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話題 2023.05.01

創業4年でワールドの累計アクセスは230億回越え Robloxのトップスタジオの姿に迫る

メタバースという言葉の熱も少し冷めてきた2023年、世界的に見て最大規模のプラットフォームとして君臨しているのが、北米圏で絶大な人気を誇る「Roblox」だ。

Robloxはユーザーが作ったオンラインゲームを公開して、マルチプレイで遊ぶことができる、さながら「オンラインゲームのYouTube」とも言えるプラットフォームだ。最新の統計では、DAU(Daily Active User)は5,800万人。その半数以上が若いプレイヤーである。

さらにアバターやアバターの服などを売買するための経済圏が存在する。ファッションブランドとコラボしたワールド(Roblox内ではActivityと呼ばれる)や、アーティストの音楽ライブを体験できるイベントなどもあり、ゲームが中心と言えど、最大規模のメタバースとも言える。

日本ではYouTubeの実況を契機にユーザーが増加しているようだが、まだ本格上陸をしているとは言い難い状況だ。一方、北米ではRoblox向けの專門コンテンツ開発スタジオがすでに登場している。その数は”数社”の域を越えており、トップ開発スタジオはすでにビジネスを成立させている。

Mogura VRではこれまでもSupersocialというスタジオを取り上げたが、今回はGamefamという開発スタジオの話を聴く機会を得た。

Gamefamは数あるRobloxの制作スタジオの中でも、まさにトップ集団に位置するスタジオだ。創業してからわずか4年だが、すでに展開したワールドは30以上。筆頭コンテンツである「トワイライト・デイケア」は総アクセス数が16億回以上である。セガとのコラボで生まれたブランドコンテンツ「ソニックスピードシミュレーター」は7億回以上アクセスされている。

ゲーム領域だけにとどまらず、Robloxでの人気ユニット、ザ・チェインスモーカーズの音楽フェスコンテンツの展開など、Robloxにおける様々なコンテンツを展開してきた。Gamefam名義で展開しているワールドの累計アクセス数は230億回を越えているとのこと。

2023年3月にサンフランシスコで開催されたGDC2023では、Gamefamの共同創業者でCEOのジョー・フェレンツ氏がRobloxとの対談講演を行っていた。本記事では、その講演と講演後に実施した単独取材を通して、Gamefamの姿に迫りたい。

ゲーム業界を渡り歩きRobloxへ

フェレンツ氏は、もともとゲーム業界でビジネスサイドに関わってきた人物だ。任天堂やUbisoftなどの大手企業だけでなく、Gamefamの前はスタートアップとしてスマホ向けゲームの開発会社にも関わってきた。そんな彼がRobloxに出会ったのは、当時は別の企業で働いていた2016年。その後、興味深くその動向を見守り、2018年にはRoblox向けに最初のゲームをローンチ。Robloxにプラットフォームの成長可能性を感じたフェレンツ氏は2019年にRoblox向けの專門開発会社を創業することを決意、Gamefamが生まれた。

この4年間でGamefamが送り出してきたゲームの実績の桁感は想像を超えている。リリースしたゲームはわずか2年前である2021年3月にリリースされた「トワイライト・デイケア」の16億回を筆頭に数千万~数億回のアクセス数を誇る。赤ちゃんと託児所のスタッフに分かれてカオスなロールプレイを楽しむトワイライト・デイケアはリリース後に200万DAUを達成し、今では関連する玩具が発売されるなど、“IP”としての展開すら始まっているという。

そして2022年にリリースされ、すでに7億回以上アクセスされているソニックのワールド「ソニックスピードシミュレーター」は、Roblox上で展開されたブランドコンテンツとしては最も成功したものになった、と自信を見せる。


Robloxの統計サイト「RoMonitor」ブランドのワールドには「ソニック」が、そしてワールド内コンサートでは「スウィーティー」「ザ・チェインスモーカーズ」「24kGoldn」とGamefamが手掛けたワールドが上位に並ぶ

プラットフォーム自体が成長するRoblox

これまで家庭用ゲームやスマホ向けゲームと、ゲームビジネスに関わってきたフェレンツ氏が、Robloxに熱視線を注ぐ理由はなんだろうか。

フェレンツ氏は「Robloxは成長していくプラットフォーム」と話す。Robloxで機能追加されたときに10万人以上が同時接続するゲームが出てきたことを挙げ、「新しい機能が追加されることでプラットフォーム全体が拡大していく」と語っていた。

また、Robloxの特徴として、「プレイヤーが毎日入ってくるコンテンツサイクルの早いプラットフォームである」ことも挙げる。DAU5,800万人と言われるRobloxユーザーは、1セッション(プラットフォーム滞在)あたりのプレイ時間は2.5時間と言われており、その間に6〜8つのゲームをまるで飛び回るようにプレイしているという。長くても滞在時間は25分程度とのことだ。「プレイヤーは常により多くのコンテンツを欲しており、Robloxでの更新頻度は1週間くらいだ。こういったユーザーの動きは、1つのゲームを何ヶ月もプレイするこれまでのゲームとは全く異なる」と新たな目線で向き合っていることを明かす。


4年の間にGamefamがリリースしてきたタイトルの数は30本以上。1つの特大ヒットタイトルを生み出すよりも中~大ヒットを多く世に送り出している。それでも多くのタイトルのアクセス数は1億回を超えているわけだが……。

データを重視し、クリエイティブとの両輪で走らせる

Gamefamは一つひとつのワールドをリリースした後、“運営”している。F2P(Free to Play)のスマホゲームと同じように、高頻度でアップデートやイベントを実施することで常にユーザーの関心を高め続けている。

ブランドコンテンツである「ソニックスピードシミュレーター」も公開して終わりではなく、リリース後もアップデートを繰り返している。

なお、ビジネスモデルについては「ゲームごとに独自のロードマップがある」そうだ。Robloxのプラットフォーム上にあるバトルパス方式、アイテム販売、クエストなど様々な仕組みを組み合わせて展開しているとのこと。

この記事ではデータを多く引用してきたが、それもそのはず、フェレンツ氏は「データは非常に重要」と話す。「データによって、プレイヤーがどれくらい私たちのゲームを気に入ってくれているか、楽しんでくれているかが分かる」、「私たちには素晴らしいマーケティングチームがいて、彼らは日々データを見ながら次に何をどう作るか各ゲームのプロデューサーと議論している」とのこと。このデータに基づくマーケティングとクリエイティブのバランスはゲーム企業にとって絶妙だ。どちらかが強すぎてしまっても、ゲーム会社としては成り立たないだろう。結果として、Gamefamがユーザーを魅了するゲームを生み出しながら、ビジネスを拡大し続けている秘訣はここにある。

またGamefamは、自分たちが生み出したオリジナルコンテンツだけを扱っているわけではない。例えば、タイトルの中に、「○○ Tycoon」という人気シリーズがある。このシリーズの第一作である「Military Tycoon」は、当時高校生が制作していたコンテンツを買い取ったとのこと。その後、データの分析を行い「コミュニティが求めているものはないか、そしてどのように更新していけばいいか」を考え、施策を打つことで、ユーザー数も売上も当時の倍以上に成長させたという。リリースから1年半以上が経った現在でも、売上上位50位にランクインすることがあるほど、ユーザーが安定的に遊んでいるという。


Military Tycoon

個人でも作れるUGCだからこそプロフェッショナルでありたい

Gamefamは数人から始まったスタジオだが、今では250名以上が所属するスタジオになった。1コンテンツあたりのチームはコンテンツのジャンルにもよるが、多くて20名程度という。そして、所属するクリエイターの多くは、18歳から25歳の若い世代だという。もともと彼らはRobloxにユーザーとして参加し、クリエイターに転じてきている。「彼らは自発的にコンテンツを作っていく。クリエイターからFortniteのワールドを作りたいという話が出て、いまはFortniteのワールドづくりも手掛けている。素晴らしいクリエイターたちだ」。

「Robloxは個人でもオンラインゲームを作れて公開できる素晴らしいプラットフォームだ。そしてユーザーである若いゲーマーたちは本物のゲームプレイを求めている。だからこそ私たちはRobloxでプロフェッショナルであることにこだわっている」とフェレンツ氏は語り、「Robloxの限界を品質とデザインの観点から押し広げる」と自負している。

フェレンツ氏は、品質についてRobloxにおけるイベントに関しても特にこだわりを持っている。「バーチャルコンサートやバーチャルイベントは、インタラクティブ性を強化したエンタメ体験だ。運営するゲームのコンテンツとは異なる。一度きりで、バグが出ずに完璧である必要がある。だからゲームよりもチームの人数は大きくなりやすい」。

すでに実力を示したGamefamには「ソニック」に限らずブランドからの相談が絶えない。今後はNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)やスポンジボブなどとのブランドコンテンツが続くとのこと。今後については、「さらにオリジナルコンテンツを生み出せるようになる」と語る。そして、若いと言われているRobloxのユーザーが成長し、ゲームに対しても目が超えてくることを強く意識しているようだ。

若い次世代のクリエイターたちと突き進むGamefam。フェレンツ氏の話にはこれまでにない新しい種類のゲーム市場へ挑む強い意気込みと楽しんでいる様子があった。

Robloxは、2022年春に日本法人が設立され、日本への本格的な展開が期待される。日本からもGamefamのようなスタジオが登場するのだろうか。


Gamefamの共同創業者でCEOのジョー・フェレンツ氏。インタビューを実施したサンフランシスコ市内のホテルロビーにて


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