ついに完結を迎えるVRゲーム「DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア:CA)」。前作からややスパンが空いてしまったが、早く結末を知りたくて待ちきれなかったファンも多いのではないだろうか?
しかし、3部作という大長編であることを考えると「本当にちゃんと話がまとまるのか?」「最後までプレイする価値はあるのか?」は、ゲーマーとしてやはり気になるだろう。
先に言っておくと、本作はこれまでの伏線をしっかりと回収して完結する。SFとしても、サスペンスとしても、物語の着地点に到達してくれる。だが道中、驚きの展開の連続に筆者は何度も揺さぶられ、その結末に胸を打たれた。
今回は完結編となる「Episode III-楽園の眠り-」の先行体験レポートを掲載する。なお、本編の重要なネタバレを可能な限り抑えるが、Episode IIまでの内容はどうしても触れる必要があるので、初見の方は注意してほしい。
また、ネタバレは避けた上で3作の総括だけ読みたい人は、目次から最後の項目に飛んでいただきたい。
前章レビューはこちら。
目次
・前回までのおさらい
・もう戻すことの出来ない時間の中で
・時計塔の奥で待ち受けるもの
・ディスクロニア:CAを総括!
前回までのおさらい
Episode Iでは、犯罪発生率0.001%の海上都市「アストラム・クローズ」にて、都市の創設者「アルバート・ラムファード」博士が殺されるところから事件が始まった。プレイヤーは特別監察官である主人公「ハル・サイオン」となり、“変異体”の能力を駆使して事件の謎を解明していく。
そんな中、共に育った変異体のひとり「マイア・ガネット」の意識が、ヒューマノイド「システリア」の中にいたことが判明。続くEpisode IIでは彼女を匿いながら、起きてしまった第2の殺人事件に挑み、過去を書き換えて結末を変えた。
だが、Episode II最後には再び衝撃的な事件が発生。都市を制御する「時計塔」が暴走し、夢と現実が融合されていく中、ハルは眠りにつくマイアを目覚めさせ、破滅が待ち受ける最後の7日目にもう一度挑んでいく。
もう戻すことの出来ない時間の中で
本作を始めて驚かされるのは、これまであったタイトル画面の「記憶をたどる」項目が使用できなくなっていることだ。Episode IIまでプレイした方ならこうなっている理由に納得するかもしれないが、今回は時を戻さなくてもストーリーは進んでいくので安心して欲しい。
Episode IIの最後に目覚めたマイアとともに話を進めていく。これまでを思えば、物語の重要なポジションにいながら直接話せなかったマイアが目の前にいるだけでも感慨深いが、次の事件が起こるまで猶予はない。事件が別の現場でも起きていたことを聞かされ、マイアの力で現場の情報を整理していく。
これまではすでに起きた事件の捜査をしてきたが、今回は事件を“起こさない”ために立ち回っていくハル。もちろん、これまで通り「メモリーダイブ」の能力も健在だ。緊張感の中、事件の現場で犯人を待ち伏せることとなるが、その後、謎だった物語のピースが次々とはまり、驚きの真実が明らかになっていく。物語が佳境を迎え、もう戻れない場所に来てしまったのだと実感させられた。
時計塔の奥で待ち受けるもの
Episode IIIにおいてメインとなるのは、これまでの伏線が集約されていた「時計塔」の探索だ。このパートでは暴走する時計塔の大扉を開くことから始まり、これまでの集大成となるさまざまな謎解きが待ち受けている。
同行するのはリリィとノエル。ふたりとの会話が謎解きのヒントになるなど、各フロアでハルを助けてくれる。しかし、ノエルはこのエリアに来たことがあり、まだ何か重大な“秘密”を隠しているように見える。
また、過去のラムファード博士に干渉して、ドローンの監視の目をくぐり抜けていくパートも。だが、進めれば進めるほど、プレイヤーは「本当に進んでしまっていいのか」が問われることになるだろう。
時計塔を登りきった先に何があるのか、そしてハルの物語が何処にたどり着くのか。道のりは決して平坦ではないが、その先にあるものを、ぜひあなたの目で確かめて欲しい。
ディスクロニア:CAを総括!
「ディスクロニア:CA」3作を駆け抜けた今、あらためて筆者の感想を書いていこうと思う。
本作で一番の見どころは、やはり物語だ。
目の前で活き活きと語りかけるキャラクター、先の読めないサスペンス、重厚な世界観と、プレイヤーを最後まで飽きさせない。体験自体も物語に没頭できるような工夫がされており、細かな配慮が光る。そしてVRを通してプレイすることで、それらの体験が何倍も身近に感じられるのが本作の優れた点だ。
ゲームとしては、推理・パズルパートが全編を通して充実しているだけでなく、それを自分の手足で解いていけるのが魅力だろう。一般的なアドベンチャーゲームでは省略されがちな部分をVRに落とし込むことで、自分が現場で捜査し、推理している感を本格的に味わえた。裁判パートもプレイヤーが動いて再現することに重きが置かれており、本作における唯一無二の体験として多くのプレイヤーに味わってもらいたい。
一方で、最後まで遊ぶと気になる部分も。本作ではストーリー上何度も同じエリアに移動するため、中盤あたりではやや面倒さを感じた。また、市民へのメンタリングの繰り返しが手間で、中盤から難易度が上がってしまうのも懸念に挙げられる。ただし、Episode IIIでは新規エリアとなる時計塔が舞台の中心となっており、今回は両方とも気にせずとも良くなっていた(逆にEpisode IIIでは、裁判パートもないのが残念だった)。
ともかく、初めてEpisode Iをプレイしたとき、本作は国内VRタイトルとして積極的にオススメできるタイトルだと感じたが、全作通してプレイした今、その想いはより一層強くなった。
例えエンディングを迎えても、「ディスクロニア:CA」がかけた、切なく、優しい魔法は簡単には解けない。
ぜひあなたも本作を最後まで体験し、VRで描き切った壮大な物語の魔力に浸って欲しい。
©Project DYSCHRONIA.
執筆:ノンジャンル人生