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Meta Quest 2022.06.30

Meta Quest 2の音楽クオリティを高めるためにスティック・ケーブル型DACアンプを活用せよ!

VRヘッドセットの音響環境は、VRヘッドセット内蔵のスピーカー頼りなところがあります。VALVE INDEXやVIVE PRO 2、VIVE FOCUS 3のスピーカーはなかなかの高音質で頼れますが、世界中で1500万台を出荷したといわれるMeta Quest 2のスピーカーのクオリティは悪くないけど良くもない。

音質にこだわる方はイヤホンやヘッドホンを用いて音質アップを目指すことになりますが、Quest 2で使われているアンプのクオリティも悪くないけどあんまり良くもない。

ところでスマートフォンの音質を高めるには、ポータブルDACアンプ(※)と有線接続のイヤホン・ヘッドホンを用いるケースが増えてきました。さらに近年は小指の先のような、もしくは変換ケーブルのようなサイズのスティック・ケーブル型DACアンプが急増しています。

(※DACアンプ:デジタル音源の信号を受け取って出力機器の信号へと変換する機器)

このスティック型DACアンプのうち、USB Type-CコネクタをもつタイプはQuest 2でも使えます。Quest 2はもともとAndroidスマホの形を変えたものであり、Androidで使える周辺機器の一部に対応しているんですね。

でも実際にどんな音となるのでしょうか? 今回は3つのモデルを用意して聴き比べてみました。

使用するヘッドホンはAKGのK240 STUDIO。安価で高音質とあって古くから生産されている名機ですが、アンプのドライブ力が足りないと音がくすんでしまう“鳴らしにくい”ヘッドホンとしても有名なモデルです。コイツの音を過不足なく引き出せるなら、立派なDACアンプだと認めることができるため、あえてチョイスしました。

またチェック時に使う音源は「Beat Saber」(EDM)と「ALTDEUS: Beyond Chronos」(ボーカル曲)、「VRChat」(声)としました。

Anker USB-C&3.5mmオーディオアダプタ

モバイルバッテリーやUSBケーブルメーカーとして名高い、Anker製のケーブル型DACアンプです。Ankerはこの製品をDACとしてはアピールせず、あくまでUSB Type-Cコネクタから音声信号を取り出すためのアダプタとして販売しています。

使用しているDACチップの詳細なスペックは非公開。96kHz/24bitハイレゾのサンプリングレート/ビット深度に対応しているとは明かされています。他社製品含め96kHz/24bit対応DACはスタンダードなものですし、価格から考えるとアンプもDACチップに統合したアンプを用いていると考えられます。

Quest 2に直接繋いだときのK240 STUDIOよりも音質は高まっています。ぼやけていた低音域が引き締まり、中高域にかけても音の密度が上がっています。

他製品ほどの解像感は得られていません。K240 STUDIOの性能がフルに活きているとは言えませんが、リズムゲームやフィットネスゲームで遊ぶぶんには十分なクオリティといえます。

おすすめ度:★★☆☆☆
販売サイト:https://www.ankerjapan.com/products/a8195
実勢価格1,690円

LOTA  pe-CC CX31993

Conexant社のDACチップ・CX31993を採用したケーブル型のDACアンプです。サンプリングレート/ビット深度は384KHz/32ビット。Quest 2接続時にここまで大量のビットレートを必要とする音源再生は難しい(対応アプリがきっと存在しない)でしょうが、AndroidスマートフォンやノートPCでハイレゾ曲を聴きたいという時には効果的です。

スティック・ケーブル型DACアンプは接続したデバイスから電力供給を受けるため、バッテリーの持ちが悪くなる傾向があります。しかしCX31993はモバイルデバイス用に作られたDACチップのようで、低消費電力だし熱もさほど持ちません。

アンプ出力は65mW。K240 STUDIOとつなげて使ってみると、中高域の再現性はAnker USB-C&3.5mmオーディオアダプタより勝っています。声のリアリティが増していますし、曲のメロディラインも鮮やかに鳴らします。ただし低域はすっきりめ。直接接続したときのような曇りはないものの、低音の量感は減りました。ややパワー不足なのでしょう。

ということは、K240 STUDIOよりも鳴らしやすいイヤホン・ヘッドホンであれば大丈夫といえます。実際に高感度・低インピーダンスのイヤホンを使ってみましたが、スムースで音のデータをフラットに鳴らす傾向が掴めました。スッキリしすぎて重低音のインパクトは薄いので、アクションゲームやRPG、VRSNSで使うのがいいかもしれません。

おすすめ度:★★★★★
販売サイト:www.amazon.co.jp/dp/B09TP418PZ
実勢価格1,350円

HIDIZS S9 PRO

一気に価格帯が跳ね上がってしまいますが、予算が許すのであればイチオシのモデルとして紹介しましょう。チップ単価が3000円近いESS9038Q2Mを採用した、スティック型DACアンプです。エントリークラスのDACではあるものの、サンプリングレート/ビット深度は768kHz/32ビット。DSD512にも対応しています。

このモデルの面白いところは、イヤホン・ヘッドホン端子が2つあること。1つは2.5mm 4極のバランス出力でパワーは200mW。もう1つは3.5mm 3極(ステレオミニ)のシングルエンド出力、100mWのパワーを持ちます。

K240 STUDIOのプラグは3.5mmのステレオミニ側に接続します。音を出してみると、全域において張りが違う。弾けるドラム、うねるベースに、テンション高いメロディライン。半開放型の中では低音から高音まで過不足鳴らせる伝統的なモニターヘッドホンであるK240 STUDIOの実力を引き出せています。

さらに2.5mmのバランス対応イヤホン・ヘッドホンと接続して聴いてみると、左右のセパレーションがさらに高まり、広大な音場が広がります。10万円超えのモデルでもきっちりと鳴らし切ります。あまりに高解像なため、低音質な音楽トラックを採用しているVRアプリが見極められるようになるくらいです。

ただし、消費電力が多いという難点もあります。clusterやVRChatのような長時間ログインすることが多いアプリで使う場合、充電ポートを備えたUSBハブを挟む必要があり、使い勝手は決してよくありません。VRSNSを除くVRゲーム用としてお勧めします…が、Quest 2をベースにハイエンドなオーディオ環境を整えて、VRライブやVR clubイベントに参加したい方は、セッティングが面倒になることを覚悟してチャレンジしてみてください。

個人的にはHIDIZS S9 PROと平面駆動ドライバーのヘッドホン、もしくは耳の軟骨にひっかけるイントラコンカ型の高級イヤホンと合わせて使いたくなる音だと感じました。いってしまえば、イヤホン・ヘッドホン沼へ誘う魔の手。すでに高級なイヤホン・ヘッドホンをお持ちの方でなければ後悔するかも?

おすすめ度:★★★★☆
販売サイト:www.amazon.co.jp/dp/B095BRYYPV
実勢価格1万3000円


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