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VTuber 2020.02.02

なぜ「#とまらないホロライブ」は世界トレンド1位になったのか?「ノンストップ・ストーリー」ライブレポ

1月24日(金)、豊洲PITにて開催されたホロライブ初の全体ライブ「hololive 1st fes.「ノンストップ・ストーリー」」。イベントの様子はニコニコ生放送でも中継され、ハッシュタグ「#とまらないホロライブ」は開演前の時点で早くもTwitterのトレンド入り。最終的には30万件以上のツイートを記録し、世界のトレンド1位を獲得していました。

なぜ世界トレンド1位を獲得できたのか、タイムラインを埋め尽くした視聴者たちの熱いコメントは何によって生まれたのか…。本記事では満員の会場で紡がれた“物語”から、その理由を探っていきます。

ライブは本番直前からすでにはじまっていた

今回のライブは事務所初の全体イベント。過去に所属VTuberのソロイベントや音楽ライブはありましたが、これほどの人数がそろって同じステージに立つのは初めて。そのため開催が発表されてから、ホロライブファンはこのイベントに注目していました。

その注目に答えるかのように、ホロライブ側はライブの期待を高めるようなアクションを次々と仕掛けていきました。

まずライブ2週間前、年明け間もない頃にオリジナル曲「Shiny Smily Story」のMVが公開。昨年夏に初めて公開されたショート版よりも長めの尺で、ホロライブメンバーの紹介兼、実質的な「ライブ宣伝PV」になっていました。間奏で挿入される配信や動画の映像がファンの心を掴みました。

ライブ当日まで1週間を切ると、ホロライブ公式チャンネルではたびたび特別番組を配信。1月20日には「ライブを100倍楽しむための放送!」と題して、星街すいせいさん、宝鐘マリンさん、不知火フレアさんが3つの「極意」を伝授。

ライブグッズの紹介にはじまり、「コールには筋肉が必要ですよね?」という一言からの突然の「リングフィットアドベンチャー」の実況プレイ。最後に3人の3Dモデルのお披露目放送が告知され、コメント欄が喜びの声であふれていました。

翌日には「みんなで歩こう!豊洲PITへの道!」と題して、大神ミオさん、白上フブキさん、猫又おかゆさんの3人が出演。会場である豊洲PITまでの道のりを、Google Earth VRを使って紹介。グッズ紹介やコールの練習も行われました。

さらにライブ前夜、ホロライブ裏方の友人Aさんがメンバーの凸待ち配信を実施。1時間半で4期生も含む約20人ものメンバーが集まり、思い思いに明日の抱負を語りました。他のホロライブメンバーの多くも前夜に配信を実施し、心境を吐露しています。

そしてライブ当日。ニコニコ生放送で中継が行われている傍ら、桐生ココさんのチャンネルにて、4期生(天音かなたさん、常闇トワさん、姫森ルーナさん、角巻わためさん、桐生ココさん)による同時上映会が実施。1万人以上が集まるほどの大盛り上がりだったようです。

一方、現地でも早い時間から物販の列ができ、待機中にハッシュタグを使って情報交換をしていた人が多かった様子。ライブへの期待を隠しきれない声がTwitter上では多く聞かれていました。

こうした一連のアクションが積み重なった結果、ハッシュタグ「#とまらないホロライブ」が早朝からトレンド入りを果たしたといえるでしょう。

ファンの心を鷲掴みにしたアイドル曲の数々

今回のライブは「30曲以上・2時間以上の音楽ライブ」と銘打たれており、どのような曲が披露されるかが、ファンにとって重要なポイントでした。しかしホロライブは冒頭から早速フックを仕掛けてきたのです。

それは最初の曲を全員合唱の「Shiny Smily Story」にしたことでした。現時点で唯一の全体オリジナル曲を、まさか冒頭に持ってくるとは……! 最初から全員がステージにそろっていることに驚かされた人も多いでしょう。

総勢23名。これだけの人数が同じ舞台に立つ機会はそうそうありません。さらに奥に向かって消えて、また出てくるという珍しい演出も…!

そしてライブを通して気づいたのはアイドルソングの多さ。具体的には、ソロパートで一番手を担った夏色まつりさんの「ファンサ」に始まり、兎田ぺこらさんの「fancy baby doll」、湊あくあさんの「♡桃色片思い♡」、赤井はあとさんの「私、アイドル宣言」など。特に、ライブ前半にアイドルソングが多く歌われていたように感じました。

アイドルソングが多いということは、つまりコール曲が多いということ。ファンの大きなリアクションを期待したセットリストになっていたといえるでしょう。

赤井はあとさんの「私、アイドル宣言」では「You’re my angel!!」の合いの手で大盛り上がり。ペンライトを全力で振りながら、「かわいい~~!!」と、声を枯らすほどの勢いで叫んでいたファンの姿が印象的でした。


会場が一体になって「もっと!」と叫んだ「ファンサ」では、「これからもずっとずっとよろしくね~!」という夏色まつりさんの声に感極まったのか、絶叫する人も見受けられるほど。登場するだけで会場を揺り動かそうかというレベルの雄叫びが響いていた湊あくあさんの「♡桃色片思い♡」は、まさしくアイドルライブそのものでした。

兎田ぺこらさんのアイドル力の高さにも驚かされました。間奏では「愛してるぺこか~~~?」と会場に呼びかけつつ、観客に「世界一可愛いよ!」と叫んでもらうための煽りも欠かしませんでした。

大空スバルさんは「金曜日のおはよう」を披露。普段は天真爛漫なキャラクターとトークが魅力な彼女が、ステージを飛び跳ねながら歌っているのを見れば、ファンはたちまち笑顔に。その姿を「アイドル」と呼ばずして、何と言いましょうか。

後ほどTwitterで感想を見ると「今回が生まれて初めてのライブ参戦だった」という人も少なくなかった模様。現地でも開演当初はペンライトの使い方がわからず、遠慮がちに腕を振っていた人も散見されました。

ですが、そんな人たちも徐々にライブの雰囲気に慣れ、全力で腕を振り、声を上げていました。そうやってすぐに適応できたのも、前半にアイドル曲が多く、周りの人の盛り上がりに乗りやすかったからかもしれません。

一人ひとりの“らしさ”があふれた曲に、ファン感涙

コアなファンの注目度が高かったのが、メンバーが歌うオリジナルソング。このライブでは6人がソロでオリジナル曲を披露しました。

最初にオリジナル曲を歌ったのは星街すいせいさん。2ndオリジナルソング「天球、彗星は夜を跨いで」です。待ちに待った3Dモデルでの初ライブ、しかもアフタートークでの話によれば、豊洲PITは思い入れのある会場なのだとか。

歌唱前から泣けていたという彼女ですが……ステージに立ち、右腕を頭上に掲げた後ろ姿はシンガーそのもの。生で聴く歌声はすさまじい迫力がありました。

満を持して登場したのは、ホロライブの歌姫・AZKiさん。ライブの経験が豊富な彼女が歌ったのは、1stアルバムの表題曲「without U」です。歌詞の一言一言を噛み締めるかのような力強い彼女の歌声。秀でた表現力にため息をついてしまうほどでした。情感たっぷりのCメロからラスサビの流れで泣きそうになったのは、自分だけではないはず。

アキ・ローゼンタールさんが歌ったのは、エルフの国の伝承歌「シャ・ル・イース」それまで熱狂していた会場が、彼女が歌い始めた途端、物音を立てるのもためらわれるほど静かに。息を潜めてペンライトを振る観客の姿が印象的でした。歌によって「飲まれる」ような感覚になりました。

白上フブキさんが歌った「Say!ファンファーレ!」は、2019年11月の単独イベントでお披露目となったオリジナル曲。

MVが公開されたのはライブ前日でしたが、当然のようにコールを完璧にこなす観客。さすがは“すこん部”。「歌とかステージはまだまだ恥ずかしいけど」と言いながらも、最後まで全力で歌いきりました。

さくらみこさんが歌ったのは、疾走感マシマシのオリジナル曲「マイネームイズエリート☆」。この曲を歌うには少し不安もあったそうですが、実際には彼女が登場すると会場がピンク一色に染まり、「エリートー!」の声が飛び交う状態に。

ときのそらさんが歌ったのは、「フレーフレーLOVE」“そらとも”の心に寄り添う、王道ドストレートの応援ソング。長く追ってきた人ほど、あの大きなステージで聴く彼女の歌声に、感慨深いものがあったのではないでしょうか。

オリジナルソングは彼女たちの魅力が充分に伝わるように制作された曲。それが、大ステージで響き渡るのだから、ファンはひとたまりもありません。多くの来場者が限界化している姿が見られていました。

それぞれのストーリーが込められたカバー曲

カバー曲の歌唱も負けていません。ライバーそれぞれが思い入れのある曲を選んでいました。


癒月ちょこさんのキュートでセクシーな「おじゃま虫」大神ミオさんの「夜もすがら君想ふ」。2人ともパフォーマンス中に「大好き!」と告白してきました。

「こちら、幸福安心委員会です。」は、戌神ころねさんが初めての歌枠で歌った曲。「義務なんです!」の唱和で会場がひとつに。彼女の声で語られる「死にましたー!」のトーンは、癖になりそうなゆるさがあります。

猫又おかゆさんの「惑星ループ」は、チャンネル登録者数4万人記念で歌った曲。単発の「歌ってみた」は、40万再生を突破している人気動画です。原曲の発表当時からずっと聞いている曲なのだとか。

ぬるっとステージに現れ、サビではしっかりと観客を煽りつつも、歌唱後は「さらばー」の一言で去って行く清々しいパフォーマンスを見せました。


百鬼あやめさんの「千本桜」と、宝鐘マリンさんの「Lost my music」は、2曲続けてペンライトが赤一色。歌唱後もしばらく歓声が響き続けるほどにヒートアップしていました。

「太陽系デスコ」を歌ったのは、白銀ノエルさん。歌がちょっと苦手と話していた彼女がこの曲を選んだのは「そら先輩とホロライブを「太陽系デスコ」で知ったから」だったそう。一生懸命さの伝わる歌唱に心打たれました。

紫咲シオンさんが歌ったのは、「Booo!」。クールな歌声が耳に響きつつ、キュートな振り付けが目を引きました。

不知火フレアさんの「天ノ弱」と、夜空メルさんの「ヒバナ」。アップテンポなボカロックを見事に歌いこなしていました。この日が3Dモデル初披露となるフレアさんは、登場するだけで大歓声が巻き起こるほどの盛り上がりぶりでした。

一方のメルさんは「頭振ってー!」と煽りながら、観客と一緒にヘッドバンキングをしていました。退場直前の「だいすきっ」にときめいてしまった人は多いはず。

ソロパートの中でも、特に選曲がぴったりだと感じたのが、潤羽るしあさんの歌う「13」。どこか切ない歌詞とメロディが、彼女の声色にぴったり。客席を覆い尽くすライトグリーンのペンライトが合わさり、会場を幻想的な雰囲気へと変えていました。

ロボ子さんの歌声もインパクト抜群でした。披露したのは奥華子さんの「はなびら」。清らかな声のバラードに、ちらほらと涙ぐむ人の姿が見られました。「ありがとうって伝えたい」なんて歌われたら、涙せずにはいられません…。

このようにソロパートの選曲ひとつとっても、メンバーの個性がしっかりと出ていたことがわかります。一人ひとりのキャラクターを知っている人ほど心に沁みたことでしょう。

いつものホロライブも健在! 掛け合いに会場はほっこり

また、ほぼノンストップで展開するライブパートの合間に挟まされるMCパートでは、メンバーの掛け合いにほっこりさせられました。

前半、一番最初のMCパートで登場したのは、ときのそらさんとロボ子さん。お約束のコールアンドレスポンスで会場を沸かせつつ、早くもボルテージが上がっている会場を見て、思わず「そっちに行きたい……!」と話すそらさんが印象的でした。

白上フブキさん、大神ミオさん、夏色まつりさん、宝鐘マリンさんのMCパートでは、自己紹介とあわせて、4人の普段の挨拶でコールアンドレスポンス。ついに3Dの姿になったマリン船長を祝いつつ、満員になった会場に向かって感謝の言葉を伝えていました。

さくらみこさんと兎田ぺこらさんが登場したパートでも、同じくコールアンドレスポンスをやろう……としたのですが緊急事態が発生。ステージ上の2人がフリーズしてしまったのです。

「これがぺこみこ虐かー!?」と叫びつつも、めげずにコールアンドレスポンスを始める2人。「ぺーこみこ! ぺーこみこ!」の全力コールから、「にーんじん! にーんじん!」「エリート! エリート!」とつないでいくも……残念ながら、ステージからの一時退場を余儀なくされます。

ですが、観客はとまりません。客席から2人とスタッフさんを応援する歓声が響く中、やがて自然発生した「YAGOO! YAGOO!」コールによって、会場の心はひとつに。間もなくぺこみこの2人も復帰し、無事にMCを再開。次の曲につなぐことができました。

記念すべき全体ライブで、トラブルを物ともせず、社長さんのあだ名がトレンド入りする事務所……ホロライブって、あったけぇなぁ……。

また、大空スバルさんと百鬼あやめさん、“あやスバ”のMCパートでは、元気いっぱいな2人による軽快なマシンガントークが炸裂。メルさん、フレアさん、そらさんなどのパフォーマンスを振り返りつつ、ハイテンションに話していました。

一方で、イベント終盤には「劇場版 ホロのぐらふぃてぃ」を上映。ホロライブメンバーの日常を描くゆるふわ系ショートアニメ(?)が、ついに長編の劇場版に……!

こちらの映像が流れるやいなや、会場は爆笑の渦に。すでにYouTubeでも公開されています。こうした、合間に挟まれたネタも、会場の盛り上がりの要因のひとつに繋がってたことは間違いありません。

それぞれの“ストーリー”が垣間見えたユニット曲

ソロパートが終わってもとまらないホロライブ。 盛り上がりに追い打ちをかけるようにユニット曲も披露されました。

最初にステージに立ったのは、ときのそらさん、ロボ子さんさくらみこさん、AZKiさん、星街すいせいさんの5人。歌ったのは、そらさんのオリジナル曲「Dream☆Story」です。

「無印組」「0期生」「ソロデビュー組」と呼ばれる彼女たち5人には、「別々のプロジェクトで活動していた時期がある」という共通点があります。それ故にサビの部分で「ホロライブだよ!」と叫ぶシーンでは息を呑みました。

ホロライブ1期生の5人(夜空メルさん、アキ・ローゼンタールさん、赤井はあとさん、白上フブキさん、夏色まつりさん)は初披露の「夢見る空へ」を披露。「今」の楽しさを噛み締めながら、「夢」へと向かって一緒に踏み出そうという、ストレートな歌詞が胸に響く曲です。「アキロゼさんがセンターである」ことに感動している人がTwitterで多く見られたのが印象的でした。

アキロゼさんは「すごく緊張したけど、悩んだけど、受けてよかったなって思う」感想配信で話しており、ライブでも堂々とセンターを務められていました。ホロライブを初期の頃から支え、盛り上げてきた1期生。その絆が垣間見えました。

2期生の5人(湊あくあさん、紫咲シオンさん、百鬼あやめさん、癒月ちょこさん、大空スバルさん)が歌ったのは「五等分の気持ち」。個性の強い2期生がおそろいのアイドル衣装に身を包み登場そろって客席に手を振る様子はアイドルグループのそれでした。

続いて登場したのは、ホロライブゲーマーズの4人(白上フブキさん、大神ミオさん、猫又おかゆさん、戌神ころねさん)。「新 宝 島」の文字に、ファンは「!?」とざわめきました。

丁寧×3なダンスに合わせ、ファンもサビで合唱する流れに。誰が合図をするでもなく、自然とみんなで口ずさみはじめ、あっという間に大合唱へと発展していた様は圧巻でした。

兎田ぺこらさん、潤羽るしあさん、不知火フレアさん、白銀ノエルさん、宝鐘マリンさんの5人は「Connecting」。今回登場したホロライブメンバーの中ではまだ活動期間の短い3期生が、一緒になって“つながる”曲を歌いました。

特にパート分けが秀逸で、マリン船長とフレアさんのラップパートから、るしあさん、ぺこらさん、ノエル団長へと続く展開があまりにもエモーショナルでした。歌詞のパート分けも一人ひとりに関係のある歌詞が割り振られていました。

最後はサプライズ枠として、ときのそらさん、白上フブキさん、湊あくあさんが登場。披露したのは「気まぐれメルシィ」。特別なユニットの登場に、会場を埋める観客のテンションは最高潮に。ひときわ魅力的だったのが、サビの最後のロングトーンでした

ライブの最後を飾ったのは「キラメキライダー☆」。「SSS」に続くホロライブ全体のオリジナル曲を、全員で歌いました。明るい未来を予感させる歌詞で、特に2番のサビの直後、「歌い続けたいな 踊り続けたいな」からの歌詞と展開には涙腺が緩みました。

物語は止まらない

今回の「ノンストップ・ストーリー」は、ときのそらさん、ひいてはホロライブメンバーが止まらずに歩んできた道のりを辿るような構成になっていました。

デビュー当時、トークも歌もまだ慣れておらず、試行錯誤を続ける日々だったときのそらさん。努力を重ね、徐々に注目を集めるように。少しずつ仲間も増え、数々の合同ライブやイベントに出演。その間、彼女たちは立ち止まりませんでした。

夢に向かって進み続けるアイドルたちの眩しい姿を見て、自分自身も勇気づけられ、前へと進む力を分けてもらえた。そんな実感を抱いたファンは著者だけではないでしょう。

ライブ後に各ライバーが行った感想配信では、選曲の理由や裏話だけでなく、今後の夢や目標を語っている姿が印象的でした。目を輝かせながら「これから」を話す彼女たちの姿には、まだ歩みを止めていないことがうかがえます。

“1st Fes.”を謳う今回のイベントは、むしろ始まり。「ホロライブ」が躍進していくための序章に過ぎないのかもしれません。その第1章をこうして目の当たりにできたことを、いちファンとして心から嬉しく思います。

「#とまらないホロライブ」が世界トレンド1位になったのは、彼女たちのストーリーに多くの人たちが引き寄せられ、登場人物のひとりとして進んで参加したから。これからこの巨大な物語がどのような歩み続けるのか、見届けていきたいです。

執筆:けいろー


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