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VRゲーム・アプリ 2022.12.12

緻密に構成された世界観から垣間見える、王道のサスペンス「ディスクロニア:CA」Episode IIレビュー

Episode Iの発売後、Meta Questの10月のストアでのユーザー評価1位を獲得し、勢いに乗るDYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア:CA)。驚きのラストから、早くEpisode IIをプレイしたかったファンも多いのではないだろうか?

今回、満を持して編集部に届いたEpisode II。ラストまでクリアして思ったのは、期待度が上がってしまったシナリオのハードルを、あっさりと超えているということだった。VRだからこそできる没入体験を極めた本作は、ジェットコースターのような展開でプレイヤーの心を直接振り回してくる。

本稿ではEpisode IIの重大なネタバレを避けつつ紹介していく。しかし、まだプレイしていないなら、ぜひこれを読む前にEpisode Iをプレイして欲しい。真っ白な状態でプレイしたい人も、今すぐストアへGOだ。

前章レビューはこちら。

前回のおさらい

ディスクロニア:CA Episode Iでは、犯罪発生率0.001%の海上都市「アストラム・クローズ」にて、都市の創設者「アルバート・ラムファード」博士が殺されるところから事件が始まった。

管理局に着任したばかりの特別監察官である主人公「ハル・サイオン」は、「変異体」の過去に干渉する能力を駆使して事件の捜査に挑むが、その途中で襲撃者により命を奪われてしまう。

しかし、謎の少女によって過去に戻ってやり直す力を得たハルは、物語の7日目に起こる“破滅”の回避を任される。その力のおかげで博士を殺した犯人を特定するが、終盤意外な事実が発覚し、事件は思わぬ方向へと進むのであった。

アストラム・クローズに封じられた場所

急転直下のラストから始まったEpisode II。だが、公式PVを見て「あれ?」と思った方もいるだろう。詳細は省くが、今回の序盤では前回の物語のカギを握っていた「システリア」が再び登場するのだ。なぜこういう状況になったのかは、ぜひ自分の目で確かめて欲しい。

ハルとリリィは「アストラム・クローズ」の地下へと辿り着く。そこは高濃度の粒子で汚染され、厳重な警備の敷かれた過去の実験施設だった。3年前に変異体のハルやマイアを巻き込んで行われた実験により、ハルは記憶をなくし、マイアは眠りから目覚めなくなっていた。

施設では、巡回するドローンのベータたちの目をかいくぐり、奥へと向かうこととなる。ゲームが始まってすぐ緊迫のシーンが続くが、これはまだ序の口。基本は推理ゲーだと思っていた筆者に予想外の強敵が立ちふさがり、VRで目の前に迫り来る姿にハラハラさせられた。

推理パートの気持ちよさは健在!

もちろん、地下探索だけがEpisode IIの見どころじゃない。ハルに待ち受けていたのは、第2の殺人事件だ。前回と同じく犯行現場にあるものを「メモリーダイブ」で過去を覗き、情報を集めていくことになる。

捜査の流れは前回と同じだが、状況が変われば求められるものも変わる。現場には様々な痕跡が残っており、ひとつひとつを拾い上げ、ときに記憶を読み取り、どうやって犯行が行われたか推理していく。記憶を読み取れるといっても、この都市では変異体の能力だけで事件を立証することは許されていない。地道に証拠を集め、謎を埋めるピースを当てはめていく必要があるのだ。

「審問」パートも健在だ。それまでの捜査をもとに、犯人が現場でどう行動したかをプレイヤー自身が動いて再現するのだが、相変わらずこのシーンは面白い。真実が目の前で明らかになっていく気持ちよさは本作ならでは。しかし、今回はそこで話が終わらないようだ。

緻密な世界観に垣間見える王道

ディスクロニアの魅力は、シナリオや世界観、キャラクター抜きに語ることはできない。Episode I・IIをプレイして感じたのが、新情報の出し方の巧みさだ。最初は3年前の記憶がなかったハルが、捜査を行い、過去の記憶を断片的に知っていく。同時に博士の二面性や実験の意図など、「アストラム・クローズ」に隠された謎も徐々に明らかになる。だが、真相に近づけば近づくほど、新たな疑問も生まれるのだ。

捜査やメンタリングを行うことで、開示される情報もある。本作の世界観は緻密に構成されており、どれもこの世界を紐解くのに重要ではあるが、肝心な部分までは届きそうで届かない。そのモヤモヤ感が、プレイヤーを事件にのめり込ませる大きな要因になっている。

一方で、本作は「拡張夢」や「変異体」などSF的な要素を散りばめながらも、本質的には下手に奇をてらわない、王道な作風でもある。推理も驚きをもたせつつ、納得できるところに着地点を用意している。ベタなのかもしれないが、そこに世界観を想像させるような描写や謎を持たせることで、作品を骨太に仕上げているように感じた。

そして、長い時間を一緒に過ごしたキャラクターたちへの愛着も高まったが、だからこそ、Episode IIのストーリーにかき回され、翻弄させられた。悪夢に侵食され、異様な光景を見せ始める「アストラム・クローズ」。波打つ物語は、終盤に向かうにつれ、衝撃の連続となった。この物語の行き着く先で、ハルは大切なものたちを守ることができるだろうか?

ディスクロニア:CAもEpisode IIIを残すのみとなった。これから始めるプレイヤーたちには、まずEpisode IIを楽しんでもらいたい。そして来るべき最終局面を、より多くの目で見届けよう。

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