ソーシャルVRサービスはいくつか存在しますが、その中でも「NeosVR」は「なんでもできる」という自由度の高いソーシャルVRとして知られています。SNSでは「NeosVRでは、こんなことができますよ」と、ユニークな内容の動画を投稿するユーザーも少なくありません。
とはいえ、実際どこまで自由にできるのか、そもそも始めるにはどうすればいいか、分からない人もいるでしょう。この記事では、「NeosVR」の概要と、どんなところが魅力なのかを紹介します。
「NeosVR」とは?
「NeosVR」は、チェコのSolirax社が開発したソーシャルVRプラットフォームです。2018年5月4日にSteamにてβ版がリリースされ、現在はSteamおよび公式サイトからクライアントを無料で入手できます。
その名の通り、VRに対応していますが、デスクトップアプリケーションとしてもプレイできます。特徴的なのは、VRモードとデスクトップモードを、「F8キー」を押せばすぐ切り替えられるところです。
「VRで起動したけどコントローラーの電池がなくなりそう」という場面でも、ログアウトを挟まずにデスクトップモードに移行できます。
また「NeosVR」は多くのソーシャルVRと同様に、「ワールド」と呼ばれる空間へ自由にアクセスし、好きな「アバター」の姿になれます。
ただし、その自由度は桁外れに高く、他のサービスであれば「Unity」や「Blender」などの外部ツールを使わなければできないようなことも、「NeosVR」でなら、アプリだけで完結すると言われています。そして、そうした創造作業を他のユーザーと共同で行えるという、類を見ない特徴もあります。
2022年2月現在、「NeosVR」のアクティブユーザー数はまだまだ少ない(SteamDBによれば200人前後)ものの、その圧倒的な自由度の高さから、日本でもコミュニティが形成されています。
直近ではノンジャンル展示会イベント「Neos Festa」や、NFT作品展示会イベント「NFT FESTA」が開催されたりと、知名度は徐々に上がっている最中と言えるでしょう。
「NeosVR」のはじめ方
「NeosVR」は、Steamおよび公式サイトからダウンロードが可能です。Steamで入手できるものは、仮想通貨(ブロックチェーン)に関連した機能が使用できないため、もしその用途が必要な人は公式サイトから取得したクライアントでの起動を推奨します。
いずれのクライアントであっても、まず最初に行うのはアカウント登録です。公式サイト上でも「NeosVR」の初期起動時にも実施できます。初期起動時にはいくつかの初期設定を行い、その後、チュートリアルワールドである「Metaverse Traning Center」へ移動し、「NeosVR」の基本操作を学べます。
なお「Metaverse Traning Center」へ移動する際には、「パブリック」でワールドをつくるか、「プライベート」でワールドをつくるかを選択できますが、筆者は「パブリック」を推奨します。
「パブリック」の「メタバーストレーニングセンター」には初心者を案内してくれるベテランユーザーが来てくれることも多く、そのタイミングでいろいろなことを教わるのがベターです。
そして、「Metaverse Traning Center」でだいたいの操作を覚えたあとは、日本人コミュニティが作成した「JPチュートリアルワールド」へ行ってみることをオススメします。こちらにも、初心者を積極的に案内してくれるユーザーがよく来てくれるので、先達に「NeosVR」のアレコレを教えてもらいましょう。
「NeosVR」のここがすごい
「NeosVR」の魅力は、なにより自由度の高さにあります。あまりに多すぎるため本記事では一度に紹介しきれないため、今回は特にすごい一部を抜粋してご紹介します。
「オブジェクト」と「インベントリ」の概念
まず「NeosVR」では、オブジェクトが独立しており、その多くは「インベントリ」と呼ばれるものに保存されます。
「インベントリ」は平たく言えばRPGにおけるアイテムポーチです。各ユーザーごとに保有が可能です。「VRChat」のようにアバターに組み込んだり、ワールドに設置する必要はなく、好きなアイテムはインベントリに保管し、好きなときに取り出すことができます。モノによっては手に「装着」も可能です。
これだけでも十分にすごいのですが、「NeosVR」では他のユーザーが作成したアイテムの一部が公開・共有されており、共有フォルダ経由で自由に使用できます。
アセットなどを自分で購入・ダウンロードし、SDKを経由してアップロード……という作業を経ることなく、先人が用意した様々なアイテムを利用できるのです。
中には、話した言葉をリアルタイムで多言語翻訳する翻訳機や、プロフィールをその場で表示できる「名刺」を作成できるツールなど、便利なツールも多く公開されています。
また呼び出されたオブジェクトはその場で複製することも、保存することも、破棄することも可能です(できないものもあります)。
さらに「NeosVR」内で撮影した写真などもオブジェクトとして扱われるため、人に撮ってもらった写真をその場で渡してもらい、自分のPCに保存することすら可能です。とにかく、オブジェクトを自由に扱えるため、それだけでも満足に遊べます。
アバターもワールドも「NeosVR」の中でつくれる
「NeosVR」は、ワールドをサービスの中で創造できます。筆者も簡単なワールド作成をやってみました。
空のワールドを作成したら……。
任意のスカイボックス(空の背景設定)を呼び出し、空へ向けてコントローラーのトリガーを引きます。
すると、一瞬で空を書き換えられます!
地面も同様に好きなマテリアルに変更し……。
共有フォルダから家具の3Dモデルなどを置いていけば……。
あっという間に、ホームワールドっぽいものが出来上がりました! 一連の作業において、モデリングツールも、Unityも、一切使用していません。
簡単なものであれば「NeosVR」の内部で直感的な操作でパパっとワールドを作れてしまいます。この創造性の高さは特筆するべきでしょう。そしてモデリングやプログラミングによって、さらに凝ったワールドも作り出せます。
アバターも「NeosVR」の中でつくれる
アバターのセットアップも簡単です。fbx形式などのアバターをインポートしたのち、「アバタークリエイター」と呼ばれる機能で頭部と手の位置を設定して、「NeosVR」の内部で動くアバターを作り出せます。「VRChat」向け販売アバターも、fbx形式のファイルがあればインポートが可能です。
VRMアバターもfbx形式に変換して持ち込めます。先日別の記事で作成したVRoidアバターも、blenderで変換してから動くアバターに調整するまで、30分も要さずに持ち込めました。アバターのインポート以降の作業は全て「NeosVR」内で完結します。
さらに、できあがったアバターはあとから編集ができるため、テクスチャやダイナミックボーンも別個調整が可能です。そして、その編集作業は他ユーザーもできるので「専門のスキルを持った人に細かな調整をお願いする」ということもできます。
なお「アバタークリエイター」は相当に強力なツールで、ペンツールで描いたイラストすらアバターにできます。この手法を使い「宣伝ポスターをアバターに設定してワールドを練り歩いた」ユーザーもいました。
移動方式も自由
他にも大きな特色として、移動方式をいつでも自由に切り替えることができます。基本は地面を歩く「歩行モード」が主ですが、空を自由に飛び回れる「フライモード」にも切り替え可能です。
さらに、床や壁のコライダー(衝突判定)をすり抜けられる「ノークリップモード」もあり、デバッグモードのような自由な移動もできます。また、VRで酔いやすい人向けに「テレポートモード」もあります。
「フライモード」は比較的操縦しやすく、数分もすれば操作に慣れます。自由に宙を移動できる感覚は存外に心地よく、筆者が出会ったユーザーも多くは「フライモード」で宙をふよふよと移動していました。
モデリングも、プログラミングも……?
極めつけに「NeosVR」にはモデリングツールも搭載されています。
その場でオブジェクトを作成し、自由にモデリングし、テクスチャなども設定が可能とのことです。「LogiX」と呼ばれるノード式プログラミングを組むことも可能で、VRの中で複雑な挙動を実現するためのプログラミングもできるそうです。
3Dモデリングもプログラミングもできるとなると、もはやほぼなんでも作れてしまいそうな予感すらあります。この底知れぬ自由さが「NeosVR」の強みであり、そして魅力であると言えるでしょう。
なんでもできる、自由なメタバース
ここまで記した「NeosVR」の魅力は、その一部に過ぎません。あまりに多くのことができてしまうため、本記事では書ききれないのが実情です。機能面以外でも、ユーザー主導のイベントが日夜開催されている点や、魅力的なワールドが多くある点など、見逃せないポイントが多くあります。
また「NeosVR」はアクティブユーザー数こそ現在少なめですが、そのおかげかコアなユーザーにも非常に出会いやすい環境となっています。筆者も、ログイン初日にはチュートリアルワールドやイベントを訪れたところ、たった一日で「NeosVR」の日本コミュニティの人たちに出会えました。
コアユーザーから「NeosVR」の使い方や魅力を聞ける機会は、ソーシャルVRを始めるにあたって大きなメリットとなり得ます。なにより「NeosVR」は初心者を歓迎する空気が感じられました。筆者も初日だけで手厚い案内を受け、感謝するほかありませんでした。
圧倒的な自由度を持つ「NeosVR」は、今後その特性を活かしてクリエイティブな活動のできるメタバースとして、その存在感を発揮していくことでしょう。
今後もMoguLiveではその情報を発信しますが、まず実際にその目で確かめてもらいたいところ。ぜひ「パブリックなMetaverse Traning Center」から、この自由なメタバースに足を踏み入れてみてください!
公式サイトはこちら。
https://neos.com/
PCスペック(最低)
OS |
Windows 8.1(64bit)またはWindows 10(64bit) |
CPU |
Intel Core i5-4590 または AMD FX 8350以上 |
メモリ |
4 GB以上 |
グラフィック |
NVIDIA GTX 970 または AMD Radeon R9 290以上 |
DirectX |
Version 11 |
ネットワーク |
ブロードバンドインターネット接続 |
ストレージ |
1GB 以上 |
推奨スペック
OS |
Windows 10(64bit) |
メモリ |
8 GB |
グラフィック |
NVIDIA GTX 1060以上 または AMD RX 570以上 |
DirectX |
Version 11 |
ネットワーク |
ブロードバンドインターネット接続 |
ストレージ |
10GB 以上 |
執筆:浅田カズラ