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メタバース 2023.02.21

音漏れ防ぐBluetoothマイク「mutalk」 ソーシャルVRや動画収録・配信時の使い勝手はいかに?

ボイスチャットがコミュニケーションの主軸となっているソーシャルVR。バーチャル空間内でアバター同士でのおしゃべりはリアルでの雑談と変わらない楽しさがあり、VRヘッドセットをかぶりながら昨日行ったVRイベントや今日発売されたアバターなど、夜な夜な多くの人々が様々な話題を繰り広げながらおしゃべりを楽しんでいます。

また、ソニーのmocopiといった簡易モーションキャプチャー機器の登場により、お手軽に全身を動かすことができるVTuber体験もしやすくなりました。そしてVTuber活動においても声はコンテンツに彩りを与える必要不可欠な要素です。

しかし壁が薄く隣の部屋に声が伝わってしまう住環境だと、思うように喋ることができません。これはZoomなどを用いたテレミーティングも同様です。

そこでパナソニック傘下のハードウェアメーカー・Shiftall(シフトール)が発売したのが、防音効果が高いBluetoothマイクmutalkです。

mutalkの構造と消音の仕組みを解説

口を覆う本体部と頭部固定用のバンド。これが「mutalk」装着時の姿です。一見するとマイクには見えませんが、内部にはマイクユニットやウィンドスクリーン効果がありそうなスポンジ、そして声(音)が通るダクトが備わっています。

ワインボトルやビール瓶の空き瓶の口に息を吹きかけると、ボーーーっという低音が鳴ります。これは生理学者であるヘルマン・フォン・ヘルムホルツが考案したヘルムホルツ共鳴による現象です。

吹きかけた空気によってワインボトルの中に入っている閉じた空間内の空気に圧がかかり、空気の弾力性でもって押し戻されながらも、息が入り続けることでまた圧がかかる。この繰り返しによって空気が揺らぎ、共鳴音が鳴るのです。

スピーカーで低音を増幅する際につかうバスレフポートも、クルマやバイクの排気音を消音するマフラーも同じくヘルムホルツ共鳴によるもの。実は音を作る、生むだけではなく消す効果もあるのです。

「mutalk」が用いている消音技術もヘルムホルツ共鳴の理論に基づくものです。消音効果はダクトの長さやその先にある空気室の広さによって異なりますが、「mutalk」は声の周波数帯域に合わせて作られていると考えていいでしょう。

ボイスチャットだけならOK? 音質を徹底チェック

以下は、筆者が個人的に抱いた印象です。

全体的な音質としては、有線接続マイクや、有線接続イヤホンマイク/ヘッドセット、ワイヤレスドングルを用いたヘッドセットのマイクの音質とは程遠いものがあります。仕様上、16kHz(テープレコーダーの音質)の音質でしかPCやスマートフォンなどのデバイスに送れないためです。

これはBluetoothを使う以上避けられない事実であり現実。防音性の高いマイクで自分の生声をできるだけクリアに届けたいという方は、ゲーミング防音マスク「PHASMA」と有線ヘッドセットを用いるか、Bluetooth以外の通信方式を用いる防音マイクが登場するまで待ったほうが良いでしょう。

それを踏まえた上で、実験してみました。

マイクの位置は手前にあるため、吸音してしまうヘルムホルツ共鳴器部分の影響は受けないのでは、と考えていましたが違いました。「mutalk」とPCを接続し、PC版VRChatにログインして友人と話すと、かなりくぐもった、ヌケの悪い声になっていると指摘されました。

録音したデータを自分でも確かめてみると、確かにマットでデッドなトーンです。特に鼻の穴を空気が通る鼻濁音の響きが感じられません。遮音性を高めるために口元を覆ったマイク形状のため、鼻の穴の響きを捉えることができないのでしょう。

歌ってみると息継ぎが難しいのも厳しいと感じたところ。口で大きく息を吸うとノイジーな息継ぎ音が入ってしまいます。口から漏れる空気量が多いささやき声での歌い方も、「mutalk」とはマッチしないと感じました。

NVIDIA Broadcast」などのノイズリダクション系アプリと併用すると、減衰したときの音がバッサリとカットされることが多く相性悪し。これはなかなかシビアなマイクだという印象を抱きました。

ただし、声質を気にしなければボイスチャットはストレスなく行えます。肝心の消音効果が活きて周囲に声が漏れるということはほとんどない様子。隣の部屋に伝わる声を気にすることなく会話できましたね。

なおShiftallによれば、Bluetoothの特性上データのやり取りを頻繁に行う複数のBluetooth機器が接続されていると、mutalkの音質が下がるとのことです。

Bluetoothヘッドセットのマイクとして動くmutalkは本来HSP/HFPというプロファイルを用いるのですが、どうやら他にA2DPやAVRCPなどのプロファイルを用いるBluetoothイヤホン/ヘッドホンや、HaritoraXなどのBluetooth接続トラッカーなどが使われている状態だと、帯域を食い合ってしまう様子。他のプロファイルを使う機器でも同時利用は悪影響となるの!? とかなり驚いてしまいました。

なおShiftallは現在開発中のHaritoraX ワイヤレスでは、Bluetoothを用いずPCと接続するためのワイヤレスドングル(有料オプション)を用意するとアナウンスしています。また従来のHaritoraX1.0/1.1用のドングルも準備中としています。

イコライザーやボイスチェンジャーと組み合わせると?

イコライザーを使うことで、くぐもった声を改善し、多少なりとも声にツヤを取り戻すことはできるでしょうか。OSB StudioにVSTプラグインの「TDR Nova」を組み込んで使ってみました。

1〜2kHzあたりを多少持ち上げるとやや鮮明感を取り戻します。ただし上げ過ぎると鼻濁音はカット気味なのにキツい声となってしまうので、数dBのみ上げる程度にとどめておくのがいいでしょう。

なおエアコンやゲーミングPCのファンノイズは一切入らないため、周囲が騒がしい場所で使っても快適なボイスチャットができそうです。ソーシャルVRでのパフォーマンス活動やVTuber的コンテンツを作るために使うのは難ありでも、コミュニケーション中心であれば選択肢の1つとして悪くないと感じます。

と思っていたのですが、ボイスチェンジャーアプリの「Voicemod」で変換した声を聞いてみたら、これはこれでアリなのかもと感じてくるから面白いものです。選択するプリセットにもよりますが、ラジオ的なトーンであるものの聞き取りやすく、響きの少なさからくる違和感がかなり解消されました。

さらにリバーブやエキサイター、コンプレッサーなどのVSTプラグインを上手く組み合わせれば、より良い声質を求めることができる可能性を感じてきました。倍音成分を増強して声の曇りをとる有料プラグインもありますし、歌は難しくても喋り声であればイケボを目指すというのも夢ではないかもしれません。

「mutalk」の商品ページはこちら。
https://ja.shiftall.net/products/mutalk


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