6月26日、VRゲームスタジオnDreamsは、新作VRFPS「Phantom: Covert Ops」をOculusStore(RIft/Quest)でリリースしました。本作はいわゆるミリタリー系の作品。プレイヤーは特殊部隊“ファントム”の一員として戦います。
一見は良く見かけるタイプの作品ですが、さらにユニークな要素が加えられています。主人公は、1人用のカヤックに乗り込んで、敵地での潜入ミッションを遂行するのです。
(ストーリーモードのほかに、クリアしたステージを自由に遊べるフリープレイやチャレンジモードがあります)
(日本語にも対応済み。初期状態では字幕オフなのでオプションで設定できます)
冷戦時代、軍事基地でうごめく陰謀に迫る
プレイヤーが扮するのは、ファントムのメンバー・コードネーム「ゼロツー」。冷戦時代の軍事施設ヴォルダット基地の不穏な動きを偵察するため、任務を遂行します。
(ゲーム冒頭のブリーフィング。ここでストーリーの背景が説明されます。)
この施設は、元々化学兵器工場でしたが、旧ソ連の元将軍ジュロフが使用しようとしたため、1966年にNATOの空爆で破壊されました。そこに謎の民兵組織が出現。ロシアが先に送り込んだスパイも連絡を絶ったため、ファントム部隊が動くことに。
いざ潜入してみると、“民兵”という情報だった敵組織は、軍用ヘリや武装船を運用するなど、非常に重装備の部隊だと判明。またかつて基地で作られていた化学兵器「タイタン」が、再び生産体制に入っていることも確認されます。一連の出来事の背後にいる黒幕は…といったところまでが、序盤の展開です。
肝心のカヤック操作は意外と快適
カヤックに乗った状態でゲームが進行するため、VRFPSとしては珍しく、着座姿勢でのプレが推奨されています。一応立った状態でもプレイできますが、ポジションに強い違和感を感じる(そして酔う)ので、オススメできません。
カヤックは、ハンドコントローラーでオールを持ち、リアルと同じような動きで漕ぐことで前後左右に動かします。A(X)ボタンを押しながら漕げば、急旋回も可能。オールは1本の棒の両端にパドルが付いたタイプで、壁を“プッシュ”すれば、位置を調整できます。
正直プレイ前は、実物のオールとコントローラーの形状があまりにも違うため、しっかり没入できるのか――そもそも上手く操作できるのか――不安だったのですが、この心配は杞憂でした。
操作感と漕ぐ感触はスムーズそのもの。戦闘シーンのような激しい動きが必要とされる場面でも、不具合などは起こりませんでした。
唯一問題点を挙げれば、加速するために割とガンガン漕ぐ必要があるので、連続してプレイすると、体力をそれなりに消耗すること。ただこれも、実際にカヤックを動かしている感覚が味わえるという意味では、むしろ“あり”と思います。
ステージは基本的に水路のような場所を進む一本道です。一部にはある程度自由に動けるセクションもありますが、それほど広くはありません。全体的に暗めなのが気になりますが、その分迷子対策はバッチリ。Yボタンを押すと表示されるウェイポイントのおかげで、迷わずに進めます。
戦いを最小限に、潜入捜査を遂行せよ
戦闘システムは、一般的なVRFPSと大きな違いがありませんが、ステルスゲーということで、戦いは最小限に抑えることが求められます。
ステージ各地には、敵兵や監視カメラなどがあり、巡回ルートや視線の向きを把握しつつ、慎重に進まなければなりません。川草に隠れたり、消火器を撃って注意を引き付けたりといったテクニックが必要です。
(敵の視線や動きなどを見極めるのが、ステルスを完遂するためのコツ)
カヤックの中央には、敵の警戒度を示すインジケーターとレーダーが備え付けられています。インジゲーターは、青(潜伏)、緑(通常)、黄(警戒)、赤(戦闘)と色が変化することで、周囲の状況を教えてくれます。
レーダーには警戒中の敵の視線の向きが表示されます。これらの機器をうまく利用できれば、潜入を成し遂げられるはず。
敵の“感度”については、ノーマル(腕利き工作員)では、それほど高いとは感じませんでした。物音を立てた後の反応は早いですが、静かにしていれば、まず気付かれません。
視界も通常時は狭め。筆者はステルスゲーがあまり得意ではないのですが、上手い人ならば、初回プレイでも発見されることなく進められるはずです。
ナイトビジョン機能を有するデバイス、“ファインダー”も重要なアイテム。覗き込んで使用すると、周囲の敵やオブジェクトがすべてマーキングされ、敵の動向チェックが簡単になります。
(ファインダーを使用中。ナイトビジョンは周囲の確認にも便利)
もし敵に発見された後、すぐに対象を排除できないと、周囲が完全な警戒態勢に移行してしまいます。こうなると、全力で逃げるか、戦うしかありません。
「ゼロツー」は、ハンドガンとサブマシンガン、スナイパーライフルの3種類の武器を携行しているので、状況に合わせて使い分け、敵兵を排除します。
(ハンドガンで敵を狙う筆者。小さくみえる白いマーキングは、ファインダーの効果。)
携行できる弾薬は有限(かつあまり多くない)なので、無駄撃ちは禁物。カヤックに乗っているので、動きながら戦うのも難しく、“ランボープレイ”はほぼ不可能です。
筆者は今回、難易度ノーマルでプレイしましたが、主人公の体力はかなり低めに設定されています。真っ向から銃撃戦を挑むと、すぐにライフが尽きてゲームオーバーになりました。
ちなみにスコアシステムも実装され、難易度や立ち回り(重要ターゲットの殺害、被発見数、殺害数など)で点数が出ます。各ステージで一定のランクを獲得すると、ミニゲームなどがアンロックされます。
(クリア時の評価画面。アンロック要素がハイスコアを狙うモチベーションに)
人によっては酔ってしまうかも…
VR酔いに関しては、正直評価が難しいです。筆者の場合、プレイ中はステルスの緊張感があり、必死にオールを動かしているので気にならなかったのですが、クリアして気が抜けると、一気に酔いに襲われました。
酔ったと思われる場面を具体的に説明するのは難しいのですが、カヤックを急旋回させる動きが原因だったと考えています。酔いやすい人は、ステージ途中でも休憩を挟みつつ、遊んだほうが良いかもしれません。
オプションで操作の調整や設定変更ができるので、自分に合ったものを選んでください。
(ステージのバリエーションは豊か。筆者的にはプレイの楽しみのひとつでした)
総評:VRのFPS初心者にはおすすめの1作
「Phantom: Covert Ops」は、“伝統的”なFPSと、カヤックという独自のギミックを上手く合体させた、楽しめる良作です。座ってプレイするので、長時間遊んでも(腕以外は)疲れにくいのが嬉しいところ。広いプレイ空間が要求されないのも、日本の住宅事情的には、ありがたいポイントです。
(字幕のサイズは、ヘッドセットのディスプレイだとちょうどよいサイズ。このシーンで喋っているのは、部隊オペレーターのソーヤ)
今回はRift S版をプレイしましたが、グラフィックも美しく、ステージの各所に存在する光源(ライトなど)は、暗いマップに良いアクセントを加えています。武器のディテールなども、細かく描かれていると感じました。
ただライティングに関しては、一部で不自然な処理が行われている部分があります。警戒して光の方向に向かって確認してみると、壁から明かりが貫通しているだけだった…ということも。表現自体はキレイなだけに、パッチでの改善を期待したい点です。
少し作りこみに甘い部分はあるものの、ゲーム自体はしっかりと練り上げられている本作。家の中で激しい動きができないなどの事情で、VRFPSに触れてこなかった人にもオススメしたいタイトルです。
ソフトウェア概要
タイトル |
Phantom: Covert Ops |
開発元・パブリッシャー |
nDreams |
対応VRヘッドセット |
Oculus Rift(Rift S)、Oculus Quest |
プレイ人数 |
1人 |
価格(税込) |
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公式サイト |