まるで自分がマンガの世界に入ったかのような体験ができる「マンガダイブ」。ジャンプフェスタ2023で好評を博した新体験が、初の大型企画展としてLUMINE 0で開催されました。
「マンガダイブ2023夏 SHINJUKU」と題して行われた今回の企画展では、アプリ「少年ジャンプ+」で連載中の3作品、『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』を上映。本記事では企画展の会場の様子と、実際に体験してきた感想をレポートします。
「マンガダイブ」とは?
「マンガダイブ」はその名の通り、マンガの世界に飛び込んだかのような体験ができる没入型コンテンツ。公式サイトには『体感するマンガ。』というフレーズが踊っており、「読む」のとは異なる、新しいマンガ「体験」であると説明されています。
マンガダイブの企画・制作を担当したのは、集英社XRとクリエイティブ集団「THINK AND SENSE」。今回のプロジェクトは以下のようなコンセプトのもとで進められたそうです。
テクノロジーを活用した、漫画の新しい楽しみ方の提案として、マンガ作品の世界観、奥深さを没入するという体験を通して実現することを目標としたプロジェクトです。
(https://thinkandsense.com/works/mangadivejumpfesta23/より)
周囲360度のスクリーンに床を加えた5方向に映像を投影し、さらに音響を合わせることによって、まるで作品世界に飛び込んだかのような臨場感を演出できる。それがマンガダイブの魅力であり、2022年12月の「ジャンプフェスタ2023」では『ONE PIECE』などが上映されて注目を集めていました。
音と映像の贅沢な演出が味わえる空間で、あの名シーンを体感!
初の大型展示会として開催された「マンガダイブ2023夏 SHINJUKU」の会場となったのは、新宿駅直結のイベントホール・LUMINE 0(ルミネゼロ)。
今回の展示会で上映されるのは、いずれも「少年ジャンプ+」で連載中のタイトル。『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』の3作品の魅力が詰まったイマーシブ映像を体験できました。
受付を済ませて会場に入ると、上映されるマンガ作品の説明パネルがまず目に入ります。人によっては読んだことのないタイトルもあるかもしれませんが、流れている紹介映像を見ることで概要を把握できるでしょう。
上映開始10分前になると、いよいよ映像体験が待ち受ける空間に入場します。
4方向を囲まれた空間は思いのほか広く、担当者の方の説明によると、一応は100人以上を収容することもできるそう。ただ、あまり人が多すぎると没入感が削がれてしまう懸念もあるため、上映回数を多く設けることでお客さんを分散させているとのことです。
時間になると、約40分間の上映がスタート。
いざ、マンガの世界へと飛び込みます。
SPY×FAMILY
1本目は、2022年にアニメ化されて注目を集めた『SPY×FAMILY』。アーニャの愛犬・ボンドがフォージャー家の一員になるきっかけとなった、「ボンド編」を中心とした映像が上映されました。
上映が始まってまず驚かされたのが、音と映像による臨場感の演出です。
気づけば周囲には美しいオスタニアの街が広がり、雑踏を歩いているかのような音も聞こえてくる。作中でも緻密に描かれている街並みが360度全方向に投影されており(床にも!)、道の向こう(画面の奥)からはフォージャー家の3人が歩いてくるではありませんか!
ゆっくりと、しかし着実に作品世界へと“入っていく”かのような、静かながら臨場感の伴う体験にドキドキさせられました。
もちろん、味わえるのは「静」の臨場感だけではありません。
おなじみのコミカルな描写を合間合間に挟みつつ、物語の展開にしたがって眼前に現れる危機、そして迫力のアクションシーンが次々に目の前で繰り広げられる様子は、アニメで見るのとはまた違った魅力と迫力がありました。時には体を動かさなければ全体を把握できないほどの映像体験は、そうそうできるものではありません。
チェンソーマン
2本目は、同じく2022年にアニメ化された『チェンソーマン』。こちらも特定のエピソードにスポットを当てた映像となっており、第1部の人気エピソード「チェンソーマンvsサムライソード」編が描かれます。
独特なビジュアルと個性に溢れた「悪魔」たちの姿を大画面で見られる――それも藤本タツキ先生の原作絵で――という、それだけでもう大迫力&大興奮なのですが、演出がこれまたすごい。
空間を贅沢に使った映像は言わずもがなですが、印象的だったのが「音」の演出。
サムライソードと対峙したデンジが「やってみろよバァ〜カ!!」と啖呵を切る、そのコマが映し出されると同時に、空間を切り裂くように響くチェンソーの音。わかっていてもテンションが上がりますし、そこから始まるアクションシーンにも大興奮。思わず笑ってしまうくらいにゾクゾクさせられました。
ほかにも、左右の壁面を使って描写されたサムライソードの高速の居合い切りも圧巻でしたが(映像に合わせて「音」も空間を動く!)、個人的に記憶に残ったのが、幽霊の悪魔に立ち向かう早川アキと、その回想シーンです。
コミックを読んだ方は察せられるのではないかと思いますが、「Easy revenge!」に至るまでの、一連のアレです(5巻/第35話)。周囲360度の壁面をフル活用して並べられる、回想のコマ。ズルい。少し泣く。
ダンダダン
3本目は、オカルティックバトルマンガ『ダンダダン』。本作に関しては特定のエピソードを描くのではなく、作品のキャラクターたちに焦点を当てた「作品のPV」のような内容になっていました。
序盤は中心人物4人の紹介ムービーのような構成になっており、各キャラクターの名場面やビジュアルが順々に、周囲の壁面に逆時計回りで投影されていきます。
自然と体をぐるっと動かして鑑賞するような格好になるため、それ自体がちょっとしたアトラクションのようで楽しい(感覚的にはVR映画にも近いかも)。会場で座って見ていたお客さんたちも、思い思いにスマートフォンを構えながら撮影・鑑賞していました。
かと思いきや、映像の後半では大迫力バトルが描かれます。そう、読者のあいだでも話題騒然となった、宇宙怪獣vs巨大大仏ロボのシーンです。読んだことのない人からすると「どゆこと!?」な展開に映るかもしれませんが、このマンガはそういうマンガです。
変身したオカルンの疾走感に、音と動きが加わることで重量感がマシマシに感じられる怪獣バトル、そして恐怖感を煽る「呪い」の演出など、見どころ満載の映像体験。本作を知っている人にも知らない人にもぜひ見てほしい――いや、味わってほしい体験だと感じました。
グッズでAR体験も!そして気になる次回開催は?
会場には物販コーナーも設けられており、イベント限定商品も多数販売されていました。
イベントのキービジュアルを使ったジェネレイティブグラフィックTシャツやトートバッグ、名場面を立体化したアクリルスタンドなどなど。アクリルスタンドはそのまま飾るだけでも楽しめますが、それぞれのシーンに合わせて施されているAR演出も見どころです。
1ヶ月に満たない短い開催期間ながら、SNSでは多くの好評の声が聞かれていた、「マンガダイブ2023夏 SHINJUKU」。
会場に設置されていた来場者向けのコミュニケーションノートにも、今しがた味わったばかりの映像体験に対する興奮や、各作品のキャラクターのイラストなどがたくさん書き残されており、とても満足感の高いイベントだったことがうかがえます。
筆者個人の感想としても、今回のマンガダイブは期待以上! 360度全方向の「空間」を使った体験型コンテンツといえば最近はVRも身近になりつつありますが、決して見劣りしない体験だと感じられました。音にもこだわったリアルの広い会場で、周囲の人たちの反応も見ながら、大好きな「マンガ」の世界に飛び込める――最高じゃないですか!
また、『BLEACH』や『ヒロアカ』といったジャンプ作品のタイトルを挙げているコメントもあり、早くも次回開催が切望されている様子。担当者さんによれば、すでに「次」の構想もあるらしく、プロジェクトとしての「マンガダイブ」も今後続いていくそうです。気になる方はぜひ、集英社XRのアカウントから発信される情報をチェックしてみてください。
公式サイト:https://mangadive.jp/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/shueishaxr
©SHUEISHA/©藤本タツキ/集英社/©遠藤達哉/集英社/©龍幸伸/集英社