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Pico 4 2022.10.06

PICO 4を徹底レビュー!! 本当に軽いのか? 画質はどう? 気になるポイントをガッツリ検証

10月7日(金)に発売予定の新型VRヘッドセット「PICO 4」は、「軽量・高画質・スタンドアロン」の三要素を備えた期待の一台です。筆者も新製品発表会で体験し、その「軽さ」に驚かされました。しかし、ほんの少ししか触れなかったため、気になるポイントは山ほどありました。

そこでMoguLive編集部は今回、「PICO 4」をレンタルして、様々な角度から検証を実施。本記事では、その「軽さ」の正体や、ヘッドセット全体の特徴、実際にVRゲームなども遊んでみてわかった特性を、徹底的に深掘りしていきます。

「PICO 4」最速レビューはこちらをご参照ください。

パッケージ開封! 内容物をチェック

こちらが開封直後の「PICO 4」です。コントローラーもふくめ、全体的にスラッと箱の中に収まっています。

ヘッドセットとコントローラーのほかは、充電用のUSB Type-Cケーブル、電源アダプター、眼鏡スペーサー、ノーズパッド、コントローラー用ストラップが同梱されています。

コントローラーにストラップを装着した様子。これ以外に両手にコントローラーを保持する機構はないため、できる限り装着しておくべきでしょう。

ちなみに、化粧箱の裏面には代表的な対応タイトルがズラッと並んでいます。国産VRゲーム「ALTDEUS: Beyond Chronos」も見られるあたり、日本市場を意識したものかもしれません。

本当に295gなのか!? 実測!!

さて、まずは「PICO 4」最大の謎を明らかにしておきましょう。それは本体重量。製品発表時には「295gの軽量さを実現」と紹介されていました。しかし、実際の重量はどうなっているのでしょうか?

実際に測ってみました。

計測結果は588.5g。295gではありません。


比較のため、最大の競合機種「Meta Quest 2」に「Eliteストラップ」を装着した状態で重量を計測。こちらは651gでした。


もうひとつ、比較として「バッテリー付きEliteストラップ」も計測。こちらは771gでした。

結論ですが、「Eliteストラップ」付きの「Meta Quest 2」よりは軽量ですが、それでも588.5gはあります。295gとされているのは、おそらくレンズの存在する正面部の重量と思われます。

「軽さ」を生み出す重心バランス

では「PICO 4は軽い」はウソなのでしょうか? 結論から先に書くと、「軽く感じられるように作られている」という点は事実です。

その最大の理由は重心バランス。「PICO 4」は、レンズなどが搭載された正面部に対し、バッテリーが内蔵された後頭部がカウンターウェイトとして機能するような設計になっています。

「Eliteストラップ」付きの「Meta Quest 2」と比較すると、重心バランスが取れる位置が頭頂部に近いことがわかるかと思います。従来機種よりも軽量な上で、ちょうどよい重心バランスが取れているからこそ「軽い」と感じやすいのだと考えられます。

なお、「バッテリー付きEliteストラップ」付きの「Meta Quest 2」は、後頭部のバッテリー分重くなっているのか、意外にも重心バランスが「PICO 4」に近い位置です。これから一回り軽くなったのが「PICO 4」である、と表現することもできそうです。

薄型化した正面部と、脱着不可なストラップ

全体の構造をチェックしていきます。フェイスクッションは脱着可能です。気になったときに取り外してメンテナンスすることができます。

目を見張るのは、フェイスクッションを取り外した後の状態。レンズが露出するほど、正面部は薄いことがわかります。「Meta Quest 2」との差は歴然です。


(「Meta Quest 2」のフレネルレンズ)


(「PICO 4」のパンケーキレンズ)

レンズはパンケーキレンズを採用。「Meta Quest 2」のフレネルレンズは表面から年輪のような模様が見え隠れしますが、「PICO 4」にはそのようなものはありません。くっきりとスリムになっています。

正面を薄くするために、「Meta Quest 2」では正面部に存在したバッテリーが、「PICO 4」では後頭部へ移動していると思われます。それを裏付けるのが、ストラップフレームが脱着不可であること。


(ストラップを取り外した「Meta Quest 2」。こういったことが「Pico 4」はできない)

「Meta Quest 2」はストラップは取り外しができ、デフォルトの布製ストラップにも「Eliteストラップ」にも換装できますが、「PICO 4」は完全に一体化しています。よって、「PICO 4」のサードパーティ製のストラップフレームは期待できないでしょう。

そのため、気をつけたいのはストラップフレームの破損です。「Eliteストラップ」は耐久性にやや難があり、ある程度使い込んだ人からはしばしば破損報告が上がっています。「PICO 4」の場合はストラップ脱着ができないため、万が一へし折れたら本体交換は確実と思われます。いちおう、ストラップフレームの内側はゴム板で補強されており、耐久性は多少強化されている可能性があります。

なお、「Meta Quest 2」と異なり、イヤホンジャックは本体に存在しません。もしイヤホンを使用したい場合は、USB Type-C変換アダプターを経由して接続する必要があります。このとき、一つしかないUSBポートがふさがってしまうため、充電などが利用できなくなる点には注意です。2-in-1タイプのアダプターや、Bluetoothイヤホンを使うなど、代替策はいくつかあります。

電池交換しやすいコントローラーにはタッチセンサーも

独特な形状のコントローラーは、おおむね「Oculus Touchコントローラー」と同一です。特に独特なのはハンドガードのようなパーツ。どのような機能を果たしているかはパッと見不明です。また、このパーツのせいで「どちらが左だっけ?」と最初は迷うかと思います)。


電源は乾電池で、コントローラー1本につき単3乾電池が2つ必要です。コントローラーのグリップ部にホルダーのようなパーツがあり、銃の弾倉のように入れられるのが特徴です。とても脱着しやすく、この点は「Meta Quest 2」のコントローラーに勝っています。

重量は電池を抜いた状態で132.9g。同じ条件の「Meta Quest 2」のコントローラーは125.5gで、「PICO 4」コントローラーの方がちょっとだけ重めです。

ちなみに、このコントローラーにはトリガー、スティック、各ボタンに「Meta Quest 2」コントローラーの静電容量式タッチセンサーのように「接触した反応」を検知できるようになっています。具体的には「VRChat」をプレイする際、指を乗せただけでハンドサインを表現できます。

高画質に疑いなし。一方でフィッティング性能は物足りないか

実機を動かしてみます。最初に電源を入れると、Picoアカウントの登録・ログイン画面が表示されます。ここでメールアドレスなどを入力することでアカウント登録まで実施できます。キーボードUIが中国語を基本とするためか、少し扱いに迷いました。

こちらがメインメニュー画面です。全体的なUIは「Meta Quest 2」とだいたい同じ。使い慣れている人ならばすぐになじめるはずです。メニューを非表示にするとホームワールド内を自由に移動できます。

デフォルトで存在するアプリは、Webアプリとして「YouTube」「Prime Video」「Twitch」「Hulu Japan」「U-Next」「DMM」「Apple TV+」「Disney+」など動画サイトが豊富。これらは起動するとブラウザが立ち上がり、各サービスが表示されます。

また、発売キャンペーンとして、Picoアカウント登録からログインまで完了すると「After the Fall」「All-In-One Sports VR」「Les Mills Body Combat」がプレゼントされます。この3本以外にも、これまでPicoシリーズに展開されてきたゲームが100以上はストアにラインナップしているため、初期の「Oculus Quest」のような「遊べるものが少ない」という状況にはならないでしょう。


(対応アプリのひとつ「RecRoom」をプレイ中)

一通りメニュー画面を眺めて気づくのは画質の良さ。4K(2,160 × 2,160×2)と感じられるだけの映像の鮮明さ、発色の良さを感じられます。「Meta Quest 2」よりも鮮明で、筆者の体感では「HP Reverb G2」に迫っていそうな印象です。

ただし、顔面へのフィッティングはあまり強くありません。筆者の場合、前面部は左右にわずかにスキマが生まれていて、ほんの少しだけ外光が差し込むことがありました。フェイスクッションもあまり心地よく顔面にフィットしない印象です。

そして後頭部クッションは、後頭部全体をホールドしてくれないため、左右に首を大きく振ると、ヘッドセットが大きく揺さぶられます。コンテンツ次第ですが、アクションやソーシャルVRでは大きくマイナスに働きそうです。

興味深いシステムとして、IPD(瞳孔間距離)をVR内で調整することができます。IPD設定画面で数値を調整すると、その数値のとおりにレンズが自動で移動するため、ダイヤルなどで手でいじる必要がありません。ただし、調整ダイヤルがないため、調整するために逐一設定画面を開く必要もあり、一長一短かもしれません。

フルカラーパススルーのひみつ

「PICO 4」最大の特徴として、フルカラーのパススルー機能があります。VRヘッドセットの外側を表示できる機能で、装着したままでも現実世界の様子を確認できたり、アプリ次第ではAR/MR的な表現ができます。

解像度はなかなか。フルカラーで表示される上、PCのキーボードを視認できる程度の解像度はあり、そのまま周囲を歩くのも造作もありません。ちょっとした作業であれば、本当に「PICO 4」を装着したままできてしまいます。

さらに、「クイックパススルー」という設定をONにすれば、「ヘッドセットの右側面を(物理的に)2回軽く叩く」という操作でパススルーをONにできます。これがとてもお手軽で便利。パススルー機能の使い勝手は、様々なVRヘッドセットの中でも上位です。

ただし、このパススルー機能は、正面部中央の単眼カメラで行っているため、左右の視差が表現されません。周囲の視認だけならば大きな問題ではないですが、遠近感が正確ではないため、物に触れる際には慣れが必要です。

筆者が体験した限りでは、「物に触ろうとしたらちょっと近くあった」という事象が多発。場合によっては感覚がバグることもありそうです。

PCVRストリーミングはできるのか?


(画像は公式サイトより引用)

「PICO 4」はスタンドアロンで動作する一体型VRヘッドセットですが、PCと接続することでPC用VRコンテンツを遊ぶことができます。PCへ「SteamVR」と専用ソフト「Streaming Assistant」をダウンロードすれば、USB Type-Cケーブルによる有線接続(※ケーブルは2〜3m以上のものを推奨)、およびWi-Fi(5GHz以上)による無線接続が可能です。

「Streaming Assistant」の操作は比較的シンプルです。有線か無線を選択した後、ストリーミングを開始。その後「Pico 4」の側で同様のアシスタントを操作し、目標のPCへ接続することで、PCVRヘッドセットとして起動します。

有線接続は、多少の映像圧縮とリフレッシュレート低下が生じますが、おおむね問題なく動作します。「VRChat」もプレイできることを確認できました。無線接続は、筆者環境では横方向に振り向くと描画が追いつかず、一瞬画面の一部が黒くなるものの、そこそこのクオリティで「VRChat」が動作しました。

総じて、ある程度は遊べるものの、「PICO 4」本来の高画質が活きない使い方だと思われます。この点は、DisplayPortケーブルによる無圧縮・無遅延な有線接続ができる「Pico Neo 3 Link」に軍配が上がりそうです。どうしても遊びたいソフトが「SteamVR」しか対応していない時の応急対応とするのがベターです。

「Streaming Assistant」のダウンロードはこちら。「PICO 4」対応のものを入手する必要があることに注意してください。
https://www.picoxr.com/jp/software/pico-link

その「軽さ」と高画質は、ライトユーザーにこそ活きるか

「とても軽くて高画質なスタンドアロンVR」というコンセプトを、これ以上ないほど体現した一台。今回の検証でも、そのファーストインプレッションは大きく変わりません。

「Meta Quest 2」より軽量で、重量バランスは良し。「VRは重くて装着するのがイヤだ」という人にも、だいぶ扱いやすそうな設計となっています。その上で、4K相当の鮮明な映像を体験できるのは、大きな強みです。

しかし、細かなところをチェックしてみると、カスタマイズ性には乏しく、頭部へのフィッティングも弱め、オーディオまわりは簡素化しているなど、割り切ったつくりであることが浮かび上がってきました。

特にオーディオまわりは、イヤホンジャックのオミットはもちろんですが、内蔵スピーカーの音質も正直「ほどほど」と言うべきところ。こだわりたい人は追加でいろいろと仕入れる必要がありそうですが、そうすると「PICO 4」本来のシンプルさが失われるため、悩みどころです。

このため、「PICO 4」がよく活きる使い方は、以下のようなものが挙げられそうです。

音声にこだわらずVRゲームやフィットネスを楽しむ

イヤホンは装着せず、様々なVRゲームをカジュアルにプレイする使い道。VRゲームの持つアクティビティに専念できる、スポーツやシューター、フィットネスなどのジャンルが特に適正がありそうです。

その点では、キャンペーンで配布される「After the Fall」「All-In-One Sports VR」「Les Mills Body Combat」の3本は最適かもしれません。

軽量なVRプライベートシアター

「軽くて高画質」という特性を十全に活かせる、VRプライベートシアターとしての使い道。「YouTube」はもちろん、「Twitch」では配信を、「Prime TV」や「U-Next」などでは映画などを、VR空間の大画面で視聴できます。軽くて取り回しがよいため、装着による疲労をある程度は抑えられるのは大きなポイントです。

総じて、何時間もVRをプレイするヘビーユーザーより、一日一時間程度のVRゲームや映像鑑賞をメインとするライトユーザーのほうが、「PICO 4」は向いているように感じます。VRで遊びたいゲームなどによりますが、49,000円(税込)からという価格帯も相まって、「これからVRを始める人のエントリーモデル」という立ち位置になり得るでしょう。

「PICO 4」製品ページはこちら。
https://www.picoxr.com/jp/products/pico4


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