「フォートナイト」は、バトルロイヤルモードのTPSとして知られていますが、マップを自由に制作できる「クリエイティブモード」も実装されています。このモードでは、バトルロイヤルとは関係ないミニゲームや景観を楽しむワールドなどを制作可能です。これにより現在、10代の若いプレイヤーが自分だけのオリジナルワールド制作に夢中になっており、日々、様々なワールドがアップロードされています。
今年の2月、そんな若いクリエイターたちの集合したフォートナイト作品コンテストが開催されました。株式会社NEIGHBOR主催の「オープンハウス Presents メタバースクリエイティブアワード featuring Fortnite(MCA)」です。先日、最優秀作品が決定し、あわせて受賞作品の試遊体験会が開かれました。
今回は受賞作品と会場の様子をお届けします。フォートナイトのクリエイティブモードで活躍する若い才能に着目しています。
「フォートナイト」の制限を超えた創作への挑戦
今回体験できた受賞作品を紹介します。
最優秀賞「マッチメイキングハブ:バースステーション」は、近未来的な都市を表現したマップです。立ち並ぶビル群は電気で眩しく光っており、その中をグラップリングフックなどで飛び回ることができます。
気になったポイントは、豪華なマップにも関わらず軽量なところ。そもそも、フォートナイトのクリエイティブモードでは、メモリ制限があります。メモリはマップ全体の他にも、局所的に置きすぎると処理が重くなって動かなくなってしまいます。このマップではそういった制限を感じさせないことから、重くならないように工夫されているのだと思います。
製作者のかふぇおれさんは現在高校生。フォートナイトのクリエイター界隈では珍しくないとのことでしたが、会場ではその若さに驚いている人が多くいました。
最優秀グラフィック部門賞「Glass flowers/きのこの森(Mushroom forest)」は、ガラスと色彩豊かな森のマップです。
フォートナイトでは、3Dモデルを外部から取り込むことはできず、決められたパーツを組み合わせてマップを作ります。しかし、このマップでは、組み合わせで作っているとは思えないほどの統一感ある作り込みをしているのが印象的でした。制作者のCHANOさんは主婦の方で、景観を重視したワールドを作ることが好きだそうです。
「あいおいニッセイ同和損保賞」を受賞した「Too many doors race 〜どこまでもドア〜」は、ドアをひたすら開けるミニゲームのマップです。
普段開けるドアのアクションを繰り返すゲームですが、意外とスムーズにプレイするのは難しい作りになっています。複数人でのレース形式やタイムアタックもあり、やり込み要素も用意されているのがポイントです。
受賞作品と審査員の言葉はこちら。
企業参加のワールドも登場
会場では、アワードを主催している株式会社NEIGHBOR作成のマップも体験できました。NEIGHBORは、フォートナイトに特化したメタバース制作スタジオであり、これまで企業やタレントと絡めたマップを制作しています。
今回は、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社とのコラボマップ「Cyber Parkour by あいおいニッセイ同和損保」も会場で体験できました。
このマップは、サイバーパンクな世界を舞台にアスレチックで攻略していくという内容です。保険会社とのコラボということで、マップ内にはあいおいニッセイのお助けアイテムが置かれており、保険会社らしく安心を保証してくれる作りになっています。
マップを公開後は、YouTuberたちのネタ探しの需要もあって反響があったそうです。会場ではクリエイティブモードで実際に作っていたデータも見せてもらいました。確認したところ、フォートナイトらしい雰囲気を維持しつつ、マップを軽量化するための工夫が随所に見られました。
イベント会場をリアルタイムに再現する姿も
会場では、NEIGHBORのスタッフが、アワードの舞台となった会場を即興でフォートナイトで再現する場面もありました。
実際に会場を観察しながら、フォートナイトで用意されているパーツを1つずつ探していきます。キッチンのスペースでは、換気扇を排気口のパーツを使って見立てるといった工夫も見られました。
(アワードの会場にあったバーカウンター、これをお手本にしつつ……)
(ゲームでカウンターをリアルタイムに再現。カウンターや排気口が設置されていきます)
このスタッフの方に話を聞いたところ、もともとは「マインクラフト」で遊んでいたことがワールドづくりのきっかけで、その後「フォートナイト」にも興味を持ったそうです。マインクラフトで遊んでいた当時は3Dモデルのモデリングはできませんでしたが、就職し、PC購入を機に3Dモデリングを勉強し始めたとのこと。「フォートナイト」のゲーム開発エンジンには、Epic Gamesの「Unreal Engine」が採用されていることから、今後ゲーム内に(Unreal Engineを介して)3Dモデルを簡単に取り込めるようなシステムが実装されることを期待していると語っていました。
今回取材して気づいたのは、フォートナイトのクリエイターの中には10代が多く、それぞれ盛んに活動していることでした。そして若いクリエイターの多くは「マインクラフト」を幼い頃にすでに経験しており、ゲームの中でワールドを制作するというクリエイティブ要素を体験していることが「あたりまえ」になっている世代とも言えます。彼らが成人後にPCやデバイスなどクリエイティブに必要な環境を整え、企業のスポンサードを受けながらワールド制作に励むといった状況になれば、さらに活動の幅は広がり続けるでしょう。
そういった意味で現在「フォートナイト」で活躍する彼らの成功は、また次の世代のクリエイターにとって目を離すことのできない大きな希望となります。今後も、彼らの作り出したワールドは、アワードやTwitterなどをきかっけとして、スポットライトが当たることでしょう。若いクリエイターがどのように活躍するのか目が離せません。
ぜひ、今回紹介したマップを訪れてみてはいかがでしょうか。
参考:プレスリリース