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VTuber 2024.04.09

アイドルマスターは変わりつつある ヴイアライヴ“最終声明”ライブに見た筋書きのないドラマ

アイドル候補生たちをリアルタイムで追える「THE IDOLM@STER(以下・アイマス)」の新規プロジェクト「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)(以下・ヴイアラ)」が、開始から1年経過し、デビューを決めるためのライブ「PROJECT IM@S vα-liv LIVE -THE LAST STATEMENT!!!-」を開催しました。。

ヴイアラ所属しているのは灯里愛夏上水流宇宙レトラの3人。1年間YouTubeでの配信活動を行いながらアイドル技術を磨き上げ、その様子をプロデューサー(視聴者)に見守られるという、ゲームの中の出来事をリアルタイムで現実に行う初めてのプロジェクトです。

このライブ自体は、初めて見る人でも十分楽しめるくらい、しっかりとした演出とパフォーマンスの内容でした。

しかしヴイアラを追ってきた人にとって、そして「THE IDOLM@STERシリーズ(以下・アイマス)」も追ってきた人にとって、今回のライブは「アイドル候補生の舞台を見ている」というもの以上の、大量の文脈が流れ込んだ一瞬を受け取れる舞台だったと思います。

まずヴイアラ3人は、この1年の成果の全てをかけているため、パフォーマンスの思い入れに特大の物語性があります。またアイマスシリーズの先輩アイドルたちのこれまでの活動や、アイマスを取り巻く数多の環境の変化の流れも、このライブに収束しています。

今回のライブはどこがすごかったのか、見どころを振り返りながら、アイマスの文脈と2次元文化、バーチャルなアイドル文化などの合流の様子を見ていきます。

1・観客はプロデューサーだけ

このライブを見る前提として、視聴者は観客・ファンではなく「プロデューサー」だというのをおさえておく必要があります。

今回のライブではたびたび、誰もいない広い会場を撮影した映像が、おそらく意図的に入れられています。アイドルデビューしていない3人を今回見ているのは、応援し審査するプロデューサーたちのみ。今回のライブは審査ということなので、会場に客がいないのは当然、ということでしょうか。

そのかわり、プロデューサーがいるコメント欄、たとえるならばバックステージでは、すさまじい量のペンライトが振り続けられました。およそ数千人以上のプロデューサーがいたようです。

そもそも、アイマスシリーズは「プレイヤーはプロデューサー」「アイドルは自身がプロデュースしている相手」というロールプレイをするゲームであり、育まれてきた文化です。

アイマスのリアルな声優の出演するライブでも、声優はあくまでアイドルとして舞台に立ち、「これからもプロデュースよろしくお願いします!」という挨拶をすることがあります。ゲームを越えた部分での想像力を必要とした、プレイヤーが全力でのめりこめるコンテンツとしてユニークな成長を遂げてきました。

そうした土壌から生まれた、ヴイアラは、アイドルの「プロデュース」の要素が非常に生々しくなりました。3人の(プロデューサーたちのアンケートを元にデータ化した)パラメーターが数値化され、YouTubeやSNSの数値の増減も隠すこと無く公開されます。全てが「ここまで成長した」というポジティブな意味でのパラメーター変動、という扱いのようです。

だからこそ、今回のライブは、プロデューサー(視聴者)にとって、3人の育った姿を感慨にふけりながら見る、成長結果の発表会でした。ステージとしては本番ではあるのですが、観客がいないプロデューサーの前だけの、本気の審査の舞台、という感じです。だからライブパートは評価ポイントであるの「ダンス」「ボーカル」「ビジュアル」と分かれています。

ここを理解して舞台を観ると、自分たちの1年の成長の集大成をプロデューサーに見てもらおうとする、3人のフレッシュな姿が見られることに気付かされます。曲の構成やMCからは、対観客のライブとは異なる、3人とプロデューサーの感情の入ったやりとりが含まれているようにも見えます。

たとえば、上水流宇宙の「シャイノグラフィ」(※「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の楽曲)では、VJで本人の描いたイラストがタイムラプスで表示されました。今まで他のコンテンツではなかった斬新な演出ですが、これは上水流宇宙が、ヴイアラのふたりとここにいるプロデューサーさんたちに一番喜んでもらえるだろう、自分を表現できるだろう、という思いがあったからこその演出だったように感じられます。

今後さらに成長して、自作イラストを用いた演出を彼女が手掛け見せてくれることがあったら、今回見たこの光景を思い出したいです。間違いなく、これからはさらにすごい演出に成長すると思いますが、彼女の成長の起点はYouTubeとここにあります。

2・成長を観るためのライブ

3人のステージは、ボーカル・ダンス・ビジュアル(アイマスの評価三基軸)いずれもしっかりした基礎の上に自らの表現を乗せた、平均を大幅に上回るクオリティに感じられました。「これが候補生か……?」という驚きの声もコメント欄で見られました。

ポジティブで揺るぎない強さのあるダンスとボーカルの灯里愛夏、キレのあるダンスと高音が美しいボーカルの上水流宇宙、バンドをやっていただけに舞台慣れしていて抜群の歌唱力を持つレトラ。ふたりでのハモリボーカルやユニゾンダンスなども多数あり、総合的なパフォーマンスはかなり高いレベルに達していました。

「じゃあ他のアイマスの大先輩たちを越えたのか?」 と言われると、本人たちもまだまだ「追いつきたい」という最初の段階のようです。

ちょっとややこしいのですが、彼女たちが考えている比較対象はゲーム内でのアイドルたちのライブの方だと思われます。彼女たちが普段から名前をあげているのは、ゲーム内の先輩アイドルたちだからです。如月千早や高垣楓らのボーカルに、我那覇響や高坂海美らのダンスに、星井美希や白瀬咲耶らのビジュアルに、果たして彼女たちは追いつけているのか?と言われるとあまりにもハードルが高いです。

ゲームのキャラクターは「トップアイドル」という、概念に近い遠すぎる存在です。挑む到達点としては高すぎます。だからこそリアル寄りの彼女たちには今は伸びしろしかありません。アイマスの持つ面白さのひとつである、完成形ではない、成長を楽しむコンテンツとしてのボリュームが、まだまだたっぷりあります。

上水流宇宙のソロ選曲のひとつは「眠り姫」でした。これは「【Official Lesson】アイドル育成プロジェクト vα-liv 9月後編【特別講師:JUNGOさん/中川浩二さん/高山祐介さん/天海春香さん】」の回で、上水流宇宙が泣いてしまって歌えずに終わった、悔しさに打ちひしがれた問題の曲でした。


(39分くらいから)

「眠り姫」はアイマス曲でも超難易度で知られる作品。普通に歌うだけでも大変な楽曲なのに、感情が暴発してしまって、彼女は嗚咽が止められなくなります。

このときのコメント欄は是非見ていただきたいです。「頑張れ!」「大丈夫!」「感情に飲まれないように」「お前の力を魅せてやれ」「難しい曲だから、持ち直そう」「透明感のある声だよ」「巻き返せるよ」「俺達ちゃんと見てるよ」「諦め悪いところ見せてくれ!」と、プロデューサー(視聴者)たちの励ましの声が凄まじい勢いで流れています。眼の前にいる大切なアイドルをプロデュースすべく、みんなが応援しました。

終わってからもボロボロ泣く上水流宇宙に対して、周囲の出演者たちも精一杯に励ますのですが、ここで参加していた天海春香の発言が、ネット中で話題になりました。

「上水流さんは今、悔しいんじゃないですか? 恥ずかしいって思っていませんか? 思い通りににいかないって、あんなに練習したのにって、きっと私だったら10分間逃げちゃってたかもしれないなって思って」

「そんな上水流さんを応援したいって、きっとたくさんのプロデューサーさんが思ってます。アイドルって自分ひとりでなれるものじゃないから、今、みんなが上水流さんの味方です。すごいことです、上水流さん! 強いです、かっこいいです!」

天海春香が一人のアイドルとして、キャラクターを越えて生きた存在であることを見せた瞬間でした。

今回のライブで彼女は「眠り姫」にリベンジしました。彼女が得意とする高音ボーカルは美しいながらも力が抜けていて柔らかく、感情に翻弄されない涼やかな風のようでした。
プロデューサーたちはみんな手に汗を握ってコメント欄に向き合っていました。サビに入ったとき、一斉に「やった!」というコメントが流れました。

これはアニメ「THE IDOLM@STER」で、心因性で如月千早が歌うとき声が出なくなってしまった際のネタ。復帰後初めて「約束」を舞台で歌えるようになったになったとき、プロデューサーが喜びのあまり口から思わず漏れた発言でした。

今、プロデューサーたちは第三者ではなく、自分たちのこととして上水流宇宙の歌いきった姿に「やった!」の言葉が自然と漏れていたはずです。プロデューサーたちは、アニメでみたような物語性のあるシチュエーションを、眼の前で起きているリアルとして体験していました。

3・バーチャルでもリアルでもある

今回のライブはVR空間で行われたものです。VTuberファンならかなり見慣れた光景かもしれませんが、声優が出るアイマスライブを見てきた人には、不思議で新鮮なものに感じた人もいたようです。コメント欄でも「ほとんど実写じゃん」「カメラワークこんなこともできるのか」と新鮮に感じる声があがっていました。

バーチャルライブの場合、どこまでがリアルでどこからがバーチャルなのか、というのは線引が非常に難しいです。今回の3人の場合、歌は多分生なのだろうとか、ダンスも息切れと汗がすごいから本人だろうとか、色々と推測があがっていました。

アイマスのライブは基本的に声優がリアルで登場し、自分の演じるアイドルを再現するのが一般的です。観客は眼の前にいるのは声優だと分かっていながら、アイドル(キャラクター)を、同時に声優を応援しています。高度なマナーと想像力と熱量で成り立っている、アイマスならではの楽しみ方です。

ヴイアラは声優が公開されていません。キャラクターとアクターの境界線がないこのスタイルは、VTuberの活動とかなり似ています。

最初は「どこまでがキャラクターでどこからがリアルなんだろう?」と気になるかもしれませんが、次第にキャラクターかアクターかはどうでもよくなります。たとえばレトラは明るくてムードメーカーでお調子者なところもありつつ、歌がめちゃくちゃ上手い存在です。今回のライブを見たら、それが作られたものかどうか、考える必要がなくなると思います。アイドルとして観るべき魅力は、リアルだろうとキャラクターだろうと変わりません。眼の前にあるものが真実です。

応援したくなるおもしろキャラ(?)としての灯里愛夏に対しては、コメント欄でも終始いじりのコメントが飛び交っていました。とても“おいしい”存在です。実は彼女にはヘビーな過去があるのもプロデューサーたちは知っているでしょう。それを吹っ飛ばすくらいに明るくハッピーであろうという彼女の根性を理解しているから、一斉に「やっぴー(やったるぜハッピー)!」のコメントが飛びます。誰も水は差しません。

そんな彼女に癒やされ楽しませてもらったところで、後半歌ったのが「always」(※「アイドルマスター シンデレラガールズ」の楽曲)。プロデューサーへの感謝を歌った歌です。いつも見ていてくれて、見つけてくれて、ありがとう。私を選んでくれて、ありがとう。この歌を彼女が歌ったことで、このライブがあったことの意義はほぼ完成していたように見えます。バーチャルもリアルもフィクションも関係ない。今この場所に、自分たちがプロデューサーとして応援してきたアイドルがいる。プロデューサーが送った愛情を舞台から返してくれている。このときの体験と生まれた感情は、現実と言っていいはずです。

ゲームのアイマスシリーズは、トップアイドルになったのをゲームクリアでみんな知っている状態で、ライブを見たりアニメを見たりしていると思います。頂点の姿をすでに見ています。

しかしヴイアラは、まだトップアイドルになった姿を誰も見たことがありません。もしかしたら、トップにならないのかもしれません。今回のライブのあと、彼女たちがどう成長するのか、誰も知りません。攻略法は一切ありません。

リアルタイムで3人がアイドルの道を駆け上がっていくのをプロデューサーたち全員で時を同じくして見られるのは、参加型のコンテンツとして非常に貴重なはずです。

ほっとして涙を流す泣き虫の灯里愛夏、自身が一皮むけた喜びの笑顔を見せる上水流宇宙、喜びすぎず真剣な瞳でなにかを考えるレトラ。

今回のライブで、歌い終えて結果発表になるまでの間、焦り苦しむ様子が3人にはありませんでした。発表されたあとの表情も晴れやか。1年間を通じて自身と向き合い続け、一歩踏み出した実感を得ているこのシーンは、これから安心して「成長するコンテンツ」としてヴイアラを楽しめるという保証をしてくれたように感じます。

4・アイマス大集合

今回のライブは3人しか出ていません。しかしアイマスの全方向の曲がほぼそろったライブになりました。

01:HELLO!! (ディアリースターズ) 灯里愛夏、上水流宇宙、レトラ
02:Hotel Moonside (シンデレラガールズ) 上水流宇宙
03:Emergence Vibe (ミリオンライブ) レトラ
04:We’re the one (SideM) 灯里愛夏
05:OH MY GOD (シャイニーカラーズ) 灯里愛夏、レトラ
06:純情Midnight伝説 (シンデレラガールズ) レトラ
07:太陽キッス (シャイニーカラーズ) 灯里愛夏
08:シャイノグラフィ (シャイニーカラーズ) 上水流宇宙
09:電波感傷 (ミリオンライブ) 灯里愛夏、上水流宇宙
10:餞の鳥 (ミリオンライブ) 上水流宇宙、レトラ
11:SING MY SONG (ミリオンライブ) レトラ
12:眠り姫 (765AS) 上水流宇宙
13:always (シンデレラガールズ) 灯里愛夏
14:リローディング (ヴイアラ) 灯里愛夏, 上水流宇宙, レトラ
15:GR@TITUDE (全体) 灯里愛夏、上水流宇宙、レトラ

もともと「765AS」「シンデレラガールズ」「ミリオンライブ」「シャイニーカラーズ」「SideM」「ディアリースターズ」は、物語として直接交差することのない世界線でしたが、各アニメの描写や「スターリットシーズン」「ポップリンクス」などの発表を経て、コラボレーション(いわゆる「越境」)されるようになりました。

ヴイアラ3人のいる世界線では、全てが同じ世界線に並んでいる状況のようです。彼女たちは天海春香や小宮果穂をはじめ、すでに他のアイマスキャラクターとも交流していますし、ひいてはもっと外側のつながりのなかったVTuberたちの話題を出したり、コラボしたりすることもあります。つまりヴイアラの世界は「プロデューサーのいる世界と同じ」くらいに考えてもいいと思います。

これをわかりつつ見ていたとしても、3人が「ディアリースターズ(以下・DS)」の世界の、石川社長率いる876(バンナム)プロダクションに所属するとは、ほとんどの人が考えもしていなかったようで、コメント欄とSNSには驚きの声が飛び交いました。

「DS」は2009年に発売されたニンテンドーDS対応のソフト。アイドル視点でプレイする「自分をプロデュースする」という変わったゲームで、猪突猛進な日高愛、引きこもりだったネットアイドル水谷絵理、女装でデビューする羽目になった男の子秋月涼という、極端に尖ったメンツの揃った作品です。

配信も行うヴイアラのアイドル候補生たちです。ネットアイドルの大先輩として水谷絵理が所属していることも考えると、876プロは間違いのない采配でしょう。

なにより、今までどんどんクロスオーバーして混じり合ってきたアイマスワールドに、DSの世界が今まで以上にがっちり加わったというのはとても喜ばしいサプライズでした。ヴイアラという新しいベクトルに進むムーブメントの中で、ちゃんとかつてからのアイマスファンが嬉しくなる要素も拾い上げてくれました。

5・越えてくるアイマス、越えていくヴイアラ

アイマスがバーチャルライブ・VTuber的展開に近づいてくるのは、突然のことではありません。こつこつと文脈を築きつつ、リアル側とアイマス側を寄せていった結果として、今回のヴイアラのライブの成功があったように思えます。

2020年SHOWROOMで開かれた星井美希の配信は大きな出来事でした。

星井美希はアイドルマスターのキャラであり、ゲームの中にいてこちらには干渉してこない、というのが当然でした。しかしここでの星井美希はリアルタイムで配信を行い、観に来ていた人の名前を呼びます。リアルとつながった瞬間です。

ここに出てくる星井美希は「星井美希の声優」ではなく「キャラクター星井美希が生きている」というスタイルでした。ここがアイマスのバーチャルへの方向性の1つの起点になりました。

技術面では、2018年からDMMVRシアターで行われたアイマスのMRライブが大きな取り組みでした。今まではアイマスの声優が舞台に立っていましたが、ここでは765プロのアイドルたちがそのまま舞台に立っています。また登壇しているアイドルたちはプロデューサーとステージから会話をする、というこだわりもここでは見られます。

また「アイドルマスターシャイニーカラーズ」の展示は、かなり特殊なことで話題になりました。所属アイドルの靴や傘など、現物をキャラクターの性格にあわせて配置していたのです。そこにはアイドルの姿が一切ない、というのもポイント。現実にアイドルがいる、という想像力を刺激する手法は、非常にバーチャルでした。

公式チャンネルでは、今までのアイドルマスターシリーズのアイドルたちが、VTuber・配信者同様の配信をどんどん行い始めました。キャラクターの個性に沿ったものが多いのが特徴で、間の取り方や言動はリアルタイム。星井美希が切り開いたバーチャルな配信は、ここにきて「アイマスのアイドルは存在していて配信もする」という空気に、ナチュラルに差し替えられていきます。

ヴイアラの配信はというと、動く2Dスタイルなのもあって、かなりVTuber寄りです。しかし彼女たちはVTuberとかVアイドルとは名乗っていません。実在するアイドル候補生として徹底して活動をしています。

基本的に彼女たちは公式配信だと、生身の人間と会話することが多いのも特徴的です。あくまでも彼女たちは、プロデューサー(視聴者)と同じ「こちら側」の存在として扱われています。それは天海春香も同様で、リアルの人間と同じ席に並んで座っています。

ヴイアラの面々がアイマスキャラクターたちと交流をするようになってきているのは、逆にアイマス側が現実へとアプローチしているから、とも取れます。今はフィクションとリアルの絡み合いのさじ加減が、丁寧に調節されている段階なのを感じます。

VTuber側とアイマスの間では大きな動きとして、星街すいせいの「シンデレラガールズ」への参加と、星街すいせいチャンネルへの高垣楓の出演がありました。VTuberは曖昧な存在になれるがゆえに2次元キャラクターとコラボレーションすることが可能ではありましたが、星街すいせいがシンデレラガールズで「プロデュースできるアイドル」の一人になったのはとても大きな出来事でした。

「VTuberがアクションゲームのプレイヤーキャラとして使えるゲストになった」というタイプのコラボとは大きな差があります。バーチャルの人物がゲームの「プロデュースする対象」になるというのは、プロデューサーとアイドルの距離感とはどのようなものなのか、どう接しているのか、というアイマスの世界観を大きく変える意味を内包していました。

ただ、今までのアイマスの「リアルとフィクションの壁をやぶろう」という思想を考えると、バーチャルとフィクションの壁を破っていく挑戦は文脈として理解ができます。

アイマスという枠を越えて、現実寄りのヴイアラなどのコンテンツ、バーチャル存在のVTuber、フィクションだったはずのキャラクターがなんらかの形で同じ土俵に並んでエンターテイメントを作る未来に向けて、スタッフは助走を始めているようです。

「ヴイアラ」プロデューサーの勝股氏は以前インタビューでこのように述べています。

「なにがバーチャルで、なにがリアルで、といった二元的な解釈を越えた感動体験を味わえる、そんな世界観に可能性を感じていますし、今回の配信で、改めて目指すべきものは間違っていないという手ごたえも感じました」

「これまでは「アイドルマスター」という世界観と我々の暮らす「リアル」という世界観がそれぞれあって、その二つの世界観の境界線にある余白を、「アイドルマスター」側の世界観から埋めていくといったアプローチだったのですが、今回のヴイアライヴではそれを逆転させています。つまり、リアルから「アイドルマスター」の世界観に向けて余白を埋めていくアプローチをしている構図ですね。」

リアルとバーチャルとフィクションを飛び越える思想は、まだまだどうなるかわからない未知の領域です。しかし今回のヴイアラのライブで「彼女たちが頑張っているのは事実なんだ」「筋書きがなくリアルな挑戦を見ているんだ」というのは、はっきりと伝わるだけのものを見せてくれました。ここからはヴイアラ3人の挑戦とあわせて、ヴイアラが目指す地点をプロデューサー(視聴者)がリアルタイムで見届けることになります。

いうなれば「ゲームが始まる前」を、リアルタイムで経験していたのがこの1年間でした。様々な文脈がこのプロジェクトに集約され、一旦今回のライブで大きな区切りがつきました。

3人の活動も、ヴイアラというプロジェクトの動きも、そして2次元とリアルの融合も、ここからさらに大きく変化を遂げていくことを期待し、見守りたいところです。

©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.


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