー自身が公開したコンテンツで収益を得ることもできるが、換金するためには本人の年齢が13歳以上であることや、ゲーム内通貨「Robux」を5万Robux以上保持していることなど、いくつかの条件がある)

——ちょっと違う話になりますが、スポーツブランドのナイキがRoblox上に「NIKELAND」という、ミニゲームが遊べて、Roblox用のファッションアイテムが入手できる体験を公開しています。こののようにRobloxでは各種ブランド・IPとのコラボ、あるいはPRのようなものがたくさん出てきていますが、これについてはどう考えていらっしゃいますか。「Fortnite」とかもそうですが。

ワタナベ:
うちの子は紙パックのプロテインをちょくちょく飲んでいるんですが、これ、Robloxの影響なんですよ。Robloxで筋トレしてマッチョを目指すゲームがあるんですが、それをプレイしてから「ムキムキ!」といって飲むようになりました。

私たち親世代は「広告」ってよほどのことがないかぎりスルーしちゃいますが、子どもたちに刺さるようなプロモーション方法であれば大きな意味があると思うんです。Roblox内に商品広告看板をそのまま出すとかではなく、「自分の好きなゲームのアイテムに、あのメーカーのプロテインがある」といったケースであれば、きっとそのメーカーのプロテインが好きになると思うんですよね。

和気あいあいと遊べるポテンシャルの高さ

日本ではまだ一部のユーザーにしか知られていないRobloxですが、今回取材させていただいたワタナベ家の事例からも「大人も子どももいっしょになって和気あいあいと遊べる」というポテンシャルの高さが感じられました。

またお話を聞いていて感じたのは、「VRChat」や「cluster」といったソーシャルVRとはコミュニケーションの形が大きく異なること。足を止めてその場で雑談するのではなく、常に動き回り、ゲームを介してコミュニケーションすることを楽しんでいるようです。

これは「Fortnite」や「Rec Room」といったコンテンツで行われているコミュニケーションも同様で、まずは「子どもたちが興味を持てる遊び場・遊び方ありき」ということなのでしょう。日本展開のさらなる本格化も、この「子どもたちが興味を持ってくれるかどうかか」にかかっていると言えそうです。

(聞き手・執筆・写真: 武者良太 / 編集: 水原由紀)

※プライバシー保護のため、一部写真は編集部により加工。


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