3月15日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)はGDC2016で開催されたプレスカンファレンスでPS4向けVRヘッドマウントディスプレイPlayStation®VR(PS VR)の価格が399ドル(日本では44,980円)、10月発売などを発表しました。
また、新たにPS4でできる映像視聴などのほぼすべての機能をPS VRを装着した状態で体験することができるシネマティックモードが明らかになりました。
Mogura VRでは3月7日にSCEワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏のインタビューをお届けしたばかりですが、今回発表されたことを踏まえて、さらに突っ込んだ話を聞いてきました!
発売時期が10月になったワケ
――ついにPS VRの発売日と価格が明らかになりました。もともと発売時期は今年の前半というお話でした。これが10月にずれた訳は何があったのですか?
- 吉田:
- 私も個人的にはとても残念でした。以前もお伝えしたようにハードの開発はずっと予定通り進んでいました。そこは問題なかったので、期待感を考慮しての遅れということになります。全世界的にVRの期待感が高まっていて、PS VRに対しても期待をしていただいているお客さんが増えています。様々な地域で需要調査をやったところ、思っていた以上に期待が集まっており、生産をがんばらなければならないなと。
――すぐに品切れになったら残念ですものね。
- 吉田:
- 10月になったことで、その分デベロッパーの皆さんにも時間ができます。ほとんど出来上がっているコンテンツもありますが、時間をかけてさらに磨きをかけてもらおうと思っています。その間に体験の機会も増やしたいですね。今、東京でGAME ONをやっていてPS VRを出展してますが、凄く反響が良いです。いろんな意味で時間をとる事は良い事だと思って10月になりました。
――そうなんですね。ちょうど年末商戦の前にも重なりますね。
- 吉田:
- はい。年末商戦は外さない方がいいと思っています。
特注の有機ELパネルやみんなでVRを楽しめることにリソースを配分
――続いて価格について伺います。PlayStation CameraとPlayStation®Move (PS Move)は同梱されませんが、全部トータルで買うとその分値段は上がりますよね。販売の形態として、同梱版は出されるのでしょうか?
- 吉田:
- PS4のカメラは意外と多くの方が持っていらっしゃいます。特に、発売した頃にPS4を買って頂いた方々は、カメラの所有率が高いです。同梱版を基本セットにしてそういう人達に渡しても意味がないですよね。Moveに関しても、実はPS3時代から数えると1,500万本以上売っています。家のどこかに転がっているケースが多いと思いますので(笑)、PS VRとは別売りにする事を割と早い段階から決めていました。
――PS Move、結構な本数売れてたんですね。
- 吉田:
- はい。そういった既存の周辺機器を活用し、VR専用のものを作らなかった代わりに、大事なところにリソースを割く方針をとりました。PS VRで初めてVRに触れる人も多いと思いますから。非常に快適な体験をつくるためには、レイテンシの低減や解像度などの様々なハードルがあり、それらを実現しようと。120Hzという非常になめらかな動作を可能にする有機ELパネルもPS VR向けに最先端のものを特注しています。
――やはり特注でしたか。
- 吉田:
- それから、VRのローンチのときに一番大事だと思っているのは、VRを一人で閉じこもっている感じにしないことです。みんなで集まってわいわい楽しめるソーシャルスクリーン(※)や、それを実現するためのプロセッサーユニット、また今回新たに発表したシネマティックモード。こういった部分は妥協せずに作りながら、家庭用ゲーム機並みの値段にしたいと。ドルベースでPS4のローンチ価格の399ドルという数字を目標にしてきました。日本での価格は揃えられなかったのは残念ですが……。
※ソーシャルスクリーン:TVの画面にも映像を出力することで、PS VRを被っていない人も被っている人の視点を共有できたり、別視点でゲームができる機能。
――セット販売などはされていくのでしょうか。
- 吉田:
- PS Vitaも PS4もバンドル版などは各地域ごとに異なります。PS VRも地域毎に決めていくことになります。アメリカでは、カメラやMoveを同梱した全部入りのパックも売るつもりです。日本向けは未だ決まっていません。
――それはソフトに関しても同じですか?『THE PLAYROOM VR』は同梱されるということでした。
- 吉田:
- 『THE PLAYROOM VR』に関しては確実に同梱されます。
――他にも同梱タイトルが増えたりしますか。
- 吉田:
- ベースのセットには入りません。しかしプレミアムパック的なものをや出す場合にはソフトも同梱になる場合があるかもしれません。
タイトルは増えているが、開発者も満足できるように
――ローンチタイトルは50以上という話でしたね。
- 吉田:
- 正確にはローンチから12月末までの、サードパーティさんと我々の中で予定しているタイトル数が50程度です。個人的には、いくつかのタイトルは先に延びたりするとは思うのですが、増えるものもあると思います。Steamなどには最近はほぼ毎日のように新しいVRコンテンツのタイトルがリリースされています。Oculus RiftやHTC Viveのローンチタイトルも非常に多い。多いことはいいんですが、一番大事なのはデベロッパーさんがしっかり投資回収できること。そして、次に進めるようにするということですね。
――ストアに最初からコンテンツが多すぎると1つ1つのコンテンツはあまり売れないということになってしまう懸念がありますよね。
- 吉田:
- ローンチタイトルが多いからといって手放しに喜べるわけではないと思っています。リリースのペースは我々がコントロールできることではありませんが……。今後VRが健全な発展を遂げるために、デベロッパーさんがいいものを作っても売れなくて「もうやめます」と思ってしまうような状況になるのは避けたいです。そのためにもPS VRをたくさん売らなければいけないし、他社さんのVRHMDもたくさん売れて欲しいと思っています。
――ちなみに50という数はワールドワイドでの英語ベースのコンテンツの数ですよね?
- 吉田:
- 地域によって出ないタイトルがある事はありえます。とはいえVRに関しては、言葉での説明が少ないため、ローカライズが大変なものは少なくなりそうです。ヘディングをする『Headmaster』やパズルゲーム『Super Hyper Cube』、リズムアクションゲーム『Thumer』などは万国共通で遊べますよね。私は直接関わらないので約束はできませんが、海外のVRゲームでも日本人が楽しめるようなものを多く持ってこれるのではないかと。SCEJA(SCEジャパンアジア)は取り組んでくれるのではないかと期待しています。
Headmaster
https://www.youtube.com/watch?v=mSWotJ_-zgU
Super Hyper Cube
https://www.youtube.com/watch?v=0IXEfQmyBms
Thumer
https://www.youtube.com/watch?v=eThoazvS8_0
シネマティックモードで感じられるPS VRのスペック「RGB」の良さ
――今回新しく発表されたシネマティックモードですが思っていたよりも綺麗ですね。比較としては、Gear VRのNETFRIXアプリなどと比べますが。より綺麗に見えました。ブルーレイ再生とかもかなり快適でした。
- 吉田:
- シネマティックモードはいい意味で「あれ?」と思われる方が多いと思います。スペックの数字だけでは分かりません。PS VRのディスプレイには、120Hzで動作し、なおかつサブピクセルにRGBが全て揃っているものを用意しています(※)。そのため色も非常に綺麗に出ます。
※有機ELディスプレイでは、ペンタイル方式と呼ばれる、各ピクセルを構成するサブピクセルにRGBの3色がすべてのピクセルに搭載されないものがある。
――レンズで視界いっぱいに拡大しているので、違いがわかりますね。
- 吉田:
- 私もシネマティックモードを先週ずっと使っていました。映像関係は素晴らしいですね。特に実写の映画など。周りがまっ黒でスクリーンのみが浮かんでいる状態なのですごく集中できます。2時間通して映画を見たんですが、いかに普段テレビまわりの様々なものに気が散っているかということが分かりました。
――携帯もいじれないですからね(笑)
- 吉田:
- そうなんです。時間すらわからないので、ずっと没頭してしまいます。ゲームはモノによって臨場感があり過ぎて、カメラがちょっと離れていたら気持ち悪くなることがあるかもしれません。最近私がやっている『Firewatch』というインディーゲームはもの凄く色合いの綺麗なゲームですので、PS VRでは色が綺麗に出ました。綺麗でカラフルなゲームと凄く相性がいいですね。
――インディーのゲームは色使いがカラフルで独特なものも多いですね
- 吉田:
- あと、『Outlast』(笑)
――え……。真っ暗な中でホラーゲームは勘弁ですよ(苦笑)
- 吉田:
- そして、デベロッパーさんが自分達のゲームをどうVRにしたらいいか考える際に、ヘッドトラッキングはゲーム内には反映されないけれど、試しに確認するのにもシネマティックモードは使えるかなと思います。
――そうですね、簡単に見てみようという感じですね。
- 吉田:
- シネマティックモードで動作確認してみるデベロッパーさんも出るかもしれませんね。面白い使い道です。それから、家族の方がメインのテレビを占領されている時なんかもいいですよ。PS VRをPS4に繋げて自分の見たいコンテンツを楽しめます。
年齢制限は12歳以上。発売は世界同時を目指す
――二眼立体視を採用しているVRHMDへの懸念点として、子供への影響と年齢制限の話がありますが、PS VRはどうなりますか。
- 吉田:
- 特に3D立体視の部分が小さいお子さんに与える影響は研究もまだされている分野ですが、様々な面から検討を行った結果、VRでは12歳以上としています。
――最後に、PS VRの発売を心待ちにしている皆さんに向けて。PS4は日本で発売が遅れてしまいましたが、PS VRはそういうことはないでしょうか?
- 吉田:
- 「ない」と言い切りたいです。10月に送らせた理由の1つに、できるだけ多くの地域でほぼ同時に出せるようにしたいということもあります。どちらかというと日本ではなくて、アジアの小さい国とかラテンアメリカとかヨーロッパの方の小さい国でも発売できるかどうか気になっている点です。日本がほぼ同時というのは、我々の中では「そうすべきだ」という風には思っています。
――発売が楽しみですね。ありがとうございました!