米国AT&Tの有料テレビ放送「DirecTV」はすでに多くの加入者を失っており、オンライン配信版である「DirecTV Now」もユーザーが減少に見舞われるなど、芳しくないニュースが続いています。このようにテレビ・オンラインともに苦戦している中、AT&TはMRデバイス「Magic Leap One」に向けたDirecTV Nowアプリのベータ版をリリースしました。
しかしMagic Leap Oneは現在2,300ドルと、決して安いとは言えないデバイスです。販売数は明らかにはなっていないものの、「多くの人々が使っている」「一般的なデバイスだ」とは言えません。彼らがMagic Leap One向けのアプリをリリースした理由はいったいなんなのでしょうか?
本記事では、AT&TがMagic Leap One向けにベータ版を開発・リリースした理由を探ります。
「新しい加入者を得ること」は目的ではないし、できない。ならばなぜ?
Magic Leap One向けの「DirecTV Now」は、4つの映像を同時に観ることができます。カルーセルUIから番組を選び、それぞれの仮想スクリーンのサイズや場所を変えて設置。テレビの音は、視聴者の視線の先にある画面の音声を自動的に出力します。
仮想空間上にスクリーンを配置する、言うなれば家のいたるところにテレビやモニターを持ち運べるのは確かに便利かもしれません。しかし、加入者を増やすには不十分でしょう——2,300ドルもするデバイスを買ってもらうとなると、さらに。
この疑問について、AT&Tのビデオ製品アシスタント・ヴァイスプレジテントであるVikash Sharma氏はこう答えています。
私たちはMagic Leap One用のDirecTV Nowアプリによって、何千もの新しい加入者を得ることはできないでしょう。あくまで私たちの目的は、人々が新しい没入型メディアで、コンテンツとどのようにやり取りするのかを理解することなのです。
これは今後AT&Tが行う実験の最初のひとつであり、これらのエクスペリエンスのユースケースがどのようになるのか、またそれらがどのように進化するのかを検討することこそが重要です。
Vikash Sharma氏の発言だけでなく、AT&TはMagic Leap(マジックリープ)社への投資を行っており、その製品の米国内での独占提携を行っていることも付け加えておくべきでしょう。AT&Tは概念実証用のアプリケーションを用いて、VR/ARのハイブリッドデバイスの市場を急成長させる手助けをしようとしているようです。
Magic Leap Oneは約2,300ドルと高価なデバイスであり、今は開発者とコンテンツパートナーのためのものとして位置づけられています。Magic Leap社は「Magic Leap Two」と呼ばれる一般消費者向けの低価格モデルを導入する意向ですが、その詳細はまだ発表されていません。
大手タイトルや有名放送局等とコラボ、Magic Leapの“実験”は続く
2010年に設立されたMagic Leapは、これまでに26億ドルもの巨額の資金を調達しました。その投資の一部はAT&Tからによるものであり、AT&Tは5GネットワークでMagic Leapのデバイスをサポートする計画を発表しています。
AT&T傘下のCNNは、CNN、CNNi、HLNのライブ映像を観るためのMagic Leap One用アプリ作成をしました。さらにHBOの「ゲーム・オブ・スローンズ」シーズン8のリリースとともに、AT&T;はMagic Leap One向けにゲーム・オブ・スローンズのインタラクティブな体験をリリース。こちらはAT&Tのショップでデモが展示されています。
今後、AT&Tは、ボストン、サンフランシスコ、シカゴ、ルイジアナ、およびダラスの旗艦店で、Magic Leap One向けのDirecTV Nowアプリを披露する予定です。
(参考記事)Variety