「VTuber活動のために自分の声を可愛らしくしたい」「動画企画のために自分の声を加工したい」といった用途でボイスチェンジャーの購入を考えている人も少なくないはずです。
また、ここ最近の“メタバース”ブームもあり、VRChatやNeosVR、clusterをはじめとするソーシャルVR(“メタバース”プラットフォーム)でも「いつもの自分と違う声でコミュニケーションしたい」という人もいることでしょう。
ボイスチェンジャーは「男声→女声」変換はもちろん「女声→男声」、あるいは性別はそのままに声色だけ変化させることもできます。
本記事では、無料で利用できるソフトウェアからメーカー製のハードウェアまで、定番のボイスチェンジャーを紹介します。
目次
■ボイスチェンジャーとは?
■ソフトウェアボイスチェンジャー
・バ美声
・Gachikoe! Core
・恋声
・Suara Lite
・Clownfish Voice Changer
・Garageband
・ボイスチェンジャー by ユーザーローカル
・RoVee
・Voicemod
・Voidol2
・VOICEPEAK
■ハードウェアボイスチェンジャー
・VT-4 Voice Transformer
・ZOOM V6
ボイスチェンジャーとは?
ボイスチェンジャーとはその名のとおり、入力した音声を加工・変換するソフトや機器のこと。主にピッチ(Pitch、声の高低)とフォルマント(Formant、声の性質)と呼ばれる2つの音声要素を加工することで、高い声や低い声など、地声をさまざまな声色に変化させることができます。
ボイスチェンジャーを使いこなす人の中には、調整しているとは分からないほど自然なボイスでトークや歌を披露している人もいます。また自分の性別を明かしたくない場合にボイスチェンジャーが有効なことがあります。
ボイスチェンジャーと聞くと難しそうな印象がありますが、操作が比較的簡単なものや、無料で利用できるソフトもあります。今回は11つのソフトウェアと2つのハードウェア、計13種類のボイスチェンジャーについて、それぞれの価格や機能、特長などを解説します。
ソフトウェアボイスチェンジャー
まずは無償のものも含む、ソフトウェアのボイスチェンジャーを紹介・解説します(各ソフトのバージョンは記事執筆時点のものです)。
バ美声
低遅延で高品質、そしてより自然な女声を目指したソフトウェアボイスチェンジャー。2018年9月ごろから開発が続けられていましたが、2021年11月に製品版になりました。
導入が比較的簡単で、UIも非常にシンプル。入出力のデバイスを選択し、声の高さをバーで変更したら「Start」ボタンを押すだけで声が変換されます。フォルマント(声の性質)はピッチ(声の高低)に応じて自動で調整されるので、手間が少ないのも魅力。また、製品版では録音音声(WAVファイル)からの変換もできるようになりました。
製品版は有料ですが、無料の試用版が用意されています。試用版は男声から女声に変換する「バ美声」と、女声から男声に変換する「バ美声 FtoM」が別になっています(製品版は両方同梱)。
開発元 |
はんそで工房 |
配布先 |
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価格 |
2,000円 |
対応OS |
Windows |
備考 |
無料の体験版2種(「バ美声」、「バ美声 FtoM」)も配布中 |
Gachikoe! Core(v0.0.3)
「Gachikoe! Core」は、桜音さち氏が開発中のボイスチェンジャー「Gachikoe!」 のコア機能を抽出したソフト。WindowsだけでなくMacでも使えるのも特徴で、BOOTHにて無料でダウンロード可能です。また、クリエイター支援として任意の金額を上乗せして購入する「BOOST」用に100円で購入できるバージョンも用意されています(内容は同一)。
パネルのUIはシンプルで、直感的な操作が可能。ピッチも75%から200%と幅広く調整できます。「Config」ボタンから開ける設定では、声が出ているかを判定するパラメーターや、ささやき声の判定を行うパラメーターを調節できます。判定に応じてバーの色が変わるため、視覚的にもわかりやすいのが特徴です。初心者向けの解説記事も用意されています。
なお、フル機能を搭載した「Gachikoe!」が開発継続中で、桜音さち氏のpixivFANBOXで500円以上の支援を行うと、「Gachikoe!」と「Gachikoe! Core」の開発版をダウンロード可能です。
開発元 |
桜音さち氏 |
配布先 |
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価格 |
無料(BOOST用は100円) |
対応OS |
Windows / macOS |
備考 |
フル機能版「Gachikoe!」開発中、pixivFANBOXでの支援により開発版を利用可能(500円/月~) |
恋声(Version 2.87)
無料ボイスチェンジャーの定番として広く知られる「恋声」。かつてはバ美肉VTuberとして知られる魔王マグロナさんや兎鞠まりさんも利用していました。本ソフトではリアルタイムでの変換のほか、WAVファイルを読み込んでの変換も可能です。
基本的な操作はパネルの左半分を使用。他のソフトとくらべてUIがやや複雑ですが、プリセットが用意されており、「M→W」では男声から女声に、「W→M」では女声から男声にという変換ができます。
開発元 |
Koigoe Moe氏 |
配布先 |
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価格 |
無料 |
対応OS |
Windows |
備考 |
周波数解析&表示ツール「恋音」も配布中 |
Suara Lite
「Suara Lite」は、名古屋大学発のベンチャー企業・TARVOが開発するボイスチェンジャーソフト。現在のバージョンはまだ0.14(0.20)と初期段階ながら、シンプルなUIで使いやすいのが特長です。
アプリ起動後、右上の「Settings」からメニューを開き、「AUDIO」で入出力デバイスなどを選択すれば設定は完了。メイン画面に戻り、「Run」をクリックすればボイスチェンジャー機能が使用できます。
ボイスチェンジはピッチとフォルマントの調整で行います。その他の細かい設定については公式ヘルプページのほか、公式YouTubeチャンネルで説明動画も公開しているので参考にしてください。
開発元 |
TARVO |
配布先 |
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価格 |
無料 |
対応OS |
Windows |
備考 |
最終安定板(Ver. 0.14)と最新版(Ver. 0.20)あり |
Clownfish Voice Changer
「Clownfish Voice Changer」はShark Labsが開発する無料のボイスチェンジャーソフト。海外製のため各種表記は基本的にすべて英語ですが、コンテクストメニューの一部は日本語化することができます(アプリアイコンを右クリック→「Interface Language」から「日本語」を選択)。
Clownfish Voice Changerでは変換したい声質をアイコンで選びます。男声にするなら「Male pitch」、女声にするなら「Female pitch」を選択。その他にもエイリアンや赤ん坊、ロボット声などの設定もあります。遅延もソフトウェアボイスチェンジャーとしては低めです。
ユーザー自身によるカスタム設定ではピッチの変更しかできませんが、後述のVSTプラグイン「RoVee」を使うとピッチだけでなくフォルマントも調整できます。
開発元 |
Shark Labs |
配布先 |
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価格 |
無料 |
対応OS |
Windows |
備考 |
機能拡張のためのプラグインも配布中。その他、Chrome OS拡張機能版もあり |
Garageband
「GarageBand」はDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれる、PCで作曲・編曲などの音楽制作を行うためのソフトウェア。アップルが開発・提供しています。
GarageBandには音楽制作のための豊富な機能がありますが、その機能のひとつにボイスチェンジャーもあります。ボイスチェンジャー機能ではピッチとフォルマントを調整可能。変換した声をリアルタイムで出力することもできます。ボイスチェンジャーの設定方法はこちらのnote記事に詳しくまとめられています。
なお、GarageBandにはmacOS版とiOS/iPad OS版がありますが、音声チャットツールとの連携や動画のライブ配信での利用を考えるならmacOS版がおすすめです。
開発元 |
Apple |
配布先 |
https://www.apple.com/jp/mac/garageband/ (Mac版) |
価格 |
無料 |
対応OS |
macOS、iOS / iPad OS |
ボイスチェンジャー by ユーザーローカル
「バーチャルYouTuberランキング」の運営や3Dアバタートラッキングツール「Webcam VTuber」の提供などを行っているユーザーローカルが提供する、ウェブサイト上で利用できるボイスチェンジャー。
PCはもちろん、スマートフォンでも利用できるのが最大の特徴です。専用の機器やソフトウェアがいらないため、セットアップの手間もありません。マイク入力ができる端末があればいつでもサイト上で利用可能です。
「録音」ボタンを押して声を録音したら、あとは変換パターンを選んで「変換・再生」ボタンを押すだけで音声加工ができるシンプル操作。音声ファイルをアップロードして変換も可能です。リアルタイム変換はできませんが、変換された音声データをダウンロードできるので、編集動画の音声素材として活用できます。
女声から男声、男声から女声の変換のほかに、ロボット声やかすれ声などさまざまな変換プリセットも用意されています。「ソフトをダウンロードしたり、機器を購入したりするのは面倒だけど、ひとまずボイスチェンジャーを試してみたい」という人におすすめです。
開発元 |
株式会社ユーザーローカル |
配布先 |
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価格 |
無料 |
対応OS |
PC / スマートフォン(Webブラウザ) |
RoVee(ver 1.21)
DAWに追加して利用する、無料のVSTプラグイン。前出のClownfish Voice Changerでも利用できます(32bit VST対応版のみ)。
プラグインなのでDAWがなければ利用できませんが、シンプルなUIで簡単に使えることから愛好者も多いです。DAWには前出のGarageBandやCakewalk(Windows)など、無料のものが多数あります。
開発元 |
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配布先 |
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価格 |
無料 |
対応OS |
Windows |
備考 |
VST対応アプリで利用可能。プラグインのため単体では動作しない |
Voicemod
ボイスチェンジャーとサウンドボード機能を備えたソフトウェア。ライブ配信ソフト「OBS Studio」やVRChatなど、さまざまなツールやゲームにも対応しているのが特徴です。海外製ですが日本語ローカライズもされています。有料版(Voicemod PRO)を購入すると80種類以上のボイスフィルターが使えるほか、自分だけのカスタムボイスの作成もできます。
無料版ではカスタムボイスは作成できず、使えるボイスフィルターも日替わりで入れ替わるため、使い続けるのであれば有料版の購入はほぼ必須。また、使用にはそれなりの処理能力があるPCも必要です。まずは自身のPC環境で快適に動作するか、自分にとって使いやすいかどうかを無料版で確認するとよいでしょう。
開発元 |
Voicemod |
配布先 |
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価格 |
無料版あり |
対応OS |
Windows |
備考 |
無料プランではカスタムボイスの設定不可 |
Voidol2
「Voidol2」はクリムゾンテクノロジーが開発・販売する、AIリアルタイム声質変換ソフトウェア。2019年に発売された初代「Voidol」に、超高速声質変換エンジンを追加したほか(SYNTHモード)、サンプルプレイヤー機能やイコライザーなども追加されています。
Voidol2では、特定のキャラクターに声を変換する「Voidol AI」モードのほか、「Voidol SYNTH」モードを新たに搭載。自分でピッチやフォルマントを調整して自由にボイスチェンジすることができます。また、ソフトウェアボイスチェンジャーながらきわめて低遅延なのも特長です。
さらにWindows版では、ZoomなどのWeb会議アプリやストリーミング配信ソフト「OBS Studio」と連携できる「Voidol音声ドライバー」も搭載。変換した音声のままYouTube Live配信なども行えます。
価格は13,200円(税込)とやや高額ですが、高頻度でボイスチェンジャーを使う人であれば十分元が取れる機能・性能を備えたソフトです。
開発元 |
クリムゾンテクノロジー株式会社 |
配布先 |
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価格 |
13,200円(税込) |
対応OS |
Windows / macOS |
備考 |
アプリの起動にはWXGA+(1440×900)以上のスクリーン解像度が必要 |
VOICEPEAK
AHSが開発・提供する「VOICEPEAK」はボイスチェンジャーではなく、テキスト入力した言葉や文章をAI音声で読み上げてくれる入力文字読み上げソフト。6人のナレーター(男性3名、女性3名)のほか、幼い「女の子」の声も収録した『VOICEPEAK 商用可能 6ナレーターセット』が2022年3月から販売されています。
VOICEPEAKでは、言葉や文章をテキスト入力するだけで簡単に音声データが作成可能。感情パラメータによる喜怒哀楽の表現や、イントネーションの調整、スピードの調整などにも対応しており、きわめて自然なナレーション音声を作成できます。音声メッセージや動画用のナレーションなど、用途しだいではボイスチェンジャー以上の効果を発揮するでしょう。
製品名のとおり商用利用も可能で、Windows・Macのほか、Linux(Ubuntu)にも対応しています。体験版も配布されているので、まずはその実力を自身で体験してみるとよいでしょう。
開発元 |
株式会社AHS |
配布先 |
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価格 |
29,800円(税込) |
対応OS |
Windows / macOS / Linux(Ubuntu) |
備考 |
2022年4月30日23時50分まで初回限定優待版(パッケージ版19,800円、ダウンロード版15,800円(ともに税込))も販売 |
ハードウェアボイスチェンジャー
続いてはハードウェアのボイスチェンジャーの紹介です。本記事では2つのハードウェアボイスチェンジャーを紹介します。
ソフトウェアのボイスチェンジャーとは違い、ハードウェアのボイスチェンジャーは有料製品が基本。価格も安価ではありませんが、ソフトウェアのボイスチェンジャーと比べて低遅延で音声変換できるのに加え、変換処理をハード側で行うのでPC側の負担を軽減できるのが大きなメリットです。ボイスチェンジャーの使用頻度が高く、かつ予算がある人であれば十分検討の余地があるでしょう。
VT-4 Voice Transformer
ローランドが発売する、リアルタイムで声を変化させるボイスチェンジャー。本体にマイクを接続して、ピッチとフォルマントを調整して声を加工できます。エフェクトは5種類×4バリエーション、計20種類のプリセットが搭載されています。
USBでPCに接続すると、オーディオインターフェースとしても使用可能。USBでの動作のほか、単3電池4本でも駆動する手軽さも魅力です。ボイスエフェクトをボタン1つで簡単に切り替えられるので、ライブ配信中も状況に応じてロボットボイスなど音声の変更が可能です。
音楽機材の中では比較的ボタンやつまみが少なく、シンプルでわかりやすい構成なのも特長。単純に女声・男声への変更だけでなく、さまざまなエフェクトを使って声を演出したい人におすすめの製品です。
VT-4は前出の魔王マグロナさんも過去に利用していました。魔王マグロナさんによる本製品の詳細なレビューはこちら。
開発元 |
ローランド株式会社 |
製品サイト |
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価格 |
実売28,000円前後 |
対応機器 |
PCなど(Windows / macOSとも対応) |
ZOOM V6
VT-4と同じくハードウェアのボイスチェンジャー。VT-4よりも価格は高めですが、マイクが付属しています(マイクケーブルは別売)。エフェクトは40種類のプリセットを搭載。もちろんユーザーオリジナル設定も可能で、プリセットと合わせて最大100種類までメモリ保存できます。
ZOOM V6の特徴は、フットペダルを使って足で操作ができること(卓上で手を使っての操作も可能)。両手がフリーになるので、例えばゲーム実況中にゲームコントローラーを操作しながら瞬時に別の声に切り替えるといったこともできます。また、PCに接続せず、ボイチェンしてカラオケを楽しみたいときなどにもフットペダルは便利です。
(ラランさんによる解説動画)
開発元 |
株式会社ZOOM |
製品サイト |
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価格 |
実売35,000円前後 |
対応機器 |
PCなど(Windows / macOSとも対応) |
備考 |
超指向性ボーカルマイクSGV-6同梱 ※マイクケーブルは付属なし |
●過去記事はこちら
執筆:桑原健太郎