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PR 2016.08.31

【インタビュー】「まずは知見の蓄積が最重要」ダズル山田CEOらに訊くVR開発の現場

モバイルゲーム開発事業を中心に行ってきた株式会社ダズル。2016年に入り、次々とオリジナルのVRゲームをリリースし、VRプロダクトの分析・運用サポートするミドルウェア『AccessiVR(アクセシブル)』を開発中(正式リリースは2017年初旬の予定)と、国内の開発会社でVRに積極的な企業の1つです。

2016年5月には1.5億円の資金調達を行い、今後は自社開発のVRゲームタイトル/プロダクトに加え、VR関連の受託案件も展開することが発表されました。

これまでに同社がVR開発で得た知見やノウハウは一体どういったものがあるのでしょうか?株式会社ダズルでVR事業に携わるエンジニア・デザイナーのメンバーと代表取締役CEO 山田泰央氏に話を伺いました。

VRコンテンツ開発ならではの難しさ

ダズル VR左から川野氏(エンジニア)、永吉氏(デザイナー)、松竹氏(エンジニア)

――まずは皆さんが開発したVRタイトルや、これまでのバックグラウンドについて教えていただければと思います。

川野亮氏(以下敬称略):
Gear VR向けのタイトル『オハナちゃん』の開発に携わりました。これは弊社が初めてリリースしたVRゲームです。元々はソーシャルゲームのサーバー側の開発などをしていたのですが、ダズルに入ってからUnityを学び、勉強しながら自分が良いなと思った簡単な企画でどんどんコンテンツを作るというスタンスで動いています。私はとにかく作って動かしてみるというのに、満足感を得られるんですね(笑)。

『オハナちゃん』もそういった形式でまず開発してみて、そこから微調整を繰り返しました。最初はアセットストアのものがそのまま使われていて動作も重いという状態だったので、社内のデザイナーと一緒にGear VRでも軽快に動くようにブラッシュアップしていったという感じです。他にVRゲームのデザインの部分で工夫したことは、一言で言うと主にFPSをVRにしてどう楽しませるかという点ですね。主観になってしまうのですが、自分が気持ち良いと思える瞬間を大事にしました。実は私はFPSが苦手で、自分でも楽しめるFPSを制作するというのも1つのモチベーションでした。

『オハナちゃん』のリリース後の現在は実写系のVR事業、360度動画サービスの開発を行っています。ゲームとはかなり違いますけども、実際に360度カメラで撮影したりもしていて、楽しめてますよ(笑)。

ダズル VR

編集部レビュー『オハナちゃん』
オハナちゃん

カラフルな世界とキャラクターが出てくるシューティングゲーム。エリアの中央にいる“お花”を襲ってくる蜂のような敵キャラクターを、自動発射されるバブルガンで、撃退します。操作は単純で頭を動かすだけ。世界感もかわいいのですが、敵が次々と出現するのでゲーム性は高め。自分が見えている視界の外から敵が現れると軽くパニックになったり、しかもパニックになると頭が変に動いてしまうので、さらに敵に弾が当たらなくなるという悪循環に……。ピタッと頭を動かして照準が合い、敵を撃退できると快感です。

――動画とゲームの両方ができたら、VR開発なら何でもできるという感じですね!永吉さんは元々は2Dのデザイナーと伺いましたが。

永吉舞氏(以下敬称略):
そうですね。ソーシャルゲームのUI/UXも含めた2Dのデザイナーだったので、3Dモデルのデザイン経験がそれほどありませんでした。VRには興味があったので現在取組んでいるのですが、やはり最初の頃はVRの3D空間という特性に躓いた部分はありました。

――3Dデザインの中でもVR特有の難しさというのはありますよね。

永吉:
VRゲーム内でのカメラの調整は難しかったですね。現実で感じる遠近感をそのままVR空間に持ち込んでも違和感を感じてしまいますので、そこは非常に苦労しました。社内のメンバーとかなり話し合いをした箇所です。
松竹誠氏(以下敬称略):
エンジニアの方でもデザイナーさんが進めやすいように協力出来る部分は協力して進めています。
永吉:
今、Oculus Touchを使ったVRゲーム『ワンオペ VurgeR』を開発中しているのですが、Oculus Touchも操作感が独特でこれも遠近感の調整が難しくて、てんやわんやしています(笑)。
編集部レビュー『ワンオペ VurgeR』
ワンオペ VR
筆者が体験したのはGear VR版。プレーヤーはハンバーガーショップの店員になるのですが、働くお店はワンオペ(店員は1人)。1人でパンズを焼いて肉を焼いてトッピングを挟んでお客さんにバーガーを渡します。肉は焼けてしまったのに、パンズが焼いている途中で、結果肉が黒焦げになってしまったり、急いでいるので焦げた肉をそのまま挟んでお客さんに渡したりして心苦しかったです。最初は心苦しかったのですが、慣れてくると特に何も感じることなく黒焦げのハンバーガーをお客さんに渡すことができるようになりました。VR空間のキッチン内をせっせと動くし、調理の手順をどうするかで頭を使うので、本当にてんやわんやな中、働いている気分になります。実際に身体を動かすことのできるOculus Touch対応版は“数倍楽しくなるはず”と確信できるシミュレーションゲームでした。

社内にはノウハウが溜まっている良い状態に

――先ほど『OneOpe』を体験させていただきましたが、VRゲームとして洗練されている印象を受けました。

永吉:
最初の『オハナちゃん』の時は本当に手探り状態だったので、今はVR開発の知見やノウハウもかなり溜まってきています

ダズル VR

――確実にクオリティが上がっているなと感じました!

永吉:
ありがとうございます!私の中でも、VR開発を通して3Dモデルを作る能力が上がってきている実感もあるので、「バリバリ作るぞ!」みたいなモチベーションが上がっている時期です。ちょうど今はとても楽しいですね。これまでにも社内でVRの開発をしていて色んな問題が出てきたのですけれども、そこに対応していったことで、結果的に工夫していく力が社内についてきたのかなと思います。
松竹:
私はフリーランスのエンジニアとしてこれまでに複数のVRプロジェクトの案件に携わってきたという経歴があって、それが縁になってダズルに入社しました。元々はフラッシュゲームの開発者だったので、VRに興味を持った最初の頃は、まずOpenGLを勉強しました。その後にUnityとUE4も勉強して、今はモバイルコンテンツなどの用途に応じてゲームエンジンを使い分けてVRコンテンツの開発をしています。

社内だと私は全体を見るポジションかなと言えると思います。コンテンツの軽量化や最適化をエンジニア、デザイナーの方と一緒に考えて「軽量化にはこういう方法があるよ」と指摘したり。VR開発での工夫する点を案内する係と言えるかもしれませんね。

――最初の企画の部分も指摘されたりするのですか?

松竹:
そうですね。企画の相談を受けたり、私から指摘することもします。特にGear VRなどモバイルのVRだと、スペック的な制約がある中でどういうことができるのかなどは、一緒に考えたりしますね。

また、周りから「VR酔いする」と言われている方法でも、自分たちでこういう風に工夫すれば使えるかもしれないと仮説を立てて実装して本当に「VR酔いする」かどうかを実験したりもします。実際に体験すると意外と酔わなかったりという場合もあるので、最初から敬遠しないのが大切ですね。試作は簡単でも良いので実装してみて自分たちで試してみるというのが、やっぱり良いなとは思います。

弊社はそういった形で実際に実装して試してみるというスタイルなので、遠回りな部分もあったのですが、その分ノウハウは非常に溜まってきています。知見やノウハウを全員で共有する社内体制も出来ているので、今は良い状態を作れている自信もあります。また、開発している段階で少しでも動作が重いなと思ったら軽くしてみるといったコントロールもしていますね。

軽量化にはデザイナーとエンジニア両方の協力が大切

――動作を軽くする調整というのは、モデル数を妥協するといったイメージでしょうか?それとも裏側の部分を改善していくということが多いのでしょうか?

松竹:
描画が重い場合が多いので、CPU側は結構余裕があるケースがよく見られますね。なのであらかじめ絵作りの部分で出来るだけ軽くすることを意識しています。今はデザイナーがどういう絵にすると軽くなるかわかっているので、絵が上がってきても動作が重いということは少なくて、Gear VRだと3Dのキャラクター数も15体位までは同時に出せます。それだとギリギリなので実際には10体位に調整していますが。そういったチームとしての慣れもあり、直近で開発したVRゲームだと、パフォーマンスチューニングに掛かった工数は1日のみでした。

ダズル VR

永吉:
私も最初は本当に分かっていなくて、『ワンオペ VurgeR』に出てくるレタスだけでポリゴン数が5,000という事態に……。なぜかレタスのリアルさに凄いこだわってしまいまして(笑)。完成した時はシーン全体のキッチンの内装含めて全部で5,000に抑えましたね。
川野:
VR開発はデザイナーの力が大きいと思いますよ。今は最初からVRコンテンツ用に考慮されたデザインのものが出てきて、非常に開発が進めやすいですね。弊社のデザイナーは優秀だなあと、よく思います(笑)。
永吉:
ありがとうございます(笑)。でも1つのプロジェクトを開発し終えた時に、沢山のノウハウを掴めたなと振り返ることが多いですね。これまでに作ったVRゲームのジャンルも一人称シューティング、三人称のアクション、レースゲームなどそれぞれ違ったので、幅広い知見が得られているというのもあるかと思いますし。

――ダズルさんはオフィスを移転することも決まっていて、VR開発者を絶賛募集中と伺っています。最後にVR開発に興味がある方に一言お願いします!

永吉:
VRの開発は楽しいですよ!あと上流の部分でも開発メンバーの采配を活かす開発環境というのはダズルならではかもしれませんし、そういったスタイルで開発できるのはやはり楽しいです!

山田CEO「職人芸的な技術が溜まってきている」

ダズル 山田

――先ほどは、実際にVRコンテンツを開発するメンバーの方にお話を伺いましたが、ダズルさんがVR事業の参入を検討したのはいつ頃なのでしょうか?

山田泰央氏(以下敬称略):
2013年頃です。私がOculus DK1を体験して、圧倒的な没入感があり、会社をスケールするためにもVRに事業として取組もうと考えました。実際には昨年の2015年12月頃からVR関連の研究開発を始めて、今年の4月に本格的にVR事業をスタートしました。

――モバイルなどのカジュアルなタイトルが多いという印象を受けました。

山田:
まずは、VRコンテンツでは「何が良くて何がダメなのか」というノウハウを蓄積することが最重要だと考えています。そのノウハウを溜めないと、大きい作品を開発することもできないのではないかなと。「VRとは何なのか」、「VRでコンテンツを作るということはどういうことなのか」というのを、社内のVR開発チームに学んで欲しいというのがあったので、小さい作品でPDCAサイクルを高速にまわすことを意識しています。

――『オハナちゃん』は1ヶ月ほどで制作したと伺いました。社内のVR事業のメンバーも増えているのでしょうか?

山田:
VRの部門もゲームの部門も、両方とも増えています。最近だとデザイナーが増えていますね。また、2Dデザイナーの人でも3Dデザイナーにコンバートして教育する体制ができているというのは、弊社の強みかなと思います。3Dデザインの制作力は確実に上がっていますね。

――山田さんご自身で企画や制作のチェックもされるのですか。

山田:
私もチェックしています。Gear VRはスペックの制約もあるのですが、市場にある作品と比較しても、自社タイトルの出来は良いかなと思っています。モバイル以外にもHTC ViveやOculus Rift向け、Oculus Touchを使うコンテンツも現在制作中です。

Gear VRは制約が結構あって、そのため軽量化の知見を溜めることが出来たので、最初に取り組んで良かったなと思っています。もしかしたらGear VRでの開発は、軽量化という意味で、ファミコンのゲームを開発していた方の持つ職人芸的な技術に近いかもしれませんね。

――オリジナルのコンテンツ・プロダクトの他に、今後も受託開発の両方をされているのでしょうか?

山田:
そうですね。受託での開発も進めていきます。私はVRの市場も今のスマホ市場と同じようになっていくと考えています。VRコンテンツの分析ツール「AccessiVR」をリリースしたのも、まずはVR領域での足元をしっかりと固めるための戦略です。

実際にダズルには受託でのVR開発の実績もあるので、受託の案件のお話もきています。ゲーム会社さんやプロモーションで使いたいという会社さんからの案件がありますね。最近だと動画系のお話は多いです。動画サービスはすでに開発中ですし、これからもVRコンテンツ全般の開発を進めていきます!

ダズル 山田

――ゲームや動画を含めた広い領域での開発を進めていくということですね。本日はありがとうございました!

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