Oculusの創業者の1人で、2017年にFacebookを退職したパルマー・ラッキー氏が、自身で改造した、一体型VRヘッドセットOculus Goの改造モデル「Oculus GoBlack」をブログで公開しました。ラッキー氏によると、「Oculus GoBlack」は改造前のOculus Goと比較して、バッテリー交換による稼働時間の延長や軽量化などを達成したとのことです。
改造内容の詳細
色の変更
「Oculus GoBlack」と通常のOculus Goを比較すると、目に付くのが外装部分の色の変更です。フェイシャルインターフェイスを含む外装を、グレーからマットブラックに変更した理由を、ラッキー氏は、ゴッドレイ(※)を始めとする映像上の不具合の軽減するためと説明しています。
(※ゴッドレイ(God Rays):主にハイコントラスト時や、黒い背景に白文字が表示された時に発生する、光のライン発生現象)
塗料は、重量の増加を防ぐため一般的な塗料ではなく、ポリエステル用の染料を選択。塗装には、沸騰寸前まで加熱したポリエステル用の染料に、Oculus Goの外装を投入し、染料を浸透させる技法が使用されました。
ポリエステル用の染料を使用した塗装では、繊細な温度管理が必要です。染料の温度が高すぎると外装が熱で歪み、温度が低すぎると染料が浸透しません。ラッキー氏は「自分で行う際は十分に注意して行うように」と火傷の可能性も含めて、注意喚起をしています。
重量の削減
「Oculus GoBlack」は、総重量400gのOculus Goから120gの軽量化を実現し、総重量を280gまで削減しました。軽量化のためにラッキー氏は、バッテリーのアップグレードと位置変更、熱管理システムの交換、アルミ部品のプラスチックへの交換、その他不要部品の取り外しを行いました。
ラッキー氏によると、Oculus Goに内蔵されているバッテリー(2600mAh 18650 cell)は性能が低く、重量も総重量の10%にあたる40gに達していたとのことです。ラッキー氏は、このバッテリーを3500mAhにアップグレードし、後頭部のヘッドバンド部分に移動することで、本体の軽量化を達成しました。連続稼働時間は、バッテリー交換前の2時間から3時間に伸びました。磁気充電ケーブルの搭載による、バッテリーのホットスワップも実現しました。
Oculus Goの冷却システムは、搭載されているQualcomm(クアルコム)のチップセットSnapdragon 821から生じた熱を、ヒートパイプを通してVRヘッドセット外に逃がす仕組みです。ラッキー氏はこの冷却システムを完全に置き換えました。
新しい冷却システムは、ヒートパイプが熱風をヒートシンクに送り込み、その熱をマザーボードから電源を取ったファンで冷却する仕組みです。改良の結果、ヒートパイプが短縮され更なる軽量化を実現しました。Snapdragon 821を保護するアルミ製フェイスプレートは、より軽量なプラスチック製フェイスプレートに交換されました。
ラッキー氏によると、外装部分をカットするなどの、より“過激”な軽量化は剛性や耐久性の維持を考え行わなかったとのことです。
ラッキー氏とOculus
パルマー・ラッキー氏は、現在のVRのトレンドを作った人物です。2012年にOculusを創業し、PC向けハイエンドVRヘッドセットOculus Riftと2つの開発者キットの開発に携わりました。2014年にFacebookがOculusを買収した以降は、Facebook社員としてOculusで勤務していました。
2016年秋、アメリカ大統領選の最中に、ラッキー氏のトランプ陣営への寄付が発覚しました。寄付が発覚した後ラッキー氏は表舞台から姿を消しました。その後、ラッキー氏は2017年3月にFacebookを退職しました。Facebookの退職後、ラッキー氏は、アメリカの防衛分野に関連する製品の開発を行うスタートアップANduriを設立しました。
ラッキー氏は、2018年5月のOculus Goの発売と共に、Oculus Goの分解レビューをTwitterで行いました。このレビューの時点でラッキー氏は、Oculus Goのバッテリー問題と、改造によるアップグレードの容易さを指摘していました。
Oculus Goの魔改造には、日本ではVRエヴァンジェリストのGOROman氏も取り組んでおり、大幅な軽量化を達成しています。
— GOROman (@GOROman) 2018年6月6日
(参考)Road to VR
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