東京・スカイツリーの横にある東京ソラマチでは、2月20日~4月14日までバンダイナムコエンターテインメントProject i Canによる「映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」公開記念特別企画『ドラえもんVR「どこでもドア」』の体験会が開催されています。
『ドラえもんVR「どこでもドア」』はドラえもん秘密道具の一つ、あの「どこでもドア」をVRで体験できるというもの。後編では体験してみて気づいたことや、体感のあるVRコンテンツを制作してきたバンダイナムコエンターテインメントの制作チームProject i Canならではの工夫や気遣いをレポートします。
前半はこちら
今回の制作に携わった、株式会社バンダイナムコエンターテインメントVR事業部のタミヤ室長こと田宮 幸春氏に工夫と制作の裏話を聴きました。
工夫している点
バックパックPCの採用
田宮氏よると、「当初、VRヘッドマウントディスプレイのコードを垂らした状態で体験していたところ、自由に動き回ろうとする体験者は、コードを絡まないよう動きを制限され、スタッフの指示で動いてまるで猿回しの猿のようだった」とのこと。
背負えるバックパックPC「VR ONE」と組み合わせでコードが体に巻き付かなくなり、体験者は自由に動け、スタッフはコードを捌く必要がなくなりオペレーションがひと手間減ったとのこと。
部屋の中を好きに動き回れる今回のコンテンツとは「VR ONE」は非常に相性がいいと感じます。女性だと3 .6 kgある「VR ONE」は動くには重そうに感じるかもしれませんが、体に密着する設計になっているため、重さは気になりません。ただ自由に動けるとは言っても、 背負っているのはPCのため、のび太のようにあおむけで寝ることはおすすめしません。
急遽、実装された振動
「Project i Can」といえば「VR ZONE」でも振動を効果的に使い没入感の高いコンテンツが魅力です。今回は床の振動は当初、予定がなかったとのことですが、体感をつけてこその「Project i Can」と、急きょ決定しのび太の部屋の床をあげて設置したとのことです。
振動装置は「どこでもドア」の裏側にのみ設置してあります。最初だけ感覚をだませれば後は、振動がなくとも人間は気にならないとのこと。実際、ドアから出た直後に足に感じた振動は、ドアを回り込んだ表側ではなかったはずですが、ずっと足の下で電車の振動があったように感じてました。
わずかな穴から吹き出る“南極の風”と“電車の風”
南極の冷たい強風と、電車の上で感じた風は、ちょうど胸のあたりに当たるよう設置してあります。体験後に確認すると、壁に直径3cmほどの穴が見つかりました。使っているのはブロアーという工作作業で出る木屑や金属屑を風で吹き飛ばす逆掃除機のような器具。扇風機より狭い範囲で瞬間的に強い風を送れます。扇風機に比べセットの裏に置けば、表からは小さな穴のためセットの外観を邪魔しません。
風が出る穴、よく気を付けないと気づかないほど小さいです。
現実とVRの物体を同期させ、現実を意識させない細やかな工夫
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今回使用したVRデバイスはHTC Vive。体験者はドアノブを掴むためコントローラーは持たず素手です。コントローラーは「どこでもドア」のドアの上と、タイムマシンの引き出しに設置してありました。コントローラーのトラッキングで開け閉めを認識していたようです。
VR内で自分の手が見えるのは、赤外線センサーで手を感知するLeap Motionで、指の動きまで自分の手の動きに連動します。
タイムマシンがある引き出しは、現実では底が抜けた、枠組みだけの引き出しです。手を入れたり、頭を突っ込んだときに、ドラえもんの世界のタイムマシンの時空間ではぶつかるはずないのにので、現実で引き出しの底にぶつかってしまうと現実を思い出して実在感が薄れるためです。
没入感を妨げない工夫として、のび太の部屋では机も、南極ではペンギンが乗っている氷の塊になっています。机にぶつかっても氷にぶつかったと感じます。
企画は2年前から
今回の企画は田宮氏が約2年前にコヤ所長こと小山 順一郎氏と一緒にOculus RiftとTouchで2人で遊ぶことのできる『Toybox』を体験したときから温めてきたものとのこと。2人でVR内で遊んでいるだけで、ゲームではないのに楽しくいつまでもいたい、と感じたことから、VRで作るべきコンテンツはゲームではなく体験ではないかと感じ、企画したことが始りとのこと。
ソラマチでひときわ目立つピンク色のドア
VRコンテンツをイベントで展示する場合、周りからは何をしてるかわかりにくいため、わかりやすく目立つ工夫や、どういう体験かを簡単に説明することが必要となります。
「どこでもドア」は設置場所自体もエスカレーターの昇り口のそばと、人目につきやすいところです。さらに、日本国民の多くが見覚えのあるピンクのドアはひと目で「どこでもドア」と認識され、人が集まってます。多くの人がドラえもんを見たことがあり説明しなくても、ドアを開ければ別の場所に行けると知っていることで、説明が不要になりオペレーションの手間が減ったとのこと。また、ドラえもんは海外でも放映されているため、海外の人でもピンクのドアだけで何をする体験なのか説明しなくともわかるとのことです。
プレス体験日ということで筆者たちが体験した平日夕方も、行き交う人達が足を止めて、興味津々の面持ちで眺めたり、写真を撮ったりしていました。
安全面の配慮
本来「どこでもドア」の下には板がついていますが、今回、セットでは足を引っかけたら危ないとのことでとりはずしてあります。VR内の「どこでもドア」は作品に忠実に作られているので足元を見ると、板がついています。そのためどの体験者もドアを出入りするときに現実では何もないにも関わらず、足を上に上げてまたいでいるとのこと。筆者も同様にまたいでましたが、没入感が高いVR内で見てる物体は、現実にあるものと認識してしまうものです。
角にもけがをしないようカバーがついています。
「Project i Can」が今まで得てきた知見によって、導入部からVR内まで映像、音、振動が合わさった没入感の高いコンテンツでした。
本コンテンツの体験レポートはこちら。
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK2017
©BANDAI NAMCO Entertainmment Inc.
イベント概要
名称 | 『ドラえもんVR「どこでもドア」』 |
期 間 | 2月20日(月)~4月14日(金) ※毎週火曜日および3月18日(土)~3月20日(月・祝)を除く |
時 間 | 平日14:00~20:45、土日祝11:00~20:45 ※完全予約制 |
場 所 | 東京ソラマチ3階 イーストヤード 特設会場 |
備 考 | 13歳未満の方は体験できません。 |
WEBサイト | http://doraeiga-vr.com/ |